ときめく恋はカフェオレの香り チャプター9

鈴原 結菜(ゆいな)は、会社の女性先輩、漆原美香(うるしばら みか)さんのマンションに泊めてもらうことになった。


「す、すみません、美香さん、妹の円香(まどか)とは顔を合わせづらくて・・。」 と結奈は、とりあえず謝った。
いくら、ひと部屋が空いてるからって「他人が家に泊まりに来る」ことは迷惑だろう、と思っていたからだ。
もし、少し落ち着いたら、、、宿泊費用も払うつもりだった。


美香さんは、10歳以上、年上らしく余裕の笑顔でこう言ってくれたのだ。

「あら、いいのよ。私も話し相手が欲しかったら。」
「いくらでもずっと居てくれたほうが、ありがたいわ。」
結奈は、美香さんの懐の広さにびっくりすると共に、感謝する気持ちでいっぱいだった。



ーー美香さんとの同居生活は、楽しかった。---

ふたりで、会社から帰宅した後に近所のコンビニに行き、総菜を買って部屋で食べたり。(もちろん、ビール付きである・・。)
話題のドラマをテレビで観て・・ついつい、ふたりとも泣いちゃったり、今まで妹とママとだけ、生活してた結奈だったが、美香さんは気楽なルームメイトに思えた。
美香さんのマンションにはきちんとお風呂もあったが、わざと2人で近所にある銭湯に行ってみた。



土曜日の夕方に、お風呂セット(手ぬぐいや、ミニシャンプーなど)を手提げバッグに入れて、横断歩道を渡るのだ・・。まるで高校生に戻った気分で、結奈の心は弾んでいた。恋愛などは全く忘れていて、美香さんとおしゃべりをしていた。

「へえ、、こんなところに銭湯があるんですね。」と結奈。
「う、うん。。広いから、気分転換したい時に行ってるのよ、泳げるわよ」



冗談まじりで、美香さんは銭湯まで案内してくれる。

その時、結奈の目に夕焼けが飛び込んできて、思わずうっとり眺めてしまった。
「ああ、ママや円香は何をしているかしら・・?」



そうそう、説明するのを忘れていたが、結奈の父親(パパ)は単身赴任でずっと県外で生活しているのだ。
そのパパのことも、結奈はもちろん大切に思っている。



〜数日後の夜、7時頃〜

いつもの居酒屋で、結奈と美香さん・・。そして、美香さんの男友達の、滑川さんも同席していた。この滑川さんっていう40代の、頭が剥げている男性について説明しよう。結奈の、最初の彼氏・・笹原蒼空(そら)くんのことで、結奈が悩んでいる時にアドバイスしてくれた男性である。


なんでも、若い時に婚期を逃してから独身らしく、年取った実母と2人暮らしとのこと。大きな会社に勤めていて、サラリーはいいらしい。また、結奈の先輩の漆原美香さんとは、大学のサークルの仲間だったらしい。


滑川さんは、相変わらず見た目は「くたびれている中年風」で、きっと今どきのギャルには好感が持たれないなあ、と結奈は思っている。レモンの酎ハイを飲みながら、焼き鳥を一心不乱に食べていて、たまに額の汗を小汚いハンカチでぬぐっていた。


「ああ、結奈ちゃん、久しぶりだね、元気だった?」
「は、はい・・。滑川さんも元気そうですね!」

なんと、滑川さんはマッチングアプリで女性と会ってみたが、「さくら」の女性で、高価な壺を買わされそうになったんだよ、と愚痴ってきた。
さらに、一緒に住んでいる、実の母親(70代らしい・・)がぎっくり腰になり、おんぶしてあげて大変だったとか話し始めたのだ。
それを脇で聞いている美香さんは、あきれたような表情である。


ーーと、その時である。

滑川さんを見ている美香さんの表情が、やけに柔らかくて色気があるコトに、結奈は気付いてしまったのである。

恋愛初心者だった結奈も、少なからず2人の男性と恋をしていたのだ。恋する女性の顔つきくらい、分かるようになっていた・・。

『あ、あら・・・??もしかして美香さんって滑川さんのことを・・??』


更に観察していると、美香さんは額に汗をかいている滑川さんの汗を、自分のハンカチでふいてあげているではないか・・?!結奈は、滑川さんに恋をしている美香さんの気持ちに気付いてしまった。


そ、それなのに・・・、、、滑川さんは、またマッチングアプリの話題を出して、、別の女性のことを美香さんに振っていたのだ。

ーー グビッ。。ーー



なんとも、じれったくなった結奈は、グラスワインを飲み干してしまった・・。

『ああ、この2人の恋が上手くいくと良いのになあ』



ーー それから、1週間後ーー

美香さんのマンションの部屋で、、結奈と美香さんはゆっくりしていたのだ。テーブルの上には、結奈がケーキ屋さんで買ってきたスイーツが並んでいる。


ーー チーズケーキ、苺のミルフィーユ、バナナのオムレット、抹茶のババロア、苺のショートケーキ、マロンモンブラン、


一緒に住み始めて早1か月になるが、、「宿泊代」を出しても「そんなの、いいわよ、」と取ってくれない美香さんに、せめものお礼の気持ちで買ったものであった。

「わあ、結奈ちゃん、、すごいね。早速食べよう」
「はーい、好きなものを選んでくださいね」


苺のショートケーキを食べ始めた美香さんを、横目で見ながら結奈は本題に入ることにした。


「ねえ、美香さんって、今、気になる人とかいないのですか?」



美香さんは、ぷっと噴き出して
「ええ、ケーキを食べながら昼間なのに、その話題・・?」
結奈は、自分が失恋してこのマンションに転げ込んだので、美香さんの恋愛事情が気になることを打ち明けてみた。

美香さんは、1個目のケーキ、、、苺ショートをおいしそうに食べ終わると、結奈のほうをじっと見つめて次のように説明してくれた。



前も言ったように、彼氏を略奪されてから仕事に生きてきたこと、、恋愛すると余計な感情が重くなり、落ち込んだりするのでちょっと面倒に思っている。淡々と話す美香さん・・。


--結奈の目の前には、お気に入りのマロンモンブランがある。。

マロンモンブランはちょっと大人の味で、、疲れた脳を癒すにはもってこいの甘さと、しなやかさがあると持論していた。
「おっと、いけない、、恋バナ、恋バナ。」


「えっと、滑川さんって男の友達なんですか・・??付き合ってみたら良いのに・・。」

結奈の欠点と言えば、、他人にモノを伝える際に「オブラートに包んで話す」ってことが、まるっきり無いことである。いつも相手がびっくりするかも、、、と思いつつ、直球を投げてしまい嫌がられたことも少なくなかった。



けれど、美香さなんは嫌な顔をすることなく、
「ああ、なめちゃんね・・。」と、感慨深く言葉にしたのだ。

「そうですよ、あんなに、じゃれあっているんだから、彼氏にしても楽しいんじゃないですか・・?」

結奈は、飲み屋で「美香さんのただならぬ視線」を目撃してから、なんとか2人がハッピーになってほしかったのである。

そ、その時・・。
「わ、わたしなんて・・。」
急に、美香さんは下を向いて、、弱そうに声を出したのである。



「昔、失恋ばかりしてたし、恋に自信が無いのよね。」
「滑川くんとは友人なら話せるけど、、、告白した後に、冷たくされたら悲しいよねーー」

ずっと付き合ってきた美香さんだったが、初めて見る弱々しい美香さんの姿だったのである。



恋愛に自信が無くって、、、今も独身を楽しんでいるようだったけど、孤独や男性への不信感とか、とにかくいろいろ、ごちゃごちゃしたものを抱えていそうである・・。
結奈は、決めたのである。
『よーーし、滑川さんに話してみよう。。。
   美香さんにも恋で幸せになってほしいわ・・!」


結奈は、3個目の抹茶ババロアを、紅茶と一緒に食べながら「40代の友人たちの、恋のキューピット」になろう、と決意していた。



〜〜 しばらくして、会社のカフェで 〜


会社に呼び出されて、滑川さんはきょろきょろしていた。
「よお、結奈ちゃん、会社のかカフェで知らない男性と会っていて、噂になっちゃうんじゃない・・?」と滑川さん。
「だいじょうぶですよ、、みんな忙しいから、気にしないで」

結奈は、滑川さんにアメリカンコ-ヒーを頼んであげて、、美香さんの話をすることに・・・。



アメリカンを飲んでいる滑川さんに、「美香さんが、好きであること」「コンプレックスが有り、積極的になれないこと」を、手短に話してみた。

滑川さんは動揺することも無く、下を向いたまま何か考えているようだったが、コーヒーを飲み干すと、、、たばこを吸い始めたのだ。



ーー「う、うん、俺も何とかしなくちゃ、、って思ってたんだよ」
「え、えーー!じゃあ、美香さんの恋心に気付いてたんですかあ?」
思わず、結奈は大声になって言っていた。


滑川さんの話によると、、たまに、美香さんに「マンションに遊びに来ない?」って誘われていたり、、昔の彼氏の写真を見せられて、愚痴をこぼされていたそうだ。
もう、40代でこれから新しい彼女を作るのも面倒だから、美香さんとの関係は進めたい、、、とつねづね考えていたらしい。



「え、、?でも、なんでマッチングアプリ、使ってたの?」思わず結奈は、滑川さんを問い詰めてしまう。


滑川さんは頭をかきながら、「ああ、あれも作戦でやきもちをやいてくれたら、あっちから告白してくれるって思ったんだよ」と、笑いながら告白する滑川さんだった。

40代男女の、、あまりにも不器用すぎる恋愛事情に、結奈は同情する気持ちになってしまい、、「じれったいな、早く、くっ付けばよいのに」と願うばかりである。


『このふたりの恋路は、しばらく見守ることにしよう・・。私だって、上手くいってないものね。』



結奈は、今日は「コーヒーだけにしておこう」と思って、カフェを後にしたのだ・・。


〜  自宅 妹の円香(まどか)~



円香(まどか)は、部屋で雑誌を見ながら考えていた。

ーー 姉が帰ってこない、、きっと達郎さんのことで、私と会いたくなんだな ーー

円香(まどか)は、いたって、ふつうの20代女性である。。確かに、他人のものをちょと盗ってしまう、っていう悪い癖はあるが、本人には「罪悪感がまったく、無い」である・・。

結奈と南川達郎の恋を邪魔した時も、、最初はテンションがあがっていたが、いざ自分のものとなると気持ちも冷めたし、、それに、達郎から別れを切り出されてしまったのだ。

『あっけない、結末だったなあ。』



その後、入会しているスポーツジム(主に、スイミングをやっている)があったので、、その仲間の家に泊めてもらい、しばらく会社とジム通いをしていたのである。

帰ってきたら、姉・結奈の姿は見えず、先輩のマンションに行ってしまったとのこと。



円香(まどか)は姉のことは忘れて、ママの元に行ってみた。
「ねえ、ママ・・! このレシピ、教えてくれないかな?」

結奈と円香のママは料理上手で、2人の娘のためにいつも好物などを、研究して作ってくれていた。


「ええ、まどちゃん、、そうなの。」
「この、鶏肉と大根煮は意外と簡単なのよ、待っててね」


レシピを聞かれて、嬉しそうなママはいそいそと台所に向かう。

円香は新品のエプロンをつけて、ママのレシピを教わることにしたのだ・・。

ときめく恋はカフェオレの香り チャプター9

ときめく恋はカフェオレの香り チャプター9

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  • 短編
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-03-22

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