夜伽
男の鞣したような背の
皮膚にかかる燭台が
ひらひらと震えて 影絵である
置いてきてしまった山脈
あるいはあのお奇譚のおそろしい怪物
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macgonhig tsso i
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拇趾が布を滑べり
ささやかな音がした
仰ぎ見ると
黄金色に明るんだ眼が
見ている
男のなみうつ背骨を
――あの小さな山を越えた先に
もっと小さな家のあつまりがあって
ぼくのうまれたところがそこだ
あか色の屋根が草原に埋もれて
ときどき この白い都へも
青い草の香りが
母の拵えた瓶詰めの色彩が
黄色い土壁の手ざわりが
思い出をわたって届くのだ
ぼくもきみと同じだ
と
こぼした彼の咽が
ひどく鋭い呼吸をして
すぐに頭を振った
――ごめん
そして
絹糸の
ように
光を孕む
髪の一抹
こそ
哀れなほど煌めいて
――どうか
ぼくや、ぼくたちを赦さないでほしい
その麗しき打擲で
肌は裂かれ
口をあけた血肉
へりをなぞるゆび
痛みに安堵の息をついている
異郷の貴き人
憐れなるかな
この躯はここへ転がっているだけ
であるのに
捧げられた供物さえ
諸手を挙げて吮れぬなら
なんのために
都などつくったのか
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macgonhig tsso i
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おばけがやってくるよ
わが故郷の樹間の闇に
彼の病める都の夜に
夜伽