なみだ

Larmo


失恋をした。

 つきあっていた男が、親の言いつけにさからえずお見合いをし、そのまま相手と結婚する気になった。

 体のなかでふくらむ、悲しみと憤り。

 大きな声で泣きたいのに、都会ではあらゆる場所に人目がある。

 感情をおさえながら夜道を歩くうち、道路脇に立つバルーン人形をみつけた。

 なんの店の宣伝をするものかは知らないが、ちょうどあいつと同じくらいの背の高さ。

 ゆらゆら揺れて笑う姿に、わたしのがまんはもう限界、拳をにぎり、腹立ちのすべてをこめて、力いっぱい殴りつけた。

 その瞬間、街の明かりがいっせいに消えた。

 そして空の星までが、ザーッ! と音を立てて地上に降ってきた。わたしは身がすくむほど驚いた。

 コツコツと髪に当たって跳ねた小粒な星を、思わずてのひらで受ける。

 それを口に入れてみると、なんとも上品な甘さ。

 がりりっと野蛮に噛みくだき、都会の夜にむけ言い放つ。

「ざまあ見ろッ」。

 田舎生まれのなにが悪いの?

 涙がぽつりと落ち、地に積もった星々のなかにまぎれこんだ。



(おしまい)

なみだ

なみだ

日常の奇譚。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-04-13

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