なみだ
Larmo
失恋をした。
つきあっていた男が、親の言いつけにさからえずお見合いをし、そのまま相手と結婚する気になった。
体のなかでふくらむ、悲しみと憤り。
大きな声で泣きたいのに、都会ではあらゆる場所に人目がある。
感情をおさえながら夜道を歩くうち、道路脇に立つバルーン人形をみつけた。
なんの店の宣伝をするものかは知らないが、ちょうどあいつと同じくらいの背の高さ。
ゆらゆら揺れて笑う姿に、わたしのがまんはもう限界、拳をにぎり、腹立ちのすべてをこめて、力いっぱい殴りつけた。
その瞬間、街の明かりがいっせいに消えた。
そして空の星までが、ザーッ! と音を立てて地上に降ってきた。わたしは身がすくむほど驚いた。
コツコツと髪に当たって跳ねた小粒な星を、思わずてのひらで受ける。
それを口に入れてみると、なんとも上品な甘さ。
がりりっと野蛮に噛みくだき、都会の夜にむけ言い放つ。
「ざまあ見ろッ」。
田舎生まれのなにが悪いの?
涙がぽつりと落ち、地に積もった星々のなかにまぎれこんだ。
(おしまい)
なみだ