無理を重ねて無理になる

もう無理なのかもしれない
意を決してしまうこともあるかもしれない
そんな決断をしようと思いつめられることはなかった
自分の心をのぞこうとしてこなかったからだろうか
のぞこうとするほどに空洞がある
光が届く箇所と届かない箇所
また一つ背負い込む
結局自分の心を裸にしようとしたりしてはだめだ
頑丈に鍵をかけておかないといけない
そうしないと生きていけない
少なくとも自分はそういう質の人間なのだ
長くは生きられないのだろうか
でももう十分生きたのかもしれない




崩壊の兆し

犯罪者にはなりたくない
でもやってやろうかと思わなくもない
一つの箇所が綻びを見せると
どこもかしこも壊れていく
結界が一つ破れるともうだめだ
一気にがたがたになっていく
苦労して作りあげた作りものなのに
やがては壊れていくのだね
誰も信用できなかった
いつでも不信感が増長して緊張が過剰になる




科学

科学を空気だと思っていやがる
科学も人間が作ってきたものなのに
科学で説明がつくことなんてほとんどないのだが
科学で説明できる範囲は広大でもある
どちらも成り立つから厄介なのだ
科学という言葉に誰もが反応してしまう
科学の定義がまだはっきりしないからだ
結局科学がなんなのか誰にもわかっていない
科学と対峙することを誰もが放棄している




近現代を駆け抜けて

自分に適さない環境で
やりたくないことを懸命にやり抜く
それが人間に適した生き方なのだろうか
自然を征服するようになってから
人間はどんどん思い上がっていく
もっと自分らしく優しく生きていいらしい
私の中の何かが反発しようとする
でもしんどいから流されようとする
適当に優しくしながらべたついた交流に身をうずめていたい




反反出生

生まれたくなかったって
生まされたくなかったってことだろう
生まれるという動詞は受動的だ
私たちは誕生の時点でどうしようもなく受動的だ
人生は能動的なものではない
反出生という思想にほとんど興味が持てない
反出生を掲げた時点でありえない超越的視点に立っている
生まれたいとか生まれたくないとか
どっちにしてもどうしようもなく受け身じゃないか
いつの日か真に能動的な生を享受することができるのだろうか
できないと思うのだけれど




妄想

妄想が膨れ上がる
目の前につらい現実が生じたとき
妄想が一気に活性化する
自分に都合のいい妄想で頭をいっぱいにする
現実が過酷になるほどに架空の楽園が築かれる
勝手に脳内で盛り上がってにやけたりする
しかし現実という冷水は次第に水位を上げていく
過酷な事実の羅列に耐えられない
自分はどうしてこんなに弱いのだろう
今日も皆から白い目で見られる




現実は夢

人を信じようとしないからだめなのだ
勝手に自分から壁を作って
勝手に自分で生きづらくしている
生きづらさを堪能していい気になっているだけ
まだまだ余裕があるだけなのだ
中途半端な否定精神で自己陶酔している愚か者
つらい現実が陶酔から脱却させようとしくる
しかしその現実から防衛しようとしてまた陶酔を必要とする
いつまでも自分の前に現実はあらわれてこない
自分にとって現実は夢にすぎない




書くことと描くこと

文章を書いても書いても穏やかにはなれない
書くことは癒しと混沌の両方をもたらす
前もこんなこと言ったっけ
書けば書くほどに濁りは消えて濁りは増す
絵を描くことができればもっと穏やかだっただろうか
それもないものねだりだろうか
書くことと描くことの間に何があるのだろう




交響曲40番

情緒は情緒に過ぎないのだろう
できるだけ機械的であろう
身体の奥に眠る法則があるのかもしれない
感傷性に浸っている時点でだめなのだ
感動と知性が融合して深く沈んでいく
音楽だけが感じさせる静寂があるらしい
心も身体も冷えていく




言語化を求めて

誰もが気づいているのに
誰も言葉にできていない事物がある
目の前にあるのに
言葉にされていない事物がたくさんある
誰でもわかる言葉でできることはたくさんある
安易に超越や深淵に魅かれないようにしたい

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-06-14

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted