家政婦は見なかったことにした。3

あーもう、やってらんないぜっ!!ちくしょう!!って、お酒煽りながら酔い潰れてみたいですね。
もちろん、今の生活に不満なんて全然ございませんよ。
ただの願望のようなものでございます。お気になさらず。
・・・えっ?まるでオヤジのようですって?
謝りなさい。オヤジの皆様に。そして、この私には深々と土下座なさい。

『・・・何も見ていません』

・・・。待ちなさい。私、別に見られて恥ずかしいことなんてしていませんよ。
この一条家に使える身として常に相応しくあるよう、いつも振る舞いには気をつけていますもの。
一条家の人々をいつも見習っていますもの。ええ、本当に。
ですから・・・

私は、見ていませんよ。
尊敬する旦那様が、社長室で職務と見せかけて携帯ゲームに勤しんでいたことなんて。
私は、見ていませんよ。
尊敬する奥さまが、自分でスカートの裾を踏んでつまづいていたことなんて。
私は、見ていませんよ。
尊敬するお嬢様が、席に着いたとき微かに椅子が軋んでいたことなんて。
私は、見ていませんよ。
尊敬するお坊ちゃまが、好きな女の子のリコーダーに手をかけようとしてかけられなかったことなんて。

私は、何も見ていません。ですから、あなたも何も見ていません。一条家は今日も安泰です。少々お酒を飲みすぎたようですね。私ったら、いけませんね。うふふ、やってらんないぜっ!!ちくしょうっ!!・・・おやすみなさい。

家政婦は見なかったことにした。3

家政婦は見なかったことにした。3

今日も見なかったことにした。一条家は相変わらず安泰だ。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-06

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