zoku勇者 マザー2編・9

ウィンターズ編

……分らない。何が何だかさっぱり分からない。さっき、
夢の中で、ある女の子からSOSのテレパシーを貰った……。
そして、目が覚めた。僕もよく知っている女の子。時に
泣き虫で、お転婆で明るく、いつも元気にしっかりと
大地を踏みしめている、そんな女の子、アイシャだ。
 
僕の名前はアルベルト。大元の世界では、貴族の
息子である。それが、今回はどうして又こんな場所に
いるのか。この書いてる奴、作者に遊ばれて、近年は
良く色んな世界に飛ばされる。○ラ○エの世界やら、そして、
今回はマザー2というRPGの世界らしい。今作での僕の
立ち回りは天才発明少年のジェフと言う役どころみたいだ。
しかも、ギーグという悪の手先から世界を救う少年少女の
一人らしい……。今は、ウィンターズという地名のスノーウッド
寄宿舎にいる……。此処は雪国で非常に寒い。それでも、
此処は本が沢山読める。それだけでも今は幸せかな……。
 
「あ、あ、あの……、アルベルト……」
 
「?」
 
帽子を被った、嫌にモジモジした少年が僕に近寄って来た。
親友のトニーだ。どういうのか……、この子は僕に異様に
付きまとうんだ……。
 
「あ、あ、あ、又、新しい発明……、完成しそうなんだって……?
えへ、えへへ!凄いね!!」
 
「うん、今度は全自動スリッパ叩き機なんだよ、……突っ込みたい
相手に自動的に突っ込んでくれるんだ……」
 
「うわあ!やっぱりアルベルトって凄いんだねっ!!」
 
「でも、まだまだ直さなきゃいけない箇所はあるし、
完成まであと……、2、3年は掛るかな……」
 
「それでも凄いよっ!僕、ずっとずっと君の事、
応援してますっ!!」
 
「う、うん、……有難う、トニー……」
 
……トニーはキラキラと目を輝かせて僕の方を見ている。
何なのかな、……そんなにいつも見つめられてると……、
恐い……、不思議な感じがするよ。処で、夢の中の彼女、
……アイシャの声は震えて泣いていた。自分の声が聞こえたら
南へ……、南に向かって歩き出してとも言っていた。多分、
あれもいるんだろうな。大概アイシャを泣かすのは奴だから。
いじっぱりで馬鹿で、素直になれない、どうしようもない、
変な奴、ジャミル。分かってる。元の世界でも、歳が近い
僕らは良く、3人で一緒につるんで行動する事も多かった。
……腐れ縁……て言うのかな。まあ、ケンカも多かったけど。
大概、それはジャミルが引き金で原因だけれど。
 
「……処で、アルベルト、こんな夜中に部屋を抜け出して、
一体何処に行くの……?この寄宿舎のルールは知っているよね……、
もしも見つかったら尻叩きの刑だよ……」
 
「トニー、僕はどうやら、この寮を出て、ある場所に
行かなくてはいけないらしい、僕を呼ぶ声がするんだ、
……僕を待っている友達がいるんだ……」
 
トニーは僕の方を見て困った様な顔をしていたが、
頷くと、又僕の顔を見た。
 
「僕には分らないけれど、君にはやり遂げなくてはいけない
事があるんだね、……分ったよ、でも、こんな寒い夜中に
ひとりで出て行くのはそれこそ無防備だよ、僕が一緒に
ロッカールームまで行ってあげる、其処で旅の準備を
整えるといいよ!」
 
「うん、有難う、トニー……」
 
「行こう!」
 
僕はトニーの行為に甘え、一緒にロッカールームまで
着いてきて貰う事にした。廊下に出ると同僚がいっぱい。
皆まだ眠らず、ワイワイガヤガヤと騒いでいる。実に
楽しそうだね、本当に。呑気でいいよね。はあ。
 
「いるんだよ!」
 
「いないっつんだよ!そんなモン!」
 
「どうしたの……?ケンカかい?あまり騒がない方が良いよ、
寮長が飛んでくるよ……」
 
僕は喧嘩をしていた二人に注意した。あまり騒がれると、
寮長が来て監視がうるさくなるからだ。それこそ僕が
此処から脱出できるチャンスが遅くなってしまうよ。
 
「タッシーはいるんだよっ!絶対にっ、……南の湖に
いるんだよっ!!」
 
「ちゃんと確認してから言えっ!!」
 
……二人のケンカはエスカレートし、止められそうになかった。
一刻も早く此処から離れた方が良さそうだ。
 
「おう、アルベルト、出掛けるのか?外出するんだったら、
ちゃんと、面倒見のいいガウス先輩に報告してからいけよお!
まだ下の研究室で頑張っている筈だぜ、何せ最近は外でも
得体のしれない変な動物がウロウロしだしたからな」
 
僕は馴染みの同僚にお礼を言い、ロッカールームの前に、
先にガウス先輩の処に寄って行く事にした。
 
「……ところでさ、アルベルト……、あ、明日は何の日かな、
……お、覚えてる?」
 
「ん?クリスマスにはまだ早いし、……何の日だっけ?」
 
「そ、そう……、そうだよね、ごめん、何でもないよ……、
そうだよね、君はもう、此処を出て行ってしまうんだものね……、
あはは……」
 
何となく、トニーは少し淋しそうな顔をした。その時は、
その日が何の日か、僕は全然覚えていなくて分らなかっ
たんだ……。
 
「ここだね、……ガウス先輩の研究室は……」
 
僕らは丁寧に研究室のドアをノックし、挨拶してから中に入る。
 
「おお、アルベルトにトニーじゃないか、こんな夜遅く、
どうした?俺も研究が行き詰っちまってなあ、……アルベルト、
こんな時、お前の父親のアンドーナッツ博士がいてくれたら
助かるんだけどなあ……」
 
……僕はその言葉を聞いて、何だか複雑な気分になる。
この世界での僕の父親は、どうやら変わり者の変な
博士らしい。……どうせこのパロ話だけだから、別に
いいいんだ、別に……。
 
「あの、アルベルト……?」
 
「ん、あ……、ごめん、何でもないよ、ちょっと考え事を
していただけだよ、うん……」
 
「そうなんだ……」
 
急に眉間に皺を寄せ始めた僕を心配したのだろう。トニーが
僕の方を見てオロオロし始めた。
 
「ところで、お前達は何処に行くんだ?」
 
「ロッカールームにちょっと用がありまして……」
 
「ああ、ロッカールームか、けど、あそこは鍵が掛かってるぞ、
ほれ、こいつを持っていきな!」
 
ガウス先輩はロッカールームの鍵を僕らにほおり投げた。
それを受け取り、お礼を言って研究室を後にする……。が、
ロッカールームに向かったのはいい物の……。
 
「……開かない……、この鍵、壊れてる……」
 
「ほ、本当だね……」
 
「トニー、申し訳ないけど、少し此処で待っててくれるかい?
僕はもう一度、研究室に行ってくる……」
 
「うん、行ってらっしゃい……」
 
僕はトニーをロッカールームで待たせ、もう一度
研究室に向かう。……何なんだよ。……又僕の眉間に
皺が寄ってきた……。いけないいけない……。
 
「失礼します、あの、ガウス先輩、……鍵が……」
 
「ああ、実はな、さっき、曲った鍵を渡しちまったんだよ、
悪い悪い、ちょっと鍵マシンだ、こっちを使えよ、今、
ぱぱっと作ってみたんだ、これならどんな鍵でも開けられる
からさ、お前に渡しておくよ、いやあ、手間掛けさしちまった
なあ~」
 
……ガウス先輩は笑い出す。……本当だよ、二度手間掛けさせてさ、
冗談じゃない。けど、鍵マシンを貰ったので良しとするか。
きっとこの先の冒険でも役に立つだろうからね。
 
「おい、アルベルト……」
 
「何です……?」
 
「お前の父親、アンドーナッツ博士は本当に凄い人だ、
何せ我がウルトラサイエンスクラブの初代部長で、
あの現存の天才科学者たちを圧倒する程の物凄い
頭脳らしいお前もそんな父親を持って埃に思えよ!
お前なら、博士を越える凄い発明品をいつか作れるかも
しれないからな!!まずは徹夜で、壊れたメカ位直せる
ようになる事だな!!」
 
僕は再び先輩に礼を言い、研究室を出る。……この世界での
僕の父親が天才だとか、そんなの関係ない。だって、僕は僕、
……アルベルトなんだから。
 
「トニー、待たせてごめん、ちゃんと鍵を開けられるマシンを
貰って来たよ、……その、寒くなかったかい……?」
 
「あっ、アルベルト!ううん、ちっとも……、アルベルトの
側にいられるだけで、僕は何だか、心ポカポカ、あったかく
なるんだ……、えへ、えへへ……」
 
「そ、そう……」
 
やっぱり、トニーは何処か変わっているよ……。さて、
ロッカーに入っていた、バンバンガン、壊れたエアガン、
ホームズキャップを取り出し、誰にも見つからない様に、
こそっと、僕とトニーは寮の門前まで来た……。
 
「此処でお別れだね、アルベルト……」
 
「うん、トニーも元気で……」
 
「この高いフェンスを越えるには、僕を踏み台にするといいよ、
急がないと、誰か来るよ!さあ、今のうちに!!」
 
「有難う、トニー!」
 
僕はトニーの力を借り、急いでフェンスをよじ登り、
寮の外に出た。……残されたトニーはフェンスの向こう
側でずっと僕を見つめている……。
 
「君が何処へ向かうの僕には分らないけれど、僕らは
ずっと友達だよ、さようなら、アルベルト……」
 
「……有難う、さようなら、トニー……」
 
僕は寄宿舎とトニーに別れを注げ、この世界での新しい冒険に
向けて、第一歩を踏み出す……。そして、トニーと別れた後で
思い出した。明日は彼のバースディ、……誕生日だったのを……。

僕はアイシャのテレパシー通り、まずは南へ、南と
歩き出そうとした……。
 
が……寒い。しかし、寒い……。個々は極寒の地だ。
 
「……あ」
 
僕の鼻から……ポトンと一滴、鼻水が垂れた。……周りに誰も
いなくて良かった……。もしも、側にあの馬鹿……(ジャミル)が
いたら、僕の顔を見てきっと鬼の首を取った様にゲラゲラ
笑っただろう。だけど、僕は寒い処と縁があるのかな。
元の世界にいた時も、乗っていた船が難破して……、
ほおり出された処は、……あれだったし。ま、まあ、
その話はいいとして……。
 
『ドラッグストア』
 
寄宿舎のすぐ近くにあるドラッグストアへと、僕は冷えた身体を
温めるべく、我慢出来ずに一目散に走った。
 
「いらっしゃいませー!」
 
僕は取りあえず、何か買ってこの先に備えようと
お品書きを見る。……高い。どれも皆高すぎる。
今の僕の所持金ではとても買えない。特に、
普通の発明家少年という今の肩書の立場では……。
仕方がない、身体を温まらせて貰ったら、すぐに
店を出よう。此処は寮の近くだし、何時までも
此処にいたらまずい。そう思っていたのだけれど……。
 
「お兄さん、フーセンガム如何ですか?……い、一ドル
ですよ、一ドル!」
 
「一ドル……?」
 
一ドルでも要らないんだけど。けど、店員がタダでも
いいと言って来たので仕方なしにガムを頂くことにした。
一ドル払って……。
 
「有難うございますっ!ガムを買って頂いたあなたに
ビッグなおまけ!今なら、このカワイイおさるさんを
差し上げます!!」
 
「!?」
 
……店員が引っ張り出して来た変な物を見て、又僕の
眉間に皺が寄る。赤い様な、ピンク色の様な変な猿だ。
要らない。はっきりお断わりしなくては。
 
「あの、申し訳ないんですけど、要らな……」
 
「いいえ、このおさるは買って頂いたあなたの物です!
うるさくてしょうがないんですっ!どうぞ持ってって
ください!!」
 
……女店員はなからヤケクソ気味に僕に猿を押し付けた。
どうやら店の方でも処理に困っていたらしい。けど、
僕だって要らないよ……。どうせなら、動物園の方に
連絡して欲しいよ……。僕は飼育係じゃないんだから。
 
「キャッキャ!ガムくれ!」
 
猿は僕の側に纏わりついてくる。どうやらガムを
欲しがっているらしい。仕方なしに一枚ガムを渡すと、
猿はガムを膨らませ、ぷくーっと宙に浮かび上がった。
どうやら、この猿の名称はバルーンモンキーと言うらしい。
どうでもいいんだけどね。
 
「キャッキャ!もっとくれ!」
 
「駄目だよ、さっき一枚あげたろ?そんなに食べたら
虫歯になる、駄目!」
 
「おい、ガムは食えねーぞ、噛むんだぞ、分かってんのか、
この腹黒野郎!」
 
「……腹黒って……、あのさ、何で……」
 
「キャキャ!おめーのツラ見れば分んだよ!善良そうな
ツラしやがって、実は裏ではよ、……じゃねえのか?この
まっくろくーろくろ野郎!」
 
……僕はカチンとくる。どうもこのサルは誰かに似ている、
そうだ、あいつだ……。そう考えたら何だかムカムカしてきて、
スリッパで引っ叩きたい衝動に駆られる……。猿の言動を見て、
さっきから店員さん達がポカーンと口を開けて僕の方を見ている。
やばい、このままでは僕の清楚なイメージが崩れてしまう……。
 
「ほーら、言いだしたぞ、ぷっ、僕の清楚なだと、
キャキャキャ!!こう言う事言い始めるとだな……、
テメーの世界によう……」
 
「で、では、頂いていきますっ!」
 
僕はバルーンモンキーを抱えて急いで、ドラッグストアを出る。
……これ以上此処には居られないよ。ああ、恥ずかしい……。
そして、只管、南へ、南へと向かう。……寄宿舎はどんどん
遠ざかって行く……。
 
「……ガムー、ガムよこせー!エネルギーを補強させろーーっ!!」
 
「うるさいっ!駄目だったら駄目なんだよっ!時間を置かないと
やらないからな!」
 
「うるせーのはオメーだ、これでも喰らえ!ブッ!!」
 
バルーンモンキーは僕に向かって失礼極まりないおならをした。
……僕は久々にある物を取り出す。これをやらないと気が
済まないからだ。
 
「はあ、よいしょっと!」
 
 
………パンッ!!………
 
 
「よし、行こう」
 
バルーンモンキー、別名、……バルーンジャミルは
そのまま僕にスリッパで頭を叩かれて伸びて静かに
なった。暫くはこのまま大人しいだろう。けど、等の
本人(ジャミル)は何回頭を叩かれようが常に不死身だしね。
やれやれだよ。
 
 
一方の……、スリークで捕えられているジャミルと
アイシャは……
 
「……う、うっ!」
 
「ジャミルっ!苦しいの!?……大丈夫!?しっかりして……!!」
 
「だ、誰かが……、俺の頭をスリッ……、で、バシバシ叩いて……、
う、ううっ!」
 
「ジャミル……、大丈夫だよ、もうすぐ、もうすぐだよ、
きっと……、アルベルトが……」
 
 
……お願い、アル……、早く助けに来て、お願いです……、
どうか……
 
 
「そろそろ、夜明けが近いかな、でも、今また、頭の中で
アイシャの声が……、辛い思いをしてるんだね、待ってて、
すぐに行くよ……」
 
「キャキャ!ガムよこせーーっ!」
 
突然、バルーンモンキーが復活した。まあ、日が変わったから
いいかと思い、僕はバルーンモンキーにガムを渡した。
……バルーンモンキーはふわふわ宙に浮いている。
そのまま逃げようかと思ったが、奴はすぐに後を
追い掛けてくる。……駄目だ。
 
「キャキャキャ!」
 
更に南に向かうと、仮設テントがあった。中からは温かく、
いいニオイがする。シチューの匂いだ。寒くてたまらないので、
ここでも身体を温まらせて貰おうと中に入ろうとするが。
 
「ガー!」
 
敵、にくいカラスが現われ、妨害する。よし、此処は一つ
腕試しだ。僕はさっとバンバンガンを構える。元の世界では
武器は主に剣が主要だったし、銃なんて初めてかも知れない。
尚、バルーンモンキーは何処かに自分だけ避難した模様。
 
そして。
 
……弱い。僕が……。
 
元々僕は動きが機敏でなく、攻撃もあまり得意ではなかった。
どちらかというと、○ラ○エ2の、2番目の王子系……。
最初から……、はあ、こんなんじゃ駄目かも知れない……。
倒れている僕を見て、目の前の馬鹿ガラスが笑っている……。
畜生。冗談じゃない……。意識はどんどん薄れて目の前が
暗くなって行く……。
 
 
「あ、気が付いたみたいだな?」
 
「身体も大分冷えてたみたいだからな、良かったよ……」
 
目を覚ますと、僕はテントの中にいた。どうやら倒れていた
僕をテントの中の少年達が介抱してくれたらしい。
 
「どうも有難う、……迷惑掛けちゃって……」
 
「いやいや、とにかく紅茶飲んで、シチューも有るよ」
 
もう一人の少年が僕に温かいシチューを盛ってくれ、
紅茶も淹れてくれた。僕は彼らの振る舞いに感謝し、
有難く頂くことにした。紅茶もシチューも僕の冷えた
身体と心をほかほかに温めてくれた。
 
「僕らは此処にキャンプに来てるんだけどね、どうしたん
だろうね、最近は大人しかった動物達まで様子がおかしく
なっちまって……」
 
「……」
 
僕は考えた。彼らにお願いして此処のテントを僕も
利用させて貰ってLV5付近までLV上げさせて
貰おうと。でなければ、この先、とても僕1人でなんて
進む事は不可能だ。情けないけど……。はあ、元の世界での……
ディアナ姉さんの言葉が頭にガンガン響くよ……。
 
 
「トロイ!トロイ!アルベルトっ!!だからあなたは
トロイのよっ!!」
 
 
アイシャ、ごめんよ、もう少し待ってて……。必ず助けに
行くからね……。
 
「ところで、……あのお猿さんは君のお連れさんかい……?」
 
「あっ!?」
 
「随分と、彼もお腹が空いてたんだね……」
 
「あーっ!シチューうめえなあっ!!キャキャキャキャ!!」
 
バルーンモンキーは鍋の中のシチューを残さず平らげてしまった。
少年達はいいよいいよと言ってくれたが、僕は彼らに只管謝る。
そして、バルーンモンキーをこそっと外に連れ出し、教育の為
スリッパで叩く事、数十回。そんなこんなで、再び夜が巡って来る……。

漸くLV7付近まで上がり、どうにか先に進めそうになったので、
テントの少年達にお礼を言って僕はその場を離れることにした。
 
「キャキャキャ!」
 
……このままこれを追いていったら確実に彼らに迷惑が
掛かるだろう。仕方なしに引き続き、バルーンモンキーを
連れて行く事にした。一見、このバカ猿、何の役にも
立たないと思っていたが、この後、信じられない活躍を
見せる事になる。
 
更に南に歩くと、又仮設テントが。今度はしかも沢山。
周りには双眼鏡を持った人達で溢れ返っている。この人達は、
どうやら此処、タス湖に住む伝説の怪獣、タッシーの
観測目的で集まっている通称・タッシー・ウォッチング隊の
探検家の人達らしい。そう言えば、寄宿舎でケンカしていた
同僚達も言っていたっけ。南の湖にはタッシーがいるの
いないのとか。
 
「シチューをご馳走出来るテントも有りますよ、
ご遠慮なさらず!」
 
又、丁度お腹もすいてきたし、頂こうと思い、シチューが
用意してくれてあるテントの中にお邪魔させて貰った。
ウォッチング隊の食事係のおじさんはニコニコしながら、
熱いシチューを大盛りによそってくれた。
 
「キャキャキャ!シチューはうめえなあ!」
 
……相変わらず、この馬鹿猿は……。
 
「君のお猿さんかい?いやあ、可愛いねえ!」
 
「……いや、その……、あはは……」
 
「そう言えば、お猿さんとタッシーは仲良しだって言う
未確認情報もあるんだけど、ほんとかな?」
 
「キャ?」
 
バルーンモンキーは顔中シチューだらけのベトベトの
顔で首を傾げ、食事係のおじさんの顔を見た。
……この猿の素性を知らない者がみたら本当に
只のカワイイお猿さんなんだろうけどさ。……本当に。
 
「おめーの中身を知らねえ奴が見ても、只の真面目な
少年なんだろうけどよ、……ギャッ!!」
 
「だから、人の心の中を読むのはやめろ……」
 
僕はバルーンモンキーの尻尾を軽く抓る。いや、本当に
軽くだよ?……本当に。
 
「今日は風が異様に強い、もしかしたら……、君もタッシーに
会えるかも知れないぞ!」
 
「はあ?タッシーにですか?」
 
「ああ、風が強く吹く日にはタッシーが岬から現れるかも
しれないんだ!」
 
もしも、本当にタッシーがいるのなら……。もしかして
乗せて貰えたら……、この先のタス湖を渡り切れるかも
知れないな……、なーんて。そんな夢のおとぎ話みたいな
事は無理だろうと思いつつ、僕はタッシー・ウォッチング隊の
おじさん達と別れを告げて、タッシーが目撃されたと言う
岬まで辿り着く。
 
「……さて、真面目な話……、この先の湖をどうやって渡ろう……」
 
「根性で渡って凍死しろ!キャキャ!」
 
僕はバルーンモンキーを無視し、ボートか何か乗り物を
探してみるが……。駄目だ。やっぱり何も見つからない……。
 
「イマ、キャッキャッキャ、(今、ガムをよこせ)
キャキキュケキョ!(そしておれにまかせるんだ!)」
 
「またか、分ったよ、……はい……」
 
……バルーンモンキーがモンキー語で急にガムを又要求する。
僕はもうどうでもよくなってガムを渡した。すると……、
急に岬に吹く風が強くなった……。
 
「ああっ!?」
 
バルーンモンキーはガムを膨らませ、そのままふわふわと
湖の上まで飛んで行った。……すると、湖に渦巻きが現われ、
同時に何か巨大な何かが浮かび上がって来た……。それは、
まぎれもない、あの伝説の怪獣タッシーだった……。
 
「う、うそ……、まさか、君達本当に友達だったのかい……?」
 
バルーンモンキーはそのままタッシーの頭にちょこんと
乗ると、僕の方を見てキャキャキャとドヤ顔する。
どうしようもない顔だなあ。
 
「キャキャキャ!おい、何アホヅラしてんだ!湖渡りたいんだろ、
早く乗れよ!」
 
……僕はやや夢心地でタッシーに乗せて貰う。凄い、僕は
タッシーに乗った少年なんだ……。
 
「おい、ちゃんと岸に渡ったらガム倍増でくれよ!
キャキャキャ!」
 
分かってる。まさかのこの、バカ猿のお蔭で湖を
渡り切れそうなんだから。お礼がガムだけで
済むのなら有難いよ。……乗った最初はタッシーが
湖に沈むんじゃないかと思ったり、ちょっと
ビクビクモンだったけど、段々とこのタッシー遊覧が
快適になってきてしまった。やがて、南側の岸も無事
見えて来て、この遊覧も終りを告げる。僕とバルーン
モンキーは岸に降りた。
 
「さようなら、お世話になったね、元気でね!」
 
僕がタッシーに手を振ると、タッシーはそのまま湖に
潜り姿を消した。
 
「おい、忘れてねえだろうな、ガムはよ……」
 
「分ってるよ、後5枚だよ、一応全部渡しておくよ、
はい……」
 
「キャキャキャキャ!!ウシャキャーー!!」
 
バルーンモンキーは狂った様に喜ぶ。何であんなに
ガムが好きなんだろう。まあいいけど。さて、新しい
場所だ。先に進まないとね。アイシャが待ってる。後一人、
うるさいおまけもね……。
 
 
……その頃の……ジャミルとアイシャ……
 
 
「……びぇっくへっくしっ!!」
 
「ジャミルっ!風邪までひいちゃったのね、何とか……、
ヒーリングαは使える!?」
 
「駄目だ、まだ動けそうにねえ……、う、うう~、誰が
おまけだ、この野郎……!!」
 
「はあ、やっぱりこういう時に備えて、武器、食べ物
だけじゃなくて今度から色んな道具も買って常に
常備しておくべきだわ……」
 
 
……アルベルト、……アル、聞こえますか?とにかく、
南に向かって下さい、どうか……
 
 
アイシャの声が再び聞こえる。分かっているよ、アイシャ。
もう少しだよ、君の処まで……。
 
 
「ん?何だろう…」
 
岸に上陸してすぐに、目につく看板があり、こう書いてあった。
 
『このダンジョンは入場料いりません、どうぞどうぞ』
 
……また、おかしな物が……。けど、他に何もなさそうだし、
取りあえずは此処に入ってみるしかないか。更に、中には
こんな看板が……。
 
『ようこそ、私の作った低予算ダンジョンへ、ブリック・ロード』
 
まるでアトラクションの案内看板の様だ。ブリック・ロードと
いうのはこのダンジョンの製作者の名前なのだろうか。とにかく
先に進むしか……。中は迷路状の洞窟で、低予算の割に見た感じ、
仕掛けだけは厄介そうな洞窟だ。
 
「はあ、何だかグルグル回ってたら酔って来たかな……」
 
迷路の行き止まり箇所個所に宝箱が用意されていた。
有難いんだけど、目指すのは出口なんだ……。やっぱり
モンスターも大量だよ。LVが上がっていても、普段から
体力のあまり無い僕ではすぐに大ダメージを喰らってしまう。
本当に1人ではきつい……。例え、相手がぐれたネズミ等で
あっても……。バルーンモンキーはと言えば、バトル中は
殆ど尻を叩いているだけだし。まれに攻撃を手伝ってくれる……
事も有るけど。
 
「これは……、銃かな、僕用だ、有難い……」
 
道中で、やっと真面な武器、ショックガンを手に入れる。
これだけは本当に助かったよ。これで少しは、僕の攻撃力も
上がる……、のかな……。
 
「グワアアーー!!」
 
アヒルの様な敵、つっぱりダックが襲ってくる。早速
このガンの威力を試す時だ。
 
「キョゲギャー!!ギャ、ギャ、ギャギャーー!!」
 
「ああ……」
 
つっぱりダックはぐるぐるまわる、ならぬ、ぐるぐる
まわす……で、バルーンモンキーの身体を掴むとグルグルと
回し始める。どうやら遊んでいる様だ。
 
「ギャギャーー!!ギャーー!!」
 
バルーンモンキーは恐らく、早く助けろーー!!
……と言っているのだろう。仕方がない、分ったよ……。
 
「おーい、早く助けろーー!!、の後に腹黒が抜けてるぞー!!
早く助けろ腹黒ーー!!」
 
……たく、本当にこの、バルーンジャミルは……!!僕は
苛苛しながら、つっぱりダックの尻部に向けてショック
ガンを発射した。弾は見事に尻に命中し、ダックは逃げて行く。
僕も段々、銃の扱いにも慣れて来たのかな。やっぱり、人間
やって出来ない事はないんだよね。
 
「キャキャキャキャー!」
 
……つっぱりダックから解放されたバルーンモンキーは
そこら辺を踊りまわっている。全くもう。このダンジョンも
もう少しで抜けられる……筈だ。

zoku勇者 マザー2編・9

zoku勇者 マザー2編・9

SFC版ロマサガ1 マザー2 クロスオーバー 年齢変更 ジャミル×アイシャ カオス ギャグ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-04-05

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work