zoku勇者 マザー2編・15

フォーサイド編・1

ジャミル達は再度バスに乗ってフォーサイドへ……。
長い跳ね橋を通過すると巨大なビルが立ち並ぶ風景が
見えてくる。あれから出発前にドコドコ砂漠でコンタクト
レンズももう一度探して歩いてみたが、結局は見つからず
諦めてしまったのであった。バスから急いで降りたトリオは、
その広大な街の広さに感動する……。
 
 
「遂に来たぜー!大都会フォーサイドっ!」
 
「本当、凄いわ……、おっきなビルがいっぱい……」
 
「あまり燥がない様にしてね、……おのぼりさんだと
思われるからね……」
 
「わーってるよっ、たくっ!」
 
燥ぐジャミルとアイシャをアルベルトが窘める。しかし、二人の
興奮は収まらず……。立ち並ぶ巨大ビル……、ショッピング街……。
沢山の行きかう人々……、これまでの街とは比べ物にならない程、
雅に近代的で都会的な場所であった。
 
「とりあえず、この街に俺らの知り合いのバンドマン歌手が
来てる筈なんだ、会いに行こうや」
 
「歌手……?」
 
「アルは知らねえよな、巷じゃ超有名なバンドマンの
トンズラ・ブラザーズさ、俺達も世話になったんだよ」
 
「へえ……、そんなに凄い歌手と、顔見知りだったんだ……」
 
「でもね、お人好し過ぎて……、トラブルに巻き込まれ
ちゃうのよね……」
 
「……」
 
何だか、あまり僕らと変わらない様な……、とアルベルトは
思うが黙っていた。
 
「さー、行こう行こう!まずはトンズラがいる劇場に……」
 
……と、思っていたが……、いきなり禿げ坊主にグラサン、
黒背広の怪しい男がトリオに近づいてきた……。
 
「……な、なんだよっ、テメエ……!」
 
「!?」
 
ジャミルとアルベルトは咄嗟にアイシャを後ろに隠し、
身構えるが……。
 
「……ジャミル様達……、御一行様ですね……?」
 
「それがどうしたってんだ!」
 
「怪しい者ではございません……、あなた方のご友人様が
首を長くしてお待ちになられております、……まずは
モノトリー・ビルの47階までお越しください……、では……」
 
怪しい男はトリオにそれだけ伝えると何処かに行ってしまう……。
 
「び、びっくりした……」
 
「……怖かったわ……」
 
「君達……、フォーサイドに知り合いがいるの……?」
 
アルベルトがジャミルに訪ねるとジャミルが怪訝そうな顔をする……。
 
「はあ!?知るもんかよ、んなワケねえだろうがっ!
……キリンの知り合いなんかいねーよ……」
 
「……だよねえ、じゃあ怪しいな、行かない方がいいかも……」
 
「けど、気になるな……、誰なんだよ……、まーた俺らに何か
ケンカ売ろうとしてる奴がいるのか……?だったら確かめにも
行ってみる必要があんな……」
 
「……ジャミル……」
 
「だ、駄目だよっ!……また君はどうしてそう……、もしも
アイシャに何かあったらどうする気なんだよっ!!」
 
「アル、やめて……、私なら大丈夫よ……」
 
「アイシャ……」
 
アルベルトがジャミルに抗議するが、アイシャが
それを窘めた……。
 
「ほおっておいたら又あの人、いつまでも私達を付け狙いそうだわ……、
招待者が誰なのかちゃんとはっきりさせておいた方がいいと思うの…」
 
……アルベルトは考える。頭では分かっているが、自分達はギーグに
刃向かう以上、常に何処かで誰かに命を狙われている……。逃げても
立ち止まってもどうにもならない……。
 
「分ったよ、……ジャミル、モノトリービルとやらに行ってみよう、
しっかりアイシャを守ろう……」
 
「っし!決まりっ!アイシャ、大丈夫だ、絶対俺らから離れんなよ!」
 
「うん、ありがとう、ジャミル、アル……」
 
意を決し、トリオはモノトリービルへと向かう……。地図で場所を
確認しながら。漸くモノトリービルの目の前まで辿り着いたトリオを
ビルの47階の窓からニヤニヤ笑い、高みの見物をしているブタが
一匹……。ブタはなんだか偉そうになり、ますます肥えている様でも
あった。
 
「来た来た、馬鹿野郎どもがよ、……でも、まだ本格的には
動けないんだよな、モノトリー様に怒られちまうからな、
つまんねーの……、よし、取りあえず、目いっぱい嫌がらせ
してやるか……、キシシ……、最高に優しい、このポーキー様がな、
おもてなししてやるよ……」
 
ビルの中に入ると……、異様な雰囲気で何だか薄暗かった……。
受付のお姉さんが中に入ってきたトリオを陰湿な目で
じろじろと見つめた。
 
(赤い野球帽、黄色いリュック……、知能の無さそうなアホな
お顔、そして、連れの赤いリボンのお団子ヘアの女の子……)
 
「間違いありませんね、あなたがジャミルさんですね?
……おひとり様、お仲間が増えているご様子ですが」
 
「そうだよ、だから何だってんだ……」
 
「ポーキー様よりお伺いしております、このまま其処のエレベーター、
47階直通までお乗り下さい……」
 
「行こう、アイシャ、アル……」
 
トリオは言われた通り、そのまま47階直通エレベーターに乗る。
 
「このエレベーターは、普段はポーキー様専用で47階直通と
なっております、……コホン、後ろにくっついて私のヒップは
みないで下さいまし……」
 
「……いつ、誰に襲われても構わねえように心掛けとけよ、
お前ら……」
 
「分ってるわ……」
 
「ああ……」
 
エレベーターガールのお姉さんに聞こえない様に……、トリオは
顔を近づけてこっそりと話をする。
 
緊張を崩せないまま、やがて47階まで辿り着く。ジャミル達は
風圧でおかしくなりそうな耳を押さえながらエレベーターを降りた。
降りるとすぐ、……先程、街でジャミル達を出迎えたあの、いかつい
男に出くわした。
 
「……お前はっ!」
 
「やっと来たな……、早く部屋に入れ、ポーキー様がお待ちだ、
本当は貴様らの様な水虫だらけの汚い足の奴らを迎えるのは
嫌だと言っているのだが、今日は特別のご招待らしいらしいぞ、
さあ、来い……」
 
「ま、待て、……ポーキーだとっ!?」
 
「ジャミル、やっぱり……、顔見知りみたいだね……?」
 
「顔見知りも何も、ちょっとやべえ奴なんだよ、あいつだったのか、
……畜生……」
 
「どうした?今更遠慮などする上品なツラでもないだろうが……、
よし、手伝ってやろう、お前ら、こいつらをポーキー様の部屋に
ほおり込め……」
 
「!!!」
 
「きゃ!?」
 
躊躇していると……、他にもSPらしき、いかつい男達がどかどか
やって来て、ジャミル達の身体を抑え付けた
 
「放してーーっ!乱暴はよしてよっ!」
 
「……アイシャっ!テメエらいい加減にしろーーっ!!」
 
SP男共は抗議するジャミル達を無視し、そのままポーキーが
いるらしき部屋へと無理矢理押し込んだ……。
 
「……ポーキー様、連れてまいりました……」
 
「ご苦労だったね、君達、下がっていいぞ……」
 
「はっ、失礼致します……」
 
SPは退場し、場にはトリオだけが残される……。
部屋の中は全てが金、壁から何から何まですべて黄金、
……とにかく金で埋め尽くされていた。
 
「何だ何だ、この趣味のわりィ金ピカの部屋はよ……」
 
「ようこそ、貧しい昔の友人君、ぶたのけつくん
だったかな?……いや、アウストラロピテクス君、
……いや、ジャミル君だったね……」
 
「ポーキーっ!てめえ……!」
 
金の椅子に座っていたポーキーがゆっくりと振り返り、
トリオを見た……。相変わらず、彼が乗っている椅子は
ギシギシと苦しそうな音を立てている。
 
「彼がポーキー君……、なのかい?」
 
「そうだよ、アル……、一応、この世界では、俺んちの隣に
住んでたんだ、とにかく陰険で嫌な奴だよ……」
 
(何だよ、また得体の知れない奴が側にいるじゃないか……)
 
ポーキーは憎々しげに、アルベルトと話をするジャミルを睨んだ。
まるで見えない何かに嫉妬しているかの様に。
 
「あの、今度は何の御用なの!?私達、これでも忙しいんだからっ!」
 
「やめろ、アイシャっ!」
 
ジャミルが慌ててアイシャを庇って後ろに下がらせた。
 
(……そして、可愛い女連れだよ……、憎い、憎い……、奴が憎い……、
冗談じゃない……)
 
ポーキーの心におかしな感情が浮き上がってくる……。まるで
得体の知れない……、今すぐに目の前の奴を殺してやりたいと
思うぐらいの感情……。トリオのやり取りを見ていれば
見ている程に……。
 
「ぼ、ぼくは……、このフォーサイドを支配している、どエライ
お方、モノチッチ・モノトリー様の片腕にして貰ったのさ!勿論、
ぼくのパパとママもね、どうだっ、家族揃っての大出世だぞ!どうだ、
羨ましいか、羨ましいだろうーー!!今じゃ、ぼくはモノトリー様に、
政治活動、経済面など色々とアドバイスさせて貰っているところさ!」
 
ポーキーはそう言うと、自分の口を開け、にかっと笑うと、
黄金に輝く眩しい歯を見せた。どうやら全部、歯を金歯に
して貰ったらしい。
 
「どうでもいいよ、それより、今どえらいさんて言ったな?又、
誰かに付いたのか……、なあ、気になるんだけど、どうやら此処にも
都市を支配してる奴がいるみてえだな……?」
 
「な、なっ!?」
 
ポーキーは激怒する……。ジャミルは自分の事などまるで
相手にせず……、どうでもいいと言った感じであった。
フォーサイドの権力者、此処のビルの社長でもある、
モノチッチ・モノトリーの方に気が向いている様であった。
 
「もういいよ、ぼくの偉大さが分っただろう?……出て行け……、
この乞食ブタ共め……」
 
「……おーい、テメエで来いって言っといてもう追い出すのかよっ!
冗談じゃねえぞっ!!茶でも出せよっ!!」
 
「うるさいうるさいうるさーい!黙れジャワカレー原人っ!
ええーいっ、こいつらを追い出せーっ!不法侵入者だあーーっ!!」
 
「ちょ、ちょっと……、幾ら何でも……」
 
「何よっ!酷いわっ!」
 
アルベルトとアイシャも不満そうな表情をする……。ポーキーは
切れて自分のデスクの上に有る、呼び出しゴングをカンカン鳴らす。
……すると、先程のいかついSP集団が再び部屋になだれ込んできた……。
 
「……うわ!」
 
「こいつらを叩き出せ、ぼくの部屋に無断で不法侵入したんだ……」
 
「はい……」
 
「ちょっと待てーーっ!!来いっつったのはてめーらの方……
わわわわわっ!!」
 
「薄汚いガキ共め……、ふてぶてしいやつらだ……!ポーキー
ぼっちゃまに馴れ馴れしい……」
 
SPはジャミル達を再び取り押さえると、部屋から
叩き出すのであった……。
 
「ポーキー様に免じて今回は許してやるが……、ケダモノが……
金輪際、二度と此処のビルに近寄るんじゃないぞ……、場合に
よってはマシンガンで撃ち殺すぞ……」
 
「……こんの野郎ーーっ!!」
 
「ジャミル、熱くなっちゃ駄目だっ!……抑えてっ!今は早く
此処のビルを出よう、危険すぎるよ……、フォーサイドにも
危険な権力者がいる事が分ったんだ、もっと詳しく
色々情報を調べた方が良い……」
 
「分ったよ、アル……、畜生……、あんの豚野郎めえ~……」
 
SPに突っかかりそうになったジャミルを慌ててアルベルトが
制した。このまま此処にいればアイシャにも又、どんな危険が
及ぶか分からないのだから……。今は大人しくする他は
なかったのである……。

トリオは意気消沈し、モノトリービルを後にする……。
まずはトンズラ・ブラザーズに会いに行く予定であったが、
何だか今日は疲れてしまった為、何処にも行く気がなくなって
しまったのである。折角の都会探検が……、初回から散々な目に……。
 
「もう日も暮れて来たし……、明日にしようや、デパートで
ドル降ろすから……、今日はホテルに泊まろう……」
 
アイシャとアルベルトも頷く。二人も早く身体を休めたい
様子であった。しかし、……デパートに向かったのはいいが……。
 
「……な、何やて、……閉店……、やとうう?」
 
「ジャミル、何で急に関西弁になってるの……、はあ、デパートも
開いてないんだ、何かあまりいい事ないね……」
 
アルベルトが息を洩らした。何が何だか分からずじまいである。
 
「仕方ないわよ、お店の都合だってあるんですもの、
……もう少し歩いてみて閉まらない内にドラッグストアを
探しましょ……」
 
「そうすっか……」
 
トリオはとぼとぼと、更に夕暮れの街の中を歩く……。沈み掛けた
都会の夕日は……悔しい程美しく、怪しく綺麗であった。
 
「此処だ、ドラッグストアだ……、ハア……」
 
中に入り、キャッシュディスペンサーで必要な分のドルを降ろす。
……ついでに、謎のパパとファラ達にも電話を掛けておこうと思った。
まずは謎のパパから。ジャミルは公衆電話の受話器を取った。
 
「もしもし……」
 
『ああ、パパだよ、ジャミルか?冒険の方はどうだい?
順調かね?お前の銀行口座に○○ドル振り込んでおいた、
使った分と差し引きで○○ドル入っている筈だ、えーと、
次のLVまでジャミルは~~、アイシャは……、ペンらペンら……、
疲れたらいつでもパパの処に電話しなさい、ガチャン、
ツーツーツー……』
 
「……次はファラか、又暫く電話してねえからな、今度も怒ってん
だろうな……」
 
『もしもし?ジャミル、ああ、元気かい?こっちは別に変った事は
ないよ、皆元気だよ!』
 
「い、いやに……、機嫌がいいな……、ま、何事もないのは何よりだな、
良かったよ……」
 
『あ、トレーシーが又、あんたに話があるってさ!代わるよ!』
 
「ん?……あ、ああ……」
 
暫く立つと電話口にトレーシーが出た。
 
『もしもし、おにいちゃん?私よ、トレーシー……、あのね、
私達は特に変わった事はないんだけれど……、その、……ダウ犬が……』
 
「また何かやらかしたのか……?」
 
『ううん……、最近、良く一匹で出掛けるの……、勝手にお散歩に
行っちゃうのよ……、何回も……、もしかしたら……、は、は……』
 
トレーシーの電話口の声が……、急にぼしょぼしょ、小さくなり始めた……。
 
「……ね、ねえねえねえ!あんの馬鹿犬に限ってねえってばよ!
うひゃひゃひゃひゃ!」
 
『そうかなあ~……』
 
「ま、意中の相手がいたとしたって、絶対無理だからよ、
安心しとけ!」
 
「ジャミル、楽しそうだね……」
 
「うん、久しぶりにご家族さんとお話出来て嬉しいのね……」
 
ちなみに、電話会話のえげつない内容は……、二人には聞こえないらしい。
 
「じゃあ、そろそろ小銭が切れるから……、またな!」
 
「終わったかい?」
 
「待たせたな、んじゃあ、ついでだしちょっくら買いモンして
ホテルへ行こうや!」
 
「ねえ、夜までまだ少し時間あるし……、ちょっとモノトリーの事……、
街の人に聞き込みしてみないかい?」
 
「そうしてみるか……、ま、どうせ、あんまいい噂は聞けねえ
だろうけどな、アイシャはどうする?先にホテルに行って
チェックインして貰っててもいいぜ?」
 
「私も行くわよ、一人で休んでいても落ち着かないわ……」
 
「じゃあ、3人で行こうか……」
 
トリオは必要な物をドラッグストアで買い込むと、アルベルトの
提案通りに、街の人にモノチッチ・モノトリーの聞き込みを
開始する。
 
 
「たく、何がモノチッチだよ、モンチッチみてえな名前
しやがってからに……」
 
「ちょ、ジャミルっ!静かにっ!……昼間の時みたいに何時、
何処で誰かが僕らを付け狙って話を聞いているか分からないん
だからね!」
 
「上等じゃねえかっ!……矢でも鉄砲でも持って来いっての!
相手してやらあ!!」
 
「もうー、ジャミルったら……」
 
「……」
 
アルベルトが注意するが、相変わらずジャミルは鼻の穴を広げ
興奮して開き直る……。アルベルトはいつも通り頭痛がしてくる
のであった……。
 
「よいしょ、よいしょ、ふう~、つい沢山買い込んじゃったわ、
ふうう~……」
 
前方から買い物袋を沢山抱えたおばさんがよたよた此方に
歩いてくる。
 
「あっ、大変っ!おばさん、大丈夫ですか、お手伝いします!」
 
アイシャが早速率先して動くと、おばさんが下げている
買い物袋を手助けする。
 
「あれま、お嬢ちゃん、すまないねえ~……、結構重いよ……、
そんな細い手で……、無理しなくていいんだよ……」
 
「……大丈夫ですっ!私っ、これでも……、よいしょ、
鍛えてますからっ!」
 
「こうなると、僕らも行かない訳にはいかないね、行こう、
ジャミル」
 
「しょーがねえなあ……」
 
ジャミルとアルベルトも助太刀し、おばさんの買い物袋を引き受ける。
 
「あれま、あれま……、坊や達まで……、申し訳ないねえ~……」
 
「いいっていいって、おばさん、何処まで行くんだ?」
 
「この先のバス停まで何だけど……、すまないね、本当に……」
 
トリオは買い物袋を下げておばさんをバス停まで連れて行く。
 
「助かったよ~、坊や達、有難うね、大したもんじゃなくて
すまないけど、これはお礼だよ……」
 
おばさんはお礼にと、買ったクッキーを一枚ずつ、ジャミル達に
渡した。折角なので、バス停のベンチに腰掛けて頂く事にした。
 
「急にご用達のデパートが閉店しちまってね、別のスーパーまで
買い物で遠回りさ、モノトリーがデパートのオーナーになってから、
碌な事がないよ、やれやれだよ……」
 
「……」
 
やがて、バスが来るとおばさんはトリオにもう一度礼を言うと
行ってしまった。
 
「そうか、あのデパートも……、モノトリーがな…、オーナー
だったのか……」
 
「とにかく、聞けるだけいろんな人から情報を集めてみようよ」
 
ジャミル達は道行く人を片っ端から捕まえ、モノトリーの人柄など、
色々と聞いてみる。……やはりどの人からも、あまりモノトリーは
良くない噂ばかりであった。中には治安が良くなったと評価する人も
いたが。
 
「おれはモノトリーの手下に土地も家柄、財産も何もかも……、
全部騙し取られたんだよ……、警察も弁護士も奴の権力には
逆らえない……、あいつらは悪魔だよ、くそったれめ……!」
 
「あの人は悪魔に魂を売って引き換えに絶大な権力を
手に入れたという噂よ……」
 
……やがて、すっかり日も暮れ、辺りにはあまり人が
見えなくなってきた。
 
 
「えと、取りあえず今日最後に得た情報は……、モノトリーの
爺さんは、元はしがない豆腐屋だったと……、と、豆腐屋???」
 
「お豆腐屋さんから……、街を治めるまで随分出世したのね……」
 
「けどね、その出世の仕方が……、う~ん、随分と謎めいて
いるんだね、この辺に関しては、誰に聞いてみても良くない
噂が絶えないと……、成程、成程……」
 
アルベルトがメモ帳に聞いた情報を纏めながら丁寧に
書き込んで行く。……の、横でジャミルは大口を開けて
欠伸をするのであった。幸いアルベルトは見ていなかったが、
気づいていたら又引っ叩かれたであろう。
 
「う~、そろそろホテルに行こうや、俺、疲れちまったい……」
 
「そうしようか、流石に暗くなってきたしね」
 
「明日は元気出して、トンズラさん達に会いに行きましょうね!」
 
折角、遠路はるばる都会までやって来たのだから、せめて
一日ぐらい何もかも忘れ楽しい日を過ごしたいと思った。
……ジャミル達はそう思っていた……。

~ホテル・フォーサイド~
 
「ひょーっ!さっすが、都会のホテルだけあって、
ベッドもふかふかだぜっ!ウォーターベッドだぞ、
見ろやこれ!」
 
「あんまり調子に乗って暴れないでよ、破損したら
弁償するのは君なんだからね……」
 
相変わらず、わきゃわきゃ落ち着きのないジャミルを
アルベルトが注意した。別部屋のアイシャはバスタイムも
済んで、気持ちよく、すっかり御就寝中……。
 
(しっかし、ダウ犬が……、時々謎の失踪散歩か……、
どう考えたって、発情期とか考えらんねえなあ~……)
 
「はあ、ジャミル、もういい加減に寝たらどう?
明日も早……?」
 
「すう~……」
 
アルベルトがジャミルの顔を覗き込むと……、すっかり
睡眠モードに突入していた。
 
「全く、相変わらず……、世話が焼けるんだから、
本当にこれが僕より年上とは思えないよ、よいしょ……」
 
文句を言いながらも、眠ってしまったジャミルに毛布を
掛けてやるのであった。……そして、翌朝……、大事件は
起きる……。
 
「ジャミルっ、アルっ!た、大変よっ!!」
 
何かあったらしく、アイシャが急いで二人が寝ている
ルームに駆け込んできた……。アイシャはかなり慌てて
動揺していた……。
 
「ん~、もう朝になっちまったのか……、ふぁ、飯……」
 
「もうっ、それどころじゃないのよっ!!ジャミルのバカっ!!」
 
「アイシャ、落ち着いて話して……、一体何が……」
 
「このホテルの近くの路地裏で……、暴力殺人事件が
あったみたいなの、ひ、人が沢山集まってて……、
とにかく二人とも外に出てっ!」
 
ジャミルとアルベルトは顔を見合わせる……。
話を聞き、どうやらジャミルも目が覚めた様子……。
トリオは急いでホテルの外に飛び出す……。アイシャの
言った通り、ホテル近くの路地裏近辺に行くと……、
確かに沢山の野次馬が集まっていた……。
 
 
……ざわ、ざわ……
 
血だらけじゃないの……、やーねえ、物騒ねえ……
 
も、もう死んでるのかなあ……
 
怖いですわね、奥様……
 
ホント、野蛮ですわね……、自分じゃなくて良かったわ……
 
 
「うわ!これじゃ近づけねえなあ……」
 
「本当に凄い人の山だ……」
 
何とか現場を覗こうと、ジャミルがぴょんぴょんジャンプ
してみるが……、無駄である。
 
 
う、ううう、……
 
 
「……?な、何かしら……、誰かの声が……」
 
 
 
……ううう、ジャ……ミ公、アイ、シャ……
 
 
「……ああっ!?」
 
アイシャの心に……テレパシーを通じ、誰かがうっすらと
二人を呼ぶ声が聴こえた……。
 
(この声、……まさかまさか……、ま、まだ微かに生きてる……?
……あなたなの……?)
 
アイシャの身体が震えだした。声の主を特定した様子……。
 
「ジャミル……」
 
「んだよ、アイシャ……」
 
「路地裏で刺されて倒れてる人……、トンチキさんよ、
恐らく……」
 
「な、何っ!?ま、まさか……、嘘だろ、どうして……」
 
ジャミルが再び野次馬の集まっている方向の正面を向いた。
 
「刺された理由は分らないけれど……、もう、あまり
長くないみたい……、でも、私達と会ってお話を
したがってる、とても……」
 
「なになに?トンチキさん……?、今度は誰だい……?」
 
「アル、話すと長くなるけど……、路地裏で危篤状態の奴は、
俺らの知り合いなんだ、どうにかして話がしてえんだけど……、
これじゃ近づけねえよ!!」
 
「そうか、又君達の知り合いだったのか……、でも、
それじゃ……この人だかりをどうにかしなくちゃ!」
 
「えーいっ!もうっ、じれってえなっ!!」
 
「……あっ、ジャミルっ!!」
 
ジャミルは人ごみをかき分け、強引にトンチキの処まで
押し進もうとする。その後に慌てて、アイシャと
アルベルトも続く……。
 
「……なんだよ、お前!マナー違反だろっ!割り込むなっ!」
 
「うるせー!そもそも人が刺されて倒れてるのに
手も貸さないでぼけっと突っ立って見物してる
あんたら野次馬自体マナー違反なんだよっ!!
大の大人がっ!!」
 
ジャミルに説教された野次馬は、バツが悪くなったらしく、
のそのそ逃げて行った……。漸く現場まで辿り着くと、其処で
ジャミル達が見たものは……。
 
「や、やっぱり……、おっさん、アンタだったのか……」
 
「!!」
 
路地裏で倒れていたのは……、やはりあのファンキーな
トンチキであった……。しかし、今の彼は身体はボロボロで
出血が酷く、周りの風景も彼が流した大量の出血跡で
汚されていた……。あまりの無残な惨劇にアイシャは
震えて口元を押えるのであった……。
 
「……ハア、ハア……、ジャミ公か……、ア、アイシャも……、
来てくれたのか……、へへ、元気そうだな……、ハ、ハア…、
ううう……」
 
「おっさん、しっかりしろっ!一体どうしたんだよっ、
何があったんだっ!?」
 
ジャミルが慌ててトンチキを助け起こすが、動かした為、
少し又、口から吐血してしまった様だった……。
 
「ジャミル、あまり下手に動かさない方がいい、早く医者を!!」
 
「いや、やめてくれ……、どっちみち、おれはもう長くねえ……、
ゲ、ゲホ……、最後に、あんたらに伝えたくてな……、しかし、
まさかこんなとこで会えるとはな……、ヘッ……」
 
アルベルトは医者を呼ぼうと言うが、しかしトンチキは
それを拒んだ。自分でももう、あまり長くないのが
分かっている様でもあった。
 
「……カーペインター、……ライヤー・ホーランドの処に
ある像……だ、不吉な色をした……先にライヤーの処から
盗もうとしたんだが……、まずはカーペインターの処から
盗んできたのさ、この街で売り裁こうと思った……、物知りの
爺さんがマニマニの悪魔と呼んでいた、だがモノトリーに
騙されて取られちまった……、ヘッ……、無様だろ?……、
世界一のドロボーがこのザマだよ……、しかもこの秘密を
知っているおれを、付け狙って消そうとしやがったのさ……、
ハア、ハア……、苦しいぜ……、マニマニが……、モノトリーに
悪魔のパワーを送り込んでいるのさ……」
 
(カーペインターの爺さんも……、あの変な像を拾って
手元に置いてから……自分でも訳の分からない行動を
取る様になったって言ってたよな……、モノトリーの
野郎もなのか……、だけど……奴は像を手に入れる前からも
少なからず野心があったって事なのか……?)
 
「……ゲ、ゲボッ…!」
 
「ああっ、お、おっさんっ!!」
 
ジャミルが考えている間に、トンチキが又血を吐いた……。                  
 
「いいか、一度しか言わないから良く聞けよ……、もしも
この先……、お前らがこの街で路頭に迷って行き詰る事が
あったら……、ボルヘスの酒場へ行ってカウンターを調べろ……、
忘れんな……」
 
「酒場……?」
 
「俺がお前らに伝えたい事はそれだけだ、……んじゃな……」
 
トンチキは最後の力を振り絞ると……、身体中から血を
滴らせながらものっそりと起き上がり……、そして
立ち上がった……。
 
「トンチキさんっ!?ど、何処行くのよっ!!そんな身体でっ!!」
 
「アイシャ嬢ちゃん、心配すんねえ……、おれはしがない
風来坊、ドロボーの意地さ……、頼む……、後は追わないで
くれ……、気の向くまま、風の吹くままさ……、では、最後に
死ぬ前に一句、『おでかけは一声かけて、かぎかけて、トンチキ。』
……あ・ば・よ!」
 
「……」
 
「まだ死んでいた訳ではなかったのね、……あの男……」
 
「こ、こっちを睨んでいたわっ!……怖いわねえ~……」
 
「ここまでになると……、惨めというか……、哀れだね……」
 
トンチキはヨロヨロと……、自分を見ている野次馬達を
払いのけながら何処かへ独り、去ろうとする……。
ジャミル達は去って行くトンチキを引き留める事も、
どうする事も出来ず、黙って見送る事しか出来なかった……。
そしてこれが、ジャミル達が見た彼の最後の姿となった……。

zoku勇者 マザー2編・15

zoku勇者 マザー2編・15

SFC版ロマサガ1 マザー2 クロスオーバー 年齢変更 ジャミル×アイシャ カオス ギャグ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-02

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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