落葉 -梟化生と押都-


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この作品は、忍たま二次創作です。
以下の要素が含まれています。

○押都受け
○オリキャラ
○人外
○性表現あり
○キャラ知識がない
※作者が読みたいものを勝手に書いただけ※

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出会い

 枝から枝へ、飛び移る影がひとつ。
 タソガレドキ忍軍黒鷲隊小頭、押都長烈。潜入調査を終え、タソガレドキ領地へ戻る途中であった。
 夜闇の森に、小枝の触れる音がする。押都は立ち止まり、そちらへと向かう。

 野犬が数匹、輪を作っている。中央に梟が一匹いた。

 梟の羽は生え揃っており、大柄だ。人の幼子ほどはある。地面に降りたところを野犬たちに目をつけられたのか。鈍臭い梟だ。
 梟の大きな翼は血で濡れて歪んでいた。もう飛べない。それでも梟は、かぎ爪を木の幹に食い込ませ、枝上へ上がろうとしている。
 力の入らない爪が、木の表面を滑る。梟は幹から、ぽとりと落ちた。
 それを好機と見て、梟に野犬の一匹が飛びかかる。その前に、押都は間に降り立つ。

 静寂な森に、野犬の悲鳴が響く。

 押都は、野犬の体を蹴り上げた。
 両者は息を殺して一瞬、対峙して、野犬たちは後ずさった。
 野犬たちは突然現れた邪魔者を恐れ、散り散りに逃げていく。その足音も遠ざかり、森の奥へ消えた。
 そして、その場には押都と梟だけになった。

 押都は梟の様子を確かめようと、身を屈めた。まだ息はある。震える梟の体には、枯葉や小枝が所々刺さっていた。怪我の具合を確かめようと、押都は手を伸ばす。

 血に汚れた梟が、瞳を見開く。がばりと倒れ込んだ体を起こして、身体中の羽根を逆立てた梟はひと回りも膨らんだ。新たな捕食者の存在に、精一杯の威嚇を見せる。
 押都はまだ威嚇する余力はありそうな様子を見て、そっと息を吐く。手を引いた。

「お前を傷つけはしない。助けてやる」

 忍装束の懐から手拭いを出すと、それを広げ、警戒する梟に被せる。包みの中で暴れる梟を、押都は抱え込んだ。

 腕の中にある布の包みを少しずらして、中を覗き込んだ。
 押さえ込まれた梟は息を荒く吐き、押都を睨みつけている。カチッカチッと嘴を擦り付けて威嚇音を鳴らしていた。
 雑面の下で、口を緩める。梟の嘴に突かれぬよう、逆立った羽をゆっくりと撫でた。良い拾い物をした。これは忍鳥として手懐け甲斐がある。
 押都は布を被せ直すと、包みを抱えて再び帰路へと向かった。



ーーーー


 梟を保護してから数日後。
 押都は筆を止めて、部屋の隅を見る。そこには包帯の巻かれた梟が、座布団の上で眠っていた。

 梟を保護してすぐ、手当てを施し、軽く食事を与えた。
 初めは警戒していたが、口に入れてやると少し食べた。傷は浅いが、衰弱している。肉片をいくつか食べ終え、それから眠りについた。
 汚れを落とし、羽を拭う。そして、座布団の上に乗せ、様子を見るため自室に置いた。

 梟から目を離し、報告書へ視線を戻す。
 軽く斜め読みをして記入漏れが無いことを確認してから、筆を下ろす。墨を乾かしてから、出来上がった報告書を懐へしまう。
 組頭へ提出しに行かなければ。押都は立ち上がって、部屋を出る。足早に、けれど足音一つ立てずに廊下を歩いた。


 部屋の襖を開くと、変わらず座布団の上に梟はいた。
 目が覚めたらしい。包帯の巻かれた体を起こして、部屋を見渡していた。押都に気が付くと、こちらをじっと見つめてくる。

「起きたか。 傷がまだ痛むだろう。 もう少し眠っておけ」

 押都が梟へ声をかけると、返答するようにホウと鳴いた。押都はひとつ頷く。


 押都が文机に向かって腰を下すと、梟は動き出す。
 逃げ出すこともないだろうが、いつでも対処できるよう意識を向けつつ、梟の好きにさせていた。
 戦の事後処理や指示書の作成などやるべきことは幾らでもある。押都が事務作業を進めていると、隣に気配を感じる。

 そちらを見ると、梟が居た。
 押都は驚かせないように、ゆっくりと手を差し出す。梟の首を優しく撫でてやる。
 梟は逃げず、そして柔らかい。

 さらに二、三度撫でて、梟から手を離す。
 文机に向き直ると、置いていた筆を再び手に取り、さらさらと紙上に走らせる。

 梟も文机を覗き込んでいた。止めどなく動く筆先が気になるのだろう。不思議そうに首を傾げながら、目で追っている。

「ホー」

 梟が鳴いた。押都はどうしたのかと、梟の方へ目を向ける。
 隣に座っていた梟は押都へ一歩距離を詰めるように歩み寄る。正座している押都の膝に、梟の体が触れた。

 押都は一瞬、固まった。梟は押都を見上げている。

 ホホウと梟がまた鳴く。
 押都は梟の出方を待って、腕を退けた。すると梟は押都の膝上に脚をかける。押都を見て、首を傾げる。

 梟はこちらを全く恐れることなく、押都の膝上に乗った。
 押都が動きを止めていると、梟は嘴で筆を突いた。墨の付いた筆先が落ちぬよう、慌てて梟から遠ざかる。
 梟の瞳は次に、揺れる雑面の端を目で追っていた。
 押都は梟を両手で持ち上げる。そして、隣に下ろしてやる。

「今は構ってやれない」
「ホォー!」

 梟は、抗議するように鳴く。
 押都はまた梟を持ち上げ、膝に乗せた。梟は膝上に座り込む。ここに居たいらしい。
 

ーーーー


 翼をやさしく掴み、骨の具合を確かめる。

「もう傷は良くなったな。どうだ。動けるか?」
「ホーゥ」
「よしよし」

 膨らんだ梟の首元を撫でる。梟は瞼を閉じて、満足そうだ。
 明日にでも忍鳥として訓練をつけるか。そう考えながら、押都は梟を降ろしてやる。
 怪我の治った梟を他の梟と同じように、飼育小屋に移した。使用済みの包帯を回収して、小屋から出る。

 自室へ戻ると、押都は忍装束を脱いで、寝巻きに袖を通した。事務仕事も終えたことだし、今日は休もう。床に入ると、待たずに眠気がやってくる。


 微睡みの中、意識が浮上する。若葉の香りが、鼻孔をくすぐる。締め忘れた襖の隙間から、風でも入ったか。肺から息を出すような声を零して、身じろぐ。薄く瞼を開いた瞬間、押都は身体を固くした。息が止まる。瞬きすらできない。

 何者かが、居る。

 月が昇っている。
 床の脇に、それは座していた。頭から白紙を垂らしていて、顔が見えない。身にまとうのは、白一色の狩衣。

 押都が覚醒したことに気が付くと、その者は押都を見下ろした。何も言わず、されど身動きもしない。
 押都は、物言わぬ侵入者を見上げた。乾いた喉から音を絞り出そうとするが、声にならない。害意はない。だが、何か対処せねばなるまい。身体を起こそうと、力を入れる。
 まばたき一つ。意識が僅かに逸れる。次に、その姿は消えた。

 全身から汗がどっと流れる。枕元の苦無を手に取ると、床から飛び起きた。雑面をつけることも忘れて、襖を一気に開く。だが、そこには誰も居ない。
 頭を手で押さえて、首を振る。悪夢か。幻か。
 乱れた呼吸を整えつつ、自室へ戻る。とん、と音を鳴らして襖を閉じる。

 床の上に戻ると、何かに気が付く。
 枕元に、羽根が一つ落ちていた。手に取ってよく見る。茶色の羽色に、手の平ほどの大きさ。
 誰かに説明できるわけではない。だがしかし、一人、合点がいった。
 置いてあった雑面をつけてから、押都は足早に自室から出る。向かうは、あの梟をいれた飼育小屋だ。

「押都小頭」
「何か異常は起きていないか」
「はい。何も」

 長屋の廊下を歩いていると、夜番の忍びから声がかかる。その者曰く、感知できるようなことは起きていない。押都は一つ頷いて、労いの言葉をかけ、その場から離れる。

 飼育小屋の扉を開くと、梟たちの闇夜に光る瞳が、押都へと向けられる。その中を通って、奥の仕切りに近づく。
 仕切りの扉は開いている。中に入れたはずの梟がいなくなっていた。
 押都は深く息を吐く。仕切りの扉を戻して、引き返す。不気味に静まり返った小屋。梟たちは一声も鳴かない。
 ずっと持っていた羽根にやっと気が付く。逡巡した後、寝巻きの懐にしまった。

 押都が飼育小屋から出ると、他の忍びが何事かとやって来た。

「どうかなさいましたか?」
「梟が逃げた」
「梟が、ですか。 盗まれたのではなく?」
「いや、自ら逃げた」

 その後、各所に確認を取ると、梟が一匹居なくなっただけで、侵入者などの知らせなどもない。これ以上、騒ぎを大きくしないよう、集まった忍びを警備に戻らせる。押都も自室へ戻り、大人しく眠りについた。

ーーーー


「へえ。 昨晩、そんなことがあったんだ」

 タソガレドキ忍軍百人を率いる組頭。雑渡昆奈門。包帯に隠されていない方の右目が歪む。興味を引かれた。
 集会後、部屋に残った組頭に、押都は昨晩の出来事を報告した。

「拾ってきた梟が人の姿になって枕元に立った、ねえ」
「おそらくは、化生の類かと」
「感謝でも伝えたかったんじゃない?」

 雑渡は、押都から受け取った羽根をくるくると指で弄ぶ。綺麗な羽根から目線を上げて、部下の方を見た。 普段の平然とした様子から、少々外れている。
 人間の理では理解しがたいものを目にしたらしい。それならば、致し方ないか。

「あっ」

 雑渡は外の庭木の方へ顔を向けて、目を丸くした。静かに腕を上げて、木の頂上辺りを指差す。押都もそちらを見る。

「もしかして、あの子」

 ふふ、と組頭が笑う。腕を組んで、頬に手をやる。押都の方を見ると、押都の蘇利古の雑面が揺れていた。
 庭木の枝に一匹の梟。その嘴には、肥えた野鼠が咥えられていた。

落葉 -梟化生と押都-

落葉 -梟化生と押都-

  • 小説
  • 短編
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2026-03-30

Derivative work
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