霊能探偵・芥川九郎のXファイル(26)【ダイレン・シティ編】
第1章 大連旅行
霊能探偵・芥川九郎は、中区の事務所で友人の牧田と話していた。事務所と言っても、古びたビルの一室に過ぎないのだが。
芥川「牧田君。来月、一緒に大連旅行に行かないか?」
牧田は驚いて言った。
牧田「どうしたんだい、急に。大連って・・・中国の大連かい?」
芥川「うん、そう。叔母さんが何かの懸賞で当てたんだよ。大連ペア旅行をね。叔父さん、つまり叔母さんの旦那さんだけど、仕事が忙しくて海外旅行に行く暇もないそうだ。海外旅行に一緒に行ける友人たちも、今回はみんな都合がつかないみたいでね。」
牧田「それでそのペア旅行の権利が、君に回ってきたんだね。大連かぁ。中部国際空港からの直行便なら約3時間で行けるね。」
芥川「牧田君は大連に行ったことがあるのかい?」
牧田「うん。大学時代の友人が、大連で日本語教師をしているんだ。数年前に1度、旅行がてら会いに行ったことがあるんだよ。」
芥川「パック旅行じゃないから、牧田君は別行動でその友人に会いに行けばいいよ。」
牧田「一体、どんな日程の旅行なんだい?」
芥川「大連市内のホテルで1泊2日の旅さ。往復の航空券と宿泊券みたいなものだけだよ。」
第2章 語学の学習
牧田は腕を組みながら言った。
牧田「1泊2日か・・・行って帰って来るだけになりそうだね。」
芥川「うん。まぁ、懸賞の賞品だから贅沢なことは言えないよ。」
牧田「僕は別行動で大丈夫だけど、芥川君は一人で大丈夫なのかい?」
芥川「ハハハッ。お互いもう30代のいい年したおっさんなんだから・・・そんなこと心配しなくても大丈夫だよ。」
牧田「僕は大学時代、第二外国語で中国語を選択して、社会人になってからも趣味で中国語の勉強を続けてきたけど、芥川君は・・・」
芥川「僕も牧田君に感化されて、趣味でいくつか外国語を勉強したりしているんだ。英語、スペイン語、中国語・・・」
牧田「そうか。それなら大丈夫そうだね。」
芥川「あぁ、そうだ。叔母さんが焼いたケーキの残りが冷蔵庫にあったんだ。牧田君、一緒に食べよう。能年君、コーヒーを淹れてくれ。」
能年(鎧)はコクッと1回、頷いてコーヒーを淹れる準備を始めた。能年は鎧の妖怪で、芥川の助手である。彼の事務所に住み込みで働いている。
牧田「芥川君は本当に、いろいろなことを勉強しているね。」
芥川「語学は特に脳に良いんだよ。使用する言語により、脳内の別の部分を働かせたり、ニューロン(神経細胞)ネットワークの接続パターンを変化させたりできるからね。」
牧田「なるほど。その話、どこかで聞いたことがあるよ。」
第3章 大連市
こうして、芥川と牧田は大連市にやって来た。空港からタクシーで宿泊するホテルに直行してチェックインした。その後、彼らはそれぞれ夜まで別行動をとることとなった。1泊2日なのだ。急がないとすぐに日が暮れて、貴重な1日が終わってしまう。
牧田「それじゃあ、僕はさっそく大連市内の友人宅へ行ってくるよ。」
芥川「うん、ごゆっくり。旧交を温めてくるといいよ。」
牧田はそそくさとホテルの部屋を出ていった。芥川は彼を見送った後に、一人つぶやいた。
芥川「さぁ、行くか。僕の方は大連一人旅だ。」
芥川はまず地下鉄に乗り、星海広場と星海公園に行くことにした。駅から星海広場へ行き、広場を少し散策してから星海公園へ向かった。星海公園で海を眺めた後に、黒石礁で昼食を食べた。昼食後に、黒石礁をゆっくり散策した。
芥川「日が傾いてきた。あと数時間も経てば日が暮れる。あっと言う間の大連旅行になりそうだ。」
彼はぶらぶら歩きながら、星海公園へ戻った。そこからもう一度、星海広場へ行った。周囲の高層ビル群を眺めながら歩いていると、思いがけない人物に出会った。
芥川「彼女は・・・」
なんと、彼の数メートル前をフォーが歩いていたのだ。
第4章 シンデレラ・フォー
芥川は半信半疑だったが、どう見てもフォーに間違いない。
芥川「すいません!あなた、フォーさんじゃないですか?」
フォー「芥川さん?本当に奇遇ですね!」
彼女は、日本唯一の公的な超能力研究所・ハルサメ研究所の研究員である。先日、芥川と牧田は日本超能力協会(NCK)名古屋支部の総会に出席した。彼らは、総会後の立食パーティーで初めてフォーに出会ったのだった。
芥川「私は牧田君と一緒に、1泊2日の大連旅行を楽しんでいるんです。」
フォー「そうなんですか。牧田さんは、どこにいらっしゃるんですか?」
芥川「牧田君は、大連の友人に会いに行きました。私は夜まで、一人で大連を観光する予定です。フォーさんも観光ですか?それともお仕事で?」
フォー「・・・・・・」
芥川「あぁ、すいません。フォーさんは、ハルサメ研究所で極秘の研究をしているので、お仕事のことは話せませんよね。」
フォー「いえ、そんな極秘というほどでもないんです。私はサイコアーマーを研究しているんです。」
芥川「サイコアーマー・・・軍事研究ですか。多分、超能力を軍事利用するための装備品か何かですね。」
フォー「さすが、芥川さん。でも、この話はもうやめましょう。私も夜まで自由時間です。一緒に大連を観光しましょう。」
芥川「・・・そうですね。ありがとうございます。実は、一人でちょっと心細かったんです。フォーさんがいれば心強いです。」
こうして芥川は思いがけず、フォーと夕食まで一緒に食べることになった。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(26)【ダイレン・シティ編】