要子の冒険1
要子がひとりで狼男の群れを撃退した翌日、彼女は巨人と道連れになった。
身長が3メートルを超える猫背の巨人は、動きが緩慢だった。しかし足が長いおかげで、要子の自走カートの速度とうまい具合にあった。もとよりカートはビークルと違ってスピードは出ない。
巨人は聾唖者であった。コミュニケーションは身振り手振りと微弱なテレパシーでおこなった。口を利くのが物憂い要子は始めて自分にテレパシーの素質があることを知った。この能力がもっと発達することを望んだ。
草原に寝転んでいる知性を発達させて陸亀のミュータントと巨人は意思の疎通ができた。巨人はすぐ近くにミサイルがあることを知った。要子は巨人からミサイルのイメージを受け取った。
武器のあふれている世界だが、ミサイルは珍しかった。要子はデータベースでしか知らなかった。実物に興味があったし、なんの目的でそこにミサイルがあるのかも気になった。
巨人が指差す方向に向かって二人連れは進んでいった。
目的地に着くまえに巨人は倒れてしまった。意識を失って昏倒した。要子は驚いたが、なんとなく病気や怪我ではないと思った。微弱なテレパシーでそう感じたのだが、思い違いかもしれないと不安だった。しかし要子は巨人のケアの方法を知らない。要子の持ち出してきた医療キットが役に立つとは思えなかった。データベース端末を出して調べてみたが、巨人の情報は少なかった。
要子は巨人が意識を取り戻すのを待った。日が沈んで、朝になった。玩具のような頼りないセキュリティロボットを起動させて、要子も睡眠をとった。
無事に朝を迎え、巨人も無事に意識を覚醒した。
ふたりの道連れはミサイルを搭載したビークルにたどり着いた。要子が巨人を仰ぎ見たとき、激しい衝撃が彼女を襲い意識を失った。
青空の下、マットレスに寝かされていた要子は目を覚ました。ビークルの周囲に張り巡らされていたトラップにひっかかって高圧電流を受けたのであった。巨人は要子の隣に座っていた。彼も高圧電流を受けたようだが、意識を失うほどのダメージは受けなかったらしい。
ゴーグルに防塵マスクの男が要子が覚醒したのに気づき、近づいて見下ろした。ゴーグルをあげて挨拶をした。彼の名前はキョウといった。すぐにゴーグルを戻して、仲間の女にジェスチャーで合図をした。彼女も要子のところに歩いてきた。濃い灰色の女はパレットといった。
しばらくすると要子も回復して立ち上がれるようになった。巨人は座り込んだままだった。意識は失わなかったものの身体がつらそうだった。
4人は屋外にテーブルを出してともに夕食をとった。キョウとパレットのふるまってくれた食料は、ミサイル同様珍しいものだった。海洋生物を原料にしたものだった。
巨人は椅子に腰掛けず、じかに地面に座っていた。その巨体にもかかわらず、彼の必要なカロリーは通常サイズの人間とかわらなかった。基本的に代謝機能が不活発に作られているようだった。
要子の冒険1