仮面ライダー龍騎 〜第八話〜

《第八話:享楽者(ゲームメイカー)

【登場人物】

城戸 真司(きど しんじ)(二十四)……新米ジャーナリストで、少々抜けたところがあるお人好しの青年。ドラグレッダーと契約し、『龍騎(りゅうき)』となる。

秋山 蓮(あきやま れん)(二十四)……無愛想で口も態度も悪いが、内には確かな情を秘めている男。仮面ライダー『ナイト』に変身する。

手塚 海之(てづか みゆき)(二十四)……蓮の古くからの友人で、彼の良き理解者。仮面ライダー『ライア』となって、龍騎・ナイトと共闘する。

神崎 優衣(かんざき ゆい)(十九)……蓮に協力する少女で、ゲームマスターである神崎士郎の妹。兄が多くの人間を傷つけている事に、思い悩んでいる。

芝浦 淳(しばうら じゅん)(二十一)……ゲームに匹敵する刺激を求めてライダーバトルに参加した青年。仮面ライダー『ガイ』に変身する。

北岡 秀一(きたおか しゅういち)(三十)……黒を白にすると言わしめる、凄腕の弁護士。浅倉の弁護を担当した。仮面ライダー『ゾルダ』に変身する。

浅倉 威(あさくら たけし)(二十五)……自らの衝動に任せて通行人を次々と殺傷した凶悪犯罪者。神崎士郎の導きにより、収監中の拘置所から脱獄。『王蛇(おうじゃ)』となる。

【あらすじ】

 浅倉によって呼び出された北岡と、偶然居合わせた真司。彼ら三人がミラーワールドで火花を散らす一方で、蓮と手塚も新たなライダーと対峙していた。六人ものライダーが一堂に会する混戦が、間もなく始まろうとしている。

【十三】

〜数時間前"喫茶花鶏・店内"〜

 名林大学経済学部に通う二年生、芝浦淳。叔父の高見沢逸郎から命を受け、現在彼は優衣が経営する喫茶店へとやって来ている。

「芝浦さん……だったよね。私に兄の事を聞きたいって話だったけど。」

 優衣が出したホットミルクを飲み終え、語り出す芝浦。

「はい。俺、最近ライダーになったばっかで。いろいろ聞いておきたいんすよ、このゲームの主催者について。」

「ゲーム?」

 芝浦は、名林大学のネットゲームサークル『マトリックス』に所属し、趣味の一環でゲームを作るいわゆる"オタク"だった。

「はい。実は趣味でネットゲーム作ってるんですけど、ライダーバトルもその参考にならないかなって。それで、ライダーになろうって決めたんです。」

「そう……なの……。」

 あからさまに、優衣の態度が変わった。きっと今語った想いをバカにしているのだろうと、芝浦は思った。

〜〜またゲームなんかやって……そんなくだらないもの、やるんじゃない!〜〜

〜〜淳。あなたは立派な大人になるんだから、ゲームなんて子供の遊びはいい加減卒業するのよ。〜〜

〜〜淳、お前ゲームほんと下手くそだよな。クソはゲームすんなよ、邪魔だから。〜〜

 皆、自分を否定する。しかしこのライダーバトルに勝ち残れば、そんな風に自分やゲームを見下した周りの奴らを見返してやれる。芝浦はそう信じていた。

「それで、優衣さん。」

「ん?」

「ごめん、あんたにはエサになってもらうよ。」

 指をパチりと鳴らす。するとその合図に反応し、芝浦が契約した二足歩行のサイ型モンスター『メタルゲラス』が鏡から姿を現した。その頭部に備わった一本の大角が、優衣の右腕に傷をつける。

「っ……!」

 流血した右の二の腕を押さえながら、優衣は芝浦を睨みつけた。しかしそんな少女の抵抗も虚しく、メタルゲラスは瞬く間にその華奢な肉体を抱え上げるとミラーワールドへと消えたのだった。

「……よし。あとは、待つだけだな。」

 それから花鶏にやってきた蓮と手塚に次第を伝えるまで、十分も掛からなかった。全ては、芝浦の思い通りに進んでいた。



「貴様、目的は何だ。優衣を何処へやった。」

 恐ろしい剣幕で、芝浦を問い詰めているこの男。コイツは秋山蓮といって、ライダー名はナイトと言うらしい。

「いやぁ。実は今さ、ちょっと面白い戦いが始まっててね。アンタらもどうかなーって、誘ってみる事にしたんだよね。」

「それと優衣ちゃんを攫う事に、何の関係があるんだ。」

 冷静に疑問を投げかけるこの男は手塚海之。ライダー名はライアで、高見沢曰く「無駄に頭の切れる"厄介者"」とのことだ。

「いやー、そこの怒ってる人……蓮さんはともかく。手塚さん……あんたにはこれくらいしないと、また裏をかかれるんじゃって思ってさ。」

「……高見沢の差し金か。」

「まぁとりあえず、ついてきてよ。大丈夫、優衣さんも其処にいるからさ。」

 余裕を持った足取りで二人について来るように促しながら、芝浦は店の外に出た。そして三人のライダーが今、王蛇・ゾルダ・龍騎のいる戦いの場へと赴こうとしていた。

〜午後三時四十分・ミラーワールド"ファミリーレストラン・地下駐車場"〜

「痛ってぇな! 何するんだよ!!」

 先程まで殺し合っていたとは思えないほど息の合った同時攻撃を受け、龍騎は痛む身体を抑えながら二人に抗議した。

「だって……なんかお前、ウザいし。なぁ浅倉?」

「あぁ……コイツは俺を、どうしようもなくイライラさせる。」

「そ、そんな理由で……お前らなぁ……!!」

「「黙れ、バカ。」」

「んなっ……!?」

 憤る龍騎を他所に、お互いの武器を構え直す王蛇とゾルダ。二人はダメ押しと言わんばかりに龍騎の顔面を同時に殴りつけると、そのまま戦闘を再開した。

「ちょ、やめろ……!!」

「おー、派手にやってるなぁ。」

「……!?」

 声のした方に振り向く龍騎。そこに立っていたのはナイトとライア、そしてサイを象った、ひと回り大きな銀色の鎧で武装したライダー、『ガイ』であった。

「二人とも……なんで此処に。ていうか、アンタ誰?」

 ガイはつかつかと龍騎に歩いて近づくと、その顔面を思いきり殴りつけた。

「ごはぁ……!? クソ、なんで今日はこんなに殴られるんだよ……。」

「知らないよ、バーカ。」

 ガイは痛がる龍騎の様子を鼻で笑うと、左肩に装備された肩アーマー型召喚機『メタルバイザー』のスロットにカードを投げ入れた。

<STRIKE VENT>

 鋼犀の頭部を模した武器『メタルホーン』が、その右腕に装着される。ガイはメタルホーンの先端に備わった赤い大角を勢いよく振るうと、龍騎の身体を袈裟掛けに削いだ。

「ぐあぁ……!」

 たまらず膝をつく龍騎。そんな彼を、更なる猛攻が襲った。

「……お前まで!?」

 それは、ナイトのダークバイザーによる一太刀だった。

<SWORD VENT>

 龍騎も咄嗟にドラグセイバーを呼び出し、応戦する。二人の刃が火花を散らしながら交わり、鍔迫り合いが始まった。

「おい、なんでいきなり襲ってくんだよ!? ……お前はともかく、あの手塚が静観してるだけなんておかしいだろ。何がどうなってんだよ!」

「……優衣が人質にとられた。あいつの無事を確認するまでは、俺達はあのガイって奴に従うしかない。今は耐えろ。手塚がきっと優衣を助け出す。」

「クソッ。そういう事かよ……!!」

 その場から飛び退き、龍騎は再度カードを装填した。

<GUARD VENT>

 両肩にドラグレッダーの腹部を模した大盾『ドラグシールド』を装備し、ナイトの剣撃を受け止める。その太刀筋から、ナイトが敢えてシールドに弾かれるような攻撃を仕掛けていると龍騎は悟った。

「いいぞーやれやれー。って、あれ? 手塚さん何処行ったんだろ……ま、いっか。そろそろ俺も参加しよっと。」

 後方でガヤに徹していたガイが、メタルホーンを振り下ろした。しかしその矛先は龍騎ではなく、ナイト。その背中を、ガイのメタルホーンが抉る。

「ぐあぁっ……!!」

「蓮! ……てめぇっ!!」

 怒りに駆られ、ドラグセイバーをガイに振り下ろす龍騎。しかしそれは、メタルホーンの大角によって受け止められてしまった。

「はぁ……だってヌルい戦いしてっからさ。せっかく面白いゲームの舞台を用意してやったってのに!!」

「ふざけんな! この戦いはゲームなんかじゃねぇ……ただの殺し合いだろうが!」

 ドラグセイバーを持つ腕により一層の力を込める。それはメタルホーンを遠くに弾き飛ばし、ガイの胴体を無防備に曝け出してみせた。

「おりゃああっ!!」

 そこに渾身の一太刀を浴びせる。それはガイの装甲を強く削り取り、彼に膝をつかせる……はずだった。

<CONFINE VENT>

 ガイがバイザーに装填したそのカードによって、龍騎のドラグセイバーは瞬く間に"消失"した。

「……えっ!?」

「知ってた? カードにはこういう"無力化系"のもあるんだ。」

<STRIKE VENT>

再びガイの右腕に装備されたメタルホーンが、龍騎の腹部を薙いだ。

「ぐはぁ……!」

「で、カードは一枚だけじゃない。覚えときなよ。」

 ガイが、マスクの下で得意げに笑っていた。

〜午後四時十分・都内"某ファミリーレストラン・倉庫内"〜

「優衣ちゃん……怪我は無いか?」

「……うん、どこも怪我してないよ。大丈夫。」

 手足を縛られた優衣の拘束を、手塚は丁寧に解いた。優衣の頬についた涙の跡を、見ないようにしながら。

「優衣ちゃん……もう大丈夫だ、安心してくれ。」

「……ありがとう。」

 そう溢した彼女は確かに安心したようだったが、同時にとても大きな罪悪感を抱えている様子だった。

「優衣ちゃん……君が責任を感じる事じゃない。この戦いを仕組んだのは君じゃなくて、君のお兄さんだ。」

 はっとしたように、優衣が顔をあげた。そして、とても悲しそうな表情で語った。

「ありがとう、手塚くん。でもね、私には分かる……なんとなくだけど。お兄ちゃんは、私の為にこのライダーバトルを(おこ)した。火事で両親を失った私にとって、ただ一人の家族……。あの優しかったお兄ちゃんが、こんな酷い事をするのにはきっと理由がある。私が関わる、何か。だから私はお兄ちゃんに会って、あの人を止めないといけない。その為に私に真相を教えてくれた、蓮と手塚くんと一緒にいるんだって。……ごめんね、急にこんな。」

「……いや、いいんだ。」

 手塚は思い出していた。蓮と一緒に初めて優衣と出会ったあの日。彼女に、その兄が引き起こした事を伝えた、あの日の事を。

「優衣ちゃん、俺は戦いに戻る。でもそれは君の所為じゃない。確かにきっかけは君のお兄さんかもしれない。でも、最後に戦う事を決めたのは紛れもない……俺達なんだ。」

「……手塚くん。」

 そう。全ては蓮を孤独にさせまいと、デッキを受け取ったあの日から始まった。手塚は友人として、また同じライダーとして彼を支え続ける。それは、これからもずっと変わらない。決意を新たにし、手塚は戦友達の待つ戦場へと向かった。

——次回、『第九話:初陣'』——

〜続〜

仮面ライダー龍騎 〜第八話〜

仮面ライダー龍騎 〜第八話〜

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-16

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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