映画『か「」く「」し「」ご「」と「』レビュー

 自分に自信が持てない引っ込み思案と、誰とでも上手くやれるコミュ強者。それぞれのタイプに属する似たもの同士がたった二人で対峙する場面の描写が素晴らしかった。独りと独り、寂しいけど寂しくないという距離感。ペルソナを剥がそうとする音に痛み。忘れ難い青春群像。眩いほどの良作。
 各々の主観が断章形式の物語で綴られていく中で、圧倒的に画になる菊池日菜子さんの演技を本作で初めて拝見したのですが、在り方がほんと小松菜奈さん、いや、それ以上の存在感ですげぇのなんの。演じているとは思えないぐらいに画角の外で流れるパラという人物の日々を想像できた。出演作を追いかけたくなる才能。もうファンです。
 その菊池日菜子さんと絡む佐野昌哉さんは『あなたのブツが、ここに』以来でしたが、その関係性が最も緊張する場面でパラ=菊池日菜子さんに語りかける時の台詞のトーンが最高だった。あの王子様なビジュアルで浮かべる笑顔に、はっきりと陰影をつける心の闇。ヅカというキャラクターに深みを与える実力派。絶賛すべき俳優です。
 お目当てだった奥平大兼さんと早瀬憩さんは二人でいるシーンの佇まいに見惚れました。何を考えてるか、どう行動しようとしてるのか。ギフトの能力に関係なく、嫌になるぐらい分かってしまうその理性と感情の傾向。居心地なんていいに決まってるのに、このままじゃダメだと叫んでる。台詞の応酬という点では劇中で一番なのも宜なるかな。その全部でぶつかり合うカッコ良さ。大好きな俳優の、大好きな演技に私は感涙です。
 上述したタイプのどちらにも属さないミッキーという圧倒的なヒロインを演じられた出口夏希さんは、太陽みたいに輝くその笑顔がふっと消える瞬間にこそ惹かれる。スクリーン上の雰囲気が信じられない程にがらりと変わるんです。ただの引き算じゃ済まない演技の妙。その頭角、めきめきと現れ中。良かった、ほんと良かった…。
 ささくれのように気になり出せば、死ぬまで付きまとう「自分探し」。誰かに上手く話すことができないのは神様から授かった変な能力のことだけじゃない、作ったキャラクターも、それを演じきれない「私」という気持ちの塊も隣り合ってはもたれ合い、必死にノックを繰り返して、どうにか少しずつその扉を開けられる。そうして芽生える「僕」や「私」ここそ、ドラマのような恋愛をする出発点。文学的に納得させられるポイントをここまで映像化できたのは見事というしかありません。上映当時、訳わかんないくらいにぶっ刺さってふぉーえばーらぶを誓った非常に良き作品です。興味がある方は是非。U−NEXTなどで絶賛配信中です。

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』レビュー

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』レビュー

①相当程度のネタバレを含みます。事前情報なしに鑑賞したい方はご注意下さい。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-06-26

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