ときめく恋はカフェオレの香り チャプター 8
鈴原結奈(すずはらゆいな)は、30歳の証券会社に勤める女性である。恋愛経験が無いのが、もっぱらの悩みであった。最初の彼氏、蒼空(そら)くんは交際中に、体の関係を拒み別れてしまう。
妹・円香(まどか)に連れていった映画館で、再会した南川達郎(みなみかわたつろう)くんと気が合い、付き合うことに・・。上手くいっていたが、なんと妹に誘惑されて、達郎くんと円香は浮気をしていたのだ。
友人の琴葉(ことは)に相談する結奈だったが・・。
〜 本編 〜
しばらく、結奈は達郎と距離を置いて、何も詮索しなかったのである。もし、浮気をしていても「波風を立てる」ことをしなければ、また楽しく付き合える、、と思っていたのである。
「他人のモノを盗る」ことに、罪悪感を持たない妹・円香(まどか)と違い、結奈(ゆいな)は本当に遠慮深い性格だったのである・・。
小さい頃も、友達の家で5人くらいで集まって、友達のママがおやつを出してくれたことがあった。
確か、大きな皿にチョコレートが何個かあったけど、他の友達は「私が、先に・・・」って取り合いになってたが、結奈は手を出さなかったのだ。
それを見ていた友達のママが「あら、結奈ちゃん、競争意識が無いのね」と感心したくらいである。
そんなある日、土曜日にあまりにも暇だったのでレンタルDVD‗を借りて、、街を歩いていると・・。な、なんと、30メートル先に、、、達郎らしき男性が居るではないか。
「た、達郎くん、声をかけちゃおうかなあ・」
久しぶりに見かけた達郎は、ちょっと男らしく見えて結奈はときめいてしまった。
だが・・!!
脇から、「たっちゃん・・。このクレープ、食べる?」
そう言って、達郎にクレープを渡しているのは、妹の円香(まどか)ではないか・・。
どう見ても、円香(まどか)が達郎に言い寄っていて、肩をたたいたり甘えているのが結奈にも理解できた。
でも、達郎もまんざらでもなさそうで、一緒にクレープを食べたり円香(まどか)とデートするのが楽しそうである。
・・・・ (2日後)会社のカフェで・・・
結奈の隣にいるのは、、会社の女性の先輩の、『漆原美香さん』である。
美香さんは、独身でおっとりしていて年下にも威張ったりしないので、他の後輩女性にも、、秘かに人気があるのだ。
2日前に・・「達郎くんと、妹の浮気現場」をしっかり見てしまった結奈も、、どん底気分だった。そんな時に、美香さんが
「結奈ちゃん、顔がげっそりしてるわよ、どうしたの?」と声をかけてくれた。
「え〜〜ん、美香さん、もう最悪っすよ。ちょっと、トラブルってて。 」
と、甘える結奈である。
あまり、普段は他人に甘えない結奈も、、、40代の美香さんになら甘えることもできるのだ。心配そうに結奈を見守る美香さんは、会社のカフェに連れていってくれた。美香さんは、勝手に「今日のケーキセット」をふたつ、チョイスしてくれて、、、結奈におごってくれたのだ。
美香さんは、運ばれてきたチョコレートケーキを、結奈の前に置いて「だいじょうぶ?とりあえず、おいしいものでも食べてね」と優しく声をかけてくれたのだ・・。
・・・と、その時。
結奈の両目から、大粒の涙が・・ポロポロとこぼれたのだ。今まで、我慢してきた「達郎への想い」や「妹へのやるせなさ」が、癒し系の美香さんによって爆発したのであった。美香さんに恋愛の事情を話すと、、チョコレートケーキを食べる美香さんは、、何か考えているようだった。
落ち着いて・・・セットのオレンジテイーを飲んでいる美香さん。
「実は、私も信頼していた友人に、男を略奪されたことがあったんだ」
「ええ?? 美香さんも?それでどうしたの?」と、結奈。
「う、ううん。結局、友人は多数の男と遊んでいるタイプで、いつも不倫用に男性に思われてたみたいよ」
「それで、私は仕事に生きることにしたの。だから、今だに独身でしょ?ペットのほうが可愛いものね」
そう言って、美香さんはペロっと舌を出した。かわいいところもある、40代である。
また、結奈は、今の話と妹の円香(まどか)のことをだぶらせてしまう。いつも「お姉ちゃん、、」ってヨイショしてくれてた、可愛い妹なのに、、、よりによって達郎と浮気してるなんて・・!美香さんは、ふたつめのデザートのカスタードプデイングを頼み、パクパク食べている。。
「あ、、ごめんね、ずっと甘いものを我慢してたから禁断症状が出ちゃってさあさ」と悪そうな顔をする。
「で、結奈ちゃんは、どうするの・・?」
美香さんは、プディングをスプーンですくいながら、話しかけてきた。
「ええ、達郎くんとは結婚したかったんですよ。私も、、30歳になったのでね。」
相変わらず、彼氏ができると「結婚・・・!」って結び付ける、結奈の思考回路は面白いものである。
ーーその日の夜にーー
結奈のスマホに、達郎くんから連絡がくる。
久しぶりに聞く達郎君の声は、どこかしら疲れていて、元気が無い。
「あら、達郎くん 、仕事どう?」
「ねえ、達郎くんて妹と会ってるの・・?」
しばらく、数分間の、無言・・・。
達郎くんは「一回だけ、温泉に行ったよ」と答えた。
詳しく聞いてみると、円香(まどか)から積極的に誘われて断りきれず、デートを重ねたとの、こと。
最初は、秘密で付き合うのがスリルがあり楽しかったが、だんだん結奈への罪悪感でいっぱいになってしまったそうだ。
結奈は、心の中でこう叫んでいたのだ。
『だいじょうぶだよ、達郎くん、私は気にしないから、また一緒に過ごそうね。』
でも、達郎の口から出てきたのは意外な言葉だった。
・・「結奈ちゃん、もう終わりにしよう・・」ーー
さびしそうな達郎の声が、結奈の耳に入る。
「俺は、円香ちゃんとも別れるよ。両方と付き合った俺の責任だよ、2人から距離を置くことにするよ」
達郎くんは結奈の返事を聞くこともなく、電話を切ってしまった。
ーー 結奈の胸中は、どうにもならない感情で埋めつくされた。
今までの、達郎くんとのデートが思い出されて、心が苦しくなるくらい辛い気持ちになってしまったのである。
「で、でも。。私のほうを選んで、、」とか、言えるはずは、無いよね。
それから、2週間くらいは結奈のこころはフリーズしてしまい、何をやるにもぼんやりしている状態だった。
妹の円香(まどか)はそれを知ってか知らずか、急に水泳の仲間と一緒に出かける・・と言ってしばらく家にいなかった。
「そうかあ、円香も私と顔を合わせたくないものね、、」と結奈。
ーーーその後、達郎くんが介護の仕事の異動で、遠方に引っ越したという噂を琴葉が教えてくれたーー
何にも乗り気のない結奈は、、ゲームセンターに行ってみたり、ひとりで海に行ってぼっーとしたり時間を潰す手段が無かったのである。
『なんで、、蒼空くんとも、終わり・・達郎くんは妹と浮気していたなんて・・」
まるで、自分が「男と上手くいかない女」のようで、結奈はみじめな気持ちに襲われていたのである・・。
『はあ、、、もう30歳なのに、、
家庭を持ち子どももいる人も多いわよね」
たまに来る年賀状には、高校のクラスメイトの子どもの写真や「結婚しました」との報告も、たまにあった。
そんなに高望みをしている訳でも無いし、ただ、そばに居て時間を共有できる彼氏を望んでいるだけなのに・・。
『わ、わたし。。結婚をあきらめようかなあ』
とうとう、結奈は恋愛に疲れて、趣味でも本格的に始めようかな、と思ってきたのだ。
空を見上げてみると、、、一羽の鳥(鴨らしきもの?)が寂しそうに飛んでいる・・。
その孤独な、鳥をみて、
『まるで、、、私みたい・・。』
けれど・・結奈は、手に持った川村屋のクリームパンをかじると、急にばかばかしくなって帰途に向かったのだ。
2週間くらいたって、妹・円香(まどか)が帰ってくると知って、結奈を家を出ることにした。
「そんなに、貯金も無いし・・。ホテル代なんて出せないなあ」
その時、以前に会社の先輩の、漆原美香さんが、「ちょうど、ひと部屋あいてるから、たまに泊まりに来てね」と言ってくれたのを思い出した。
ーー 結奈は、小さめのボストンバッグに
手荷物を詰めて美香のマンションを訪ねたのだ・・。
ただ、妹の円香(まどか)には、置手紙のメモを残してきた。
☆ まどちゃんへ ☆
お疲れ様・・! まどちゃんの大好きなビール、冷蔵庫に入れておいたよ。冷やして、飲んでね。
お姉ちゃんより
結奈にとって円香(まどか)の存在は、小学生の頃のまま、3歳年下の可愛い妹で、とても憎む気持ちにはなれなかったのである・・。
ときめく恋はカフェオレの香り チャプター 8