慟哭

どれだけ蔑まれても
どこにも居場所がなくなっても
誰からも疎んじられても
周囲の人たちが皆敵に見えても
人を信じることができるように
自然を慈しむ気持ちを失わないように
闇があれば光もある
救いのない世界で息絶えていった先人たち
誰にも思いを伝えられなかった人たち
心の内の慟哭は宇宙に散っていった




迂回せずに

諦めた素振りをして悟りすますより
がむしゃらに走る人の方が好きだ
私は本来そういう人間だった
どこかでおかしくなってしまった
虚無を演じる愚昧を犯すくらいなら
思い切り壁にぶつかった方がいい
それで砕け散ったとしても
誰にも届かなかったとしても
敗北主義ほどうさんくさい主義はないのだから




私たち

知らない間に別の生き物に変わっていく
私たちは自然に手を加えることで変わっていく
自然を改変して私たち自身も改変していく
その過程は不可逆だ
どこへ行くのかはわからない
宇宙の片隅の星で行われる群像劇
欲望や煩悩などという言葉ではすませられない
業という言葉でもまだ足りない
やはり罪というしかないと思われる




地の糧

欲望から目を逸らしてはいけない
欲望と向かいあって生きていく
欲望と対峙して進んでいく
欲望を解放することでしか得られないものがある
人と出会って話すことは奇跡だ
欲望を得ようとする気概がないといけない
欲望を通してしかわからないことがある
欲望から逃げてはいけない
欲望と向かい合わないと真実は見えてこない
自分に備わった真の感情は見えてこない
情念と不毛な格闘をすること
実りのない葛藤の向こうに彼岸を見ようとすること




確実性

確実なものは
理性を駆使しても見えてこない
情念の向こう側にしかない
確実性は理性より情念と相性がいい
自然と人の間をつなぐ確実なもの
それを知りたくて皆生きている
強い情念に飲み込まれそうになりながら
そこで耐え抜いて見えてくるものがある
だから皆進んで愚かなことをしようとする
人は愚行に促される宿命にあるらしい




すべる

キーを叩きながら言葉はすべっていく
歴史を降るにつれて
書き言葉はすべりやすくなる
観念の過剰がまた観念を生む
そうして観念は殺されていく
真理も本質もファストフード化していく
死とは、無とは、言語とは、論理とは、時間とは
飽食の環境で真実を貪っている
音をたてながら食べまくっている




閉塞

自己を根底から変えるには
人を好きにならないといけないらしい
これまでずっと人を信じてこなかった
だから思春期からずっと自己が継続している
ずっと己の中に閉じこもったまま
人を信じるのは大事業だ
閉塞した状態でひねくれている方がずっと楽だから
俺はどこまでも卑怯だった
言葉はいくらでも出てくるらしかった
保身に満ちた表現が次々に生まれていく




しんどい夜に

優しい音楽に身を委ねる
もう何も考えなくていい
疲れたからもういいだろう
どこかへ行かなくてはいけない
歴史の流れというものはやはりあるらしい
私一人の感動など微小なものだ
しかし世界は私から見えたものにしかなりえない
パスカルからずっと変わらない




泣く女

何を見ても思考が邪魔をする
何を見ても言葉が邪魔をする
言葉や思考を排して見ることに徹すること
そんなことは人間にはできない
人間はいつも思いながら見ている
観念から逃れられない
近代に入って形と色からなる世界が現れてきた
これから人間は何を見るのだろう
次の時代にはどのように見るのだろう




読書の効用

読めば読むほど頭が悪くなる
どんどん底意地が悪くなっていく
思考は硬直していく
視野狭窄で頑迷になっていく
人は遠ざかっていく
懸命に自分の頭を悪くしている
社会に溶け込むこともできなくなっていく
原初の偏見を強化させるために読んでいる
偏見を守り抜くための闘い

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-02

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