彼の涙

記憶は、悲しいものばかり
母は私をいつも殴っていた
愛して欲しかったけど
無視され続けた
身体の痛みよりも
母の私を見る視線が痛かった。
いつか、悲しみは憎しみに変わり
心の中にたぎる黒いものを抱えて生きてきた
そのことを彼に言った
彼は、
黙って聞いていて
ふと見たら
泣いていた。
泣きながら、
君のお母さんは、普通のお母さんのようにきっとしたかったんだよ
そう言って泣いた
彼は、私が泣けない分を泣くように
ポロポロ涙をこぼして泣いていた。
それからだ
私は、母のことを思い出し
痛みを感じても
すぐに
目を真っ赤にして涙をこぼした彼を思い出すようになった
不思議と
痛みではなく
暖かいものを、感じるようになってきた

私は
変われるかもしれない

彼の涙

彼の涙

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-03-18

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