純粋な希死感情

わたしが死にたくなるのは
不幸なときよりもむしろ
幸福を感じるときだった

幸福の絶頂にいるとき
このまま終わりたい衝動に駆られた
幸福がいつまでも持続しないことを
わたしだけは(わか)っていた

死にたさが迫ってくると
無差別に人を愛したくなる
博愛を(かか)げたくなる、だが
まずは隣人を愛せよ

不幸に慣れた人間は
もはや不幸ではない
それは幸福の場合も同じこと
慣れとは一種の悪徳である

死にたいと幾度(わめ)けど
それを聞き届ける者はない
本気にされることはなく
死への決断を急ぐに至る

死にたい人間は黙って死ぬ?
それはおまえの願望だ
喚きながら死ぬ人間だっている
これがこの世の現実だ

死にたいは裏返せない
死にたいは文字通り死にたいということを
わたしだけは判っていた

純粋な希死感情

純粋な希死感情

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-04-29

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