オト

Sono

わたしの体の内側で、コツコツと叩く音が断続的に続く。

 疲れているのに眠れない。うるさいなあとつぶやいたら、がまんしなさい、いまは頭のだいじな部分を調べているところだから、ときびしい口調の声が内側から返ってきた。

 おどろいていろいろ尋ねると、その声の主はわたしの体にある無数のつなぎめの安全確認が仕事らしい。体の内側を軽く叩き、緩みのないことを確かめながら半年ほどかけてめぐる。すべての箇所を確認し終えると、またはじめから作業をやりなおす。それをずっとくりかえしていると言う。

 そんなたいへんな仕事をしてくれている人がいたとは、まったく知らなかった。思わずありがとうございますと布団の上で頭を下げる。

 なぜ今回は作業の音が聞こえるのか不思議に思ったが、さんざん泣いたせいで内側に隙間が広がり、音がよく響くようになったせいだろうと答えてくれた。しばらくすれば隙間なんか埋まって、また聞こえなくなるよと言われ、安心したせいか急に眠くなった。

 コツコツ、コツコツ、……小さな音が遠くなっていくのを聞きながら、眠りの深みヘ。

 次の日からは、その音は一度も聞こえてこないままだ。



(おしまい)

オト

オト

日常の奇譚。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-04-29

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