霊能探偵・芥川九郎のXファイル(7)【麻辣スープ編】

第1章 麻辣スープ

 霊能探偵・芥川九郎とその友人・牧田は、中区にある芥川の事務所で話していた。
芥川「よく知らないけど、麻辣スープという食べ物が若い女性の間で大人気らしいね。」
牧田「そうなんだよ。そのことについて、京子がまたおかしな推理をしているんだ。」
牧田は愛知県警の元刑事だ。数年前に退職し、今はしがないフリーランスである。京子は牧田の元同僚で、今も愛知県警の刑事として活躍している。
芥川「なんだい、麻辣スープに何か問題でもあるのかい?」
牧田「京子が言うにはだよ・・・あんな辛いだけのスープが流行するのはおかしいと言うんだ。」
芥川「それは彼女の感想だろう。何が流行るかなんて、誰にも分からないもんだよ。逆に、そんなことが予想できるなら、商売人は苦労しないだろう。」
牧田「京子が言うにはだよ・・・麻辣スープに中毒性のある薬物か何かが入っている可能性があると言うんだ。」
芥川「なかなかスパイシーな推理じゃないか。そんな疑いがあると言うのなら、科捜研で分析してもらったらいいじゃないか。」
牧田「科捜研の連中には鼻で笑われて、相手にしてもらえないらしい。」
芥川「ハハハッ。そうだろうなぁ。京子以外の人間はみんな、鼻で笑っているんじゃないかい?」
牧田「まぁ、そんな感じだと思うよ。」

第2章 安形クリステル

 芥川は、服部夫人が焼いてくれたケーキをおいしそうにほおばった。服部夫人は芥川の叔母で、隣の服部税理士事務所の先生の奥方である。彼女は甥っ子の芥川のことを、いろいろ気にかけてくれる優しいご婦人なのだ。
芥川「まぁ、京子の推理の話はここまでにしておこう。これから、あの女子高生探偵・安形クリステル様がいらっしゃるんだから。」
安形クリステルは名古屋で活躍する高校生探偵である。芥川とは、先日解決した女子大生失踪事件のことで因縁がある。
牧田「しかし、彼女が、君の霊丸ライフルによる遠隔除霊を見抜いていたとは、本当に驚きだよ。噂に違わぬ名探偵だったんだね。」
芥川「彼女はただ頭が切れるだけの探偵じゃないよ。能力者だ。間違いない。」
牧田「能力者って・・・彼女は君と同様、霊能探偵だったのか。」
芥川「霊能探偵と言っていいのかな。彼女の能力は千里眼だよ。霊能力と言うよりも、超能力と言った方がしっくりくるね。」
牧田「なるほど。だから、遠く離れたビルからの狙撃による遠隔除霊を見抜いてしまったのか。」
芥川「それで、その千里眼クリステル様が今日、ご来所される運びとなったわけだよ。叔母さんも安形クリステルの大ファンでね。彼女が来ると聞いて大喜びさ。朝からケーキを焼いて持って来てくれたんだよ。君も食べなよ。彼女に渡す分は、ちゃんときれいな箱に入れて準備してあるらしいから。」
芥川は紅茶をすすりながら言った。牧田もケーキを一口食べ、紅茶を飲んだ。
牧田「ケーキも紅茶もおいしいね。」

第3章 先日の件

 やがて安形クリステルがやって来た。服部夫人は大喜びし、彼女といろいろ話をした後で、おみやげに自分が焼いたケーキを渡したり、用意していた色紙にサインを書いてもらったりしている。気が済んだ服部夫人が隣の税理士事務所に引き上げてから、芥川が言った。
芥川「ようこそ、安形クリステルさん。千里眼クリステル様と呼んだ方がよろしいでしょうか?そっちの方がかっこいいし、インパクトもあって大衆受けがよいと思いますよ。」
牧田「まぁまぁ。どうぞお掛けください。」
クリステル「どうも。」
クリステルは牧田に勧められたイスに座った。
牧田「芥川から聞きました。類まれなる能力をお持ちだとか。それで合点がいきましたよ。その能力を生かして、数々の難事件を推理・解決してきたんですね。」
クリステル「いえいえ。私の能力なんて、芥川先生に比べれば大したことはありません。先日、目の前にいるルミさんが、遠くのビルの屋上にいる芥川先生に霊丸で狙撃・除霊されるを見て、本当に驚きました。」
芥川「それで今日は、そのお礼を言いに来たんですか。」
クリステル「いえ、違います。芥川先生に忠告しに来たんです。」
芥川「忠告?」
クリステル「意味不明な理由で、あんなくだらないことをして。私の力を見くびってもらっては困ります。」
牧田「でも、安形さん。芥川はあなたのためにルミさんの除霊を・・・」
クリステルは牧田の話を遮って言った。
クリステル「私が本気を出せば、あなた方を破滅させることなんて簡単にできるんですよ。」
彼女は先日の芥川たちの行為を、非礼だと怒っているらしい。芥川は笑いながら言った。
芥川「ハハハッ。千里眼クリステル様。牧田君はどうか知らないけど、バレたら社会的に抹殺されるような秘密、僕にはありませんよ。」
牧田「なんだよ、僕にだってそんな秘密は・・・」
芥川「先日の件、私たちはあなたへの貸しだと思い込んでいました。確かにあなたの言うとおりだ。深く反省し、謝罪しますので許してください。先日の件は、借りにしておいていただけませんか。いつか必ず返しますから。」
クリステル「・・・そうですか。分かりました。」

第4章 麻辣スープ・アポロ作戦

 芥川は突然、話題を変えた。
芥川「安形さん、こうしてお知り合いになれたのも何かの縁です。もうすぐお昼です。一緒に昼食を食べに行きましょう。おごりますから。」
クリステル「そうですね。ありがとうございます。」
牧田「何を食べようか。安形さん、何か食べたいものあります?」
クリステル「私は何でもいいです。」
芥川「じゃあ、麻辣スープを食べに行こう。僕はまだ食べたことがないんだ。近くに麻辣スープのお店があるのにね。」
クリステル「何ていう名前のお店ですか?」
芥川「ちょっと変わった名前でね。麻辣スープ・アポロ作戦というんだ。あそこの店主は昔、あのアポロ作戦に参加したこともある元軍人でね。生き残った奇跡を噛みしめて、残りの人生を大切にしたいという願いが込められているそうだよ。」
牧田「へぇ、そうだったんだ。知らなかったよ。」
 三人はアポロ作戦まで歩いていった。芥川は先頭を切って入店したが、お店のシステムがよく分からなかった。
芥川「初めて来たから、システムがよく分からないな。牧田君、分かるかい?」
牧田「実は僕も、お店で食べるのは初めてなんだ。」
芥川「安形さんは?」
クリステル「私は麻辣スープが好きで、よく食べに行くので分かりますよ。」
芥川「じゃあ、僕たちは安形さんの後ろで、彼女の真似をすれば大丈夫だ。」
クリステルは手慣れた感じで進み、芥川と牧田は彼女の真似をしながら進んだ。三人はそうして完成した麻辣スープを、奥のテーブル席で食べることにした。
牧田「うまいけど、確かに京子の言うとおりだなぁ。」
芥川「僕は辛いものが好きだから、これはこれでうまいと思うけどね。」
クリステル「普通においしいですね。」
食べ終わると、クリステルはお礼を言って帰っていった。
クリステル「ごちそうさまです。ありがとうございます。」
クリステルが帰った後に、牧田がつぶやいた。
牧田「バレたら社会的に抹殺される秘密か・・・」
それを聞いた芥川が笑って言った。
芥川「ハハハッ。死ぬこと以外かすり傷だよ、牧田君。死地をくぐり抜けた軍人の苦労を思えばね。」

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(7)【麻辣スープ編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(7)【麻辣スープ編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-04-12

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  1. 第1章 麻辣スープ
  2. 第2章 安形クリステル
  3. 第3章 先日の件
  4. 第4章 麻辣スープ・アポロ作戦