あたたかいベタ

冷たい手首と一匹のベタが僕のもとに届いた
冷たい水の中に沈むあなたと
狭い箱の中で泳ぐそれを見て
幸せって何 そんなことを考えたんだ

死にたいと思わなくなった
何か大切なものを置き忘れてしまっても
人って変われるんだなぁ なんて
そんなふうに思えるようになったんだ

冷たい掌の上で泳いでいた
握りつぶされるその時を待っていた
冷たい掌でも握りしめたい
なんて今更ほざいてもな
「魚も死んだら冷たくなるのかな」
そんな独り言が青いヒレに反射した

ホットサンド
レンタルビデオショップ
無邪気なビーズのブレスレット
思い出すのはそんなことばかり
「昨日首を吊ったんだ」
「まだやってたの?」
笑い飛ばすあなたの笑顔ばかり

冷たい掌の上で泳いでいた
握りつぶされるその時を待っていた
冷たい箱から思い出を消去して
後悔先に立たず
なんて言葉クソの役にも立たないな
冷たい掌でも握りしめたい
なんて今更ほざいたら
また笑われてしまうかな

死にたいと思わなくなったんだ
何か取り返しのつかないことが起きても
時間って経つんだなぁ なんて
そんな当たり前のことに気付けたんだ

「魚にも体温があるのかな」
そんな独り言が青いヒレに反射した

あたたかいベタ

R.I.P.

あたたかいベタ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2026-06-29

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