霊能探偵・芥川九郎のXファイル(21)【魔獣博士の狂気編】

第1章 手作り餃子

 霊能探偵・芥川九郎は助手・能年(鎧)と共に、事務所のテーブルで餃子を作っていた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。そこへ芥川の友人・牧田がやって来た。
牧田「こんにちは。ニラやニンニクの香りがすると思ったら、餃子を作っていたのか。」
芥川「餡(具)は叔母さんが作ったんだ。僕たちは市販の餃子の皮で包んでいるだけだよ。」
芥川の叔母は、彼の事務所の隣にある服部税理士事務所の先生の奥方である。彼女は、甥っ子の芥川のためにいろいろ世話を焼いてくれる優しいご婦人だ。
牧田「能年君も手伝っているんだね。なかなか器用に包むね。」
能年(鎧)はコクッと大きく頷いた。能年(鎧)は鎧の妖怪で、芥川の助手として彼の事務所に住み込みで働いている。
芥川「牧田君も手伝ってくれ。今日の昼食は餃子パーティーなんだ。君も食べていくといいよ。」
牧田「それなら手伝わせてもらうよ。」
牧田は手を洗い、テーブルの席に着いて餃子作りを開始した。
芥川「今日は何か用があって来たのかい?」
牧田「特に用はないけど・・・先日、半田市で出会ったサキュバスの件、どうなったのか気になってね。」
芥川「あぁ・・・あの件か・・・」

第2章 サキュバス騒動の顛末

 芥川は餃子作りの手を休めることなく、会話を続けた。
芥川「あれから三倉氏は生気を吸われ続け、とうとう倒れてしまったんだ。」
牧田「なんだって!守屋愛が魔物を処理するんじゃなかったのかい?」
三倉は、魔法学会を追放された危険な魔術師・守屋愛に心酔するパトロンの一人である。先日、芥川と牧田は守屋愛の依頼により、三倉に会いに行くことになった。三倉は、自分で召喚したと信じ込んでいるサキュバスと同棲していたのだ。
芥川「僕はちゃんと守屋先生に報告したんだけどね。でも、三倉氏は守屋先生の大切なスポンサーの一人だ。無下に彼の主張を否定するわけにもいかないんだろう。」
牧田「それで、三倉さんは大丈夫なのかい?」
芥川「緊急入院して、しばらく生死の境をさまよっていたらしい。でも、順調に回復して、もうすぐ退院できるそうだよ。」
牧田「そうか、それはよかった。三倉さんの邸宅にいたサキュバスはどうなったんだい?」
芥川「守屋先生が処理したよ。送還魔法で魔界へ送還したのか、攻撃魔法で退治してしまったのか・・・詳しくは聞いてないけどね。」
芥川と牧田は会話をしながら餃子を作り続けた。能年(鎧)は黙々と餃子を作り続けている。

第3章 黒幕は誰か?

 芥川が牧田と能年(鎧)に言った。
芥川「もうすぐ終わるね。あともう少しだ。」
能年(鎧)はコクッツコクッと2回小さく頷いた。牧田が芥川に聞いた。
牧田「半田のサキュバスは、本当に三倉さんが召喚したものだろうか?」
芥川「いや、違うと思うよ。三倉氏は召喚魔法を熱心に研究していたようだけど、能力者ではないからね。」
牧田「じゃあ、誰があのサキュバスを召喚したんだろう?やっぱり守屋愛が召喚したんじゃないかな。」
芥川「牧田君は守屋先生をすぐに疑うけど、彼女はそんなバカなことはしないよ。そんなマッチポンプで、守屋先生に何の得があると言うんだい?」
牧田「三倉さんの願いを叶えるために・・・守屋愛犯人説には、ちょっと無理があるね。守屋愛本人は何と言っているんだい?」
芥川「さぁ、心当たりはあるんだろうけど、教えてくれなかった。」
牧田「芥川君はどう推理しているんだい?」
芥川「魔獣博士・榊原氏が一番怪しい容疑者だと思うよ。」
牧田「あぁ、なるほど。あの榊原か。」
榊原は魔獣を研究し、召喚魔法を完成させるために悪魔と契約した魔獣博士である。

第4章 魔獣博士の狂気

 牧田は芥川の意見に納得して言った。
牧田「芥川君の推理が当たっているんじゃないかな。サキュバスを召喚するなんて、危険でふざけたことをするような奴、彼以外に思い浮かばないよ。」
芥川「確証はないから真相はまだ藪の中だ。でも、研究のために悪魔と契約するなんて、頭がおかしい奴のすることだよ。」
牧田「小説、ドラマや映画、マンガやアニメに出てきそうな狂気の研究者だね。」
芥川「もともとおかしかった奴が、それで魔界から出ることもできずに、ひたすら魔獣や魔法を研究し続ける。ますますおかしくなるだろう。」
牧田「榊原は魔力で仮体を作り、魔界からこちらの世界を覗きに来ているんだよね。南信州の山で出会った魔法博士の柊さんは、榊原氏のことを親友だと言っていたけど・・・」
芥川「柊博士と榊原博士は昔、学会の研究仲間だったそうだよ。共に魔法や魔獣の研究に多大な貢献をしてきた。」
牧田「榊原氏はどこで道を誤ったんだろう。」
芥川「さぁ、それは二人にしか分からないよ。」
いつの間にか、餃子の餡はなくなっていた。しばらくすると服部夫人がやって来た。
服部夫人「あら、もう終わったの?ご苦労さま。能年さんが包んだのは、プロの料理人がやったみたいにきれいね。」
それを聞いた能年(鎧)は、照れているような仕草をした。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(21)【魔獣博士の狂気編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(21)【魔獣博士の狂気編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-17

CC BY
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  1. 第1章 手作り餃子
  2. 第2章 サキュバス騒動の顛末
  3. 第3章 黒幕は誰か?
  4. 第4章 魔獣博士の狂気