霊能探偵・芥川九郎のXファイル(70)【砥部の化け狸騒動編】
第1章 砥部の化け狸騒動
松山の霊能探偵・芥川九郎は友人の夏目、猫田と共に、砥部の山奥へ向かっていた。夏目半兵衛は一流の法術師である。猫田虎吉は芥川が更生させた化け猫で、今は松山市内でアルバイトに勤しんでいる。
芥川「砥部町に行くのは久しぶりだなぁ。」
夏目「砥部町と言っても、これから行くのは山あいの集落だろう?」
車を運転する芥川と助手席の夏目は会話を続けた。
芥川「うん。化け狸がお金や食べ物のために、人を化かしたり騙したりするそうな。」
夏目「今度は砥部の山奥で化け狸退治か。」
芥川「せっかく朝から砥部の山へ行くんだから、存分にピクニックを楽しもう。」
夏目「やれやれ。芥川君がまた、おかしなことを言い出した。妖怪退治が目的だろう。」
芥川「僕はちゃんと、3人分のおにぎりを用意してきたよ。夏目君もちゃんと、サンドイッチを用意してきてくれたかい?」
夏目「それは用意してきたよ。君の指示だし、砥部の山奥で都合よくコンビニが見つかるとは限らないからね。」
芥川は後部座席の猫田に話しかけた。
芥川「猫田君もちゃんと、おかずを買ってきてくれたよね?」
猫田「はい!これが芥川さんの唐揚げ、これが夏目さんの唐揚げ、これが私の唐揚げ、これが食べ足りなかった時のための予備の唐揚げ、これが・・・」
芥川「猫田君、ちょっと待ってくれ。まさか渡したお金を全部、唐揚げに・・・」
第2章 山あいの集落
助手席の夏目は、後部座席の猫田が買ってきたおかずをチェックした。
夏目「うん。全部、唐揚げだね。」
芥川が怒って言った。
芥川「お前、なんで唐揚げばっかり買ってきたんだ!卵焼きとかコロッケとか、ハンバーグとか魚とか、いろいろ買ってくるもんだろう!!」
猫田「私はもともと猫なので、唐揚げが大好きで・・・」
芥川「もともとも何も、お前は今も猫だろう!!!」
夏目「まぁまぁ。唐揚げでいいじゃないか。おいしそうだよ。それよりも芥川君。ちゃんと運転に集中してくれよ。」
芥川の車は1時間弱で、砥部の山間部にある集落に到着した。
芥川「さぁ、着いたぞ。さっそく山に登り、頂上でお弁当を食べよう。」
夏目「いや。意外と早く着いたから、先に化け狸の調査をしよう。妖気を感じる。近くにいるよ。」
芥川「夏目君は仕事熱心だね。僕に言わせれば、こんな田舎に住んでいる方が悪いんだよ。妖怪が怖いなら、市街地に住めばいいだろうに。」
夏目「・・・僕は芥川君とそんな議論をするために、ここまで来たんじゃないよ。さぁ、行くよ。」
芥川「やれやれ。猫田君、先に妖怪退治だ。」
猫田「分かりました!」
芥川は妖気の探知に集中する夏目の指示に従い、車で行けるところまで山道を登っていった。芥川は近くにあった広い路肩に駐車した。車を降りた三人は、最寄りの登山口から細い山道を登っていった。
第3章 化け狸逮捕劇
三人はとりとめもない会話をしながら、ハイキングを続けた。しばらくしてから、先頭の夏目が立ち止まった。
夏目「しまった。逃げられたみたいだ。」
芥川「確かに、妖気が消えてしまったね。夏目君が探知に失敗するなんて、珍しいね。河童の川流れ・・・いや、猿も木から落ちるかな?山だけに。」
夏目「冗談を言っている場合じゃないよ。とりあえず、引き返そう。最初から探知をやり直す。」
芥川「了解!」
こうして三人は山道をそのまま引き返し、登山口に戻った。目ざとい猫田が、芥川の車を指差して言った。
猫田「芥川さん、大変です!誰かが車に侵入して、何かやってますよ!!」
夏目「本当だ!こんな山奥で自動車荒らしか!?」
芥川「大変だっ!!」
三人は車に駆け寄った。車内の人物は三人に気付き、車から飛び出した。その瞬間、女は狸の姿に変化した。
夏目「芥川君!噂の化け狸だ!!」
芥川「猫田君!際(きわ)まで追い立てろ!!」
猫田「分かりました!!」
猫田は猫の姿に変化し、狸を追い立てた。逃げ回っていた狸はやがて、芥川が張った結界の際に頭をぶつけ、気絶してしまった。
第4章 化け狸騒動の結末
夏目は車内をチェックした。
夏目「芥川君。彼女、おにぎりもサンドイッチも唐揚げも、ほとんど食い散らかしてしまったよ。」
芥川「猫田君、君だろう?車のドアをロックし忘れたのは。」
猫田「・・・ちょっと、分かりませんニャア。」
芥川「都合が悪い時だけ語尾にニャアを付けて、ごまかそうとするんじゃねーよ!お前は・・・」
夏目「芥川君、落ち着いてくれ。怪我の功名だよ。おかげで化け狸を捕獲できた。」
猫田「芥川さん、夏目さん。彼女、どうするんですか?」
芥川「窃盗罪の現行犯だ。あと砥部町民の話によると、詐欺罪もだ。連れ帰って裁判にかけよう。」
夏目「今度は化け狸裁判かい?君が裁判官で僕が検察官、猫田君が弁護人か。」
芥川「今回は役者がそろっているから、ちゃんと裁判できるね。」
夏目「・・・裁判なんてやるまでもないと思うよ。やる前から、判決が目に見える。」
こうして三人は、気を失った狸を連れて松山の事務所に帰った。夏目の言うとおり、結果は前回の化け猫裁判と同じだった。化け狸・狸原砥和子は、松山市内でアルバイトをすることになった。そして彼女は芥川の事務所に時々、遊びに来るようになった。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(70)【砥部の化け狸騒動編】