霊能探偵・芥川九郎のXファイル(64)【霊能忍者の狂気編】
第1章 伊賀への旅
名古屋の霊能探偵・芥川九郎は、友人の牧田と共に三重県の伊賀へ向かっていた。
芥川「名古屋から伊賀までは近いようで結構、遠いね。」
牧田「高速で1時半だけどね。まぁ、余裕をもって、2時間は見ておいた方がよいだろう。」
牧田は車を運転しながら、芥川に答えた。
牧田「伊賀は昔から忍者の里だと言われてきたけど、本当に本物の忍者がいるんだね。」
芥川「厳密に言うと、僕らが今回、調査するのは伊賀の忍者ではないんだけどね。彼女は東京出身らしい。」
牧田「東京の人間が忍者になるために、わざわざ伊賀に移住したということかい?」
芥川「彼女は東京の大学を卒業した後に、何をとち狂ったのか知らないけど、忍者になると宣言し、一人で縁もゆかりもない伊賀へIターンしたらしい。」
牧田「でも、霊能学会からの調査依頼ということは、その人、ただの忍者ファンではないんだろう?」
芥川「うん。どこかのタイミングで覚醒し、能力者となったようだ。忍者が霊能力を手に入れて、霊能忍者の爆誕というわけさ。」
第2章 霊能忍者・桃井
牧田の車は名古屋高速から伊勢湾岸自動車道を走り、三重県に入った。そして東名阪自動車道を亀山方面へ進み、亀山JCTから名阪国道に入り、目的地である伊賀市内に到着した。車は市街地を通り越し、山道を走り続けた。
牧田「噂のくのいちが鹿や熊を射殺しているという山は、この辺だね。」
芥川「うん。霊能忍者・桃井氏はこの辺で狩猟をしているらしい。」
牧田「桃井さんは、山で鹿や熊を狩っているだけなんだろう?なんでまた、霊能学会が調査に乗り出したんだい?」
芥川「それが、桃井さんは霊能力で大型の野生動物を射殺しているらしいんだ。銃と狩猟の免許とか狩猟者登録とか、正規の手続きをガン無視で。」
牧田「狩猟用の霊丸ライフルで野生動物を射殺しているのかな?」
芥川「彼女はただのハンターではないよ。霊能忍者だ。狩猟用の銃とか、そんなもの使わない。」
牧田「まさか彼女、手裏剣でも投げて狩りをしているのかい?」
芥川「そのまさかだよ。霊能力を込めた得物を投げて、獲物を狩っているらしい。」
牧田「そんなバカな!物理的にあり得ないだろう?」
芥川「物理学で説明できないから、超常現象なんだよ。」
第3章 伊賀の山
車を運転する牧田に芥川が言った。
芥川「霊気を感じる。この辺にいるかもしれないね。車を降りて山に入ろうか。」
牧田「了解。」
牧田は近くにあった広い路肩に駐車した。二人は車を降りて登山口を探した。
牧田「あそこに登山者用の入口があるよ。」
芥川「よし。あそこから登山開始だ。」
二人は山道を登りながら話を続けた。
牧田「霊能学会が、能力者界で腫物扱いされている芥川君に調査を依頼するなんて、どういう風の吹き回しだろう?」
芥川「ハハハッ。僕は別に、腫物扱いされているわけじゃないよ。まぁ、他の能力者が敬遠するような、危険な任務には違いないだろうね。」
しばらく歩いた後に、芥川が急に立ち止まった。
芥川「彼女、どこかにいるよ。殺気混じりの強烈な霊気を感じる。牧田君。僕の後ろから離れないように気を付けてくれ。」
牧田「うん、分かった。」
その時である。霊気を帯びた棒状の何かが、芥川の目の前をかすめ、近くにあった大木の幹に突き刺さった。
芥川「危ない!・・・何だこれは?」
牧田「・・・割り箸!?」
第4章 忍者認定と忍者協会
芥川は防御魔法を唱えた。霊気のバリアが二人の周りに張り巡らされた。
芥川「桃井さん!出てきてください。話し合いましょう。私は霊能学会から派遣された、霊能探偵の芥川です!」
芥川がそう叫ぶと、木の陰から霊能忍者・桃井が現れた。
桃井「名古屋の霊能探偵か・・・何の用だ?」
芥川「桃井さんが、狩猟の免許とか狩猟者登録とか、正規の手続きをしないで野生動物を射殺しているという苦情が上がってきたんです。」
桃井「私は銃とか、危険な道具を使用していない。そこの木の幹に突き刺さった割り箸だ。誰の許可も必要なかろう。」
芥川「でも、地元の人間が怖がっています。」
桃井「そう言われても・・・」
牧田は桃井に提案した。
牧田「伊賀市の忍者認定を受けて、忍者協会に登録されてはどうでしょうか?」
桃井「・・・なるほど。私は霊能力者である前に忍者だ。その提案に従うとしよう。霊能探偵殿。それで見逃してもらえるかな?」
芥川「私に異存はありません。伊賀の山奥で忍者と死闘を繰り広げ、命を危険にさらしたくはありませんから。」
第5章 霊能忍者の狂気
こうして今回は、牧田の提案によって問題は一旦、棚上げとなった。帰路に就いた牧田の車は、市街地へ向かって走っていた。
牧田「芥川君。せっかく伊賀まで来たんだから、少し観光していこうよ。」
芥川「そうだね。忍者博物館と伊賀上野城くらい、見て行こうか。」
牧田「桃井さんが話の分かる人でよかったね。」
芥川「非能力者の牧田君がいたからだよ。君がいなかったら、問答無用のバトルになっていた。」
牧田「そうかなぁ・・・」
芥川「彼女、割り箸で熊が殺せるんだよ。彼女がまかり間違って、あの割り箸で人を殺したとしても、警察は彼女を逮捕できないかもしれない。」
牧田「確かに・・・警察などの公的機関は、正式には超能力の存在を認めていないからね。」
芥川「凶器はこの割り箸ですって・・・検察も公判を維持できないだろう。」
牧田「なるほど。」
芥川「彼女は今、無敵の人状態だ。そういう人間が人と関わらずに、あんな山奥で暮らしていたら、そのうち本当に頭がおかしくなって、狂気の霊能シリアルキラーになりかねない。」
牧田「・・・芥川君。それは考えすぎだと思うよ。」
芥川「そうかなぁ・・・」
牧田の車は伊賀上野城に到着した。壮麗な石垣の上に白い天守がそびえ立つ、噂に違わぬ美しい城だった。
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