zoku勇者 マザー2編・7
ツーソン編・4
……翌朝
「アイシャ、本当に良かったのか?チビ共が通園してくる前に
園を出て来ちまってさ……」
「……うん、又顔を見ちゃったら辛くなるからね、私もあの子達も……、
でもいいのよこれで、さよならじゃないんだもの!ね!」
「そうだな……」
「ね、ね、ジャミルはツーソンでまだ回っていない処はあるの?
私が案内してあげるわ」
「あったかもな、何せ急いでたからな……、入ったのはデパート
ぐらいかなあ」
「じゃあ、取りあえずピザ屋さん行ってみましょ、ウチの幼稚園の
隣に店舗が有った筈よ、私は今まで入った事なくて、最近オープン
したみたいだから」
「……気が付かなかったな、行ってみるか」
二人はトンチキのいるヌスット広場へ行く前に、先にツーソンの町を
歩いてみる事にした。
~マッハピザ~
※いらっしゃいませ!マッハピザツーソン店です!
いつでもどこでも焼きたて熱々の美味しさをお届け致します!
店の前にはご挨拶の看板が立ててあり、二人のお腹を鳴らした。
「えーと、サイズはスモール、ミディアム、ラージ……、か、
今の料金的にスモールかな……」
「早く行ってみよう!」
ワクワクで二人は中に入るのだが、……ウチはデリバリー専門店で、
食べたければ電話番号を教えるので、注文してくれとの対応。
「何だそりゃ、いい加減だなあ~、たく……」
店員に教えて貰った控えの電話番号メモを見ながら
ジャミルが文句を言った。
「……取りあえず、暫く実家にも電話してねえから、俺、
デパートに又行ってみるよ、そん時についでにピザも
注文してみるか……」
「うん、デパートに行くのも久しぶりだわ、よーし、
行こうっ!」
そして、ジャミルはデパートでの黒電話を借りて、実家に
急いで電話する。……覚悟していたが、電話の向こうから、
案の定、ファラの罵声が飛んできた……。
『ジャミルっ!……やーっと電話よこしたねっ!!この馬鹿っ!!
馬鹿なのは分かってるけどさ、たくっ!電話はこまめにするんだよっ!
あたいもトレーシーも心配するだろっ!!』
「んな事言ったってさあ~、俺だって大変だった訳だよ、……あーだ
こーだ、あーだこーだ!」
「うふふ、ジャミルったら、嬉しそう……」
『それよりも、アンタ……、遂にいるね、側に……』
「何がだよ……」
『いいからっ!電話代わって!いるんだろ!早くっ!』
側にいるとは、アイシャの事しかいないであろう、ジャミルは
アイシャに受話器を渡した。
「代わってやってくれ、ファラがお前と話がしたいんだと」
「わ、私……?え、えーと、もしもし?」
『……アイシャかい?アンタ、やっぱりこの話でも等々加入したんだね、
まあいいけどさ……」
電話の向こう側から何となく、複雑そうな感じのファラの声が
聴こえた。……ジャミルはすっとぼけている。
「ファラ?こんにちは!お久しぶり!うん、入ったわよ!何せ、
地球を救うお子様のメンバーの一人なんですもの!この別世界でも
頑張っちゃうわよ!!うんうん!!」
『……まあ、くれぐれも、あの馬鹿が暴走しない様にお願いするよ……、
うん、悪いけど又ジャミルに代わってくれるかい?』
「はーい!ジャミル、又ファラがお電話代わってだって!」
「……今度は何だ、しかし、主に暴走するのはこっち→(アイシャ)
だっての、もしもしっ!!」
アイシャは相変わらず自分の天然度を良く理解出来ておらず、
きょとんした顔でジャミルの方を見ている。
『トレーシーが最近、運送業者でアルバイトを始めたんだよ、
あんたと話がしたいんだって、代わるよ、ほら」
「……バ、バイト……?」
取り換えひっかえで、今度は電話口にトレーシー登場。
『もしもしっ、おにいちゃん!私よ、トレーシーです!うん、
本当よ!エスカルゴ運送っていう宅配会社なの、いらない
お荷物をお電話一本で預かってくれるの!凄く便利なの!
おにいちゃんにも電話番号教えるから、是非活用してみてね!
どこでも従業員が行くからね!』
「あ、ああ……、メモメモ……」
ジャミルは急いでエスカルゴ運送の電話番号をメモする。
そして電話は再びファラへと代る。
『と、まあそんな近況のワケ、ウチの方は皆元気だからさ、
心配しなくていいよ……』
「そっか、安心したよ……で、忘れてたけど……、ダウ……、
馬鹿犬はどうしてる……?」
『ダウ犬かい?それがさあ、アンタがいなくなったら急に悪知恵が
ついたみたいで、ますます態度がでかくなってるし、今、リビングで
イモ食ってテレビ見てふんぞり返ってるよ!!』
「あのな、……叱れっつーんだよ!!ますます馬鹿犬に
なるだろうが!甘やかすなよ!!」
『いいでしょ、別に!それよりも、もう電話代掛るから
今回は切るよっ!玉には謎のパパにも電話してやんな、
じゃあね、アンタも頑張んな!……ガチャン、ツーツーツー……』
「……切れちまった、に、しても……、ダウ犬の野郎……」
「お話終わった?」
「終わったよ、じゃあ、ピザ屋に電話して、デパート出ようや……」
早速ピザ屋に電話注文し、デパートを出る。すると……、
変なBGMと共にシルクハットに小太りのおっさんが
箱に入ったピザを抱えてこちらに走って来た……。
「……うわ、幾ら何でも早過ぎねえ……?」
「お電話してから、3分ぐらいよねえ~?」
「だからウチはマッハピザなんですっ!毎度どうもっ!あ、んじゃ
料金払ってね!それでは!!」
ピザ屋はピザを届けると、又颯爽と去ってゆく。……いきなりの
お届けで食べるのに困ったがモタモタしていると硬くなって
しまうので二人はそのまま熱々のピザを半分こした。
割ると二人ならサイズ的にもちょうど食べやすく、行儀が
悪いと思いつつもピザを頬張りながら町を歩いた。
「あ、アイシャちゃん!暫く顔見なかったけど……、誘拐
されてたんだって!?大丈夫だったのかい!?」
「あ、こんにちは……」
正面から、散歩中らしきお兄さんが歩いて来た。どうやらアイシャと
顔見知りの様子。
「知ってる人か?」
「うん、御近所に住んでるのよ……」
「それにしても凄いねえ~、……誘拐犯の金玉蹴りあげたんだって!?
さっすが、アイシャちゃん!!何せ、ストロング少女アイシャちゃん、
なんていうネーミングも付き始めてるぐらいだからね!もう、
ツーソン中の話題だよ!はは!」
「……お前……」
ジャミルがアイシャの顔を覗うと、アイシャは違うのよう!!と、
ばかりに慌て始めた。
「ち、ちが……、ちょっと連れて行かれそうになった時に
暴れたから、……それは偶然というか……、偶々、玉に
当っちゃっ……って!変な事言わせないでええええーーっ!!
それにどうしてそんな話が広まってるのよおーーっ!!
……変な事話題にしないでっ!!」
「……成程」
「ははは、相変わらず元気がいいねえ、んじゃこれで!またね、
アイシャちゃん!!」
お兄さんは真顔で平然と去ってゆくが、赤面したアイシャは
早速暴走し始める……。
「ま、まあ、しょうがねえじゃん、なあ……って、おいっ!!」
「きゃあああーーー!!」
アイシャは顔を赤くし、猛スピードでサイクリング屋の前まで
走って行き……、そして自転車を持ち上げる……。
「いらっしゃい……、って、やめなされっ!!それは商売道具……!!
こらーーーっ!!」
「乙女の恥よーーっ!!キャーキャーキャー!!」
混乱したアイシャは自転車を持ち上げ、……そしてそのまま
地面に叩き付け、自転車を破壊した……。
当然、アイシャが破壊した自転車の代金は……、後でジャミルが
支払う事になるのであった。
二人は今度こそ、ヌスット広場を経由し、トンチキの元へ……。
「よう来たな!ちゃんと、彼女もいるな!よしっ!」
相変わらずの登場で、トンチキがしゅたっと屋根から飛び降りて
ジャミル達の側に来る。……直接の誘拐犯では無かった物の、
やはり関係無くはないのでアイシャは少しトンチキを見て
複雑そうな表情をした。
「いやあー、アイシャちゃん、その節は悪かったなあ!いやあ、
ホントにねえ!」
「ううん、別にいいんです、あなたのお蔭でジャミルも私も
結果的には無事だったんですから、ね、ジャミル」
「ん?あ、ああ……、それで、用事ってなんなんだい?」
「実はな……、此処じゃ言えねえんだ……」
「はあ?」
トンチキが二人の側に近寄り……、急に声を小さくして
ボショボショ喋り出した……。
「おい、まさか……、やばい話なんじゃ……」
「うーん、確かに他の奴らに聞かれたらアカンのよ、
企業秘密なんでな、ちょっと家まで来てくれるか……?」
「え、え、ええええーーっ!?」
「ジャミル、行ってみましょう、一応お話は聞くべきだわ……」
「まいったなあ~……、本当に変な話だったらどうすんだ……」
ジャミルは焦るが、アイシャに促され、……トンチキの家まで
足を運ぶ決意をした。
「さあ、入ってくれ、……汚ねえ所だけどな」
「うわ!あれが!……あれがっ!?」
ジャミルの目の前を……、有名な虫がガサガサ通過して行った。
勿論、この後も、普通に敵として出てくるあれである。
普通のなので、サイズは小だが。
「もうっ!ちゃんとお掃除しなくちゃ駄目じゃないっ!!」
ゴミだらけの家の中を見てアイシャが呆れる。……家の中には
彼方此方で盗んできたらしき、変な銅像など……、大量に
置いてあって錯乱していた。
「オレのコレクションちゃん、凄いだろ~!?」
「……それよりも、話って……?」
「おお、本題に入るか、……これから、オレはある物を
お前達に見せる、だけど……、見た途端に、いいか、
くれぐれも大声を出すなよ、出すなよ……、頼むぜ……」
トンチキはジャミル達に念を押すと、部屋の奥へと
引っ込んで行った。……そして、トランクをズルズル
引きずってくる……。
「……これは……!?」
「!?」
トンチキがトランクの中を開ける、……何と中には……、
大量の札束が……。
「ざっと、一万ドルは入ってらあ」
「!!!い、い、い、いちまん……どるどるどりゅ!!
あわわわわわ!!」
「ジャミル、落ち着いてっ!!……こんな大金、私達子供が
受け取れるワケないでしょっ!トンチキさん、あなた一体
何を考えてるのっ!!」
大金を目の前にして、意外とアイシャはジャミルよりも
冷静であった。しっかりとトンチキと前を向いてびしっと
断ろうとするのだが……。
「まあな、元々この金は、ジャミ公、アンタを仲間に
したくてな、アンタが仲間に入ってくれたらお祝い金と
してやる予定の金だった、けれど入りそうもなかったからな、
仲間に引き入れるのは諦めたよ、けど、この金はお前らに
やるから!やるって言ったらやるんだ、悪い事にでも、
いい事にでも思いっ切り使ってくれ!!」
……本人は親切のつもりなのだろうが、……トンチキは
滅茶苦茶な無茶を言う……。
「受け取れませんたらっ!!お断わりしますっ!!」
「それでも、受け取ってくれ、……オレはこれから、世界中に
散らばるマニマニの像を頂きに行かなきゃならん、まず2体は
目星は着いた、最初のターゲットは、ライヤーホーランドの
オネットの山小屋だ!じゃあな、ジャミ公、アイシャちゃん!!」
「あっ!ちょっとっ!……待って、待ってったらっ!!
あああ~……」
アイシャがトンチキを追い掛けようとするが、捕まえられる
筈も無く……、……大量の札束と共に……、二人はその場に
取り残された……。
「どうすんだよ、これ……」
「私に言わないでよ、どうにかしなきゃ、どうにか……」
「うう~、大金は……、小切手でよこせよなあ~……」
「そう言う問題じゃないでしょっ!……とにかく何とか
しなくちゃなの、何とか……、此処にいても仕方がないわ……」
……ジャミルとアイシャはビクビクしながら札束の入った
トランクを抱え、再び町を歩き出した。もしもうっかり、
誰かに中身を見られてしまえば最後……、今度は二人して
誘拐され兼ねない状況である。
(ジャミル、落ち着くのよ、平常心よ、平常心……)
(へ、平常心、平常……)
「……ジャミル君かい……?」
「へ、へーーーっ!?」
「焦っちゃ駄目って言ってるのっ!……あはは、おばさん、
こんにちは、ジャミルと知り合いだったのね……」
ジャミルを抓りながらアイシャが声を掛けて来たおばさんと
応対する。おばさんは、以前にヌスット広場でトンチキと
ジャミルがバトルを繰り広げた時にジャミルにキズの手当てを
してくれた親切なおばさんであった。同じ、ツーソンの者の為か、
やはりアイシャとも顔見知りな様子。
「ああ、アイシャちゃんも……、ちゃんと帰って来たんだね、
本当に無事で良かったよ……、誘拐されたって聞いたモンだ
から……」
「私は元気よ!えへへ!」
「おばさん、その節はどうも……」
「凄いね、ジャミル君、アンタ本当に1人でアイシャちゃんを……、
勇気の有る子だよ、偉いよ、本当に……」
「へ、へへ……」
ジャミルもおばさんに挨拶をする。ジャミルの無事な姿を見て、
おばさんも安心した様子であった。
「ところで、アンタ達はこれから先、どうするんだい?この先の
スリークに行くのなら……、今はいけない様になってるけど……」
「え……」
ジャミルとアイシャは顔を見合わせる。……又何かとんでもない
事が起きている様だ。
「何でも……、スリークがゾンビ集団に洗脳されちまった
らしくて、町中ゾンビだらけになってしまっているって
言う噂なんだよ、……この先のトンネル内でもお化けが
出るって話でバスステーションのバスも運転をお休み
しちまったみたいだし……、とにかく皆、先に進みたい
人達は此処暫くツーソンで足止めを喰らっちまってる
状態なのさ……」
「……どうしよう、ジャミル……、スリークがそんな事に
なってるなんて……」
アイシャが不安そうにジャミルの顔を見た。……手元にはどう
処理していいか分からない大量の札束を抱えたまま……、
ジャミル達もツーソンで足止めを喰らってしまったらしい。
「う~ん、何とか歩いていけないモンか……、スリークの
町の人も心配だな……」
「どうしたって、トンネル内の幽霊に邪魔されて、此処まで
連れ戻されてしまうらしいよ、残念だけど、今の処
どうしようもないんだよ……、歩いて行くにしたって、
直ぐにたどり着ける距離じゃないよ……、はあ、どうした
もんだろ……」
……おばさんは去って行く。こうして、二人は又難題に
ぶち当たり、途方に暮れるのであった……。
「そうだ、……アイシャ、お前トンズラブラザーズって言う歌手、
知ってるか?」
「ええ、知ってるわ!超有名バンドマンですもの、確か……、
最近、ツーソンの劇場にも来てた筈よ、私が誘拐される
大分前だけど……、まだいるのかしら?」
「それだ!その人達の力を借りよう、次の演奏場所は確か、
スリークだって言ってたからよ!」
「そうなの、ジャミル、トンズラブラザーズと知り合い
だったのね、凄いわ!でも今は、スリークはゾンビ軍団に……」
「それでも何とか頼み込んでみるんだ、このままじっとして
らんねえよ!まだ、いてくれればだけどな、だけど、当分は
ツーソンにいるって言ってたしな」
「そうね、駄目で元々よね、行ってみましょ!」
最初は戸惑っていたアイシャだが、ジャミルの言葉に漸く頷く。
そして、二人はツーソンの劇場へと走った。いつの間にか、手元に
大金を抱えている事も忘れてしまっていたのであった。
「おーい!おっさん達ー、おーい!!」
ジャミルはツーソンのカオス劇場で、外で仲間と
休憩していたラッキーとナイスを見つけ声を掛けた。
どうやらまだツーソンには滞在してくれていたらしい。
……しかし、彼らには……、ツーソンからいつまでも
動けない理由があった。
「お?あれは……いつぞやの……赤野球帽、半ズボン
坊ややないか……」
「今度は彼女連れか、生意気やのう……」
「おい、あの女の子は……、ツーソンで話題の噂の超能力ガール、
アイシャちゃんじゃ……」
愚痴を垂れだした、小太りの男の方、ラッキーに、別のメンバーの
喋りが異様に広島なまりが声を掛けた。
「な、な、な、な、な、なんとっ!?」
「……どっふぇええーーっ!?マジかいな!!あわわわわ!!
わ、わし、サイン貰わんと!!」
自分達も有名人という事を忘れ……、ラッキーとナイスは
興奮し始めた。
「おっさん達、まだいてくれて良かった……、ふう~……」
「初めまして、こんにちは!私、アイシャです!」
漸くメンバーの元まで近づいたジャミル達が挨拶をした。
「おお、野球帽の方はジャミルだったかの?久しぶりやの!」
「リボンにお団子頭のお洒落な女の子はアイシャちゃんやの、
知っとるで!有名人やからの、わし、ラッキーいいます、
サインしてやー!」
「ええーー!?」
「おい、抜け駆けアカン、わしはナイス言います、先にわしの方に
サインしてや!」
「お前ら、アイシャちゃんが困っとろうが、それよりも、
野球帽の坊主が何か大事な話があるみたいじゃ」
広島なまりが暴走しかけた、ラッキー&ナイスの
コンビに注意した。
「坊主とこうやって顔を会わせるのは初めてじゃったのう、
わしはグルービーじゃ」
「♪かね、そ・れ・わ、おれのほしいもの、だけどじゆうは
ああああ~、もっとほしいい~、おれわゴージャスうう~♪」
俺はゴージャスです、という、歌詞ではなく、歌っている本人の
名前がゴージャスらしい。
「オレはオーケー、余り目立たない男、だけどそれでいいんだ、
オーケーオーケー」
「後一人おるけどな、今どっかいっとるわ、オーケー以上に
目立たん奴や、わてらもアカンけど、奴もどうもアカン、
カッカッカ(笑い声)」
……オーケー以上に普段から目立たないと言う男以外、
これで他のメンバー達もジャミル達と面識を持った事になる。
「仕方ないなあ、……で、ジャミルやったか?何か用が
あんのんかいな?」
ナイスが改めてジャミルに聞き返した。
「うん、実はさ、あんたら、次はスリークでコンサート
やるって言ったろ……?その、俺らも……、スリークに
連れてって欲しいんだけど……」
ジャミルが口を開くと、ラッキーとナイスは顔を見合わせ、
他のメンバーとも顔を見合わせた。そして、ラッキーも
又口を開く。
「ジャミル、知っとるやろ?今、スリークは大変な事になっとる、
それにわしらは、次の場を変更したんや、……嫌、スリークが
ゾンビに取り囲まれとるからヤメ……、という訳でもなく、
……もっと大きな都会に行く事にしたんや、フォーサイド
ちゅうこれまでにない大都会や!!」
「そうなのか、だけど、別の場所に行くんだって、道中
スリーク通るだろ?何とか……、送って貰えないかな……、
今、こんな状態で無茶言ってんのは分かってんだけどさ……」
「お願いします、トンズラさん達!!私達、ゾンビから
スリークの人達を助けなくちゃ!!」
「……弱ったのう、可愛いアイシャちゃんの頼みなら……、
んな事、おやすいご用なんやがの……」
「のう……」
(……んだよ!やっぱアイシャのいう事ならあっさり聞くのかよ!)
デレデレラッキーの態度にちょっこしジャミルが不貞腐れてみる。
「何か、他に理由がおありなんですね……?」
アイシャの言葉に、メンバー全員がアイシャの方を見た……。
「実はなあ~……」
……トンズラブラザーズは、此処、ツーソンのカオス劇場の
支配人に騙され……、多額のとんでもない借金を作って
しまった……、という理由から、何時までもツーソンから
動けない……、という事を暴露する……。
「なるほどね、どうりでいつまで立ってもツーソンにいる訳だ……」
「大変だったんですね……」
「面目ないわい……」
「わてらアカン、ホントにアカン、マジでアカン、
カッカッカッカ(笑い声)」
「しかし、おれら……、いつまで此処で働きゃ此処から
動けるんだい~、……♪じゆうがほしいよ~」
「爺さんになっても此処から逃げられん気がするのう……」
「とほほのほ~だよ、……消えて逃げてしまいたい男、
それがオレ、目立たないオーケー」
「アイシャ、とにかく支配人に話を聞いてみるか……」
「うん……」
ジャミルとアイシャは劇場の中に入って行く。それをボケッと
見ているトンズラ達。
「お、おおお~?な、なんや、あの子ら、中に入って
行きよったで!」
「……支配人に話を聞くと言うとったが、実はまさか
あの子らが救世主でどうにかしてくれる訳でもアカンやろ」
「……だのう、(カッカッカ)笑い声」
「……はああああ~……」
トンズラのメンバーは皆揃って一斉に溜息をついた……。
「……支配人のドッグフードさんにご面会の方ですか?
どうぞ……」
中に入ると、早速のお約束の警備員がいて、追い返すかと
思いきや、あっさりジャミル達を通してくれた。
「……支配人は通称、犬の餌さんか……、プ」
「ジャミルったらっ!……聞こえるわよっ!折角通して
貰ったんだから、ほら早く中に入りましょっ!」
アイシャはジャミルを引っ張り、急いで支配人の部屋に
入って行く……。
「失礼します……」
「おお、あなたは確か?ツーソンのあの、超有名超能力
ガール、アイシャさんですな、こうして直にお会いするのは
初めてでしたな、いやいやいや、私は此処の劇場の支配人の
ドッグフードです、いやいやいや……、……暫くお姿を
くらまされていたとお聞きしましたが、マスコミから
お逃げになって山籠もりでもなさってお隠れにでも
なっていたのかと思いましたよ、はははっ!」
「あのな……、てめえ……」
「ジャミル、いいのっ!……あの、トンズラブラザーズ
さんの事で、お話をお伺いしたい事がありまして……」
アイシャはジャミルを抑え、トンズラの為に、心を落ち着け
支配人と向き合って要件を話し始めた。……普段は小さな
子供っぽく、暴走しがちな処も多い彼女だが、やはり
こういう処は大人びた面があり、しっかりし過ぎていた。
「……アイシャ……、仕方ねえ……、豚顔の支配人の野郎……、
何でどいつもこいつもブタ野郎ばっかりなんだ……」
と、ジャミルは怒りを抑えながら犬の餌の耳に聞こえない様に、
精一杯の小声で呟いた。
「ふむ?トンズラブラザーズですか?」
「……はい、此方の劇場に……、とても沢山の借金を
なさっていて……、ツーソンから移動出来ないと
おっしゃっておられたのですが、あの、返済金額は……、
どれぐらいのお金になるんでしょうか……?」
アイシャがおずおずと尋ねる。するとドッグフードは
大声を張り上げ笑い出した。
「ははははははは!いやいやいや!それはもうですな!
奴らには働いても働いても此処から逃げられない金額
ですよ!……あいつらには一生働かせて扱き使う予定です!
100年だろうが、200年だろうがね!はははははは!」
「……ちっ、汚え奴!」
「……」
ドッグフードの言葉を聞き、アイシャは暫く俯いていたが、
……やがて何かを決意した様に、顔を上げるとテレパシーを
使い、ジャミルの心に話し掛けた……。
(……ジャミル、このお金であの人を納得させられるか
分からないけれど……、今こそトンチキさんの力を
借りるときよ……、トランクの中のお金を使わせて
貰いましょう……)
「え、えええ……、そうか、そうだな……、俺らが
いつまでも持ってても仕方ねえモンな、まさか、
こんなとこで役に立つとか、……やっぱトンチキには
感謝しねえと……」
(そうね、最初は本当にびっくりしちゃったけどね、
……ふふ……)
「さあ、ご用はもう済みましたかな?よければ私も
多忙な故、これでお引き取り願いたいのですが、
私は心が広いので、あなた方の様なパンツの汚れた
糞ガキでも丁寧に応対する、これぞ大人、素晴らしい
でしょう?……其処の少年、何を一人でブツブツ呟いて
おるのです?気味が悪い……」
「その前に、私達からも、お話とお取引が有ります、
聞いて頂けないですか?」
「ふむ?」
アイシャはトランクを慎重に抱え、ジャミルに目配せし
頷き合うと、支配人に近寄って行った……。
zoku勇者 マザー2編・7