霊能探偵・芥川九郎のXファイル(25)【フォー・ハルサメ編】

第1章 ハルサメ研究所

 霊能探偵・芥川九郎は、彼の事務所で友人の牧田と話していた。事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「僕は、牧田君にハルサメ研究所について話したことあったっけ?」
牧田「芥川君から直接聞いたことはないけど、ハルサメ研究所は知っているよ。我が国唯一の公的な超能力研究所だろう。」
芥川「そう。ハルサメ研究所は歴史ある機関だ。戦前に、春雨宮家が私的に出資して設立された法人がその前身だ。」
牧田「噂に過ぎないけど、春雨宮家は代々、能力者を輩出する家系だと言われているね。」
芥川「その噂の真偽は定かではないけどね。そして、戦後はムラサメ財団として存続を許され、超能力研究も継続してきたんだ。その超能力研究所の通称がハルサメ研究所だ。実は、僕もハルサメ研究所の下部組織である日本超能力協会(NCK)の会員なんだよ。」
牧田「日本超能力協会・・・NCKの名前は聞いたことあるけど、詳しいことは知らないなぁ。」
芥川「今日は僕が紅茶でも淹れようか。ティーバッグだけどね。助手の能年君は、叔母さんと買い物に出かけているんだ。」
牧田「そうなんだ。」

第2章 NCK名古屋支部

 芥川は紅茶を淹れた後に、牧田との会話を再開した。
芥川「えーと、何の話をしていたっけ?」
牧田「君がNCKの会員だという話だよ。」
芥川「そうそう。明日、NCK名古屋支部の総会があるから、一緒に来ないかい?総会後に立食パーティーがあるんだよ。」
牧田「僕は能力者じゃないけど、出席して大丈夫なのかな?」
芥川は紅茶を一口すすってから言った。
芥川「超能力者じゃなくても、年会費さえ払えば加入できるんだ。会費もそんなに高額ではないから、総会やセミナーの後に開催される立食パーティーに参加すれば元を取れるよ。」
牧田も紅茶を一口すすってから言った。
牧田「NCKがそんな緩い組織だったとは知らなかったよ。」
芥川「そんなに厳格な組織じゃないんだよ。研究所の方は厳しいみたいだけど。そもそもNCKは、超能力に対する国民の理解向上のために設立された、研究所の下部組織だ。」
牧田「千里眼の能力者・安形クリステルや魔術師・守屋愛も出席するのかな。」
芥川「安形さんは高校生だから出席しないんじゃないかな。守屋先生は魔法学会を追放された身だから、出席しないだろうね。」
牧田「魔法学会に所属していないからかい?でも、NCKは緩い組織みたいだから、その気になれば出席できそうなもんだけど。」
芥川「守屋先生もわざわざ出席して、魔法学会の連中と顔を合わせたくないんだろう。」
牧田「なるほど。」

第3章 総会後の立食パーティー

 翌日、芥川と牧田はNCK名古屋支部の総会に出席した。芥川の予想通り、安形クリステルと守屋愛は出席していなかった。総会は滞りなく終了し、立食パーティーが始まった。
芥川「さぁ、食べたいものを食べて、さっさと帰ろうか。」
牧田「そうだね。バイキング方式みたいだから各自、好きなものを取ってきて食べよう。」
芥川と牧田はそれぞれ、好きな料理を取りに行った。
芥川「あれは・・・」
芥川は一人の美しい女性に目を奪われた。向こうも芥川の視線に気が付き、彼を見つめ返した。芥川は彼女に声をかけた。
芥川「こんにちは。私は名古屋の霊能探偵・芥川九郎と申します。どこかでお会いしたような気がしたので、ついつい見つめてしまいました。」
女性は微笑みながら芥川に答えた。
女性「こんにちは。私はハルサメ研究所のフォーです。」
芥川「フォー・・・さん?」
フォー「フフフッ。ごめんなさい。フォーというのはハンドルネームみたいなものです。今携わっている研究が一段落するまで、外部の人間と交流する際には本名を使用しないよう、研究所から言われているんです。」

第4章 フォー・ハルサメ

 芥川は驚いた。研究所から本名の使用を制限されるような人物と出会ったのは初めてだった。
芥川「じゃあ、フォーというハンドルネームは研究所から付けられたんですか?」
フォー「いえ。私が自分で考えました。フフフッ。私、ベトナム料理のフォーが好きなんです。」
フォーが笑いながらそう言ったので、芥川もつられて笑いながら言った。
芥川「ハハハッ。フォーって、ベトナム料理で用いられる白いライスヌードルのことですよね。じゃあ、あなたはフォー・ハルサメというわけですね。」
二人が談笑しているところへ、牧田が料理を持ってやって来た。
牧田「芥川君も隅に置けないね。僕が料理を取りに行っている間にナンパかい?」
芥川「うん、まぁね。彼女は研究所のフォーさん。フォーさん、彼は私の友人の牧田君です。」
フォー「牧田さん。よろしくお願いしますね。」
牧田「こちらこそ。よろしくお願いします。」
牧田は芥川に気を使って言った。
牧田「芥川君。僕は他のテーブルで、超能力研究者たちと交流してくるよ。」
牧田はそう言うと、向こうのテーブルに歩いていった。芥川はしばらくフォーと談笑し、楽しい時間を過ごした。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(25)【フォー・ハルサメ編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(25)【フォー・ハルサメ編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-24

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  1. 第1章 ハルサメ研究所
  2. 第2章 NCK名古屋支部
  3. 第3章 総会後の立食パーティー
  4. 第4章 フォー・ハルサメ