仮面ライダー龍騎 〜第十一話〜

《第十一話:新たな出会い》


【登場人物】

城戸 真司(きど しんじ)(二十四)……新米ジャーナリストで、少々抜けたところがあるお人好しの青年。ドラグレッダーと契約し、『龍騎(りゅうき)』となる。

秋山 蓮(あきやま れん)(二十四)……無愛想で口も態度も悪いが、内には確かな情を秘めている男。仮面ライダー『ナイト』に変身する。

手塚 海之(てづか みゆき)(二十四)……蓮の古くからの友人で、彼の良き理解者。仮面ライダー『ライア』となって龍騎・ナイトと共闘していたが、浅倉によって殺害される。

須藤 雅史(すどう まさし)(二十八)……警視庁の刑事。浅倉が引き起こしたファミレス立てこもり事件の捜査を担当し、重要参考人として真司を召集する。

神崎 優衣(かんざき ゆい)(十九)……蓮に協力する少女で、ゲームマスターである神崎士郎の妹。兄が多くの人間を傷つけている事に、思い悩んでいる。

大久保 大介(おおくぼ だいすけ)(三十六)……モバイルネットニュース配信会社『OREジャーナル』の編集長で、真司の上司。最近、健康の為に青汁を飲み始めた。

浅倉 威(あさくら たけし)(二十五)……自らの衝動に任せて通行人を次々と殺傷した凶悪犯罪者。神崎士郎の導きにより、収監中の拘置所から脱獄。『王蛇(おうじゃ)』となる。

神崎 士郎(かんざき しろう)(二十五)……優衣の兄で、ライダーバトルを仕掛けた張本人。鏡の中からライダー達を闘いへと誘う、謎多き男。

【あらすじ】

 原因不明の連続行方不明事件を追っていた新米ジャーナリストの城戸真司は、ある日鏡の向こう側にある世界『ミラーワールド』に迷い込んでしまった。そこで遭遇したのは、人を捕食する怪物『ミラーモンスター』と、それと戦う力を持った鏡世界の戦士『仮面ライダー』。ミラーモンスターが事件の原因だという事を知った真司は自らも『龍騎』となって戦う道を選ぶが、ライダーには自分の願いを懸けて他のライダー達と"殺し合う"という、もう一つの凄惨な戦いが定められていた。何とかライダーバトルを止めて皆を助けたいと考える真司であったが、繰り返される戦いの中で、大切な戦友の一人であった手塚海之が遂に命を落としてしまう。果たして、本当に真司は戦いを止める事が出来るのだろうか。

【十六】

〜三月一日・午後三時三十分"警視庁本庁・取調室"〜

「何故、貴方はあの場に居なかったのですか?」

 対面に座った刑事の威圧的な雰囲気に、真司は身を縮こまらせていた。

「いや、えーっと……それはですね……」

 真司は今、捜査一課の須藤雅史刑事の取り調べを受けている。



〜同日・午後二時三十分"花鶏・店内"〜

「手塚……くそっ……!!」

 握りしめた拳を、テーブルへと叩きつける真司。つい先程、神崎士郎によって手塚海之の"死"が真司と蓮に伝えられたのだ。昨夜の手塚の様子を思い返し、真司は歯噛みした。

「俺のせいだ。俺が、あいつを一人にしたから……!」

「落ち着け、城戸。あいつもライダーになった瞬間から、こうなる事は覚悟していた筈だ。お前の所為じゃない。」

 蓮はいつもの通りキッチンで洗い物をしながら、真司を宥めるように言った。そんな蓮の物言いに、苛立ちを募らせる真司。

「落ち着けって……なんで、そんな割り切った風にしてられるんだよ。お前だって……!!」

 ドタドタと近づいて蓮の胸ぐらを掴んだところで、真司は彼の頬に涙の跡があるのに気付いた。

「……ごめん。」

「……いや、そもそもアイツが死んだのは俺に責任がある。俺が浅倉に与しなければ……」

「そうだよ、浅倉。」

 真司はデッキを握りしめ、玄関へと歩を進めた。ドアノブに手を掛けたところで、その二の腕を蓮が掴む。

「どこへ行く、城戸。」

「決まってんだろ、浅倉を探す。それで、手塚を殺した報いを受けさせるんだ。」

「……殺すのか。」

 殺す。蓮のその言葉は、真司の心を深く貫いた。真司は確かに、浅倉に対する純粋な"殺意"を抱いていた。

「……なぁ、蓮。」

「どうした。」

「俺は、誰とも戦わない。ただ罪の無い人達を守る為に、正しくライダーの力を使う……そう決めたんだ。」

 優衣に、手塚に誓ってみせた時の言葉は嘘ではない。それでも、真司は確かに浅倉を倒したいと思った。自分の弱さを突きつけられて、胸が痛む。

「でも俺、今……浅倉を殺したいって思った。手塚の仇をとりたいって。……俺って結局、口だけなのかな。」

 そっと、真司から手を離す蓮。

「そうかもな。」

「……蓮。」

 蓮は、その場で項垂れる真司を残して店の玄関扉を開いた。

「お前は俺に言った。俺が背負っているものを、一緒に背負うと。……その様子では、到底無理だろうがな。」

 そう言い残し、蓮は店を出た。優衣も手塚の死を知って二階の自室で寝込んでいる。こうして、真司は一人残される事になった。

「俺は……これからも戦っていけるのか……?」

 そんな時だった。店の扉が再び開き、背広を着た男が入ってきたのだ。

「城戸真司さん、ですね。」

「あ、はい……あなたは?」

 男は懐から警察手帳を取り出すと、それを開いて見せた。そこにあった名前に、真司は聞き覚えがあった。

「あれ、あんた……」

「捜査一課の須藤です。少し、あなたにお話を伺いたい。二月十五日に起きた、ファミレス立て篭もり事件について。」

「あぁ……。」

 こうして真司は、警察の取り調べを受ける事になってしまったのだった。



〜再び午後三時三十分"警視庁本庁・取調室"〜

「えーっと、俺があの場に居なかったのはですね……」

 言える訳がなかった。『仮面ライダーに変身して、鏡の中の世界で戦っていました』などとは。

「……すいません。俺も、よく覚えてなくて。気付いたら家に……戻っててぇ……。」

「……あなた、バカですか?」

「なっ……!!」

 ここ最近、真司はバカと言われることが多い事を気にしていた。

「ば、バカじゃないですよ! なんでバカって言うんですか!! ねぇ、刑事さん!!」

「……はぁ。だって、嘘を吐くにしてももう少しマシなのがあるでしょう。気付いたら家に戻ってた……小学生でも使わない、お粗末な嘘だ。」

「うぐっ」

「まぁ、いいでしょう。」

 須藤は呆れた様子で大きくため息をつくと、すっと立ち上がって取調室のドアを開いた。

「もう、お帰りいただいて結構ですよ。」

「え、いいんですか?」

「貴方は少女を助ける為に、自ら人質になる事を買って出た。浅倉との接点も今のところ見つかっていませんし、今日のところは帰っていただいて結構ですよ。」

「あ、ありがとうございます……。」

 真司が軽く会釈し、そろそろと扉を潜ろうとしたその時。須藤が突然、真司の肩に手を置いてグッと力を込めた。

「しかし、あなたは確実に何かを隠している……城戸真司さん。私は、あなたのその隠し事を必ず暴きますよ。そして、浅倉を逮捕してみせる。私はあの男を、絶対に許しません。」

「は、ははぁ……。」

 背中に悪寒を残しつつ、真司はそそくさと帰路についた。須藤は浅倉に並々ならぬ執着心を抱いていると、そう感じながら。

〜二〇〇一年十二月二十五日・午後六時三十八分"渋谷駅前"〜

 車道脇に停めたパトカーの窓から、須藤は辺りに目を光らせていた。今日はクリスマスだ。こういう特別な日には何かが起こるものだと、須藤は警戒していた。

「須藤さん、暇ですねぇ。」

 そう言いながら助手席で欠伸をしているこの男は、加賀友之。今年になって一課に配属されてきた新人で、須藤の現在のバディである。

「そう言うなよ、加賀。こういう暇な日常が、俺達にとっては一番の幸せだ。」

「ははっ、そうっすね。」

 加賀は今でこそ少しフワフワとしているが、根は強い正義感で溢れている。将来は自分を超える素晴らしい刑事になると、須藤はそう確信していた。

「……あの男。」

「え、どいつっすか?」

 須藤が目をつけたその男は、妙に"飢えた"目で歩いていた。そして首を何度も気怠そうに回しており、その様子は何か大きな不安を須藤に与えてみせた。

「……加賀、行くぞ。」

「え、はいっ!」

 パトカーを降り、その男へと近づく二人。

「ちょっとそこの」

 須藤が声をかけようとしたその時、男が突如として前方の群衆に向かって駆け出した。そして、その手にはサバイバルナイフ。男は何かをとても不快に思っているような、そういう狂気的な表情をしていた。

「まずい!」

「須藤さん、俺が!!」

 男の行手を阻もうと、前に出る加賀。しかしそいつは、なんの躊躇いもなく彼の喉笛をナイフで切り裂いた。

「……あれ?」

 まるで、時間が止まったようだった。自分の身に何が起きたのか分からぬまま倒れていくバディを目の当たりにして、須藤は思わず声をあげた。

「加賀!!」

 辺りに鮮血が飛び散り、駅前は瞬く間に地獄絵図と化した。悲鳴をあげ逃げ惑う人々を、誰とも構わず切り裂いていくその男。しかしその時、須藤は男を止めようと直ぐに動くことが出来なかった。

「加賀、しっかりしろ……死ぬな……!」

 血が流れ続ける加賀の傷口を、持っていたハンカチで抑え続ける。しかし、その血が止まる事は無い。

「す……ど……さ……」

 何かを伝えようと、加賀が必死で口を動かした。

「……どうした、加賀。なんて言いたいんだ。」

「……」

 そのまま、加賀は逝った。後の事はあまり覚えていない。必死で男を組み伏せ、拘束。そうしてその身柄を完全に押さえた時、須藤の周りは血の匂いで溢れかえっていた。須藤は叫んだ。刑事としての自分を優先出来なかった後悔、自分よりも若く未来あった後輩に降りかかった理不尽への怒り、自らの責任を果たせず多くの被害者を出してしまったという恐怖。様々な感情がぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような叫びであった。そうして叫ぶ須藤の声を聞きながら、その男は確かに笑っていた。



〜二〇〇二年三月二十五日・午後四時"霊園内・加賀友之の墓前"〜

 加賀の墓に手を合わせ、須藤は改めて浅倉を逮捕する事を心に誓った。

(……浅倉。奴を捕まえ、俺はお前と再びバディを組む。……その為に。)

 コートの内ポケットから、自身のカードデッキを取り出す。——須藤の脳内に、戦いの始まりを告げる不協和音が鳴り響いていた。

—次回、『第十二話:不穏な協定』—

〜続〜

仮面ライダー龍騎 〜第十一話〜

仮面ライダー龍騎 〜第十一話〜

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-19

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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