還暦夫婦のバイクライフ 57
ジニー&リン、BSTRに参加する その6
5月5日、いよいよBSTR残り3つのスタンプを取りに行く。朝5時過ぎに起床したジニーは台所に立ち、コーヒーを淹れる。リンはすでに起きていて、洗いあがった衣服をベランダで干していた。
「お早うリンさん。コーヒー入ったよ」
「お早う。天気は悪くないわ。雨具どうする?」
「もっていかない。今日はいらないだろう」
「ガソリン入ってたっけ?」
「入ってないよ。24Hスタンドに寄って給油するつもり」
「わかった」
淹れたてのコーヒーを飲み、前日買ってあったサンドイッチをつまむ。それから準備を始める。
「ジニー、二輪車定率割引申請した?」
「昨日したよ。連休で休日割引が無くても適用されるのはありがたいな。何パーセント割引なのかは分からんけど」
「37%じゃないの?」
「ひょっとしたら7%だけかもね」
まさかのポイント還元じゃないよなとジニーは思う。ポイント還元だと、500P未満が期限切れで切り捨てられる可能性がある。たまにしか高速に乗らない人には何の恩恵もない。使う前に期限切れ無効は勘弁してもらいたい。
準備が整い、6時30分自宅を出発する。近所の24H営業スタンドに寄り、ガソリンを給油する。そこから松山I.Cまで走り、松山道に乗る。
「いつも通り入野P.Aで止まるよ」
「了解」
朝の高速道を制限速度で走ってゆく。連休中とあって、県外ナンバーの車が多い。時々仕事車と思われるバンが、すごい勢いで追い越してゆく。7時30分、入野P.Aに到着して駐輪場にバイクを止める。
「今日はバイクが多いね。さすが大型連休だわ」
「天気もいいしね」
二人はコンビニに寄り、お茶とおむすびを買う。それを持って、いつものベンチに向かう。そこからは瀬戸内の島々がよく見える。
「わあ、ジニー見て。島が雲の上に浮かんで見える」
「おお、本当だ」
海は濃いカスミがかかり、普段はよく見える本州側の山並みも全く見えない。島々は雲海の上に乗っかったように見えて、幻想的だ。
「あれって蜃気楼じゃない?」
「どうかな、なんとも言えないなあ」
二人は写真を撮りながら、飽きることなく景色を眺める。
お茶とおむすびで腹ごしらえして、8時15分入野P.Aを出発した。
「リンさん、川之江JCTから徳島道に入るよ」
「了解。どこまで走るの?」
「上板S.Aまで走る」
「上板?どこだっけ」
「藍住の手前くらい」
「あ~分かった」
「多分1時間くらい走った所」
「そ~うだね」
入野を出発して土居、三島川之江を通過して川之江JCTで高知徳島方面に向かう。その先の川之江東JCTで徳島道に乗り換える。ここからは片道1車線のため、80Km/h制限となる。池田から吉野川沿いになり、所々出現する追い越し車線でゆっくり走る先行車をかわし、9時20分上板S.Aに到着した。駐輪場にバイクを止め、ヘルメットを脱ぐ。
「ふう、着いた。所々の追い越し車線が無かったら走れんな」
「うん。危うく眠くなるところだった」
二人はベンチに向かう。ジニーは自販機でホットココアを見つけて購入する。
「半メッシュは体が冷える。結構寒いや」
「まだ夏じゃないからね」
ベンチに座り、暖かいココアを二人でシェアして、ゆっくりと休憩する。休んでいる間に何台かのバイクが入ってきたり出て行ったりする。
「う~ん。若者が居ない。みんな僕らみたいな年配者だ」
「若い子たちはバイクどころか、車も乗らないみたいね」
「車はともかく、バイクは完全に趣味の乗り物だからなあ。お金もそこそこかかるし、若い子たちは手を出さないのかな」
「そうねえ。お金かけなくても楽しい遊びが増えたからねえ。これも時代の流れでしょう」
リンに言われ、ジニーは自分の子供たちがスマホやパソコンで遊んでいる姿を思い出した。
「さて、行くよジニー。先は長いぞ」
「そうだな。行くか。まずは四方見展望台か。どこで降りるのが良いんだ?」
「う~ん、地図で見ると・・・鳴門I.Cかな。ナビ様に案内してもらおう」
「よろしく」
10時15分、準備を整えて上板S.Aを出発する。ナビに従い、徳島道から徳島JCTで北に向かい、鳴門JCTで高松道と合流する。鳴門I.Cで高速を降り、R11を北に向かう。
「ジニーその先を右折ですよ」
「了解」
二人は県道183号に右折する。
「これは鳴門スカイラインだな」
「これを道なりに行くと、四方見展望台があるよ」
「わかった」
道はずっと登りになり、やがて目的地に到着した。
「着いた。リンさん左側の駐車場に止めるよ」
「はい」
ジニーは左側の駐車場にバイクを止めた。その横にリンも止める。ヘルメットを脱いでバイクに固定する。
「まずはスタンプを獲って・・と」
スマホのアプリを呼び出し、スタンプを獲得する。
道の反対側が展望所になっている。二人は道を渡り、展望所から景色を眺めた。
「わあ!いい景色。ここ初めて来たけど、素晴らしい眺めだねえ」
「うん。鳴門は初めてだ。来たかいがあったな」
「島に囲まれて湾になってるのか。ジニーあのいっぱい浮かんでる小舟みたいのなんだろう?」
「あれはたぶん、釣りのいかだだと思う。有料で、渡しで乗るんだろう。チヌとか、ひょっとしたらマダイも釣れるのかな?」
「ふ~ん」
「さて、スタンプも獲ったし、次行こう」
「お~」
二人はバイクに戻り、再び走り始める。次の目的地は道の駅日和佐だ。鳴門スカイラインを駆け下り、大塚国際美術館を左に見ながら通過する。
「ここも一度は来てみたいね」
「なかなか思い付きが悪いけどねえ」
鳴門スカイラインを走り抜け、県道11号に乗る。少し走り、鳴門北I.Cから高速道に乗る。鳴門JCTで徳島道に乗り換えて南下し、徳島JCTで徳島南部道に入る。終点まで走り、県道129号に降り、県道120号とのT字路交差点を左折する。しばらく道なりに走り、千代が丸交差点を右折して県道16号に乗る。そこからR55に出てさらに南下してゆく。
「ジニーお昼どうする?」
「そうだなあ。ファミレスでもあれば入ろうか」
食べれる所を探しながら走ってゆくと、コメダ珈琲店を見つけた。
「リンさんコメダがある。あそこに行こう」
「オッケー」
二人はコメダ珈琲店の駐車場にバイクを乗り入れた。ヘルメットを脱いでバイクに固定する。
「12時前か。空いてたらいいなあ」
ジニーは駐車場の様子を見ながら、混んでないことを願った。
店内は7割がたの席が埋まっていた。
「多いな」
「うん。でも満席でもないね」
二人は待つこともなく案内されて席に着いた。
「何にしょっかなー」
メニューを見ながら悩んだ末、ジニーはナポリタンとホットコーヒー、リンはミートソースとアイスオーレを注文する。
昼食を取りながら1時間ほど休憩した後、再び走り始める。
「あ~おなか一杯。満足だ~」
「コメダさん、めったに行かないけど、たまに行くといいねえ」
「うん」
「リンさん、少し早いけど、この先で給油しとくよ」
「わかった。室戸まで行くとスタンド開いてるか分からないからね」
「ガソリンの心配しながら走るのは嫌だからなあ」
「この先スタンドあるの?」
「うん。コメダで休憩してるときに確認した。この先にアポロがある」
「開いてる?」
「営業中にはなってたよ」
ジニーの言う通り、スタンドの看板が見えてきた。二人はバイクを乗り付ける。
「いらっしゃい~」
ここはセルフではないようだ。愛想のいい店員さんが三人も出てきて、対応してくれる。2台ハイオク満タンで、約20L入った。
「どちらに行きますか?」
「すぐそこの交差点を右に行きたいのですけど、車が多くて難しいかな」
「それでしたらこの裏から駐車場をぬければ、その交差点の行きたい方向にまっすぐ出れますよ」
そう言って、店員さんがスタンドの裏口を案内してくれた。
裏口から交差点に出て、R55を横切り、県道28号に入る。しばらく道なりに走り、ローソンがある交差点を右折する。少し走った所にある徳島南部道に乗り、短い距離を走って県道22号へと下りる。その先の県道24号との交差点を右折して、どんどん南へと下ってゆく。やがてR55と合流し、JR牟礼線と並行して走り、日和佐道路へ乗り換える。終点まで走り、再びR55と合流して1Kmほど走ると、薬王寺がある。その向かいに目的地の道の駅日和佐がある。
「リンさん、到着です。薬王寺の向かいなんだな。前来たときは無かったがな」
「ジニー前っていつの話?」
「え~と、バイク屋さんツーリングに初めて参加した時だから、20年前か」
「そりゃ何も無いって」
「そうか」
二人は駐輪場を探して、ゆっくりと走る。
「あったけど・・難易度高いぞこれ」
少々狭いスペースに、ずらりとバイクが止まっている。
「ジニーどこに止めるんこれ?」
「う~ん、とりあえずそこにそのまま止めて。移動するから」
「わかった。あ、空いた。あそこに・・・・あ~~っ」
「何事!」
「・・・・危なかった。足が空振って、コケる所だったぁ」
何とか持ちこたえたリンは、そこにそのままバイクを止めた。ジニーは隙間に自分のバイクを止めて、リンのバイクに向かう。押し引きしながら向きを変え、空いているスペースにリンのバイクを止めた。
「リンさん良かったねえ。ここでこけたらみんなの注目の的だったよ」
「それはかんべんだね」
二人はヘルメットをバイクに引っ掛けて、お店に向かう。
「おっとその前にスタンプを」
ジニーはアプリを呼び出して、スタンプを獲得した。
「りんさん、獲れた?」
「獲れたよ。良し、後1個だ」
スタンプを獲った二人は、道の駅内をうろつく。売店でお土産を数点購入する。
「あ!ジニーいいもの見つけた」
「何?」
「いちごだいふく」
「おー、いいねえ」
ジニーは2個入りの苺だいふくを買った。店の外に出て、自販機で麦茶を買い、ベンチに座って休憩する。
「あ~甘いのが体にしみる~」
「リンさんお疲れだね」
「うん、疲れた」
「まだまだ先は長いよぉ」
「高知から高速でしょ?」
「うん。R33で帰るのはちょっと思い付きが悪いな」
「明日も休みだから、帰りが遅くなっても良いけどね」
「体力が持たん。ところで今何時?」
「14時10分」
「14時過ぎたか。そろそろ出よう」
二人は席を立ち、バイクに戻る。出発準備を整えて、道の駅を出発した。
R55は単調な道だ。変わらない景色、流れの遅い車列。ジニーが心配した通り、リンが眠り病に捕まりそうになる。
「ジニーねむいよ~」
「どこか止まれそうな所を探すよ」
ジニーが周囲に気を配りながら走ってゆくと、夫婦岩の案内を見つけた。丁度バイクも止まれそうなスペースがある。
「リンさん、あそこに止まる」
「あ~わかったぁ」
ジニーは道端の少し広くなった所にバイクを止めた。その横にリンも止まる。
「夫婦岩?」
「夫婦岩」
二人はヘルメットを脱ぎ、バイクに引っ掛ける。入り口のバリケードをすり抜け、夫婦岩を見に行く。
「お~なんだか既視感のある景色だ。これは和歌山に行った時の風景に似てるなあ」
「そう?こんなところあったっけ?」
「うん。似ているのは奇岩という所だけかもしれんけど」
眼前の二つの巨大なそそり立つ岩の間に、しめ縄が架かっている。手前の岩盤も合わせると、三つの岩の塔だ。
「リンさん、海を隔てた反対側の白浜の海岸も、こんな感じだったと思う。ひょっとしたら同じ地層かもね」
「うーん、そう言われるとそうかもね」
しばらく巨大な岩の塔を眺めてから、バイクに戻る。
「リンさん、室戸岬の手前をショートカットして、次の目的地に行くよ」
「わかった」
夫婦岩を出発して、R55を再び南下する。室戸世界ジオパークセンターを右手に見ながら通過して、その先で県道202号へと右折する。小山越えをして室戸市街に出る。そこで再びR55に戻る。室戸市街を通り抜け、行当岬を回り込んだ先に目的地の道の駅キラメッセ室戸がある。二人は駐車場に乗り入れ、隅にバイクを止めた。
「着いた。何時だ?」
「16時45分ですよ」
「あ~鯨館は閉館してるよね。直販市覗きに行こう」
二人は道の駅をうろうろする。鯨館の売店はまだ営業していて、そこでお土産を買った。直販市は閉店まぎわでほぼ何もなく、ぐるっと回って何も買わずに外に出た。
「ここでスタンプ最後だ。アプリを起こして・・・獲れた。完走です」
「踏破証明書発行申請しないとだね」
「うん。家に帰ったらゆっくりと申請すればいいや。さて、帰ろうか」
「ぼちぼち帰りましょう」
二人はバイクに戻り、準備を整えて出発した。
道の駅を後にして、R55をひたすら北上する。奈半利を通過し、安芸市に入る。
「あ、リンさんここで給油するよ」
「オッケー」
二人はスタンドに立ち寄る。二台でハイオク満タン10.5L入った。
「よし、これで家までガソリンは大丈夫だ」
給油が終わり、スタンドを出発する。安芸市を抜け、芸西村で高知東部自動車道に乗る。そのまま高知JCTまで走り、高知道に乗り換える。
「りんさん、南国S.Aで晩御飯食べて帰ろう」
「そうだね。そうしよう」
高知道に乗ってすぐ、南国S.Aが現れた。本線から降りて立ち寄る。駐輪場にバイクを止め、ヘルメットを脱ぐ。
「つい三日前に来たばっかりで、また来るとはね」
「でもリンさん、あの看板の海鮮とかうまそうってこの前言ってたじゃんか」
「海鮮かあ。う~ん、まあ、とにかくレストランに行ってみよう」
二人はフードコートをスルーして、レストランに入る。少々混雑していて、少し待ってから席に案内された。
「私今日は肉の気分なんよねえ」
「そうなん?じゃあハンバーグとか?あかうし重とかもあるけど」
「う~ん、ハンバーグにしよう」
リンは土佐のあかうしハンバーグ&エビフライ定食、ジニーは土佐のあかうしハンバーグ250g定食を注文した。
「250g、行けるかな?」
「いけるって。150gだと物足りないと思うよ」
「そうかな」
しばらく待って、やって来たハンバーグ定食は、250gで正解だった。
「ほら、150gでは全然足りないって思ったのよ」
「そうだな。何だったら350gでもいけたかも」
「それは無理。年寄りが食べる量ではないよ」
「だよね」
ジニーは自分の年齢を思い出した。もうすぐ65才だ。いつまでバイクに乗れるんだろうと考える。
ハンバーグをおいしくいただき、二人はすっかり満足して店を出た。お土産を物色したが、2日前に買ったばかりで特に欲しい物は無かった。
「さあ帰ろう。すっかり暗くなった」
時計は20時前になっていた。二人はバイクに戻り、準備を整えて出発した。
「ジニー次は?」
「石鎚で止まるつもり」
「わかった」
夜の高速をひた走り、高知道から松山道に乗り換え、松山方面に走ってゆく。1時間余り走り、石鎚S.Aに到着する。
「や~さすがに疲れる。僕もうしばらく高速走らなくてもいいや。ガソリンも目に見えて減っていくし」
「私は全然平気だけど?まあ、私のバイクは風を受けないからねえ」
風圧と闘ってヘロヘロのジニーとは対照的なリンだった。
「高速だけならSSがうらやましい。一般道は無理だけど。何でリンさんはその乗車姿勢で平気なのかな」
「背が低いからじゃない?」
「そうかなあ」
ジニーはベンチに座って、自販機で買ったココアを飲む。
「さて、もう少しだ、がんばれ」
リンに促されて、ジニーは立ち上がる。バイクに戻り、準備を整えてから出発した。
夜の高速をひた走り、松山I.Cに到着する。高速を降りて市街を抜け、家に着いたのは22時15分だった。バイクを車庫に片付け、荷物を持って入る。
「お疲れでした」
「お疲れ様」
二人は着替えてから完走登録を始めた。
「名前と登録ナンバー、全走行距離?」
「ジニー何キロ走ってる?」
「えーと、過去ログで見ると・・・6日間の合計は、2,200Kmだね」
「ふーん、まあまあ走ったね」
「高速料金の料金が怖い」
「あとはアンケートに答えて・・よしジニーできたよ」
「僕もできた、まあまあ楽しかったね。行ったこと無い所にも行けたし」
「そうね。次あったらどうする?」
「どうだろう。設置ポイントの場所次第かな」
ジニーはそう答えながら、果たして来年も行けるほど元気だろうかと思ったのだ。
還暦夫婦のバイクライフ 57