霊能探偵・芥川九郎のXファイル(16)【神谷京介編】
第1章 東三河の霊能探偵
霊能探偵・芥川九郎は、事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「僕は牧田君に、東三河の霊能探偵・神谷京介について話したことはあったっけ?」
牧田「神谷京介氏の話は聞いたことないけど、芥川君が若い頃、東三河の霊能探偵事務所で助手として働いていたという話は聞いたことがあるよ。」
芥川「そうそう。僕がまだ駆け出しの霊能探偵だった時代だよ。東三河の霊能探偵・神谷寛志先生に師事していたんだ。」
牧田「そうすると、神谷京介氏というのはその神谷寛志先生のご子息かい?」
芥川「うん。京介君は僕らより一回り若いから、僕が神谷先生のところにいた頃はまだ子どもだったんだ。」
牧田「京介氏も寛志氏の後を継いで、霊能探偵になったんだね。」
芥川「いや、京介君はまだ神谷先生の下で修業中の身だろう。僕がまだ駆け出しのひよっこだった時のようにね。」
牧田「でも、いずれは京介氏が寛志氏の後継者として、神谷霊能探偵事務所を承継するんだろう。」
芥川「そうなるんだろうけど、3代目の時代はまだまだ先の話さ。2代目の神谷先生もまだまだと言うか、バリバリの現役だからね。」
牧田「芥川君が神谷京介氏の話をするということは、彼がここに来るのかい?」
芥川「ご名答!今日、京介君が来所するから君にも紹介するよ。」
牧田「芥川君の師匠のご子息か・・・」
第2章 霊能探偵・神谷京介
しばらくすると、神谷京介が芥川の事務所にやって来た。
神谷「芥川先生、こんにちは。お久しぶりです。お元気そうですね。」
芥川「やぁ、京介君。こんにちは、久しぶり。しばらく見ないうちに、立派になったね。」
神谷「いえ、まだまだ修行中の身ですから。父には相変わらず子ども扱いされています。」
芥川「ハハハッ。親から見れば、子どもはいつまでも子どもに見えるものさ。そうそう、紹介するよ。彼は僕の友人の牧田君。」
牧田「どうも、はじめまして。よろしくお願いします。」
神谷「はじめまして。牧田さんのお話、芥川先生からかねがね伺っております。よろしくお願いします。」
そこへ能年(鎧)がコーヒーを運んできた。能年は、芥川の事務所に住んでいる鎧の妖怪である。芥川の助手として働いている。
芥川「彼が噂の鎧の妖怪・能年君だよ。」
神谷「こんにちは、能年さん。芥川先生から聞いていますよ。大変優秀な助手だとか。」
それを聞いて、能年(鎧)は照れているような仕草をした。芥川は神谷に席を勧めて言った。
芥川「京介君、まぁ座ってゆっくり話そうよ。東三河で起きた興味深い事件の話、早く聞きたいよ。」
牧田「東三河で何かあったんだね。僕はまだ芥川君からその話、聞いてないよ。」
芥川「火の鳥、いわゆるフェニックスが出たらしいよ。」
第3章 フェニックスの降臨
神谷はコーヒーを一口すすってから、東三河で起きた事件について話し始めた。
神谷「場所は、新城市と浜松市の境にある峠です。人魂騒動がありまして。」
牧田「人魂かぁ。その手の話は昔からあるよね。夜間に空中を浮遊する火の玉。」
芥川「昔の人はそれを死者の魂と考えたんだ。墓地などで不審な鬼火を目撃すれば、誰でも驚くだろう。」
神谷「ところが目撃情報を総合すると、単なる鬼火ではないらしい。私は父と一緒に調査しました。」
牧田「単なる鬼火ではない・・・深刻な怪奇事件だったんですか?悪霊とか妖怪とか・・・」
神谷「それが・・・魔獣だったんです。それもとびきり強力な。」
牧田「火の魔獣?あぁ、なるほど。火の鳥か。」
牧田「人気のない深夜の峠、私の前に突然、フェニックスが現れました。私はパニックになり、冷静さを失っていました。魔法で暗黒剣士を召喚したんです。それで、暗黒剣士とフェニックスの派手な戦闘が始まってしまいました。」
牧田「すごい。神谷君は召喚魔法が使えるんですね。芥川君もやり方は知っているらしいけど。」
芥川「召喚魔法なんて普通、使う機会なんてないからね。例えば、今はネットで爆弾や改造銃の製造方法を調べることができるけど、普通の人はそんなもの作らない。そんなことを本当にやるのは、頭のおかしい奴かテロリストくらいだろう。」
第4章 ステーキハウス・あさま山荘
牧田は冷めたコーヒーを飲み干してから言った。
牧田「それで、神谷君が召喚した暗黒剣士がフェニックスを倒したんですか?」
神谷「いえ。少し離れた別の場所を調査していた父が慌ててやって来まして。父が送還魔法を使い、フェニックスを魔界に送還したんです。」
牧田「芥川君が美濃市でドラゴンを送還した魔法だね。」
神谷「暗黒剣士とフェニックスの派手な戦闘で、大きな木が何本も倒されまして。父に叱られてしまいました。」
牧田「熱田神宮でケルベロス、美濃市でドラゴン、白川公園でキマイラ。そして、東三河でフェニックスか。魔獣博士・榊原が黒幕かな?」
神谷「父は、邪悪な魔術師・守屋愛の仕業だと考えているようです。」
芥川「守屋愛はそんなことしないと思うよ。確かに狡猾な魔術師だけど、意味もなくそんなことするような女ではない。守屋愛と神谷先生のお父様の間には、並々ならぬ因縁があるからね。どうしても守屋愛を色眼鏡で見てしまうんだろう。」
牧田「神谷先生のお父さん・・・明治~大正時代の話だね。何があったんだろう。」
芥川「それについては、僕も詳しい話は知らない。いずれにせよ、一連の魔獣騒動の黒幕、僕は守屋愛ではないと思うよ。」
神谷「芥川先生は、例の魔獣博士を疑っているんですか?」
芥川「いや、確信はないんだけどね。もう少し調べてみないと・・・今はまだ何も分からないよ。」
芥川は話題を変えた。
芥川「そろそろお昼だね、お腹が空いたよ。何か食べに行こう。京介君の好物でも食べに行こうか。」
牧田「神谷君の好物?」
神谷「名古屋の芥川先生のところに来た時には、いつもステーキをごちそうになるんです。」
牧田「あぁ、ステーキハウス・あさま山荘か。あそこのステーキはおいしいよね。」
芥川「ステーキもだけじゃなくて、ハンバーグもおいしいんだよ。」
芥川は牧田と一緒に、神谷を連れてあさま山荘に出かけていった。
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