霊能探偵・芥川九郎のXファイル(4)【二階堂龍山編】

第1章 芥川の霊能力

 霊能探偵・芥川九郎は、中区の事務所で友人の牧田と話していた。中区にある事務所と言っても、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「牧田君が時々、ここに遊びに来てくれるうれしいんだけど、フリーランスがそんなに暇で大丈夫なのかい?」
牧田「ハハハッ。そんな風に見えるのかい?別に、暇だから遊びに来ているわけではないよ。そもそも君は、僕にとって大切なコネクションだからね。」
芥川「大切なコネクションねぇ。買いかぶりだよ。霊能探偵と言ったって、僕の霊能力はそんな大したもんじゃあないよ。」
牧田「逆に、君は自分の能力を過小評価しているんじゃないかな。普通の人間は、超能力でスプーンが曲がるだけで大騒ぎするんだからね。」
芥川「大切なコネクションは京子の方だろう。今や愛知県警刑事課のエースとして大活躍しているらしいからね。」
牧田は愛知県警の刑事だったが、数年前に退職した。京子は牧田の元同僚で、愛知県警の現職刑事である。
牧田「京子が僕たちを利用しているだけだよ。三人であの事件を解決して以来、怪奇事件は芥川を巻き込めば何とかなるって、彼女は考えているんだよ。」
 二人がそんな話をしていると、服部夫人がやって来た。服部夫人は芥川の叔母である。芥川の事務所の隣に税理士事務所があるのだが、服部夫人はそこの税理士先生の奥方である。服部夫人は甥っ子の芥川を心配して、いろいろ世話を焼いてくれるのだ。
芥川「叔母さん、何か用ですか。またクッキーでも焼いたんですか?」
服部夫人「九郎君、大変よ!龍山先生から連絡があって、今からここに来るって言うの。」
芥川「龍山が?」
牧田「龍山・・・って、あの龍山先生かい?」

第2章 二階堂龍山

 二階堂龍山は、名古屋の経済界ではちょっとした有名人である。名古屋の飲食チェーンを率いる剛腕社長だったが、数年前に引退した。今は、経済系のイベントで講演したり、テレビやラジオにコメンテーターとして出演したり、ローカル新聞に経済人として寄稿したりしている。
芥川「龍山は僕の父親だよ。10年前に母が亡くなって以来、あまり交流はないんだけど。時々、向こうから勝手にやって来て、勝手なことを言って帰っていくんだ。」
服部夫人「どうしましょう?!龍山先生がいらっしゃるなら、お茶かコーヒーか、何か用意しないと・・・」
芥川「叔母さん、そんな必要はありませんよ。あの人はいつも、勝手にやって来て、言いたいことを言って帰っていくだけなんだから。」
 三人がそんなことを話しているとやがて、龍山が芥川の事務所にやって来た。
龍山「九郎!いるか?」
芥川「うん、いるよ。今日は何の用だい?」
龍山「お前、ちゃんと食べているのか。どうせインスタントラーメンばかり食べているんだろう?たまには私の晩酌会に来て、まともなものを食べればよいのに・・・」
龍山は行きつけの居酒屋で毎晩、おいしい料理を肴に仲間たちと晩酌しているのだ。
芥川「今日は僕の食生活について、説教しに来たのかい?」
龍山「父親に向かって何だ、その言い草は!とにかく、今から昼飯でも食べに行こう。おごってやるから。そこの君、九郎の友だちだろう?一緒に来なさい。」
牧田「ありがとうございます!龍山先生にお会いできて光栄です。私は芥川君の友人で、牧田と申します。」

第3章 三郎系ラーメン・ガンタンク

 龍山は、芥川と牧田を連れて栄の街を歩いていた。
龍山「九郎は何を食べたいんだ?おごってやるから遠慮するな。」
芥川「遠慮なんかしてないよ。じゃあ、久しぶりにガンタンクに行こうかな。」
牧田「あぁ、あのラーメン屋か。何か月前か、一緒に食べに行ったよね。三郎系ラーメンだけど、龍山先生は大丈夫ですか?」
龍山「何だね、その・・・三郎系ラーメンというのは?」
牧田「うーん、説明が難しいんですけど・・・麺は太めで、スープはこってり、上にもやしが山盛りのラーメンです。」
芥川「あそこの店主は昔、どこかの国の外人部隊で活躍していたんだ。当時、開発されたばかりのガンタンクに乗り、嵐の砂漠を縦横無尽に進撃したそうだよ。」
牧田「なるほど。だから店の名前がガンタンクなんだ。」
 三人はガンタンクに着くと食券を購入し、元外人部隊の店主に食券を渡して注文した。幸い、空いているテーブル席があったので、三人そろってそこに座った。しばらくするとラーメンができたので取りに行った。龍山のラーメンは牧田が運んでくれた。初めて三郎系ラーメンを見た龍山がため息をついて言った。
龍山「私がおごってやると言ったのに・・・どうしてこんなラーメンなんだ!インスタントラーメンよりも体に悪いだろうに。」
芥川「何言ってるんだ!もやしがこんなに山盛りなんだから、体に良いに決まってるだろう。」
牧田「まぁまぁ、二人とも。とにかく食べましょうよ。」

第4章 腹八分目に医者いらず

 龍山はラーメンを食べ終わると、芥川に1万円札を渡して言った。
龍山「九郎、ラーメンばかり食べていないで、たまには私の晩酌会に来なさい。もっと体に良いものを食べないと長生きできないぞ。」
芥川「うん、ありがとう。でも、そんなに心配することはないよ。体に一番良いのは、ヘルシーな食事なんかじゃない。適度な空腹感だよ。」
龍山「腹が減ってりゃインスタントラーメンでもうまい、ということか?空腹に勝る調味料なしだな。」
芥川「いや、違う。人間は・・・いや、人間に限らない。動物は、お腹いっぱい食べるよりも、適度にお腹を空かしている方が健康に良いんだよ。これは動物実験によって実証された科学的知見だよ。」
龍山「屁理屈ではお前に敵わん。私はもう帰る。またな。」
牧田「先生、ごちそうさまです!ありがとうございます。」
龍山「牧田君、君も一度、九郎と一緒に来るといい。私の晩酌会に。」
龍山はそう言うと、店を出ていった。
牧田「さすが、龍山先生だ。立派な人物だね。」
芥川「そうかい?あの親父、文句を言いながら、ラーメンをきれいに平らげて帰っていったよ。」
牧田「せっかくの機会なんだから、居酒屋にでも入って、おいしい料理やお酒をごちそうになればよかったのに。もったいない。」
芥川「ハハハッ。君こそ、さっき僕が言ったことを確認した方がいいよ。」
牧田「満腹よりも、適度な空腹が健康に良いという話かい?聞いたことがあるなぁ、そんな話・・・科学的知見か。でも、昔の人は経験則として理解していたんだねぇ。」
芥川「腹八分目に医者いらず・・・か。」

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(4)【二階堂龍山編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(4)【二階堂龍山編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-04-10

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  1. 第1章 芥川の霊能力
  2. 第2章 二階堂龍山
  3. 第3章 三郎系ラーメン・ガンタンク
  4. 第4章 腹八分目に医者いらず