霊能探偵・芥川九郎のXファイル(52)【養老山の酒呑童子編】
第1章 養老孝子伝説
霊能探偵・芥川九郎は、彼の事務所で友人の牧田と話していた。事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「牧田君は養老の滝の伝説を知っているかい?」
牧田「岐阜県養老町に伝わる昔話のことかい?聞いたことがあるよ。親孝行の男が山の中で、岩から美酒が湧き出しているのを発見するお話のことだろう?」
芥川「そうそう、それそれ。男は喜び、そのお酒を年老いた父親に飲ませると元気になったという伝説だ。」
牧田「まさか養老町に行って、その湧き酒を探しにいくつもりじゃないだろうね?」
芥川「ところで、牧田君は河童徳利の昔話を知っているかい?」
牧田「河童徳利は聞いたことがないなぁ。」
芥川「河童徳利もお酒にまつわる昔話さ。ある男が河童を助け、その恩返しに魔法の徳利をもらうんだ。その徳利からはお酒が無限に湧き出るけど、底を3回叩くとお酒が出なくなる。その徳利のせいで、男はお酒に溺れる毎日を送る。」
牧田「スマホで検索したら出てきたよ。男はある日、放置されてガリガリに痩せた自分の馬を見て、涙を流して後悔する。男は徳利の底を3回叩いてお酒を止め、元の真面目な働き者に戻りましたとさ。」
第2章 トレジャーハンター・金田
芥川はコーヒーを一口飲んでから話を再開した。
芥川「さて、この二つの話から、驚くべき仮説を組み立てることができる。」
牧田「二つの昔話を混ぜて、何が分かると言うんだい?」
芥川「養老伝説の無限に湧き出るお酒は、地中に埋まっている河童徳利から流れ出ているのではないか?」
牧田もコーヒーを一口飲んでから、芥川を諭すように話した。
牧田「芥川君。いくらなんでも、その仮説は無茶苦茶だよ。二つのお話は両方共、ただの昔話なんだから。」
芥川「実は、僕の仮説じゃないんだ。トレジャーハンター・金田一郎先生の仮説だよ。」
牧田「金田さんの仮説かぁ。なるほど。あの人なら、そういうトンデモ仮説を考えそうだ。」
金田は日本各地の伝承・伝説に詳しい、トレジャーハンターである。芥川と牧田も、金田のトレジャーハンティングに付き合わされたことがある。
牧田「まさか今回は、岐阜県養老町まで行って、その河童徳利を探すのかい?」
芥川「そのまさかだよ。もうすぐ金田さんが来る。一緒に養老町へ行く手はずだ。」
牧田「・・・君も物好きだね。」
芥川「養老町には養老サイダーというサイダーがあるんだ。楽しみだね。」
第3章 養老山の山道
しばらくすると、噂のトレジャーハンター・金田がやって来た。
金田「こんにちは。芥川君、牧田君。元気そうで何よりだ。今回の冒険の舞台は岐阜県養老町だ!」
芥川「どうも、金田さん。美濃以来ですね。」
牧田「こんにちは。今日はよろしくお願いします。」
こうして三人は出発した。今回も、金田が運転する車で岐阜方面に向かった。金田の車は名古屋から県境を通過し、岐阜県に入った。しばらくすると養老町内に入り、目的地である養老の滝付近の駐車場に到着した。三人は車を降り、湧き酒の調査を開始した。
牧田「湧き出るお酒を探すと言っても、どこから探せばいいんだろう?見当もつかないですよ。」
金田「実は、とある霊能力者から怪しいポイントを聞いてあるんだよ。今回はそこを中心に調査する。」
芥川「なるほど。確かに妖気を感じるね。何か見つかりそうだ。」
牧田「・・・大丈夫かな。」
三人は金田が用意してきた地図を頼りに、養老山の山道を登っていった。しばらくすると、芥川は尋常でない妖気を探知した。
芥川「金田さん。ちょっとストップしてください!妖気を感じます・・・」
金田「なんだって!?きっと河童徳利が近くにあるんだ!どっちの方向だい!!」
芥川「あっちなんですが・・・」
金田「よし!行くぞっ!!」
金田は駆けるように、芥川が指差した方向へ歩いていった。
牧田「芥川君。妖気って・・・」
芥川「・・・もしかすると、魔物かもしれないね。」
金田「ギャアーーーッ!!!」
第4章 養老山の酒呑童子
金田の大きな悲鳴が聞こえてきた。
芥川「大変だっ!!」
牧田「言わんこっちゃない・・・」
芥川と牧田は急いで金田の後を追った。するとそこには、酒呑童子が大きな岩に座り、カメ(甕)に入ったお酒を飲んでいた。金田は酒呑童子を見て、驚きの余り滑落してしまったらしい。
酒呑童子「なんだぁ・・・お前らは?」
芥川「私たちは、養老の無限に湧き出るお酒を調査しに来たんです。」
酒呑童子「ハハハッ!なるほど。確かにこのカメは、無限に酒が湧き出る魔法のカメだ。」
牧田「養老の酒は、河童徳利ではなく、魔法のカメから湧き出ていたのか。」
芥川「養老サイダーを上げますから、そのお酒を少し飲ませてください。」
酒呑童子は芥川から養老サイダーを受け取ると、豪快に笑いながら言った。今日も朝から飲んでいるようで、完全にできあがっている。
酒呑童子「ハハハッ!いいだろう。好きなだけ飲んでいけ!このカメからは酒がいくらでも、無限に湧き出るからな。」
芥川「ありがとうございます。」
牧田「芥川君。先に、金田さんを助け出そう。下に落ちて、あそこの木に引っかかっているよ。」
第5章 酒宴の後で
芥川と牧田は、滑落した金田を助け出した後に、酒呑童子と酒を飲むことになった。
芥川「あなたはこの山で、ずっと暮らしているんですか?」
酒呑童子「いや、全国各地を旅している。このカメを担いでな。」
牧田「・・・・・・」
牧田は酒呑童子が恐ろしくて、ずっと黙って酒を飲む振りをしていた。
金田「このお酒、うまいですね!何か酒の肴を買って来るんだったなぁ。」
幾度も修羅場を潜り抜けてきた不屈のトレジャーハンター・金田は、臆することなく、普通に酒を飲み、普通に酔っぱらっていた。
芥川「そろそろお暇します。おいしいお酒、ありがとうございました。」
酒呑童子「おう!また来るがよい。」
芥川と牧田、それに金田は酒呑童子に別れを告げ、そのままさっさと下山した。
帰りの車は、酒を飲んでいない牧田が運転した。金田は後部座席に座り、しばらくするといびきをかいて眠り出した。運転しながら、牧田が芥川に聞いた。
牧田「芥川君。酒呑童子を退治しなくてよかったのかい?」
芥川「さすがの僕も、酒を飲ませてくれた鬼に霊丸拳銃をブッ放す
ほど非道ではないよ。それに、酒呑童子が酔いつぶれるまで飲める人間がいないんだから、しょうがないだろう。金田さんに期待していたんだけど、真っ先に酔いつぶれてしまった。」
牧田「芥川君も案外、強くないからね。」
芥川「うん。特に、日本酒は苦手だよ。すぐに酔いが回るし、飲み過ぎると頭が痛くなる。」
牧田が運転する車は養老町を出て、もうすぐ県境を通過するところだった。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(52)【養老山の酒呑童子編】