悪魔城殺人事件 in 東三河(2)【太陽編】
第1章 ゴッホの『種まく人』
神谷と美雪は、3階の廊下で話していた。
美雪「土井さんが殺されるなんて・・・なんか大変なことになりましたね。」
神谷「一体誰が土井氏を殺害したんだろう。犯人の目的は何だろうか?」
美雪「やっぱりお金が目的なのかな?館に侵入した犯人が、部屋を物色中に土井さんに見つかって・・・」
神谷「事後強盗で強盗殺人か・・・物取りの可能性もないことはないけど、わざわざパーティーが開催される日に盗みに入るだろうか?」
美雪「現場を検証した上で、ちゃんと捜査しないと分からないですね。」
神谷「それは警察の仕事だよ。直に警察が到着するだろう。それまでは誉さんが、きちんと現場を保存・管理してくれるよ。」
美雪「そうねぇ・・・」
美雪はそう言いながら、壁に掛けられている絵画を見ながら廊下を行ったり来たりしていた。
美雪「神谷さん。これゴッホよね。本物かしら?」
神谷「本当だ。ゴッホの『種まく人』だね。土井氏のコレクションだから、もしかすると本物かもしれないね。」
美雪「ミレーの『種まく人』に触発されて描いた作品なんですよね。」
神谷「へぇー。美雪さんは芸能界で活躍しているだけあって、芸術に関心があるんですね。」
美雪「えへへ、それほどでも。」
神谷「ゴッホの作品は、太陽が鮮やかだね。」
美雪「そうですね。太陽が燃えてますね。」
第2章 太陽のエネルギー
神谷は話題を芸術から物理に変えた。
神谷「太陽の中心部では核融合が起こっているんだよね。水素がヘリウムに。その時に生じるエネルギーが地球に届いているんだ。」
美雪「核融合って、原子力爆弾や原子力発電よりもすごいんでしょ?」
神谷「原子力爆弾や原子力発電は核分裂だね。両方とも、核分裂で発生する莫大なエネルギーを利用するんだけど、目的と方法が違うよね。」
美雪「核分裂の連鎖反応が起こるんでしょ?」
神谷「うん。制御しないと一瞬で爆発してしまう。それが原子爆弾の原理だね。原子力発電では反応をうまく制御して、永続的に一定のエネルギーを取り出す必要があるんだ。」
美雪「東日本大震災で福島の原子力発電所で事故が起こって、原子力はやっぱり危険だって、日本人は改めて思い知らされた・・・」
神谷「日本は世界で唯一の被爆国だし、東日本大震災以前にも、高速増殖炉もんじゅでナトリウム漏洩事故があったからね。でも、世界的には、原子力の平和利用は人類にとって重要な課題だ。最近は、原子力発電の分野でも技術革新が進んでいるようだよ。」
美雪「原子力発電の技術革新?」
神谷「原子力関連は枯れた技術だと思い込んでいる人も多いけど、そんなことはないよ。たとえば、SMR。小型モジュール炉のことなんだけど、安全性が極めて高く、モジュール化も可能で、これが普及すれば世界のエネルギー事情を一変させる可能性があると思う。」
美雪「技術革新で世界が変わるんですね。」
神谷「さらに究極の革新は、核融合発電だろうね。人類史上、まさに夢の技術だよ。もはや机上の空論ではなく、すでに実証段階まで進んでいるらしい。」
美雪「へぇー。科学者や技術者って、すごいですね。」
第3章 地球の自転と公転
美雪「地球がコマみたいにグルグル回っているから昼と夜があるんですよね。」
神谷「うん。地動説だね。昔は天動説が広く信じられていて、地動説の方が少数派だったんだ。その話題を膨らませてマンガにしたのが『チ。-地球の運動について-』だね。」
美雪「あれアニメで見ました。すっごくおもしろかったです。」
神谷「夜空の星が動くのは、実は地球が動いているから。そういう発想の逆転が、パラダイムシフトを引き起こす。コペルニクス的転回というやつだね。」
美雪「難解な問題が、発想の転換で解けてしまう。これまで解けなかったいろんな矛盾が、全部つじつまが合う。シンプルで美しい理論で完全に説明できる。そんな瞬間が不意に訪れる・・・研究の醍醐味なんでしょうね。」
神谷「そんな課題やブレイクスルーに立ち会えることなんて、一生に一度あるかないかだろうね。」
美雪「惑星という言葉は、惑星の動きが、他の星と違ってフラフラさまよっているように見えるからなんですよね。天動説ではうまく説明できない。」
神谷「地動説だとシンプルに説明できる。謎が解ける上に、理論自体が美しい。発見した研究者は、さぞかし興奮したことだろうね。」
美雪「命をかけるほどに・・・」
神谷「マンガやアニメでは、それを感動的に描いているよね。」
第4章 手塚治虫の火の鳥
今度は、美雪が話題を物理から芸術に変えた。
美雪「話は変わりますけど、手塚治虫の火の鳥に太陽編がありますよね。」
神谷「美雪さんはマンガやアニメについても造詣が深いんですね。」
美雪「造詣が深い・・・っていうほどでもありませんけどね。」
神谷「若い人でも手塚治虫のマンガやアニメを知っているんだね。」
美雪「今はネットでいろんなものが見れますから。YouTube上には、そういう昔のおもしろい作品を紹介するチャンネルもあるんですよ。」
神谷「手塚治虫の火の鳥は壮大な物語だよね。僕も小学生の頃に、夢中になって読んだ記憶があるよ。」
美雪「太陽編はどんなストーリーでしたっけ?」
神谷「たしか舞台は古代日本だったような・・・顔が狼の男が出てこなかったっけ?」
美雪「そうそう。顔の皮をはがされて、狼の皮を被せられてしまうんです。」
神谷「おそろしい話だよね。」
美雪「お話自体は、過去と未来が交錯する壮大な物語ですよ。」
神谷「火の鳥のモチーフはフェニックスの伝説だけど、そこからあんな壮大な物語を描き続けるんだから、まさにマンガの神様だよね。」
美雪「手塚治虫がマンガの神様と呼ばれるのは、マンガの世界に革新をもたらしたからでもあるんです。当時、技法においても内容においても随一の漫画家だったんです。」
神谷「ペン1本で、マンガ王国日本の礎を築いたんだね。」
美雪「NHKの大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』を見て、日本人は昔からマンガが好きだったんだって、知ることができました。」
神谷「温故知新だね。太陽の話に戻るけど、昔から人は、星の動きとか日食とか月食とか、天体観測に興味があった。それを題材にした小説やドラマもあるね。」
美雪「天体観測は、今でも多くの科学者を夢中にさせる分野です。だって、ロマンがありますから。」
美雪はそう言いながら、また廊下を行ったり来たりして、壁に掛けられている絵画を鑑賞している。
悪魔城殺人事件 in 東三河(2)【太陽編】