猫
在宅勤務の合間、外に出ると同じ猫とよく顔を合わせる。
首輪をしてないことから推測するに野良で、たぶんメス。丸っこくて黄色い瞳に豆大福を彷彿とさせる白黒模様の身体が特徴だ。
ほとんどの場合、その猫は私の暮らすマンションの出入口付近で昼寝をしていた。近くを通りかかっても警戒せず、かといって寄ってくるでもない。目を開けて私の姿を確かめ、それが終わるとまた閉じる。そして私もこの猫に構うことはしていない。
ある日、仕事の都合で外出すると猫はいつも通り眠っていた。岩のようにじっと動かず、しかし私を一瞥することだけは欠かさない。
帰路についたのはそれから数時間後のことで、私は部屋に着いてからの算段を立てつつマンションへ続く道を歩いていた。すると遠目に例の猫の姿を見た。どうやらまだ眠っているらしい。白黒の身体を丸めてじっとしている。
私は違和感を覚えた。猫の下半身というべきか、腹から脚にかけての部分。本来、毛で覆われているはずの箇所に妙な光沢があるのだ。どういうわけか、その部分だけが街灯に反射して光って見えるではないか。
立ち止まって見つめていると、猫はじきに目を開けた。そして次の瞬間、私の視線と交差した瞳がこれ以上ないほど大きく開かれる。
素早く身を起こすと、猫は下半身を引きずりながら走り去った。つやのあるウロコに短い尾ひれ。間違いない。猫の下肢はやはり魚になっていた。
私はしばらく呆然と立ち尽くしたあと、あることを思い出した。猫の駆けていった方には公園があって、その敷地に鯉が泳ぐ池があるのだ。
もしかすると、あの猫は猫と鯉の子供なのかもしれない。
猫