zoku勇者 マザー2編・22

フォーサイド編・8

「この直通エレベーターで最上階のモノトリーのいる
部屋まで行ける筈だ!」
 
「急ごう!」
 
エレベーター内にはエレベーターガールのお姉さんも
もはや乗っていなかったが、二人は構わず急いで
エレベーターに乗った。……やがて、最上階まで辿り着く。
……エレベーターから降りた途端、再び館内放送が
流れ始める……。
 
『♪ぴんぽん、ぱんぽーーん、再びお知らせだよー!あのね、
爺と団子チャンはね、実は社長室にはいないんだよ!親切な
ボクがお知らせしてあげる!だって、君達はもうすぐ地獄に
行くんだから、これぐらい教えてあげないと可哀想でしょ?
本当は別の部屋に閉じ込めてあるんだよ!……これ、ほ・ん・と!
早く助けたかったら一番この階の一番右隣の部屋においでー!
キシシシ…、それから、プレゼントも用意しておいたよ!護衛用で
爺が科学者達に開発させた、優秀なロボット君達が、君達を
おもてなししてくれる筈さ!じゃあね、頑張って死ねよ!』
 
再び、アナウンスが途切れた……。
 
「……畜生、あのブタ野郎、ベラベラと言いたい放題
言いやがってからに……、なあ、アル、お前はどう思う……?」
 
「罠……、だと思う、多分……、だけど……」
 
しかし、あのポーキーの事なので、本当に何を考えているのか
油断が出来ない為……、もしかしたら本当にアイシャ達を別の
部屋に移動させて拉致している考えも捨てきれずどう動いたら
いいのかジャミル達は苦笑する……。
 
「せめて、アイシャがテレパシーで俺達にメッセージを
飛ばしてくれたら……、でも、この頃何の声も聞こえなく
なっちまったしな、……アイシャ……、一体どうしたんだよ……」
 
「……ジャミルっ!気を付けてっ!」
 
「!?」
 
アルベルトの声でジャミルがはっと我に返る、気づくと……、
自分達を取り囲んでいる大量の変なロボットが……。侵入者を
決して逃さない、見張りロボットだった。
 
「な、何だこいつっ!」
 
「……アナタノコードナンバーヲイッテクダサイ……、10秒イナイニ
イッテクダサイ、10・9・8・7・6・5・4・3・2・1」
 
「これがおもてなしかよ!……ふざけやがって!!」
 
ジャミル、ヨーヨーを構える、アルベルトもハイパービームと
ペンシルロケットで、次々と見張りロボットを破壊していくが……。
 
「ジャミル、……倒しても倒しても、隙を見せるとこいつら
すぐに仲間を呼んでしまうよ!」
 
「コードナンバーヲノベヨ!」
 
見張りロボがいきなりアイスピックを取り出し、アルベルトの
利き腕の左腕を思い切り刺した。
 
「……ああっ!?」
 
「アルっ!……んなろおーー!!」
 
ジャミル、ロボの身体にヨーヨー攻撃をブチ当て、ロボを
転倒させるとアルベルトを救い出す。が、ロボットは
すぐに起き上がる。
 
「……い、いた……」
 
「……腕、出血してんな、大丈夫か!?ライフアップ
掛けてやるよ……、ほら……」
 
「これぐらい……、平気さ、アイシャはもっと恐い思い
しているんだから……、あまりPPを無駄に使わない方が
良いんだ……、これからの戦いの為にもね……」
 
呻きながらもアルベルトは再びハイパービームを構え直す。
しかし、腕の痛みで辛そうである。
 
「けど、このままじゃキリがねえよ、どうすりゃいいんだ……」
 
ふと、目の前に小部屋が。ジャミルは一旦此処に
避難しようと思い付く。
 
「アル、取りあえず此処に入ろうや、焦っても駄目だぜ!
いい考えは思い浮かばねえ、いつもオメーが言ってる事だろ?」
 
「……ジャミル、分ったよ……」
 
二人は小部屋に避難し、ドアの隙間から……、ロボット達の
行動を覗きつつ様子を覗う。
 
「コードナンバーイイナサイ!」
 
「……」
 
ロボット達は、物凄い勢いで廊下を走って行った。ジャミル達を
探している様子である。
 
「多分、ロボット達の身体の何処かに電源を切れるスイッチが
有るんだと思う、でも、そんなもの探してる余裕もないし……」
 
「はあー、ややこしいなあ~、俺、そういうの苦手だわ……」
 
考えるのが苦手で、思うよりもまずは行動するジャミル……、
何かを決心した様にアルベルトの方を振り返った。
 
「ジャミル?」
 
「アル、俺、やっぱり社長室の方を探してみるよ、どうも
ポーキーの野郎は信用出来ねえ……、やっぱりアイシャは
社長室の方にいる……、そんな気がするんだ、俺の感だけどな……」
 
「うん、君がそう思うのなら大丈夫だよ……、信じよう、
社長室へ行こう……」
 
「ああ……」
 
二人はもう一度、廊下を覗く、……見張りロボ達は一体
何処まで行ってしまったのか、姿が見えなくなっていた。
 
「今のうちだっ……!」
 
再び社長室目指し、廊下を走り出す。……そんな二人の様子を
……監視室のモニターから眺めている人物がいた。父親のアンブラミ、
馬鹿息子のポーキーである。
 
「うーん、やっぱり引っ掛からなかったか、ちっ、バカの癖に、
生意気に感だけはするどいな!」
 
「……おい、ポーキー、どうするんだ!このままだと奴ら、
社長室の方へ向かってしまうぞ……!何とかせんか!」
 
「……キシシ、んじゃあ、いよいよアレを動かさせて貰う時が
きましたかねーっと、あ、ぽちっとな!」
 
ポーキーが持っていたリモコンの操作ボタンをぽちっと押した。
 
「……あ!」
 
ジャミルの手首から……、巻いてあった赤いリボンが
するりと外れて下に落ちた。慌ててリボンを拾い上げ、
顔を上げると……、目の前にいたのは……。
 
「ガチャガチャ、ピーピー、ボロボロ、ドンガラガッシャン、
ポッピー!」
 
「こ、こいつはっ!」
 
先程のロボよりも一回り小さい小型ロボットであったが……。
 
「ジャミル、この部屋が社長室だよっ!!」
 
アルベルトの言葉に部屋の前の表札を眺めると……、
確かにinモノトリールームと表示してある……。
……等々、やっと……、アイシャの近くまでやって
来たのであった。
 
「なるほどっ!この中にアイシャと爺さんがいるんだな、
よーし、待ってろっ!すぐに助けるかんな!!……アイシャーーっ!!」
 
「ユダン、スルナノシ」
 
「うわっ!?」
 
……しかし、社長室の前に立ちはだかる最悪の強敵……、
油断ロボが二人の行く手を阻み、ミサイルを発射する!
ジャミルは慌ててサイコシールドを張ると、ミサイルの
ダメージを軽減した。
 
「こいつがこの部屋の護衛だな……、やっぱりこの奥に
アイシャがいるのは間違いねえな!」
 
「ここさえ突破出来れば……、アイシャに会えるよ!
もう少しだよ、頑張ろう!」
 
「よーしっ!……絶対負けねえぞ……!」
 
 
そして、……社長室のアイシャとモノトリーは……
 
 
「……モノトリー……さん?」
 
「おお、アイシャ……、気が付いたか、良かった……」
 
モノトリーがアイシャを抱きしめ、アイシャはモノトリーの
顔を見上げた……。アイシャを縛っていた縄だけは拘束されて
いなかった。モノトリーが外してくれたのである。
 
「感じるの……、大丈夫……、すぐ近くまで……、助けに
来てくれてるの……、ジャミルとアルが……」
 
「そうか、君達の仲間が……」
 
「絶対……、また、会えるよ……、ね……」
 
アイシャは胸の前で手を組み願いを込め、小さく祈る……。
……しかし、アイシャの祈りも空しく……、ジャミル達は……
たった一体のロボットに苦しめられていた……。
 
「う、畜生、つ、つええ……」
 
「何度ダメージを与えても……、すぐにダメージを
回復されてしまうよ、……あっ!ま、またっ!」
 
たった一体だけのロボットが……、見張りロボの様に
どうしても破壊する事が出来ず……、ジャミルと
アルベルトは窮地に追い込まれていた。油断ロボは
むしゃむしゃと……、手巻き寿司を食べ始めた。
幾らダメージを与えてもすぐに手巻き寿司を
取り出し食べ始める。するとあっという間に凄い
スピードでHPを満タンにされてしまうのである。
 
「オデカケデスカアー!?レレレノレー!……、ア、
電池カイニイカナキャ!」
 
油断ロボは傷ついて唸っている目の前のジャミル達を
尻目に辺りを掃除し始めた……。
 
「……何でだよ、もう少し、もう少しなのに……」
 
アイシャはすぐ目の前にいる、……なのに、たった一枚の
隔てた扉とロボットが……、遮り再会の邪魔をしているので
あった。ジャミルは悔しくて焦り出す……。
 
「……ま、また!!」
 
アルベルトが叫ぶ、……後ろを振り返ると……、いつの間にか
先程の見張りロボ軍団も……再び集まって来ていたのであった……。
 
「もう駄目かも……、僕のペンシルロケットも、もう……」
 
「此処までか……、もう、此処までなのかよ……」
 
ジャミルが下を向いて唇を噛んだ……。途端……。
 
「お前らああーっ!何落ち込んどるんやーっ!男やろがーーっ!!
それでも珍珍ついとんのんかいなあーーっ!?」
 
「……こ、この声……!?」
 
「まさか……」
 
「そや!諦めたらアカンでぇーーっ!カッカッカ!!」
 
……突如、男達が応援に駆け付けバトルに参戦する!トンズラ
ブラザーズだった。ドカドカ乱入して来たトンズラ達は見張り
ロボット達を持っていた鉄パイプ、金属バットを力いっぱい
振り回し壊し捲る。そして、ラッキーが油断ロボの後ろに
素早く回ると電源を落とした。……途端に油断ロボは動きが
止まった……。
 
「やっぱりスイッチは後ろにあったか、うーん、凄いのう、
わて!」
 
「トンズラさん達!……あ、有難うございます!!」
 
「……お、おっさああ~~ん!あてっ!!」
 
「……たくっ、この馬鹿ジャミ公がっ!わしらを騙して
お前らだけで侵入しようとは何事かっ!!」
 
ジャミル、……怒りのラッキーに頭を一発ポカリと
殴られる……。
 
「ほんまに、わしらが間に合ったから……、良かった様な
ものの……、のう……」
 
「丁度、ビルに入って行く君達を見掛けたからね、本当に
間に合ってよかったよ……」
 
「この先の部屋から……、何だか女の子の声がするね、
普段は目立たないおれだけど、それぐらい分るよ!」
 
「……だあーってよう、おっさん達に……、迷惑掛けたく
なかったんだよ……、ブツブツ……」
 
ジャミルが口を尖らせながら殴られた頭を摩り、ラッキーの
方を見た……。
 
「たく、迷惑掛けてんのはお互い様じゃ言うとろうが!
似合わん事言うな!それよりも、はよう、アイシャちゃんに
会いに行ったれや!……説教はまたそれからじゃ!」
 
「おっさん達……、ああっ!ありがとな!」
 
トンズラ達はジャミル達の顔をみて笑って頷いた。
……ジャミルとアルベルトは駆け出す、アルベルトが
ちょっと鍵マシンを使い、鍵の掛っているドアを
急いで開ける……、其処にいたのは……。
 
「……ジャミル、アル……、来てくれた……、やっとまた……、
会えたね!」
 
「アイシャっ!……へへっ、ごめんな、待たせちまって!」
 
「無事で良かった……、本当に……!!」
 
「ジャミル、アル……!有難う……、私……、泣かなかったよ、
……またきっと……、ふ、二人に……、ぐすっ、ひっく……、あ、
会えるって信じてたもん……、ふ、ふぇ……」
 
「泣いてんじゃねえか……」
 
「な、泣いてないもん!……泣いてないったらっ……!
……ジャミルーーっ!……アルーーっ!会いたかったよーーっ!!」
 
……いつもの強がりアイシャであったが……、二人に飛びつくと、
堪え切れなくなったのか、思い切り涙を流した……。
 
「……」
 
「モ、モノトリー……!」
 
「!!」
 
アイシャの側に……、疲れ切って虚ろな目をし、しゃがみ込んで
いる老人がいた。……ムーンサイドでマニマニの像の側にいた老人……、
モノトリー本人であった。
 
「……ジャミル、アル……、モノトリーさんは本当は
悪い人じゃないの!……お願い、話を聞いてあげて……」
 
「アイシャ、分かってる……、心配ねえよ……、もうマニマニの像も
破壊したし……、話はちゃんとしてくれる筈だ……」
 
「ジャミル……」
 
ジャミルは頷き、モノトリーと話をしようと近づいて行った……。

モノトリーは俯いたまま、ジャミルの顔を見ず、
口を開き始めた……。
 
「私の負けだ……、もう何もかも終わりだよ、だから君達に
全て話そう……、これまでの儂の愚かな経緯と、自分が
知っている事のすべてをね……」
 
「モノトリーさん……」
 
アイシャも心配してモノトリーの側に来る。モノトリーは
漸く顔を上げ、ジャミル達の方を見た。
 
「……貧乏で惨めで……毎日苦しい日々だった……、私は
嫌だった……、あの頃の私は……、何の取り柄もない只の
小さな会社の平社員……、上司に毎日文句を言われ……、
顎で扱き使われ……、碌に仕事もこなせず……、毎日只管
惨めな思いを繰り返していた、あの頃を思い出したくも
なかった……」
 
「と、豆腐屋じゃなかったんか……、あて!」
 
「とにかく、モノトリーさんの話を聞かなきゃ!」
 
アルベルトが肘でドンとジャミルを突っついた……。
 
「……そんな時、マニマニの像という物が有ると言う噂を
聞いた……、それがあれば思いのままに何でも力を操れる
事が出来、絶大な権力を手に入れられると、本当に最初は
半信半疑だった……、だが、儂は実際にそれを持つ者を目の
あたりにしてしまった……、そしてその男から像を強引な
手段で奪った後……、秘密を知っていた彼を見つけだし、
始末したのだ……」
 
(トンチキさん……、あの人も結局は……、マニマニの犠牲者に
なってしまったんだわ……)
 
「……」
 
「像を手に入れた儂は本当に不思議なように絶大な権力を
手に入れ、選挙に当選し市長にのし上がり……、民を苦しめ、
フォーサイドを支配する様になった……、だが、頭の中にある
言葉も頻繁に流れてくるようになった……、悪魔の異星人
ギーグからの指令……、すなわち……、ジャミル、ギーグの
邪魔をしている君達を殺す事だ…………マニマニの悪魔は
人に幻をみせる、そして邪悪な心を増し、人々に悪魔の
パワーを齎すのだ、次第にマニマニの力が恐ろしくなった
儂は、ボルヘスの酒場の倉庫に像を隠し、時々拝みに
行っていた……」
 
「爺さん……」
 
「幻の中には君達の名前も含まれていて、ジャミル君、
その中に君の名前もあった、ジャミルをお前の手で
食い止めろ、サマーズへ行かせるな、ピラミッドを
見せるな……、とか……、儂にはこれ以上の事はよく
分らぬが、ギーグは君達をサマーズへ行かせぬ様に
したいらしい、だがやはり君達はサマーズへ行くべき
なのであろう……、君達が像を壊してくれたお陰で儂も
漸く悪魔から解放される事が出来た、心からお礼を言うよ……」
 
「……」
 
「……そして、アイシャ……、君が……、君の優しい素直で
真っ直ぐな心が……、儂の心の迷いを断ち切り、目を
覚まさせてくれたのだよ……、君に出会えて儂は本当に
心から感謝している……」
 
モノトリーはアイシャを優しい眼差しで見つめた。そして、
ジャミルに話し掛ける。
 
「……アイシャは……、本当に優しい子だったよ……、
こんな儂を助けてくれ……、命を救ってくれた……、
いつも側についていてくれた……、君の様な優しい子を……
儂は手に掛けようとしていたんだ、謝っても謝り切れん……、
だが今はこれしか出来ないのだ……、本当に……どうか
許しておくれ……」
 
「モノトリーさん……、私にも心から大好きで、優しい、
大切なおじいちゃんがいます、だから……、モノトリーさんを
見ていると……、おじいちゃんを思い出していたの……、でも
モノトリーさん……、いつも心の中で苦しんでいる声が聞こえたの、
本当はこんな事したくないのにって……、でも、どうしたら
いいか分からないって、だから私……、モノトリーさんに……、
これ以上悪い事はして欲しくなかったの……」
 
「……アイシャ……、儂は今からでも……、罪を償えるだろうか……」
 
「大丈夫……、あなたなら、きっと……、やり直せるわ……」
 
「……有り難う、有り難う……、儂はこれから警察に
出頭するよ、……もしも、出て来られたその時が……」

「モノトリーさん……、はい……」

モノトリーは涙を流し、アイシャを心から抱擁する。
その姿はまるで本当の祖父と孫の様であった。
 
「ジャミル君達も……、これまですまなかったね……、
サマーズは海の向こうだ、儂のヘリコプターをプレゼント
しよう……、どうか使ってくれたまえ……、ヘリポートを
開けてあげよう」
 
「ええ、いいのか!……爺さんっ!!」
 
「今はこんな事でしか謝罪が出来ないからね……、ヘリポートは
ビルの屋上に有る、この部屋の隠し扉から行ける……、さあ、
行きなさい……、ジャミル君、君は強い子だ、君ならきっと、
どんな困難な運命も切り開ける、アイシャも……、身体に
どうか気を付けてな……、今まで有難う……、元気でな……」
 
「はい、……モノトリーさんも……、さようなら……」
 
「よっしゃよっしゃー!トンズラブラザーズのジャミ公達を
見送る会やーー!!」
 
「カカカカカー!行くでええーーっ!!」
 
「ちょ、ちょっと、待……うわああーーっ!!」
 
「きゃああーーっ!?」
 
「な、何か忘れてる気が……、あーーっ!!」
 
トンズラブラザーズは……、ジャミル達を担ぎ上げると……、
そのまま隠し扉を抜け屋上まで走って行ってしまった。
そんな慌しい賑やかな連中の様子を……、モノトリーは
これまで見せた事がない様な温かな笑顔で見送っていた。
 
 
「さようなら、アイシャ……、儂の大切な孫……」
 
 
「……お?おおお?」
 
「なんや、ヘリの野郎、勝手に動いとるで、なあ、操縦士も
付けてくれたんのと違うか?」
 
「カカカ!サービスがええのう!」
 
急いで屋上のヘリポートに向かうと……、ヘリコプターは既に
動き出していた。……誰かが乗っている様であったが。
 
「けけけ!うーらららっ!」
 
「……げげっ!!」
 
「きゃあ!」
 
「……ポ、ポーキー!」
 
ヘリコプターの窓からにゅっとブタが顔を出した。アルベルトが
何か忘れている様な……、と、呟いたのはこいつの事であった。
 
「やーい!とんま野郎の馬鹿ジャミル!じたばたしてももう遅いぜ!
完全に善人爺に戻っちまったモノトリーにはもう用はないね!おれ、
ヘリコプターに乗れてうれしいぜ!じゃあね~、おけつぺんぺんぺん!」
 
ポーキーは窓から更に汚いケツを出すとジャミル達に向け、そのまま
ヘリと共に姿を消した……。ジャミル達は開いた口が塞がらず……、
何が起きたのかも分らず……、三人で暫くその場にぼけーっとしていた。
 
「たくましいブタやのう……」
 
「ほんまじゃ……、将来有望やで……」
 
「……はっ!ポ、ポーキー、てめえこのブタっ!!泥棒っ!!
戻ってきやがれーーっ!!おーーいっ!!……オメーみてえな
デブが乗ったら絶対にヘリが墜落すんぞっ!!」
 
「ジャミ公、残念やが諦めや、もう行っちまったで……」
 
ラッキーが宥める様にジャミルの肩に手を置いた。
 
「……ちっ、畜生……!」
 
「……あ、ああ……」
 
「アイシャ、ど、どうしたのっ!?」
 
アイシャが急にその場にしゃがみ込んでしまい、アルベルトが
慌てて声を掛けた……。気付いたジャミル達も慌ててアイシャの
側に駆け寄る……。
 
「大丈夫か、アイシャっ!!」
 
「うん、……ちょっと目まいがしただけ、だ、大丈夫よ……」
 
「こらアカン!……おい、ジャミ公達、ホテルに一旦戻ろうや、
アイシャちゃんを休ませんと!」
 
「ああ!アイシャ、すぐにホテルに連れてくから!」
 
「……有難う、皆もごめんなさい……」
 
「何言うとんねん!監禁されて数日間、散々大変なコワイ思い
したんやろ、身体、はよう、休ませんと!」
 
「……ジャミ公達を見送る会はもうちょっと見送りになりそう
じゃのう!カッカッカ!」
 
「ふふ、トンズラさん達ってば……」
 
アイシャがくすっと笑った。……久しぶりのアイシャの笑顔で
あった。ジャミル達はトンズラのトラベリングバスに乗せて貰い、
ホテルまで急いだ。
 
 
「……眠ったよ、アイシャの奴、漸く落ち着いたみたいだ……」
 
「♪それは良かった~!はあ、これでおれも、落ち着いてまた
歌が歌えるよ!」
 
「ほんまじゃの、……わしゃ、何だかうれしゅうて、うれしゅうて、
……泣けてきたわい……」
 
「うん、本当に良かった、皆に会えて、やっと安心したんだね……」
 
ゴージャス、グルービー、オーケーも心からアイシャの無事を
喜んでくれたのである。
 
「みんな、ごめんよ……、マジで俺ら心配ばっか掛けてさ、
へ、へ……、でも、嬉しいよ、ありがとな……」
 
ジャミルが呟くと、ラッキーが部屋に顔を出した。
 
「おい、ジャミ公ちゃん、ちょい、カモーン!」
 
「ん……?さ、最近おっさん達まで俺の事、頻繁にジャミ公って
言う様になったなあ~……」
 
「ジャミ公なんだからしょうがないやろ、それよりも、昼間の
続きやさかい、ちょいとこちらにいらっしゃい」
 
「だから……、な、何だよ、……その顔はよ……」
 
「わしは元々こういう顔やぞ、失礼やなあ!」
 
……なんとなーく、やばい気がして……、ジャミルが後ずさる……。
 
「まだ話はおわっとらんのやでえー!おう、よくもわしらを
騙して勝手にモノトリーんとこに乗り込もうとしたな!
お仕置きやで、はよ、ケツだしいな!」
 
「ちょっと待っ……!は、話せばわかるうーー!?」
 
「おう、お前らもやったれ、皆でジャミ公のケツドラムや!!」
 
「おーーーう!!」
 
……その夜……、ジャミルはトンズラ達全員から、リズミカルに
尻叩きをされた。さすが、音楽家である……。ちなみに、
アルベルトはどうしても行ってみたかった、恐竜博物館に
個人で足を運び、逃走していた。何はともあれ、アイシャも漸く
無事復帰し、又新しい旅へのスタートでもあった。

夜中、……ジャミルはトンズラ達に寄ってたかって叩かれた尻が
まだ痛く……、眠れないでいた。恐竜博物館からすぐに戻って来た
アルベルトは誤魔化す様にすぐに床についてしまった。明日、彼も
話したい事があると言っていたものの。
 
「……ジャミル、私よ……、ごめんね、こんな夜中に、
入っていいかしら」
 
アイシャがドアを小さくノックした。
 
「アイシャか?……いいよ、入れよ」
 
「お邪魔します……、良かった、まだ起きていてくれたのね……」
 
「ん?何となくな……、目が冴えちまってさ」
 
ケツが痛いので、寝られない……、とは言えず……。
 
「……あのね、昼間に私、少し具合が悪くなったでしょう、
あの時、サマーズに行くにはスリークへ戻る必要があるって……、
強く感じたのよ」
 
「そういや、スリークに確かアルが乗ってきた変な乗りもんが
放置してある筈だよな……、確か、スカイウォー……、そうか!
そいつを又修理すりゃ……」
 
「ええ、サマーズまで行けるかも知れないわ!」
 
「よし!スリークまで行くか!」
 
「また少し戻らなくてはいけないけれど、大丈夫?」
 
ジャミルはアイシャの方を向いてにっと笑った。
 
「俺さ、すんげえの、ドコドコ砂漠の猿から教わったんだよ!
テレポーテーションα、略して、テレポートだ!」
 
「……テレポート?」
 
「そう、一度行った場所なら、大概の場所に一瞬で移動できんのさ!」
 
「わあ!……すごいのねえ!テレポート、見たい見たーい!」
 
「よし、明日な、見せてやるよ!」
 
「うん!楽しみっ!」
 
(うわ、可愛いなあ~……)
 
段々と又、いつもの明るさを取り戻し、元気になってきた
アイシャにデレデレするジャミ公。
 
「う、……、ねえひゃん……、頭、叩かないで……、痛いよう……、
う~ん……」
 
爆睡しているアルベルトが寝返りを打った……。
 
「プ、ねえひゃんだと……、プッ!」
 
「笑っちゃ駄目よ、……えーと、アルにもお話……、一緒に
聞いてほしかったんだけど……」
 
「明日、起きたら俺が話しておくから、アルの方も、何か
話したい事があるみたいでさ」
 
「そうなんだ、何のお話かしら……、あ、それじゃ、私、
別部屋に戻るね……」
 
「あ、ちょっとお待ち!」
 
「?」
 
ジャミルはいそいそと、荷物を漁り、中から何かを取り出し、
アイシャの前に差し出した。
 
「ジャミル、これ……」
 
「ああ、やっとお前に返せるよ……」
 
ずっと、自分の手首に巻いていたアイシャの……、
赤いリボンだった。
 
「……持っていて……、くれたんだね……」
 
「お前、デパートで連れて行かれた時、落としただろ?
あれから俺が拾ってさ、ずっと右手首に巻いてたんだ、俺も、
もうきつくて弱音吐いたり……、嫌になっちまった時あったけど……、
お前のリボンのお蔭で俺、随分頑張れたよ……」
 
アイシャはジャミルから再び自分のリボンを受け取った。
目には涙が滲んでいた。
 
「ありがとう……、ジャミル……、嬉しい……」
 
「い、いいって!へへ、それより、早く又、付けてみろよ!」
 
「うん!……えへへ!似合うかな……、リボンさん、久しぶりだね……」
 
「よしっ!これで完璧だな!」
 
ジャミルとアイシャは顔を見合わせて笑った。こうして又
いつものスタイルのアイシャが出来上がり何もかも元通りに
なったのであった。
 
 
そして、翌日……、ジャミル達はトンズラブラザーズが
滞在している部屋に行くと、昨日、アイシャが目まいを感じ、
具合が悪くなった時の事を話した。
 
 
「ほうかのう、お前ら今度はスリークへ戻るんかいのう……」
 
「うん、色々ありがとうな、この街でも色々とあったけど、
結構スリルあり過ぎて、それも又楽しかったよ……」
 
「君達なら、地球の裏側にでも何処へ飛んでもきっと
目立つんだろうね、おれは目だたないけれど……」
 
「……♪やっぱり、お別れは~、淋しいねえ~……」
 
「そうじゃのう、……なんじゃ、わし、最近どうものう、
涙もろくなってもうたのう、齢じゃけんのう……」
 
「ナイスさん、オーケーさん、ゴージャスさん、
グルービーさん、……本当にお世話になりました……」
 
アイシャ、涙ながらにトンズラ達にお礼を言う……、と、
ジャミルが首を傾げる。誰か後一人足りない……。
 
「そ、そう言えば、……ラッキーさんは……?」
 
思い出した様にアルベルトが口を開き、ジャミルがはっとした。
ラッキーの姿が何処にも見えない……。
 
「あの、……ラッキーのおっさんは?」
 
しかし、ジャミルの言葉を聞いていないのか、ナイスが
ベラベラ喋り出した。
 
「よし、お前らをちゃんと又、わしらがスリークまで送って
行ってやるさかい、安心してええぞ!カカカ!」
 
「え……、で、でも……、大丈夫だよ、おっさん達だって又、
仕事があんだろ?これ以上、迷惑を掛けらんねえし……」
 
「何を言うとる!わしとお前らはもう、共に戦火を潜り抜けた
戦友やないか!」
 
「だけど……」
 
「一緒に行こう、おれ達もまだジャミル達と一緒にいたいからね、
これで本当にさよならしたら今度はいつ会えるか……、分らなく
なってしまうからね……」
 
「♪いっしょにい~、いこう~!重い思いでェェ~、
つくろううう~!」
 
「ほうじゃ、ほうじゃ!」
 
「ジャミル、お世話になろうか……」
 
「うん、私ももう少し、トンズラさん達と一緒にいたいわ……」
 
「アル、アイシャ……、へへ、分ったよ、んじゃ、世話になるかっ!!」
 
「おう、そうこなきゃアカンで!」
 
アルベルトとアイシャの言葉にジャミルが返事を返した。
本当は送って貰わなくても、テレポートでいつでもスリークに
戻る事は可能なのだがオーケーの言葉通り、これで本当に
今度はいつ会えるのか分らなくなってしまう。なので、
トリオはもう少しだけ、トンズラ達に世話になる事にした。
 
「けどな、お前らを送って行けるのは……、ちと、時間が
掛かりそうなんじゃ、……ラッキーの奴がのう……」
 
「あ、まさか……」
 
又思い出した様にジャミルの顔が漂白になった。……どうやら、
ラッキーがこの場にいない事と、出発が遅れそうなのが……、関係がありそうであり……。
 
「あいつ昨夜、生牡蠣に当って、ホスピタルまで緊急搬送
されてしもうたわ!カカカ!折角だから最後にもう少し街を
散策してこいや!もう此処じゃ誰にも追われる心配もないやろ!」
 
「……おお~いい~……」
 
何だか、この街でトンズラと再会した時の様な展開に戻って
しまった様であった。
 
「じゃあ、私お洋服みたあーい!デパートも又、行きたーい!」
 
「おうおう、いってこ、いってこ、アイシャちゃん、折角だから
とびっきりのええ服、ジャミ公に買って貰えよ!遠慮なんか
せんでええからの!」
 
「……お、おっさああ~ん……」
 
「♪はあ~いっ!」
 
「……、ご愁傷様だね、ジャミル……、あ、僕の話の方も後でするからね!
忘れないでよ!ちゃんと聞いてよ!」
 
「……勘弁してくれえええ~!」
 
アイシャもすっかり調子が戻り、いつも通りになった……。
まだまだ、都会の冒険は終わらない……。
 
そして、ジャミル達が騒いでいた頃、朝刊ではこんな三面記事が
紙面を賑わせていた。……勿論、それに気づくことも無く、今日も
トリオの新しい冒険の一日が始まる……。
 
『……都会の孤独な死、サングラス、髭、長髪、……アロハシャツの男性……』

zoku勇者 マザー2編・22

zoku勇者 マザー2編・22

SFC版ロマサガ1 マザー2 クロスオーバー 年齢変更 ジャミル×アイシャ カオス ギャグ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-23

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