還暦夫婦のバイクライフ 56
ジニー&リン、BSTR2026に参加する その4
5月2日朝6時、ジニーは起床して台所に向かった。
「ジニーお早う」
台所では先に起きていたリンが、洗濯物を干し終えて椅子に座っていた。
「お早うリンさん。天気どう?」
「いい天気だよ。朝は少し寒いかもね」
「ふーん、じゃあ、防風ジーンズ履いていこう」
ジニーは湯を沸かし、コーヒーを淹れる。二人でゆっくりとコーヒーを飲み、おもむろに出発準備を始める。
「ジニーガソリンは?」
「昨日2台とも入れといたよ」
車庫から引っ張り出したバイクをセットして、ヘルメットを被る。インカムをつなぎ、エンジンを始動する。
「リンさん出ますよ」
「今日のルートは?」
「はなみずき通って、松山I.Cから高速乗って、津島まで走る。終点の一つ手前で降りて、津島道の駅で休憩するつもり」
「津島道の駅?」
「うん。この前リニューアルオープンしたって新聞に載っとった」
「そうなん?そう言えば、あそこの温泉閉まってたよね」
「ああ。前に見たときは、温泉施設は跡形もなく更地になってたけど、建て直したみたい」
「ふ~ん、楽しみだねえ」
6時50分、自宅を出発したバイク2台ははなみずき通りを南下して、松山I.Cに向かう。高速に乗ってからは宇和島方面へと走り、伊予市、内子町、大洲市を通過する。
「リンさん、寒いなあ。防風ジーンズは正解だったけど、半メッシュの上着がなんとも」
「日中は暑くなるからねえ。私は革ジャンだから平気だけど」
「この気温だったら大洲は霧が出てるかと思ったけど、出てないな」
「この時期には霧は出ないよ」
「そうなん?知らんかった」
涼やかな気温の大洲市を通り抜け、宇和、三間、宇和島と走り抜け、津島高田I.Cで降りる。リニューアルした道の駅津島熱田温泉は、降りたすぐの所にある。二人はバイクを駐車場に止めた。朝8時過ぎのためか、車はちらほらしかいない。ヘルメットを脱ぎ、バイクに固定する。
「わあ!随分きれいになったねえ」
「リンさん、前にあった販売所も無くなってる。あそこの厚焼き玉子弁当おいしかったのになあ」
「まあ、中に入ってみましょう」
二人は真新しい建物に入る。中にあるコーヒーショップは準備中で、コーヒーを飲みたかったジニーは残念そうだ。販売所には地場の野菜や魚が並び、加工品やお菓子などのお土産も並んでいる。お弁当の並んだケースを覗くが、厚焼き玉子弁当は無かった。
「残念、無いものは仕方ない」
「ジニー少しお土産買っていくよ」
「うん」
二人は地元の銘菓を何点か買って、外に出た。バイクに戻り、出発準備をする。
「ジニーどこかにゆうちょ銀行無いかな?」
「土曜日に開いてる?」
「開いてますよ」
「そうだなあ、じゃあ、宿毛市で探そう」
「わかった」
8時50分、二人は道の駅を出発した。津島高田I.Cまで戻り、そこから終点まで走る。R56に合流して、海岸線沿いに南下してゆく。やがて御荘の街に到着する。
「リンさん、ここにもゆうちょ銀行あると思うけど、どこにあるか分からんから通過するよ」
「いいよ~」
2台のバイクは御荘町を走り抜け、先に進む。R56を道なりに走り、宿毛市入り口にとどく。
「リンさん、ここから街に入るよ」
ジニーはR56から左にそれる道に進む。リンもついてゆく。
「これって旧道?」
「多分ね。郵便局は市役所の近所だろうし、適当な所で止まって探そう」
二人は街中をゆっくりと走ってゆく。しばらく走った所でコンビニを見つけて駐車場に止まった。
「リンさん、休憩しよう」
「うん」
バイクを止めて、ヘルメットを脱ぐ。スマホの地図アプリを呼び出して郵便局を検索すると、そのコンビニからまっすぐ300mほどの所にあった。
「リンさん、その道をまっすぐ行った所にあるよ」
「本当だ。丁度の所に止まったねえ」
二人はスマホを仕舞い、店内に入る。お茶とおやつを一つ買って、外のお遍路さん用のベンチを借りて座り、休憩する。お茶とお菓子で一息ついてから準備を整え、郵便局へと走り始める。
「ジニー用事は済んだ。ここからは?」
ゆうちょ銀行のATMで用事を済ませたリンが、バイクにまたがる。
「ここからは、この道をまっすぐ西に向かって走って、R56を渡ってさらに行くとR321になるから、それを道なりに行くよ」
「宿毛の道の駅に寄れる?」
「寄れるよ。通り道だから」
「じゃあ、ちょっと寄って。見たいものがあるから」
「わかった」
郵便局を出発して、ジニーはリンに説明した通りの道を走ってゆく。5分ほど走った所で道の駅すくもが見えてきた。駐車場に乗り入れてバイクを止める。
「あら、りんさん、しばらく見ないうちにすっかり建て替わってるよ」
「本当だ。古いトイレや建物が、きれいさっぱり無い。新しい建物にキャンプ場もある。きれいになったねえ」
二人は新しい建物を覗いてみる。売店があり、お土産もある。
「あった、塩まる」
リンが探していたお菓子を見つける。
「ちょっとお高いけど、買って帰る」
リンは塩まるを数個買って、ほくほくとした顔になる。目的を果たした二人は店を出て、きれいに整備された施設内を散歩する。SUKUMOオブジェを見て、その先に広がる宇和海を眺める。
「ここはだるま夕日が有名よね」
「うん。僕は見たこと無いけど、写真で見たことある。直接見たら、圧巻だろうね」
「そうかもね。さてジニー先は長い。次行くよ」
二人はバイクに戻り、準備をする。10時50分、道の駅を出発した。
R321を土佐清水目指して走る。大月町を通過し、叶崎を越える。
「あ~、眠いなあ」
車の後ろを大人しくついて走っていたのだが、リンが眠り病に捕まりかけている。
「眠い。眠いぞ」
「眠い?」
「眠い。ひたすら眠い」
「どこかで停まろうか」
「よろしく」
ジニーは止まれるところを探しながら走る。
「あ、この先竜串海岸だ。そこの駐車場で停まろう」
「わかった~」
5分ほど走り、右手に駐車場を見つけて乗り入れる。エンジンを切り、ヘルメットを脱ぐ。
「あ~眠かった」
リンが息をつく。
「リンさん、ここはヤシの木パークだって」
「なるほど、ヤシの木がある。向こうに見えるのは、海中展望台だよね」
「そう。今は休館している。確か新聞に書いてあった」
「ふ~ん、なんで?」
「さあ?老朽化じゃないか?あそこには僕が中学1年生の時に行った記憶がある。もう50年も前だ。そろそろやり替えじゃないの?」
「そうね。私もそれくらい前に行った記憶があるよ。はあ、ハラ減った」
「そうだ、宿毛で買ったようかんパンがある」
ジニーはバッグからパンを2つ取り出した。それと飲みかけのお茶を持って、二人は海岸へと下りる。
「ようかんパン、前にも買ったときに思ったけど、中にようかんが挟まってるのかと思ったら、表面にコーティングされてるんだった。これはこれでおいしいけど」
「中に挟まってたら、インパクトあるよねえ」
岩場に座って二人でパンをかじる。
「さて、目も覚めたし、先を急ごう」
パンの空き袋を丸めてポケットに押し込み、ジニーは立ち上がった。
11時45分、竜串を出発した二人は、足摺海洋館を右手に見ながらR321を先へと走ってゆく。
「そういえば海洋館立ち上げの時に、大学の研究室の先輩が館長で呼ばれていたんだけど、今も居るのかな?」
「ジニー、それは知らんがな」
「だよね。僕より5歳くらい上の人だから、もう退官してるかも」
ジニーはつぶやいた。
R321をどんどん走ってゆく。土佐清水市で県道27号に乗り換え、足摺岬に向かう。
「この辺に足湯が有るはずなんだけど」
「リンさん、万次郎足湯だね。そこにあるよ」
ジニーが右を指す。
「ああ、見えた。ここも一度は寄ってみたいねえ。今日は寄らないけど」
「うん。もうすぐ岬だ」
足湯から少し走った所で、足摺岬に到着した。警備員が、バイクを左手の道沿いに誘導している。二人はスペースを見つけてバイクを止めた。
「やっこらせっと」
ジニーが狭いスペースに苦労しながらバイクを降りる。ヘルメットをバイクに固定して、二人は足摺岬公園へ歩いて行った。
「さて、スタンプを獲って・・・と」
ジニーはアプリを呼び出し、スタンプを獲得する。
「リンさん獲れた?」
「獲れたよ」
「おお、ジョン万次郎の像が立っている。あったっけ?」
「前からあったよ」
「そうか。気が付かなかった。そう言えばジョン万さん、いよいよ大河になるらしいよ」
「そうなん?ここ数年高知付いてるね。牧野さんにやなせさん、龍馬さんは昔からだし、ほかにも弥太郎さんも居るし、高知は有名人多いねえ」
「そうだな。万次郎さんは数十年前から大河にって野立て看板が出ていたから、念願かなって良かったねえ」
ジニーはそう言って、像を見上げた。
「ジニー灯台まで行かなくてもいいよね。もう何回も来てるし」
「いいよ、先を急ごう」
公園に10分ほど滞在して、二人は次の目的地に出発した。
県道27号を走ってゆく。
「だいぶ道が広くなったな」
「そう言えば、工事してたねえ」
広くなった道を、快適に走ってゆく。半島をぐるっと回り、再び土佐清水市に戻って来る。R321に乗り換え、四万十市を目指して走る。
「リンさん、四万十市で給油するよ」
「オッケー」
四万十市入り口でR56に乗り換える。少し走った所でスタンドを見つけ、給油に入る。
「今日はどちらから?」
「松山からカツオを食べに来ました」
「そう、カツオだったらなぶらとかが良いかな。ひろめとかは観光客相手だからねえ」
「そうなんですね」
スタンドのおじさんと話をしながら給油をする。
「ありがとうございました~」
スタンドを出発して、R56を走る。そこから5分ほど走り、道の駅ビオスおおがたに到着した。
「よし、リンさんご飯です」
「何時?13時40分か。お店開いてるよねえ」
「大丈夫、やってます」
二人は道の駅の施設に向かった。ここの食堂のカツオのタタキ定食は、二人のお気に入りだ。最低年に1回はわざわざ食べにくるくらいだ。
店内は7割がた席が埋まっていた。入り口の券売機で、食券を購入する。空いている席に座って、呼ばれるのを待つ。
「ジニー、私たちカツオしか眼中にないけど、こうやってみてみると、宗田節ラーメンが人気みたいね」
「そう?・・・本当だ。みんなラーメン食べてる」
「まあでも、じゃあ次はラーメンかって言われると、やっぱりカツオのタタキかな」
「だろうね。僕もそう思うよ」
出来上がったカツオのタタキ定食を、二人はゆっくりといただく。
「僕達地元じゃないから、久礼とかなぶらとかひろめ市場とかしか行ったこと無いけど、どこのカツオもおいしいよねえ」
「うん。あそこはどうとか、そこはどうとか地元の人達は言うけどね」
カツオ好きな二人は、どこのカツオもおいしくて仕方がないのだ。
ご飯の後お土産を数点買い、イベントのスタンプも獲得して、二人はバイクに戻る。
「あ!ジニー、Tシャツアート展やってる。見に行く?」
「え?今何時?14時50分か。う~んどうしようかな」
「明日も休みだし、帰るの遅くなっても平気だよ?」
「うん分かった。これも何かの縁だ。行ってみよう」
二人はバイクを始動して、海岸沿いの公園内の道を走っていく。1Kmほど走り、アート展の会場に着いた。警備の人に教えられた駐輪場に、バイクを止める。
「わあ~ジニー。私ここから二度とバイクを出せない自信があるよ」
「大丈夫。僕が出すから」
足場の悪い場所だが、スタンドが潜ってゆくことも無い。二人はヘルメットをバイクに固定して、会場に向かった。入り口で入場料を払い、砂浜に降りる。そこにはざっと千点以上のTシャツがロープに繋がれて展示してあった。Tシャツには写真やイラストなどがプリントされていて、なかなか興味深い。
「思っていたよりもいいな」
「そりゃそうでしょ。良くないと続かないって」
確かにとジニーは思った。
「他県でも砂浜Tシャツアートやってるんだな」
***会場出展作品という表示があるTシャツもぶら下がっている。
こういう場所に来ると、何時間でも居続けてしまう二人だが、今日は後の予定が詰まっている。後ろ髪をひかれながら30分ほどで切り上げ、バイクに戻る。足場の悪い駐輪場からバイクを引っ張り出し、15時35分、次の目的地を目指して出発した。
「リンさん、しばらくR56走って、使える自動車道は全部使うよ」
「了解」
公園内道路からR56に出て、道なりに走ってゆく。海の駅なぶら土佐佐賀を左に見ながら通過し、車列の一部となってさらに先へと進む。部分開通している高速道を使い、窪川で一般道に戻る。
「リンさん、この先の道の駅で休憩しよう」
「ええよ~」
暫く走り、道の駅あぐり窪川に到着する。そこで、10分ほど休憩する。
「ジニー17時回ってる。暗くなる前に桂浜に行かなきゃ」
「わかった。ここからは高速使って土佐I.Cまで走る。そこで降りて、R56、県道282号、県道14号、浦戸大橋の下の集落を通って裏から桂浜駐車場だな」
ジニーがスマホの地図アプリを見ながら確認する。
「よう分からんけど、私のスマホで案内させるよ」
「わかった。よろしく」
17時20分、道の駅あぐり窪川を出発し、四万十町中央I.Cから高知道に乗る。土佐I.Cまで高速を走り、そこで降りてR56に出る。
「ジニーそのまま真っすぐ行って、その先で左側の側道に入るよ」
「オッケー、ナビ様の言う通りに」
ジニーはリンのナビに従って走る。R56から県道282号に入り、海岸線に出る。しばらく道なりに走り、浦戸の山に登っていく手前で左折する。そこからは集落の中の狭い道を通り、裏から桂浜駐車場に到着した。入り口の料金所はすでに閉じていて入場無料になっていたが、二人は中には入らず、バイクにまたがったまま入り口でスタンプを獲得した。
「よし、獲れた。今日の予定は終了だ。帰ろう」
「18時25分か。もうすぐ暗くなるね」
桂浜を出発して、県道34号を駆け上がる。T字交差点で県道34号に乗り換え、浦戸大橋を渡る。高知新港を右手に見ながら通過して、県道376号へと左折する。トンネルをくぐり、その先にある高知南国道路の高知南I.Cから高速道に乗り、高知方面に走る。その先の高知JCT経由で高知I.Cから高知道に乗った。
「リンさん、この先の南国S.Aに止まりますよ」
「いいけどどしたん?」
「ミレー買ってないし」
「ああ~、オッケ~」
南国S.Aに寄り、ミレー他数点購入する。
「19時10分になった。もう暗くなるな。とっとと帰るよ」
二人はS.Aを出発した。すでに薄暗い高速道を少し早いペースで走る。トンネルを何本も走り抜け、瀬戸内側に出る。川之江東JCT,川之江JCTを経由して松山道に乗り換える。
「リンさん、さすがにハラ減った。石鎚S.Aで飯食おう」
「了解」
そこからさらにペースは上がり、三島、土居、新居浜、西条と通過して石鎚S.Aになだれ込む。
「はああ~着いた。疲れた~」
「ジニーのバイク、風圧との闘いだもんね」
「うん。高速走ると燃費が悪いや」
駐輪場にバイクを止めて、二人はフードコートに向かう。
「何にしょっかなー」
しばらく悩んで結局松山ラーメンに落ち着いた。出来上がったラーメンを受け取り、席に座る。あとは家に帰るだけなので、のんびり食べる。
充分休憩した二人は、21時5分S.Aを出発した。
「久しぶりだな、こんな時間まで走るのは」
「そうねえ。近頃10時くらいに出て、17時くらいに帰って来るパターンが多かったからねえ。今回のBSTRで、久しぶりに早起きして走っているね」
「うん。あと残すのは、四国の東半分か。」
「手強いねえ」
高速道をのんびりと走りながら、二人は次の予定を話す。
川内を抜け、松山I.Cから高速を降り、市内を通過して自宅に到着した。
「おつかれ」
「おつかれでした」
二人はバイクを車庫に片付けて、家に入る。
「今日は疲れた」
「四国の西半分ぐるっと回ったからね」
「次はいつ行くかな」
「そうねえ、5月5日かな。天気良さそうだし」
「わかった、その予定で」
ということで、最後の東半分は5月5日に行くこととなった。
還暦夫婦のバイクライフ 56