霊能探偵・芥川九郎のXファイル(39)【魔人69面相編】
第1章 娘・明智真理
霊能探偵・芥川九郎は、事務所で友人の牧田と話していた。芥川の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「明智真理さんが今日、ここへ遊びに来るよ。」
牧田「明智真理って・・・先日、東京から家出してきた娘のことかい?」
明智真理は東京の霊能探偵・明智光太郎の娘である。先日、東京から家出して芥川のところに来た際に、能力者として覚醒した。
芥川「彼女、今は名古屋で一人暮らしをしているんだよ。」
牧田「結局、真理さんは東京・・・と言うか、実家で父親と仲良く暮らすことはできないということか。」
芥川「そうみたい。まぁ、仕方ないよ。人間には相性というものがあるからね。親子だから仲良くできるというのは幻想だ。」
牧田「父親の光太郎さんは、娘のことを心配しているだけなのにね。」
芥川「まぁ、いいんじゃないの。親子だから仲良くしないといけないという法はない。親も子も銘々、好きに生きたらいいんだよ。」
牧田「それで、真理さんは名古屋で何をしているんだい?」
芥川「一応、親父様との約束を守って、働きながら税理士の勉強をしているようだ。」
牧田「税理士か。そう言えば、服部夫人の旦那様も税理士だね。」
服部夫人は芥川の叔母である。芥川の事務所の隣に服部税理士事務所があり、彼女はそこの税理士先生の奥方だ。服部夫人は甥っ子の芥川のことを気にかけ、いろいろ世話を焼いている。
芥川「真理さんは僕よりも、叔父さんや叔母さんと気が合うみたいでね。彼女が今日ここに来るのは、叔母さんに会うついでだと思うよ。」
牧田「そうなんだ。君は先日、父親の明智先生に随分とひどいことをしたからね。」
第2章 父・明智光太郎
芥川と牧田が明智親子の話をしていると、能年(鎧)がコーヒーを持ってきた。能年は鎧の妖怪で、芥川の助手である。彼の事務所に住み込みで働いている。
芥川「能年君。ありがとう。」
牧田「ありがとう。いつも悪いね。」
二人にコーヒーを運んだ能年(鎧)は、部屋の片隅にあるイスに座って本を読んでいる。芥川は熱いコーヒーを一口すすってから言った。
芥川「どこまで話したっけ?」
牧田「真理さんは芥川君よりも、服部夫婦と仲が良いというところまで聞いたよ。」
芥川「そうそう。まぁ、その話は置いといて。父親の明智先生が僕のところに連絡してきてね。」
牧田「君があんなひどいことをしたのにかい?」
先日、芥川は明智親子のケンカに介入し、真理を連れ戻しに東京からやって来た光太郎を暴力で制圧しようとしたのだ。
芥川「さっき、君が言ったとおりだよ。明智先生は、娘の真理さんのことを本当に心配しているんだ。」
牧田はコーヒーを一口すすってから言った。
牧田「真理さんは結局、家を出て名古屋で暮らすことになった。それで改めて、君のところに連絡をよこしたわけか。」
芥川「娘の真理が名古屋で暮らすことになったから、何かあったらよろしくとのことだよ。」
牧田「真理さんは先日、能力者として覚醒したから、そんなに心配しなくてもいいと思うけどね。」
第3章 魔人69面相
芥川はコーヒーを一口飲んでから、おもむろに口を開いた。
芥川「僕はまだ牧田君に、魔人69面相のことを話していなかったね。」
牧田「魔人69面相・・・知らないな。どんな魔物なんだい?」
芥川「東京で暗躍している魔物でね。明智先生が執念深く追跡しているようだけど、なかなか退治できないそうだ。」
牧田「東京の魔物か。他の地方で悪さをすることはないのかい?」
芥川「そもそも魔物というものは神出鬼没だよ。明智先生は多分、能力者として覚醒した真理さんが魔人69面相に遭遇することを恐れているのかもしれない。」
牧田もコーヒーを一口飲んでから言った。
牧田「東京の魔物が名古屋に来る・・・明智先生が追っている魔人69面相か。」
芥川「念のために、真理さんに僕の特製鉄パイプを渡しておいた方がよいかもしれないね。」
牧田「・・・鉄パイプは必要ないと思うよ。真理さんは強力な防御魔法を使えるんだから。」
芥川「あの明智先生も手こずる恐ろしい魔物だからね。油断禁物だよ。」
牧田「魔人69面相は東京で、どんな悪いことをしているんだい?そもそも69という数字には、何か意味があるのかな。」
芥川「善良な人々を誘惑し、悪事に加担させるらしいよ。69という数字の意味はよく分からない。」
第4章 『あなる探偵』シリーズ
しばらくすると真理が、芥川の事務所にやって来た。
真理「こんにちは、芥川先生。おじゃまします。」
芥川「こんにちは。いらっしゃい。」
牧田「真理さん、こんにちは。」
真理「今日は牧田さんもいらっしゃったんですね。」
牧田「まぁ、とりあえず座って話そうよ。」
芥川「今朝、能年君が淹れてくれたコーヒーが残っているから、出すよ。」
それを聞いた能年(鎧)は立ち上がり、コーヒーを1杯入れて真理のところに運んできた。
真理「能年さん、ありがとうございます。今日も本を読んでいるんですね。」
真理の言葉を聞いて、能年(鎧)はコクッと1回、大きく頷いた。
牧田「そう言えば、能年君は今、何を読んでいるんだい?」
能年(鎧)は牧田に読んでいる本を手渡した。
牧田「『あなる探偵』か。このシリーズ、すごく人気があるらしいね。」
牧田はそう言って、能年(鎧)に本を返した。能年(鎧)はコクコクと2回、小さく頷いた。芥川は話題を変えて言った。
芥川「今、牧田君と魔人69面相の話をしていたんだよ。」
真理はコーヒーを一口飲んでから言った。
真理「父が追っている魔物ですね。でも、詳しい話は聞いてないので、よく分かりません。」
牧田「真理さんは先日、能力者として覚醒したばかりだからね。」
芥川「東京の魔物、東京の霊能探偵、その娘・・・」
芥川は腕を組み、物思いにふけっている。その間、牧田と真理は他愛もない会話を続け、能年(鎧)は『あなる探偵』を読みふけっていた。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(39)【魔人69面相編】