君のために死んでしまいたい。
あの日、僕達の命は入れ替わった。
2月8日
「なんで君が死んじゃうんだよ」
6月20日
太陽がやけにうるさい朝に、君は来た。
「ねえ、いつも小説を読んでるけどそれって面白いの?」
学校の静かな図書室の端の席で一人で小説を読んでいた僕にそう君は話しかけてきた。
「面白くなかったら読まないよ」
冷たい態度をとった理由は、別に嫌いだからではない。
人と話すには今の僕のメンタルはあまりにも弱すぎるから、
だから出来る限り人が少なく、目立たない図書室の端の席に座っているのに、
それを君は何も考えずに、
僕の一人を壊した。
「ふーん、それってどんな内容なの?」
「はぁ、君はなんなんだ、暇なのか?僕になんで話しかけてくる」
なぜこんな僕に話しかけてくる?
理解できない。
「うん、そう、とっても暇なの」
「だからって僕の小説を読む時間を邪魔しないでくれ」
「ずっと読んでて飽きないの?」
「僕じゃなくて友達と話せよ」
「私友達いないの、空気読めないし」
僕は君と目を合わせない。
勝手に僕と君を一緒にするな、そう僕は心の中で毒づいた。
「タイトルは
「孤独を知ってしまった君はもういない」
感動系さ、最後にヒロインが病気で死んでしまって、ショックで主人公もその後を追うって作品。
この作品は命を軽く書きすぎてる。
命はそんなに軽いものじゃないだろ」
「……それは、悲しいね」
そんな顔、僕の前でしないでくれ。
逃げようのない罪悪感が僕を襲う。
「私も小説読んでみようかな」
「読んでみるといいよ、君のような落ち着きのない人が楽しめるかはわからないけどね」
「じゃあさ、その小説読み終わったら読ませてよ」
「読み始めたばっかだから、読み切るまで時間かかるけどいいのか?」
「うん、それが読みたい」
「まあ、それでいいなら」
それから毎日図書室に話に来るようになり、面倒くささも無くなってきた。
いや、会話に楽しさを覚え始めた頃だった。
「ねえ、なんで君は一人のときそんなに辛そうな顔をするの?」
「……辛くなんてないし、辛そうな顔なんてしていない」
「私、あんまり嘘好きじゃない」
僕は他人にわかるくらい酷い顔をしていたのか。
「大丈夫、
君が一人でいるのが辛いなら、
これからずっと私が君の隣にいる」
なぜか、初めて会ったはずなのに、目を逸らしたくなる。
その目が、少しだけ、僕に似ている気がしたから。
7月5日
起きて、テレビでニュースでも見ながら朝飯を食べる。それが最近の僕の日課だ。
朝飯を食べ終え、僕は小説を開こうとしたその時、
家のうるさいチャイムがなった。
「ねえ、なんで君が僕の家にいるの」
「こんないい天気なんだから、家にいたらもったいないよ」
「今日日曜日だよね」
「うん、そうだけど、それがどうかしたの?」
「帰って」
「やだ」
「お願いだから帰ってくれ」
「やだ」
「……はぁ」
今日の君はとても機嫌がいいらしい、こうなるともう話が通じない、ため息をつきながら仕方なく僕は暑い日差しの下に一歩足を動かした。
「ねえ、あそこのケーキ美味しそうじゃない!ずっと気になってたの!」
少し道を歩くと最近できたであろう綺麗でお洒落なケーキ屋があった。
僕はどこでもいいからとにかくこの暑さから逃げたかった。
僕達は少し早足で店に入った。
僕は値段に心の中で悲鳴を上げながらショートケーキを頼んだ。
彼女も迷った末にチョコケーキを頼んでいた。
「このケーキめちゃめちゃ美味しい!」
先に一口食べた君はいままでに見たことないぐらいの笑顔になっていた。
君が笑うたびに、僕の体温が上がるのを感じた。
理由は、まだわからなかった。
僕も続くように一口食べてみる。
「美味しいな」
確かにとても美味しい、甘さが控えめで食べやすくなっているのもいい。
「食べるの早いね」
「まあね、君は随分と遅いな」
美味しいと言ってる割にあまり手が進んでいない。
「最近、あんまり食べられなくてさ、すぐ気持ち悪くなっちゃうんだよね。
少し食べ切らないから、食べてくれない?」
少しなんてものじゃない、三分の二ほども残っている。
よく見るとフォークを持つ手も震えている。
「どうした?体調でも悪いのか?」
「……違うよ」
少しの違和感を抱えながら店を出る。
店内の涼しさですっかり忘れていた暑さがしつこくまた僕を襲う。
「ほんとうに暑いな」
「たまには外に出てみるのもいいでしょ」
「言うタイミングどうなってんだよ、暑さで頭どうかしちゃってんじゃないのか」
「言い過ぎだと思うんだけどー」
「まあ、けどこの暑さじゃなければたまには外に出るのもいいかもな」
実際最近の休日はどことなく寂しさを感じていたから、たまにはこういうのもいいかもしれない。
「次も一緒にどこか行こうね」
「暑くない日だったら行こうかな」
「夏で暑くない日なんてないよ!」
「夏はもういいだろ、まだまだ時間はたっぷりあるんだから急ぐなって」
「ないよ、時間はなんて、
だから、急がないと」
「……」
なんで?なんでまたそんな顔をするんだ?人と話すことが少なすぎる僕にはまだそれはわからなかった。
11月30日
「で?ここはどこ」
「見てわからないの?遊園地だよ」
「はぁ…」
僕はなぜか遊園地に来ている。
はっきり言って意味がわからない、なんで一人で小説を読むのが好きな僕がこんな真反対の場所に来ているのかわからない。
だが君の笑顔を見るとまあ、いいかと言う気分になってしまう自分が嫌でならない。
「ねえねえ!あのジェットコースター楽しそうじゃない!」
「絶対にやだ!!!」
なぜか今僕はジェットコースターに乗っている。
色々な人の叫び声が響いている。
僕は叫び声や前を見る余裕すらなく、ただ意識を保つのに全集中を送っていた。
「楽しかったね!」
「僕のこの顔を見てそれを言うか、よほど目が悪いと見える」
「そんなつまんないこと言ってないで、せっかくの遊園地なんだから精一杯楽しまないと!」
そういって君は僕の手を握って引っ張る。
手が暖かくなるのを感じて、
それがなんだか恥ずかしくなり君から目を逸らす。
暑さのせいか、僕達の顔はすこし赤くなっていた。
観覧車に乗らないか?
そう僕が提案したのには理由がある。
君が疲れていたように見えたからだ。
だがなぜそこまで疲れているのだろう、ジェットコースターなどでビビりまくってる僕ですらあまり疲れていない。
彼女は息が荒く、汗をかいている。
その疲れる様はすこし過剰にも見えた。
「お、君も楽しくなってきたか」
「そんなとこだ」
僕達はそういいながら観覧車に乗った。
「うっわ!たっか!」
「観覧車ではしゃぐとか小学生かよ」
「君が乗りたいって言いだしたくせに」
「…私が死んだら、お墓に図書室で読んでた小説を置いて欲しい」
突然だった、あまりに突然で、理解のしようのない文。
それを理解できるほど僕は賢くなかったから。
僕の答えは、沈黙しかなかった。
もう一周を回りきったらしい、まったく気づかなかった。
「一年後とかにまた来ようね」
「まあまあ楽しかったしそれもいいかもな」
「ねえ、君は友達になってくれる?」
そう突然君は聞いてきた。
僕の凍っていた心が溶け始めていた。
だけどいまの僕にそれを答えられるだけの熱はなかった。
君と繋いでいた手がまだ暖かい。
いつもより車が速く見えた。
1月10日
「京都に行こう!!」
「……は?」
わけがわからない、頭のおかしい奴だとは思っていたが、ここまでとは。
「金はどうするんだよ」
「大丈夫、私の家結構お金持ちだから、お金は私が全部出す。
どうせ使わないしね」
「……頭大丈夫か?まずは京都じゃなくて病院に行くべきじゃないか?」
「ひっどいこと言うなー、私の頭は平気、病院には行かない、行くのは京都」
「……やだ」
「なんで?」
「なんでもなにもないだろ、いきなり京都って、高校生で思いつきで行ける場所でもないし行っていい場所でもない」
「お金はあるから行けるし、親の許可ももらってるし、高校生って言ってももう高二だよ?行ってもいいと思うんだけど」
「……はぁ、少し考えさせてくれ」
「うん、わかった」
僕は、友達とまともに出かけたことなんてほとんどなかった、
それなのに、なぜか僕は、今京都に行くことになっている。
人生どうなるか分からないというが、これは確かに分からない。
「はぁ、いいよ、仕方なくね」
「やったーー!じゃあ!行こう京都!」
「まてまて!まさか今から行くのか!?」
「そうだけど、今から予定とかある?」
「ないけどさ、まさか今から行くとは……」
「予定がないなら平気だね!じゃあいざ京都へ」
今から、わけもわからぬまま京都に行く今の僕の気持ちは僕ですらわからない。
なぜ、僕はこの旅行を強く断れなかったのか。
確かにすこし行きたくなってたからもある、だが、
なぜか君がなにかに急いでいて、
強く断る気になれなかったんだ。
「着いた!京都!!」
僕達は、ホテルまで中身のない雑談でもしながら歩いた。
ホテルの中に入ってみて実感した。
これは明らかに場違いなほど豪華なホテルだ。
「すごいホテルだな、高いだろ?
本当に僕も金払わなくて平気なのか?」
「大丈夫、
どうせまともな旅行なんてもうあまり行けないし。
それに同じ部屋だし」
「………は?」
今日はいろんな驚きがあったがおそらく今日一で驚いたと思う。
「……僕だって男だぞ」
「どうせなにもできないくせに何言ってんの、はやく行こ」
無遠慮な発言にイラつきながらも、大人しく同じ部屋に入った。
「なあ、なんか顔色悪くないか?足元もふらついてるし、大丈夫か?」
「ちょっと疲れただけだよ、じゃあ私風呂入ってくるから、絶対に覗いちゃだめだからね」
「誰がお前なんか覗くんだよ」
「覗く度胸がないの間違いでしょ」
僕しかいない静かな部屋で、
君のシャワーの音が部屋に響いていた。
心臓の音を初めて聞いた。
どこか居心地が悪く、
落ち着かず、手を何度も握り返していた。
だが、本能には逆らえない。
色々な驚きの連続で僕の心身は完全疲れ切っていた。
僕の体は本能のままにベッドに入った。
僕の本能は寝ないことを許さなかった。
「……おーい、なんで寝ちゃうかな」
そう言うと、自分の鞄から震える指でなにかを取り出して飲み込むのがおぼろげながら見えた。
「……ごめんね、嘘ばっかりで、
ずっと君の隣にいるって言ったのに…」
うっすらと声が聞こえた、君の声だ、泣きそうな寂しそうな声だった、嘘とはなんだろうか。
いや、多分僕はもう、わかってる。
けど怖くて開きそうな目を強く閉じた。
泣かないでよ。
僕は君に泣いてほしくない。
君は、僕に嘘をついている。
日の光で目が覚めた。
「おはよう」
「おはよー」
僕達は京都を楽しんだ、色々見たし、色々やった。
だけど、昨日の夜のことで、僕の頭はいっぱいだった。
「じゃあ帰ろっか」
「そうだね……」
「ねえ、今日はどうしたの?」
「なにが?」
「なんか元気なくない?」
「そんなことないよ……」
「それならいいんだけど」
思い出した。
高一の時に、一年間病気でずっと休んでいた女の子がいた。
「じゃあバイバイ」
「……ねえ」
「君は死んでしまうのか?」
気づいたら口から言葉が飛び出していた。
言った瞬間に気づいてすぐに後悔した。
けどもう後戻りは間に合わない。
「うん……みんないつかは死ぬよ」
「そういう話じゃない!君は、病気なんだろ?」
「……気づいちゃったか、ずっと隠すつもりだったんだけどね」
「なんで、なんで言ってくれなかったんだ!」
「……言った友達はみんな友達じゃなくなっちゃったから、みんな私に気を使い始めるの、楽しく遊びもできなくなっちゃった」
「ねえ、君は友達になってくれる?」
「……僕は友達だよ、セツナの友達だ」
死んでほしくない、辛い、苦しいそんな感情を押し殺して無理矢理、僕はそう言う。
今はただセツナの友達でいたいから。
そうだ、僕はセツナの友達だ。
僕は友達になりたかったはず、
なにか心の中に違和感を感じるがいくら考えてもわからなかった。
心の中が騒めく。
どこか遠くで、誰かがクラクションを鳴らしている気がした。
嫌な音だ。
?月??日
「……ねえ、セツナはいつ死ぬの」
セツナが死ぬというのが、信じられなくなっていた。
いや、信じたくないのだ、答えてほしくなかった。
「多分、2年後かな」
「大丈夫、死ぬのなんて怖くないよ」
2年……たったそれだけ……
僕だったら、よかったのに
そんなこと言ったって意味なんてない。
僕は僕の顔をできる限りの力で殴った。
セツナの言葉は、僕の足を止めた。
あれから13日間、
セツナに会えていない、
会うのが怖い。
会うたびセツナの死が近くなっている気がして怖くなる。
横断歩道の信号は僕を強く非難する赤色だ。
このまま何も考えず渡れたら、
どんなに楽だったか。
セツナがいない13日間は、
息が詰まるほどの孤独だった。
それが僕の普通だったはずなのに。
……なんで僕はセツナの死を恐れている?
別に死が怖いとかそんなものではない
セツナなんてどうでもいいはずなのに、
そうか、
僕の一人を壊してくれたセツナが、
僕はセツナが——
僕はいつのまにか端の席じゃなく、
セツナがいる窓側の席に座るようになっていた。
多分、出会った時からだった。
気づきたくなかった。
認めたくなかった。
だって、
僕と同じ目をしてたセツナは、
僕に話しかけてくれたセツナは、
とても
輝いて見えたから。
今、どうしようもなくセツナに会いたい。
この気持ちを伝えたい。
僕は駆け出していた。
かなりの距離を走ったと思う。
それほど長く感じた。
セツナ。
セツナを見つけた。
多分、僕は、
セツナをずっと探してたんだ。
やっと、セツナを見つけられた。
息が止まった。
セツナを見た瞬間、僕は言葉を忘れた。
多分今僕は人生最大に喜んでいただろう。
それを見るまでは、そうだった。
セツナは横断歩道の真ん中にいる。
周りは違和感を感じてしまうほどに静かだ。
僕は、それでもセツナから目を離せなかった。
やっと言葉を思い出した、
僕は、セツナに言う。
「僕はセツナのことが……」
喉の奥になにかが詰まったように言葉が出ない。
戻れなくなる。友達に戻れなくなってしまう。
それでも、僕は…
今言わなきゃ、二度と言えない気がしたから。
だから、
僕は、言う。
僕は、言いたかった。
けどこの世界はそれを許さなかった。
言いかけた時だった、
一瞬
セツナの
足が
ふらついた。
タイミングを測ったようにそれは来た。
こんなはずじゃなかった。
この瞬間だけは僕のためにあると思いたかった。
横断歩道の信号は青色だ。
皮肉なほど鮮やかな青は、進めと僕らを急かしている。
僕の足が、止まった。
僕の耳を塞ぐように、
僕達を引き裂くクラクションの音がした。
音が消えた。
僕の言葉を待ってたかのように、
悪意を持ってそれは来た。
キイィィィィィィィィィ
ブレーキ音が、遅れて響く。
速すぎる。
セツナは動けていない。
足が動かない。
恐怖で体が言うことを聞かない。
汗が止まらない。
唇が震えて喋ることすら出来ない。
もう何も考えられない。
そんな時、
セツナの小さな声が、
僕の耳にはっきりと聞こえた。
「死にたくない……」
セツナは、泣いていた。
高一の時の僕は絵に描いたような正義感の強い好青年だった。
困った人がいたら迷わず助けた。
そのおかげか今とは違って友達と呼べるものだって少なくなかった。
なんでこうなってしまったのか。
いじめだった。
クラスメイトの子が不良達に殴られていた。
僕は、見てみぬふりなど出来なかった。
結果、僕が標的になった。
「お前さ、ずっと前から思ってたんだけどウザいよ?」
今まで友達だったもの、信じてもの、その全てが僕の敵になった。
誰もが僕を無視する、
誰もが僕に話しかけてはくれない。
諦めかけていた、そんな時だった。
セツナが、僕に話しかけてくれたのは。
「ねえ、いつも小説を読んでるけどそれって面白いの?」
そう言って君は僕に話しかけてくれた。
僕、嘘ついてたんだ……
図書室のとき話しかけてくれて、本当は嬉しかったんだ。
恥ずかしくて言えなかったけど。
今なら言えるよ。
一人は寂しいよ。セツナ。
セツナ
僕に勇気をくれ。
君に好きだと言う勇気をくれ。
死にたくない。
だけど!
そのときのセツナの顔は一生忘れることができないほど綺麗だった。
僕の時間はこれまでにないほど、早く動き出した。
アスファルトを強く蹴った。
気づいたら僕は、走り出していた。
アスファルトを蹴った足がズキンと痛む。
もう進みたくない
疲れてしまった
足が痛い
それでも!!!
止まらないでくれ
お願いだから
走り続けて
一瞬だけど僕は車なんかより速かった気がする。
生きたい。
心の中で自分の行動を僕の本能が否定してくる。
だけど、
それでも、
僕はセツナに生きていてほしい。
多分僕は初めて、
本能に、世界に逆らった。
指先で触れたセツナの体は
暖かくて、
軽くて、
消えてしまいそうだった。
死んでほしくない
それだけだった。
君のために死んでしまいたい。
……ここは?病院のベッドか?
意識が朦朧としている。
となりには泣いているセツナが見える。
泣かないでよ、セツナ。
僕、セツナの笑顔が好きだから。
そうだ、
まだ、
セツナに言えてないことがある。
セツナに言わなきゃいけないことがある。
「セツナ、君が好きだった。」
よかった。最後に言えたよ。セツナ。
セツナには生きていて欲しい、
だから、
僕を殺して、君は生きて。
ここで僕の時間は完全に止まった。
…僕は、
僕は、いや、
君は死んでしまった。
私は、
生きてしまった。
2月8日
「なんで君が死んじゃうんだよ」
君の呼吸が止まった。
君の心臓が止まった。
君の時間が止まった。
私の時間が止まった。
「私なんかのために、
なんで!死んじゃうんだよ!!
たった2年の命なんだよ!!
君にまだ言えてないことだってあったのに!!」
「……そんなのひどいよ……」
視界が滲み、力が出ず立てない。私は、その場に崩れるように倒れた。
君がいないのは寂しい。
君がいない明日が怖い。
もう、何もしたくない。
だけど、
私は泣いていられない、泣いていられる時間はない。
君からもらった命を、時間を無駄にしたくない。
「……私、嘘ついたんだ……
死ぬのなんて怖くないって言ったけど
本当はすごく怖かったんだ、
だから、ありがとう。」
昔の私は孤独なんて知らない子供だった。
周りにたくさんの友達がいたし、1人でいるときなんてほとんどなかった。
だが、高一になったときに病気にかかった。
それから1年ほど入院した。
入院し始めの頃は友達が毎日のように来ていた。
ここからが地獄だった。
友達がお見舞いに来る回数が徐々に減っていった、面倒くさくなったのだろう。
入院してから、1ヶ月ほどで
誰も来なくなった。
真っ白で音がひとつもしない病室で私は孤独を知ってしまった。
高二になった、これでもう孤独じゃない。
そう、思ったが、違った。
誰も私に話しかけてこない、
誰も私と話してなんかくれなかった。
私はわかってしまった、
誰もが孤独を抱えていて、
それが怖いのだと。
みんなが私と仲良くしてくれたのは、
孤独になりたくなかったからだ、
だけど、
もうみんな私がいなくても平気らしい。
孤独は私だけになった。
そんな時だった、君と出会ったのは
ねえ、なんで図書室で君と出会ったあの日、君に話しかけたと思う?
あの日、私と君は同じだったから。
一目惚れってやつ、
自分で言うと恥ずかしいね。
私は、君が大好きだった。
6月20日
君と出会った日からちょうど2年後。
私は君との思い出の場所に行った。
約束通り、一年後遊園地に行ったけど、泣いちゃった。
楽しまなきゃ、せっかくの遊園地なんだから精一杯楽しまないといけなかったのに。
涙は止まらなかった。
手はずっと冷たいままだ。
あの日の熱は、もう思い出せない。
最後に、私はこの思い出の図書室で、君からもらった小説を読む。
「昔、君が面白いと言っていたこの小説、
やっぱり、面白くなかったよ。
だって、死んじゃうのはこんなにも寂しいから。」
ページを閉じる音が静かな図書室に響いた。
太陽は今日もうるさかった。
私は君が死んでから小説を一つ書いた。
震える手を押さえながら最後の文字まで書き切った、
最初で最後の私の小説。
タイトルは
君のために生きてしまいたい。
君に読んで欲しかったな。
私の2年はもう終わる。
ありがとう。
2月8日
君にもらったこの時間を
私は生きた。
セツナはあの日から
たったの2年を、確かに生きた。
君のために死んでしまいたい。