霊能探偵・芥川九郎のXファイル(11)【BLOODY FRIDAY事件編】

第1編 専門学校生の失踪

 霊能探偵・芥川九郎は、友人の牧田と事務所で話していた。中区にある事務所だが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「久しぶりだね。京子からの依頼は。」
京子は牧田の元同僚で、愛知県警の刑事である。牧田は京子の元同僚の元刑事で、数年前に退職して今はフリーランスだ。
牧田「うん。今回はシリアスな事件だよ。名古屋市内の専門学校生が、約1年前に失踪したんだ。」
芥川「なんだ。家出学生の捜索かい?」
牧田「いや、違うんだ。学生の失踪は発端に過ぎなかった。彼の名前は川浦。高校時代はボクシング選手だったんだけど、ボクシング選手になる夢は早々にあきらめ、専門学校に進学した。」
芥川「なるほど、現実的な選択だね。運動神経がよいだけでなく、なかなか賢そうな若者だ。」
牧田「賢すぎるのも問題だ。彼は専門学校でICTを勉強していたんだ。ボクサーの夢をあきらめた後に、ハッカーを目指したのかもしれない。」
芥川「ハッカーを目指していた学生が失踪し、刑事の京子が捜査している・・・サイバー犯罪にでも手を出したのか。」
牧田「そうみたいだよ。おまけに彼一人ではないんだ。川浦は家出中の未成年を飼いならし、組織的にやっているらしいんだ。」
芥川「元スポーツマンがICTを学び、ダークサイドに堕ちたわけか。でも、それなら警察のサイバー犯罪対策課の所管だろう。京子の出る幕なんかないんじゃないかい?」

第2章 鎧の助手・能年君

 芥川と牧田がそんな話をしていると、能年(鎧)がコーヒーを運んできてくれた。能年は鎧の妖怪である。芥川の事務所に住み込み、彼の助手として働いている。
芥川「能年君。ありがとう。」
牧田「ありがとう。いただくよ。」
芥川と牧田にコーヒーを運んだ能年(鎧)は、部屋の片隅にあるイスに座って控えている。
芥川「何の話をしていたっけ?」
牧田「えーと、サイバー犯罪対策課のところまでだよ。」
芥川「そうそう。京子が勝手に動いたら、おかしなことになるだろう。警察に限らないけど、組織は組織の論理で動いているんだから。」
牧田「それがね、川浦がサイバー犯罪をしているというのは京子の勘なんだ。」
芥川「勘って・・・じゃあ、川浦が家出中の未成年を使って、組織的に違法行為をしているというのも彼女の勘なのかい?」
牧田「川浦が家出中の未成年を勧誘して、何かよからぬことをしているというのは確からしいよ。」
芥川「京子の勘かぁ・・・当たるも八卦、当たらぬも八卦だなぁ。」
牧田「でも、京子の勘が当たっていたら、大変なことだよ。君の霊能力で、川浦を探し出すことはできないのかい?」
芥川「できないことはないけど、他にいくらでも方法はあるよ。僕の友人の天才エンジニア・遠藤君に協力を仰ぐこともできる。最悪、千里眼の能力者・安形クリステル様に頭を下げて、ご協力を賜ることもできるだろう。」
牧田「なるほど。方法は任せるよ。川浦の居所さえ分かればOKだ。そこに踏み込んで彼を逮捕し、未成年は補導すればいいんだから。」
芥川「うん、分かったよ。でも、そんなうまくいくかなぁ。」

第3章 正義の武装集団

 数週間後、芥川は牧田を事務所に呼び出した。川浦の居所が判明したのだ。
牧田「とうとう川浦の居所が分かったんだね。芥川君、ありがとう。」
芥川「喜ぶのは早いと思うよ。これからが勝負だ。川浦は相当狡猾な奴みたいだからね。」
牧田「そうなのかい?まぁ、そうでなければ組織的なサイバー犯罪なんてできないだろうけど。」
芥川「連中の組織名はBLOODY FRIDAY。なかなか洒落ているじゃないか。さぁ、さっそく行こう。場所は千種区にあるマンションの一室だ。」
牧田「警察に通報せずに、僕たちだけで踏み込むのかい?」
芥川「うん。協力者に迷惑をかけたくないからね。僕たちが捕まえて、警察に突き出すという流れにしたいんだ。」
牧田「分かったよ。でも、京子にだけは一応、経緯を説明しておくよ。」
芥川「能年君にも来てもらおう。」
能年(鎧)は急に自分の名前が出てきたので、驚いてビクッと動いた。
牧田「能年君をかい?」
芥川「相手は元ボクサーだよ。能年君はサーベルを使えるからね。僕たちも鉄パイプを持っていこう。」
牧田「それではどちらが犯罪者なのか分からないよ・・・大丈夫かなぁ。」
芥川「仕方ないよ。心配しても始まらないさ。大丈夫だよ、多分。」
こうして芥川、助手の能年(鎧)、友人の牧田は、千種区にある川浦のマンションに踏み込むことになった。

第4章 千種区のマンション

 芥川、能年(鎧)、牧田は川浦のマンションまでやって来た。
芥川「協力者が綿密に調査してくれてね。そろそろお昼休憩の時間で、ドアが開くはずだ。その瞬間に踏み込む。」
芥川がそう小声で言うと、能年(鎧)と牧田は静かに頷いた。そうしてドアが開いた瞬間、三人は室内に押し入った。
芥川「動くな!我々は探偵だ。川浦君、サイバー犯罪の容疑で逮捕する。」
川浦は驚きの表情を浮かべ、しばらく硬直していた。しかし、しばらくすると、おもむろに手を挙げて言った。
川浦「残念でしたね、探偵さん。たった今、証拠となるデータは完全に消去されました。」
芥川「なんだと!」
牧田「しまった!データを消されたら、もうどうしようもない。」
川浦は勝ち誇った表情をしている。全て想定の範囲内なのだろう。芥川は激高して言った。
芥川「舐めたまねしやがって、くそガキが!ぶっ殺してやる!!」
芥川は鉄パイプを構えて、川浦に襲いかかった。
牧田「芥川君、なにやってるんだ!落ち着いてくれ!!」
元ボクサーの川浦は鉄パイプをかろうじてかわすと、玄関に向かって逃げ出した。
芥川「能年!そのガキをサーベルで斬り殺せ!!」
能年(鎧)は芥川の指示に従うべきか、迷って硬直している。その間に、川浦と部下たちは逃げていった。
牧田「芥川君。本当に殺すつもりだったのかい?」
芥川「フンッ!あんな奴らバラバラにして、南山動物園の焼却炉で燃やし尽くしてやればよかったんだよ。南山動物園で働いている友人がいるんだ。彼はギャンブル依存症でいつも金に困っているから、相応の料金を渡せばやってくれるだろう。」
牧田「芥川君。君は霊能力と引き換えに、人の心をどこかに忘れてきてしまったのかい?能年君の方が、よっぽど人間らしいよ。」
 ようやく興奮が冷めた芥川は、牧田に謝った。
芥川「申し訳ない。確かに君の言うとおりだ。結果論だけど、これでよかったのかもしれない。前途ある若者を前科者にして、未来を奪うことはないだろう。」
それを聞いた能年(鎧)は、コクッコクッと大きく頷くのだった。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(11)【BLOODY FRIDAY事件編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(11)【BLOODY FRIDAY事件編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-03

CC BY
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  1. 第1編 専門学校生の失踪
  2. 第2章 鎧の助手・能年君
  3. 第3章 正義の武装集団
  4. 第4章 千種区のマンション