彼の涙
記憶は、悲しいものばかり
母は私をいつも殴っていた
愛して欲しかったけど
無視され続けた
身体の痛みよりも
母の私を見る視線が痛かった。
いつか、悲しみは憎しみに変わり
心の中にたぎる黒いものを抱えて生きてきた
そのことを彼に言った
彼は、
黙って聞いていて
ふと見たら
泣いていた。
泣きながら、
君のお母さんは、普通のお母さんのようにきっとしたかったんだよ
そう言って泣いた
彼は、私が泣けない分を泣くように
ポロポロ涙をこぼして泣いていた。
それからだ
私は、母のことを思い出し
痛みを感じても
すぐに
目を真っ赤にして涙をこぼした彼を思い出すようになった
不思議と
痛みではなく
暖かいものを、感じるようになってきた
私は
変われるかもしれない
彼の涙