映画『大きな家』レビュー
本作には二つの時間軸があります。
一つは児童養護施設に入所する子どもたちが迎える年齢。何歳で入所し、何歳で退所することになるのかは各々が送る施設暮らしの印象を大きく変えるし、また入所しなければならなかった理由又は退所を迎えることとなった事情ないしは背景を透かし見せる確かな切り口になっています。
もう一つはインタビューを受ける子どもたちが生きている「今」という時間。取材先の施設に入所している子どもたちは総じてしっかりとした言葉遣いをされるのですが、インタビュアーに対して率直に語る思いや吐露される不安、あるいは時折見せる表情が自らの人生に対して全面的に負わざるを得ない責任と、握り拳みたいな覚悟をしっかりとスクリーンに映し出します。その力点が子どもたちそれぞれの、近くて遠い未来に焦点を当てる優れた視点として機能し、観る側の頭をぶん殴ります。
およそ社会的問題を提起するドキュメンタリー作品は取材対象者の詳細な情報を伝え、理解や共感又は同情という心情に基づいて関心を持たせようとすると私は考えますが、本作は同様の手法を取っていません。可能な限り、目の前にいる人の隣に立って、そこから見える「社会」の感触を伝えようとする。ここに窺える誠実さこそ、言葉の限りを尽くして評価すべき『大きな家』のポイントです。本作はまた後半部で冒頭に流れた映像を繰り返す重複が認められるのですが、これが最初に見た時と随分と違う景色に映るんですよね。そこにあるもの全部、ただただ黙って受け止めたくなる。そんな切実さに満ちています。2時間近くの上映時間は余りにも濃厚。すごくいい記録映画です。
配信やBlu-rayなどでの販売は予定されておらず、映画館でしか観れない一作ではありますが、kino cinema新宿では現在も上映中。興味がある方は是非。お勧めの一作です。
映画『大きな家』レビュー