詩
春
春の草むらは元気です
春の草むらは愉快です
植物たちの戯れに現を抜かす
寝転んでしまおう
服が汚くなっても知ったことじゃない
どうしてこんなに色鮮やかなのだろう
自然は何がしたいのだろうと思ってしまう
自然を擬人化してしまう悪癖が顔を出す
思考しない生き物に囲まれながら
思考の先を見てみたい
音楽
美しい音色が心身を弛緩する
これまでの苦労も水泡と化す
永遠を知りたい
少しでも普遍的なものに触れたい
結局これも欲望なのか
高いところに登りたいだけなのか
そうではないと信仰が言う
少年
少年は踊る
思春期という牢獄の中で
欲望に惑わされそそのかされ
人間としての生が始まったのだ
自然とじゃれあったあの頃にはもう戻れない
眼前には荒野が広がる
生命は戦いを求めてしまう
生命は勝つことを求めてしまう
少年は葛藤し煩悶する
澱んだ薄暗い眼差しに何かが宿る
青い黎明の中をただ駆けるのみ
少女
軽やかに跳躍しながら
細くたくましい足を見せびらかす
古めかしいリズムに乗せて
少女たちは軽やかに踊る
森の中に迷い込んだようで
コローの絵の中にいるようで
ここは鏡がない世界
自分と向き合わなくていい
老婆の裁縫
老婆は裁縫する
子供たちが寝静まった夜に
闇の中の静寂で針は動く
静けさが耳をつんざく
いくつもの諦念と苦悩を乗り越え
透き通った無私がそこにはある
虚無と感傷
知性はニヒリズムを求める
感受性はロマンチシズムを求める
お互いに魅かれあい
不格好なまま前進する
何事も相対化したと思った果てに
疲れ切って心身がやつれた果てに
不意に小さな感傷に襲われ
やがて飲み込まれていく
懐疑は信仰を土台としている
信仰は懐疑を土台としている
呪いと愛
誰からも理解されなかった痛みがある
誰からも理解されなかった苦しみがある
ただ自己の中でとぐろを巻くのみ
呪いはやがて全身に行きわたり
私の一部となってしまう
もしかしたら愛が生まれるときかもしれない
重い荷物を抱え彼方に何を見るのか
皇居
なんで走ろうとするのか
二足歩行を覚えてから
前へ前へ進もうとしてきた
走った先に何かがあると思っているのか
走ることに終わりはない
何かから逃げているのか
何かにたどり着こうとしているのか
動物にはかなわないとしても
走らなければいけないらしい
労働の文書
世界観を貧しくすること
よけいな情報を削ぎ落すこと
できるだけ単純な語彙でまとめること
隙だらけの文章を書くこと
語りえる世界の中でもがくこと
感動を特権化しないこと
詩