仮面ライダー龍騎 〜第九話〜
《第九話:初陣'》
【登場人物】
・城戸 真司(二十四)……新米ジャーナリストで、少々抜けたところがあるお人好しの青年。ドラグレッダーと契約し、『龍騎』となる。
・秋山 蓮(二十四)……無愛想で口も態度も悪いが、内には確かな情を秘めている男。仮面ライダー『ナイト』に変身する。
・手塚 海之(二十四)……蓮の古くからの友人で、彼の良き理解者。仮面ライダー『ライア』となって、龍騎・ナイトと共闘する。
・神崎 優衣(十九)……蓮に協力する少女で、ゲームマスターである神崎士郎の妹。兄が多くの人間を傷つけている事に、思い悩んでいる。
・芝浦 淳(二十一)……ゲームに匹敵する刺激を求めてライダーバトルに参加した青年。高見沢の指示で、蓮と手塚を誘き出す為に優衣を誘拐した。メタルゲラスと契約し、仮面ライダー『ガイ』に変身する。
・北岡 秀一(三十)……黒を白にすると言わしめる、自称スーパー弁護士。人権団体からの"寄付金"に釣られ、浅倉の弁護を担当した。仮面ライダー『ゾルダ』に変身する。
・浅倉 威(二十五)……自らの衝動に任せて通行人を次々と殺傷した凶悪犯罪者。神崎士郎の導きにより、収監中の拘置所から脱獄。『王蛇』となる。
【十五】
〜午後四時三十一分・ミラーワールド"ファミリーレストラン・地下駐車場"〜
「それじゃあ、そろそろトドメといきますか!」
ガイが、自分のバイザーにカードを装填した。
<FINAL VENT>
コンクリートの壁を突き破ってやってきたメタルゲラスが、額の大角を突き出しながら突進を始める。ガイもその動きに合わせて跳ぶと、メタルホーンに備わった大角を前方に突き出しながら突進を続ける契約モンスターの頭上に飛び乗った。2つの大角が勢いを増し、怯んで動けない龍騎に突撃する。
「終わりだよ、龍騎さん!」
「く……クソったれ……!!」
<SWING VENT>
突如鳴り響いたその電子音と共に、龍騎の身体を紅いムチが巻き取って致死の直線上から逃した。対象を失い、そのまま前方の壁に激突するガイ。
「待たせたな、二人とも。」
「……手塚!」
ライアから差し出された手を取り、立ち上がる龍騎。その様子を見ながら、ナイトも立ち上がった。
「……優衣は?」
「大丈夫、無事だ。……それにしても。」
ライアは、前方の戦場に目をやった。そこには戦い続ける王蛇とゾルダ、さらに体勢を立て直したガイが居る。
「まさに勢揃い、という感じだな。」
「あぁ……厄介な事になった。」
「くそ。なんとかして止めないと……」
そんな三人に対して、再びガイが向き直り悪態をつく。
「全く、無粋な事してくれちゃってさ……いいよ。三対一、燃えるじゃん。」
彼はそう言いながら、メタルホーンを構えた。三人も各々の武器を構えながら、臨戦態勢をとる。
「なぁ、お前……ゲームとか言うのやめて、俺達と一緒にモンスターと戦おうぜ。まだ若いんだし……。」
龍騎の申し出を受け、ガイは笑った。紛れもない、嘲笑だった。
「龍騎さんってさぁ……ほんとバカだよね。そんな話、聞く訳ないじゃん。じゃ、続きをやろうか。」
<FINAL VENT>
それはガイが発動したのでも、ましてや龍騎、ナイト、ライアが発動したものでもない。彼らから少し離れた戦場……王蛇と対峙し続けていた、ゾルダのものだった。バッファローを模した二足歩行のロボットのようなモンスター『マグナギガ』が、地面を割いて契約主の前に立つ。
「いい加減、面倒くさいんだよね。」
その背部にゾルダがマグナバイザーをセットすると、マグナギガの身体中に備わった装甲が"開き"、無数の砲門が顔を覗かせた。
「……まずい。」
危険を察知した王蛇が、龍騎達の方へと走り出した。しかし——
「無駄だ。」
ゾルダが引き鉄を引いた次の瞬間、マグナギガの全身からおびただしい数の弾頭が発射された。激しい弾幕がその一帯を漏れ無く吹き飛ばし、それが引き起こした強大な爆裂に巻き込まれる面々。ゾルダはその様子を、ただ眺めていた。
「こういうごちゃごちゃした戦いは、好きじゃない。」
土煙に塗れた戦場を背にして、ゾルダはミラーワールドを後にしたのだった。
*
*
*
ゾルダの使った技『エンドオブワールド』は、凄まじい威力だった。その場に出来た巨大なクレーターの中心で、戦友二人の無事を確かめる龍騎。
「……痛てて。蓮、手塚……無事か?」
「あぁ、俺はなんとか……手塚は?」
「俺も……大丈夫だ。」
三人が受けたダメージはとても大きく、誰もが立ち上がれずに膝をついていた。そしてそんな戦士達の眼前に立ち、見下ろす影が一人。
「てめぇ……ガイ……!!」
ガイが、そこに立ち尽くしていた。しかし何か様子がおかしい。
「え……?」
そして、龍騎は虚を突かれた。ガイの身体が力無く放られ、なんとその影から王蛇が姿を現したからだ。
「よぉ、龍騎。」
王蛇はボロボロの三人を嘲笑うと、自身の召喚機にカードをセットした。
<FINAL VENT>
「くそっ、お前……」
なんとか構えようとする龍騎。しかしやはり、身体は自由に動かない。
「動け……動けよ!」
「……ふん。」
そんな龍騎を尻目に王蛇は、ガイに狙いを定めた。自らを喰らおうとする狂人を前にして、悔しさを滲ませるガイ。
「てめぇ……俺を盾にしやがって……なんでだよ……。」
ゾルダの必殺の一撃が放たれた、あの時。王蛇はガイの身体を盾にする事で、ただ一人無傷での生還を果たしたのだった。満身創痍のガイが振るったメタルホーンを悠々と躱し、その身体を片腕一つで押し倒す王蛇。
「知るか。近くに居た、お前が悪い。」
呼び出された大蛇型の契約モンスター『ベノスネーカー』が勢いよく這ってくるのと合わせ、王蛇が渾身の跳躍を見せた。そしてベノスネーカーの吐き出した酸液をスライダーのように利用し、勢いをつけながらガイに跳び蹴りを連続で叩き込む。
「うわぁぁ……!!」
断末魔の叫びがミラーワールドに響きわたり——そして、ガイは爆散した。
「ああ、こいつは最高だ……イライラがすっかり消えた。」
快楽を享受する王蛇を前に、龍騎はついに力を振り絞って立ち上がった。
「てめぇ、なんでそんな躊躇いなく……今、人が一人死んだんだぞ。なんとも思わねぇのかよ!」
「……ライダーってのは、こういうもんなんだろ。違うのか?」
「お前、何言って……」
その王蛇の発言から、龍騎は妙な純粋さを感じ取った。この浅倉という男は、人を殺すことを悪だと思っていない。それは、龍騎には到底理解し得ない思考だった。
「ふざけんなよ……俺は、お前を絶対に許さない……!!」
そう捲し立てる龍騎に対して、王蛇は何かを嗅ぐように鼻を動かした。
「……ハッハハハ……! そうか、お前ファミレスに居たバカか。神崎から聞いてるぜ……龍騎。俺とお前は、この世界の"異分子"なんだってよ。」
「な、何言ってんだ……。」
「あぁ……横のお前、コウモリの奴。」
王蛇は未だ立つ事の出来ないナイトを指差すと、こう告げてみせた。
「お前からは虚勢の匂いがする……強がるなよ。まだ一人も、殺してないんだろ?」
「……!!」
「え。そうなのか、蓮?」
「……蓮、耳を貸すな。」
龍騎とライアの声は、ナイトには届かなかった。
「……お前は。お前はどれだけ倒したんだ。」
ナイトの絞り出したような問いかけに、王蛇は噛み締めるように答えた。
「今ので一人目だ。……残りも全員、俺が殺す。」
「……お前は、悩まないのか。戦うという事を……。」
「なぜ悩む必要がある? 俺達は殺し合って最後の一人になる。その為だけにライダーになったんだろうが。」
迷いなく、王蛇はそう答えた。そして何かに打ちのめされた様に、俯くナイト。
「そうか……そうだな……。」
「おい、蓮……?」
龍騎の呼びかけに、ナイトは応えなかった。そしてその日、秋山蓮は姿を消した。
〜二月二十六日・午後十一時二十三分"都内・高架下"〜
「浅倉! 止まれ!!」
警官達が自分を包囲する姿を、浅倉はとても面倒に思いながら眺めていた。
「ったく……警官ってのはつくづく俺をイラつかせるな……。」
ベノスネーカーに彼らを喰わせようと、デッキに手を伸ばす。しかしそれより先に、警官達は謎の襲撃者の格闘によって地に伏された。
「ぐはぁ……! くそ、仲間がいたのか……須藤さんに……連絡を………。」
最後まで意識を残していた警官も気絶し、互いに睨み合う浅倉とフルフェイスメットの襲撃者。
「お前……誰だ?」
メットを取った無愛想な男が、こう告げた。
「仮面ライダーナイト。この前の、虚勢を張ったコウモリ野郎だ。」
—— 仮面ライダーガイ死亡。残るライダーは、あと十人。——
——次回、『第十話:別離』——
〜続〜
仮面ライダー龍騎 〜第九話〜