霊能探偵・芥川九郎のXファイル(80)【魔界滞在記・終章編】
第1章 人間界への帰還前夜
魔法探偵・アークライト(芥川)は、とうとう人間界へ帰還することになった。そのために彼は前日までに、世話になった魔族の友人・知人との別れのあいさつを済ませてきたのだ。
スミス(暗黒剣士)「アークライト殿。ようやく故郷の人間界へ帰ることができますね。」
アークライト(芥川)「うん。スミス君のおかげで、ここまで生き延びるとこができた。君には本当に感謝している。君はあくまでも、最後まで僕のことを『アークライト殿』と呼ぶんだね。」
アークライト(芥川)はそう言って、愉快そうに笑った。二人はリバーサイドにあるスミス(暗黒剣士)の家で語らっていた。
スミス(暗黒剣士)「あなたは何度も私の命を救ってくれました。『アークライト君』なんて呼べません。」
アークライト(芥川)「僕は寿命が80年前後、せいぜい100年の人間族だ。君ら魔族は数百年も生きるんだろう?君の方が絶対、年上だと思うけどね。」
スミス(暗黒剣士)「種族の違いによる寿命の違いは、関係ありません。」
第2章 想い出がいっぱい
アークライト(芥川)は魔界の苦いコーヒーを一口飲んでから、話題を変えた。
アークライト(芥川)「君のそういう頑固なところは長所であり、短所なんだけどね。ところで、この5年間で一番思い出深い出来事は何だい?」
スミス(暗黒剣士)「魔王様に拝謁することができたことです。」
アークライト(芥川)「王都に行った時のことだね。鉄仮面及びその一味の暗躍を調査して・・・あの事件の真相には、非常に驚いたよ。君は『魔王様のご尊顔を拝むことができた』と言って、喜んでいたね。」
スミス(暗黒剣士)「アークライト殿はどうなんです?何が一番印象深い出来事なのですか?」
アークライト(芥川)「どれと言われても・・・今となっては、全てが懐かしい思い出だよ。」
今度はスミス(暗黒剣士)がコーヒーを一口飲んでから、話題を変えた。
スミス(暗黒剣士)「アークライト殿は結局、旅の目的を成就できたのですか?」
アークライト(芥川)「目的も何も・・・魔界に送還されてから毎日、生き延びるのに必死だった。」
スミス(暗黒剣士)「アークライト殿は人探しをしておられましたが、どうなったのですか?」
アークライト(芥川)「夢野さんと榊原博士のことか。僕と一緒に魔界に来たはずの夢野さんは結局、見つからなかった。多分、送還先が海の中で溺れ死んだか、森の中で魔獣に食われたか、砂漠でのたれ死んだか・・・」
スミス(暗黒剣士)「その方も魔法を使えるのなら、まだ生きておられるかもしれませんね。今もどこかで、リヴァイアサンを探して・・・」
アークライト(芥川)「夢野さんは病魔に侵されていたから、どのみちもう亡くなっているだろう。」
第3章 魔獣博士・榊原
アークライト(芥川)はまたコーヒーを一口飲んでから、会話を続けた。
アークライト(芥川)「榊原博士には会えたけど、彼は最後まで秘密主義を貫いたね。王都でそれなりの地位を築いているようだったけど、結局、彼の立ち位置や魔界におけるコネクションは謎のままだ。」
スミス(暗黒剣士)「私は根っからの田舎者ゆえ、王都ではアークライト殿のお役に立てませんでした。」
アークライト(芥川)「そんなことないよ。榊原博士が僕たちよりも、一枚上手だったということさ。彼は人間界でも相当な長老格なんだ。でも、まさか彼がリクリュー枢軸卿と裏でつながっているとは、夢にも思わなかったよ。」
スミス(暗黒剣士)は冷めたコーヒーを飲み干してから、意を決したようにアークライトに言った。
スミス(暗黒剣士)「アークライト殿は昔、問題が全て片付いたら、リバーサイドから最寄りの地方都市・イクリプスで生活したいと言っておられました。人間界に戻るのは延期して、イクリプスに行きませんか?」
アークライト(芥川)「いや。これ以上は延期できないよ。実は、人間界に戻る方法は数年前から知っていたんだ。」
スミス(暗黒剣士)「なんと!?それなのにあなたは、私やリバーサイドの村長、そして仲間たちのために・・・」
アークライト(芥川)「スミス君。僕なんかのために涙を流す必要はないよ。君たちのためでもあったけど、僕のためでもあったんだからね。この魔界で生き延びて、情報を収集するために・・・」
第4章 人間界トンネル
翌日、アークライト(芥川)とスミス(暗黒剣士)は、リバーサイド最寄りの荒野へ向かった。
スミス(暗黒剣士)「アークライト殿のゴール地点は、スタート地点と同じだったのですね。」
アークライト(芥川)「異界トンネルを開通できれば、どこでもいいんだけどね。この地方で条件が整いやすいのは、あの荒野なんだ。」
アークライト(芥川)とスミス(暗黒剣士)は、目的地に到着した。
アークライト(芥川)「全ては、ここから始まった。」
スミス(暗黒剣士)「魔獣と戦っていた私を、アークライト殿が火炎魔法で助けてくれたのが、昨日のことのように思い出されます。」
アークライト(芥川)「スミス君。感傷に浸っている暇はないよ。さっさと終わらせよう。君は日が暮れる前に、リバーサイドへ帰らなければいけないからね。」
スミス(暗黒剣士)「承知しております。」
アークライト(芥川)は異界トンネルを開通するため、精神を集中した。そして、体中にみなぎる霊力、魔力、妖力を感じながら、禁忌の秘術を繰り出した。
ズバァアーーーーン!!!
異界トンネルが開通した。
スミス(暗黒剣士)「これが・・・」
アークライト(芥川)「人間界から覗けば魔界トンネルだ。しかし、魔界から覗けば・・・人間界トンネルとでも呼ぶべきか。」
スミス(暗黒剣士)「アークライト・・・いや、芥川殿。さようなら。お元気で。」
芥川「うん。スミス君、ありがとう。名残惜しいけど、トンネルが閉じる前に行かなければ・・・スミス君、それではまた!」
芥川はトンネルに入ると、振り向かずに前へ進んだ。
芥川「ありがとう。さようなら。スミス君、みんな・・・」
そうつぶやく芥川の目には、いろいろな感情が混じった涙が溢れていた。
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