綺麗

きみを塗り潰さぬように

自分の手の届かないものは、何故あんなにも美しいのか。いつも不思議に思う。

どこか遠巻きに、他人事のようにそれを眺めて、硝子よりも分厚い何かで隔てられているかのように。壊すのは簡単だろうと思う。拳を犠牲にしてしまえば打ち破ることは容易いだろうから。

でもそれをしないのは、どこか神聖なものに祈るような想いでそれを見ているからだ。神を我が物にするのは傲慢で、思いのままに操ることは難しい。その事実を痛いほど理解しているから。

宝石も同じだ。
身に付けるには烏滸がましい。
一度傷がついてしまえば価値が下がるのと同じ。ぼくはきみの価値を左右したくない。きみまで、落ちてくる必要はないのだ。こんな暗く澱んだ場所まで。

綺麗なきみは、そのままでいて。
切実な、切望。
ぼくは孤独のままでいい。

綺麗

綺麗

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-03-24

CC BY-NC-ND
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