少院家の他愛も無い日常
気が付いた順に書いていきますので前後の矛盾とかが生じるかもしれません。
当初、前作の「たぁとあおいの○休み」を書き直して関根あおい、田原爽真と少院有留美を同学年にするとか、快徒と歩登を同級生にするとか、そう言う事も考えたのですが、一から書き直すのは面倒だったので今回は控えておきました。
もしかすると駅前の繁華街とかですれ違っているかもしれない、そう言う二組です。
偶然とは言え、歩徒と快徒、名前に「徒」と言う字が入ってしまいました。
ちなみに歩登ですが、表記を「歩徒」にするか、迷っている最中で表記揺れが生じるかもしれません。「歩徒」にすると「徒」の字が快徒と被るので名前に「徒」の字を入れるのが流行っている世界線にしようか、そう言う事も考えています。
胎児の性別もわかる時代、夫婦は第二子が男の子だとわかったので事前に名前を考えていた。
しかし、病室で初めて弟を見た有留美が最初に発したのが「あるとぉ~」だった。それを聞いた夫婦は「あると」の響きを気に入り、予定した名前から「歩登」の字を当てて名付けた。
ある日の放課後、駅前の商店街に歩登の姿があった。
改札口が見える場所でペットボトルの飲料を飲みながら誰かを待っている。
「あるとぉ~、ごめんねぇ~」
有留美が後ろから抱きついてくる。
「ねーちゃん、どっから湧いた?」
驚く歩登に有留美は「向こうの改札口から出て、グルって回ってきた」と答える。
「あぁ、そぉ、ふぅ~ん」
歩登はわざとそっぽを向いてみせる。
「怒らんでぇ、あるとぉ」
「目の前で電車、行っちゃてさぁ」
歩登の記憶が正しければ各駅停車は十五分間隔だ。有留美も十五分は待っていたことになる。
放課後に駅前で集合するという、漠然とした待ち合わせであったからLINEなどを使って「乗り遅れた」とか、そう言う連絡を取り合うことも無いし、歩登にしてみても「その内に来るだろう」ぐらいの気持ちで待っている。
「それで、今晩、何食べたい?」
有留美の問いに歩登は「弁当買って、帰ればいいやん」と素っ気なく答える。
週末だからと言うわけでは無いが、今夜は両親の帰りが遅く、有留美が夕食を作ることとなっていた。
歩登にしてみればお弁当を買って帰れば有留美の手間が省けるとか、その様に考えていたが、有留美は折角の週末だからゆっくりと夕食を作りたいと考えている。
これが翌日も平日という日ならば有留美は率先してお弁当を買って帰るか、スーパーなどでお惣菜を買って帰る方を選んだだろう。
「それで歩登、今夜、何が食べたい?」
有留美の問いに歩登は「任せる」の一言、「そんなこと言わないで、考えてよぉ」と有留美は歩登に言い返すが、今までも献立に関しては母や有留美に任せていたし、注文を付けることも無く、不満を口にすることも無かった。一方で育ち盛りと言うこともあってか、量に関しては足りない時には素直に「足りない!」と訴えてくる。
今日のように母親が不在で有留美が夕食を担当する時、父親が居れば食べたい物を聞いて済むのだが、歩登は本当に献立に関しては注文を付けてこない。
有留美は歩登の好き嫌いは把握しているから歩登が嫌いな物を避けておけば問題は無い。
歩登の好き嫌いと言ってもほとんど食わず嫌いだったり、そういう感じだから有留美はあまり気にしていない。
「歩登、何かリクエスト、無い?」
有留美に聞かれて「肉!」と歩登は答える。
「肉……、ねぇ……」
有留美の脳内ではA5ランクの和牛ステーキが思い浮かんでいた。親から貰った予算ではとても和牛のA5ランクステーキは買えないし、僅かでも買って帰れば間違いなく母親から怒られるだろう。A5でなくとも牛肉のステーキはあるし、豚肉、鶏肉のステーキもある。そもそも歩登は肉と言っただけでステーキとは一言も言ってない。他にも肉の選択肢はあると思うのだが、どこからステーキを思い付いたのか、さっぱりわからない。
「他には?」
有留美は歩登へ聞いてみる。
「ケーキ」
「それ、デザートやん」
突っ込みを入れる。
冗談だとわかってはいるが、ここは駅前、ケーキ屋さんも数軒あるし、目に入る。
「最近食べてないし、買うかぁ!」
有留美はケーキ屋の方へ足を向ける。
「ねーちゃん、それ、あとでいいよ。先に今夜の飯、考えてくれ」
「歩登も考えてぇ」
有留美に言われて「簡単な物でいいよぉ」と歩登は答える。
「簡単な物?」
有留美、頭の中で簡単な料理をあれこれ思い浮かべる。その中から一番楽そうな物を選び、スーパーへ入って必要な材料を買い物籠へと入れていく。
スーパーで買い物を終えるとまっすぐケーキ屋へ行き、一人一個ずつケーキを買って帰る。勿論、両親の分までは買ってない。
知らない人が見たら有留美と歩登を若い恋人同士と勘違いするかもしれない。顔立ちや持っている雰囲気が似ているから姉と弟と大抵の人は気付くだろうが、中には従姉弟同士と思うかもしれない。
帰宅して有留美は早速、夕食の準備に入る。
「歩登、晩ご飯出来たよ」
呼ばれて歩登は部屋を出る。テーブルを見て驚く。
大皿にスパゲッティが大量に盛られている。そしてレトルトのミートソースが皿の横に置かれている。スーパーで買ってきた七種の野菜が入ったサラダ、味噌汁、何故か炒飯という謎の組み合わせだ。
「ねーちゃん、こんなに食えないし。それに、なんで、この組み合わせ?炒飯とスパゲッティ」
「だって、うどんと丼の組み合わせってあるし、若いから食べられるでしょ」
「だからと言って、スパゲッティと炒飯は合わんだろ」
「え~……」
有留美は「食べたら一緒だよ」と言いつつ、冷蔵庫からケチャップを取り出し、「オムライスに変えようか」と言うから「ねーちゃん、真に受けんで」と歩登は言いながら有留美の顔を見るとニチャァって笑みを浮かべている。
半分は冗談で言っているようだが、残る半分は歩登が望めば即、炒飯がオムライスへ作り替える気満々だ。
「ねーちゃん、座って食えよ。落ち着かないし」
テーブルの向かいに座って有留美も夕食を食べ始める。
いつものことだが、有留美は食べながらその日あったことを話すので食べたり、喋ったりで結構せわしない。
歩登が曖昧な相づちを打つと「聞いてない」と言うし、歩登が落ち着いて夕食が食べれないのも今に始まったことではない。
スパゲッティはどうにか食べきったが、炒飯は残ったのでタッパーに入れて冷蔵庫で保存することとなる。明日の昼食となる予定だ。
「歩登、ケーキ食べないの?」
腹八分を越えた歩登には食後のデザートとしてケーキを食べる余裕は無かった。
「食べ過ぎで、それどころじゃ無いよ。ねーちゃん食ってまえよ」
言われた有留美もケーキ一個分の余裕はあったが、さすがに二個は入らなかった。
結局、歩登のケーキは遅い時間に帰宅してきた母親が食べてしまった。
少院家の他愛も無い日常
登場人物の名前ですが、歩登は早くに決まりました。姉が「あると」と言ったことで両親が事前に用意していた名前から「歩登」へ変更するという設定も早い段階で思い付きました。
問題は姉の方で有留美の他に有留香、有留華、有留奈など幾つか思い付き、選ぶのに少し時間を要しました。