霊能探偵・芥川九郎のXファイル(47)【魔獣都市・仙台編】

第1章 東北新幹線

 霊能探偵・芥川九郎は、東北新幹線に乗っていた。彼は車両の中で、隣の座席に座る友人の牧田と話していた。
牧田「まさか芥川君と、こうして東北旅行にいくことになるとは、夢にも思わなかったよ。」
芥川「ハハハッ。今回は牧田君の方が浮かれ気味だね。遊びに行くんじゃないよ。」
牧田「分かっているよ。名古屋の高名な霊能探偵・芥川九郎は、仙台の市街地に出没する魔獣を退治するために行くんだろう。」
芥川「僕を茶化している場合ではないよ。魔獣を相手にするんだから危険な任務だよ。」
牧田「それなら真面目な話、旅のお供は僕ではなく、サーベル使いの能年君か怪力の鬼塚君の方がよかったんじゃないかい?」
能年は鎧の妖怪で、鬼塚は恐ろしい悪鬼である。二人は芥川の助手であり、特に、能年(鎧)は彼の事務所に住み込みで働いている。
芥川「今回は、仙台の霊能探偵・宮沢政宗君からの依頼でね。彼は実力と人格を兼ね備えた能力者だ。僕らは彼のサポートをしていればいいんだよ。」
牧田「君が手放しでそこまで褒めるんだから、本物の霊能力者なんだろう。だったら、名古屋にいる君がわざわざ行かなくても、東京の霊能力者に応援を頼めば済む話だと思うけど・・・」
芥川「彼は僕の古い友人でね。今回の出張は、彼との旧交を温める目的もあるんだよ。ちなみに、彼は仙台に住んでいるけど、出身は岩手の盛岡だよ。」
牧田「なるほど。一応、納得したよ。」

第2章 仙台駅のステンドグラス

 名古屋駅から東京駅までは東海道新幹線、東京駅から仙台駅までは東北新幹線に乗り、芥川と牧田は半日がかりで仙台駅に到着した。
牧田「やっと着いたね。新幹線でも半日かかるから、名古屋と東北は本当に遠いんだね。」
芥川「飛行機の方が早そうだけど、空港までのアクセスや手続きなどの手間を考えると、どっちもどっちだね。」
 二人は新幹線の改札口を出ると、待ち合わせ場所である駅のステンドグラス前に向かった。芥川を見つけた宮沢が手を振って叫んだ。
宮沢「芥川君!よく来てくれたね。久しぶりだなぁ。」
芥川「やぁ、宮沢君。本当に久しぶりだね。元気そうで何よりだ。こちらは僕の友人の牧田君。」
牧田「宮沢先生、はじめまして。牧田と申します。よろしくお願いします。」
宮沢「はじめまして、宮沢です。先生なんて呼ばないでくださいよ。牧田さんのこと、芥川君からかねがね伺っております。こちらこそよろしくお願いします。」
芥川「さっそく、魔獣退治に行こうか。仙台の市街地に頻繁に出没するから、みんな怯えて暮らしているんだろう?」
宮沢「そうなんだよ。まさに異常事態だ。」
芥川「君のことだから、怪しい場所の見当は付いているんだろう?」
宮沢「うん。多分、太白山だ。」
芥川「太白区にあるのかな?」
宮沢「そうそう。車で行けばすぐだよ。」

第3章 太白区の太白山

 芥川と牧田は宮沢が運転する車に乗り、太白山に向かった。宮沢は運転しながら、芥川との昔話を楽しんでいた。
宮沢「芥川君を乗せて、車を走らせるのも久しぶりだなぁ。」
芥川「宮沢君の車で、宮城のいろんな観光スポットに行ったよね。魔獣退治が済んだら、とりあえず、青葉城址にでも行こうか。牧田君は行ったことないだろう?」
牧田「それはうれしいけど・・・太白山に恐ろしい魔獣がたくさんいるんだろう?そんな簡単に片付くだろうか?」
芥川「今日中には片付くだろう。多分、魔界へ通じるトンネルが形成されてしまったんだろう。」
牧田「魔獣博士・榊原の仕業かな?それとも、魔法博士・柊先生がまた、トンネルを形成して魔界へ探検に行ったのかな?」
榊原博士は、魔界で魔獣を研究するために悪魔と契約した魔獣研究者である。柊博士は高名な魔法学者で、榊原の旧友だ。榊原を探すために柊が形成した魔界トンネルのせいで、各地で魔獣騒動が起こったという経緯がある。
宮沢「芥川君からの情報を参考に、いろいろ調べてみたけど、今回の魔界トンネルは、榊原博士や柊博士が形成したものではないみたいだよ。」
牧田「そうなんですか・・・」
芥川「東北地方は、そういうものが形成されやすい風土なのかもしれない。東北各地に、妖怪や物の怪の伝説があるからね。」
 そんな話をしている間に、宮沢の運転する車は、太白山麓の道路をどんどん進んでいった。
芥川「魔獣の魔力を感じるよ。この辺から探索しようか。」
宮沢「そうだね。近くに登山口があるよ。そこから登っていこうか。」

第4章 魔界の黒い三連星

 三人は車を降り、近くの登山口から太白山を登っていった。
芥川「なんか、やばいのが2〜3頭いそうだね。宮沢君、どう思う?」
宮沢「確かに、そんな感じがするね。」
牧田「僕には霊能力がないからよく分からないけど、なんだか嫌な予感がするよ。」
三人は山道を慎重に、ゆっくりと登っていった。しばらくすると、目の前に大きな獣が3頭、現れた。
牧田「あそこに何かいる!大きくて黒いのが3頭・・・熊よりもはるかに大きいよ。」
宮沢「大きな黒鬼だね。芥川君、どうしようか?」
芥川「あの種の鬼は、力が強いだけでなく、動きが俊敏で、おまけに多少の知恵がある。やっかいだな・・・さしずめ魔界の黒い三連星だね。」
牧田「3対3だけど、僕は戦力にならないから実質、2対3だ。まずいね。」
芥川「不意打ちで一気に片付けよう。僕が召喚魔法で攻撃するから、宮沢君は送還魔法を頼むよ。」
宮沢「了解!」
 芥川は召喚魔法を唱えた。
芥川「暗黒剣士たちよ!あの3頭の黒鬼を包囲・殲滅せよ!!」
送還ホールから屈強な暗黒剣士たちが飛び出し、3頭の黒鬼を取り囲んで攻撃した。黒鬼たちは不意を突かれてうろたえていたが、突撃してくる暗黒剣士をつかんでは投げ飛ばした。
宮沢「送還魔法、発動!」
宮沢は送還魔法を唱えた。3頭の黒鬼たちの足下に送還ホールが形成され、黒鬼たちは大きな円い影のようなホールに吸い込まれていく。やがて黒鬼たちが完全に吸い込まれてしまうと、送還ホールは消滅した。
芥川「相変わらず、大した腕前だなぁ。」
宮沢「芥川君の召喚した暗黒剣士たちのおかげだよ。」

第5章 柊博士の覚悟

 魔界の黒い三連星を片付けた三人は、再び山道を登り始めた。
芥川「この辺りに魔界トンネルがありそうだね。」
宮沢「芥川君、あれだよ!多分、あそこが入口だろう。」
牧田「本当だ!確かに、暗いトンネルの入口に見えるね。」
三人が魔界トンネルの入口に向かって歩いていくと、その近くに転がっている巨石に一人の老人が腰掛けていた。
牧田「誰かいるよ!魔物かな・・・」
芥川「いや。あれは・・・柊博士だ。」
なんと、巨石に腰掛けていた人物は柊博士だった。
柊「やぁ、芥川君と牧田君か。ひさしぶりだね。それに、仙台の霊能探偵・宮沢君も一緒か。」
宮沢「柊博士・・・あなたが魔界トンネルを形成したんですか?そんなはずは・・・」
芥川「柊先生はご病気で入院中だよ。ここにいるのは柊博士の仮体だね。」
牧田「仮体・・・魔界から出られない榊原の本体は、魔力で仮体を作り、その仮体で魔界から人間界にやって来る。柊博士も仮体を作ることができるんですか?」
柊「いかにも。私は霊力で仮体を作ることに成功した。私はこの仮体で魔界へ行き、榊原君を探すつもりだ。しかし、私が自分で魔界トンネルを形成して魔界へ行くと、開いたままのトンネルから魔獣がこちらへ来てしまう。」
芥川「それで柊先生は仮体を作り、東北に偶然できた魔界トンネルの前で待っていたんですね。異変に気付いた霊能力者たちが、魔界トンネルを閉じに来るのを・・・」
柊「自分で形成したわけではないが、魔獣騒動が大きくなるまで、この魔界トンネルを放置し、傍観していた罪を許してくれ。これが私の・・・最期のわがままになるだろう。」
芥川「あなたに罪をありませんよ。本体は重病で入院中なんですから。魔界トンネルは私たちが閉じます。柊先生。心置きなく出発してください。」
柊「ありがとう。すまない・・・」
 柊はそう言って三人に頭を下げると、暗くどこまでも続く魔界トンネルの奥へ消えていった。
芥川「さぁ。こんなトンネル、さっさと閉鎖しよう。宮沢君、一緒にやるよ。」
宮沢「・・・了解。」
芥川と宮沢が魔界トンネルを閉じている間、牧田は複雑な心境でそれを見守っていた。
牧田「叡智を極めた魔法博士の、最期のわがままか・・・」

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(47)【魔獣都市・仙台編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(47)【魔獣都市・仙台編】

「ハハハッ。今回は牧田君の方が浮かれ気味だね。遊びに行くんじゃないよ。」 名古屋の霊能探偵・芥川は、友人の牧田に釘を刺した。 舞台は、魔獣が頻繁に出没するようになった杜の都・仙台。 仙台の霊能探偵・宮沢と共に、彼らは魔界トンネルが形成されたと思われる太白山へ。 立ち塞がるは、屈強なる「魔界の黒い三連星」。 芥川の召喚魔法と宮沢の送還魔法が鮮やかに炸裂する痛快アクション! そして、魔界トンネルの入口で待ち受けていた魔法博士・柊の最期のわがままとは? 今回はいつになくシリアスな展開の、お気楽オカルトバトル第47弾!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-06-21

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  1. 第1章 東北新幹線
  2. 第2章 仙台駅のステンドグラス
  3. 第3章 太白区の太白山
  4. 第4章 魔界の黒い三連星
  5. 第5章 柊博士の覚悟