『楔』

ただひとつ信じて欲しい
子供だったけど本気で愛したこと


『楔』


崩れ落ちる寸前できっと思い出す
貴方へのたったひとつの贈り物
それを思い出せば投げ出すことも
逃げることもできないわ

そんな呪いみたいな愛情を
幼い心で生み出してしまったの
生き急ぐ道すがら拾われた時から
こうなること予感してた

貴方を縛り最後の妨げになるべく
懸命に温もりを移して眠る
求める孤独に手を伸ばさぬように
全てを諦めるには早すぎると伝える為に

だけどこの愛が孤独な心の隙に
付け込んだわけじゃないと言える?
自分の悲しみを癒したくて
利用したんじゃないと胸を張れる?

独りは寂しいから祈るみたいに
毎日願っていたささやかな夢は
貴方という対象を見つけて
鋭い牙を更に尖らせた

アタシが貴方の苦しみになってあげる
傲慢な執着心で最後まで離さない
無邪気な夢の終幕はふたり一緒よ
絶望さえ霞むくらいの悲劇に似た激情を

だけど憐憫を誘う静かな瞳が揺れて
アタシはまた世界で一番憐れな鳥になる
切られた羽根が痛くて震えてた
言葉より優しい貴方の手を知るまでは



「離さないのではなく離れられない運命ならいいのに」

『楔』

『楔』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-03-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted