別れ
別れの儀 外にい出たる 春日影
仕事関係の葬式でセレモニーホールに行き、香典を供え、故人の遺影に焼香をした
百歳に近いおばあさんで、自分も50年くらい仕事をさせていただきお世話になった
焼香をした時に、お世話になりましたと心を込めて故人に挨拶をした
家族の方にも挨拶をして、長居をせず、告別式には参列しなかった
天寿と書かれた品が添えられたお返しの紙バッグを手に下げて、セレモニーホールの外に出た
外は明るく、風もなく、春らしい、暖かくいい天気だった
石畳の上を駐車場に向かって歩きはじめた時に、なぜか深い脱力感にとらわれた
焼香をして挨拶をした、その人はもうこの世にはいない
それほど深いお付き合いをさせていただいた訳ではなかったが、気さくな感じの印象は残っていて、その面影を思い出すと声が聞こえてくる
二度と会う事もなく、話をする事もないと思うと、寂しさがこみ上げてきた
石畳の上で、歩みを止めて、しばし茫然と庭の眺めを見ていた
悲しいほどに外は明るく、いい天気だった
車に乗って帰りながら、故人に、お世話になりましたと別れの挨拶をした事を思い返した
その時に、やっと分かった事があった
それは告別式という言葉の意味だった
告別式とは、別れを告げる儀式なのだという事だった
別れを告げるから告別という言葉なのだという事だった
家に帰ってから、観音様にご縁をいただいている私は、故人の冥福をあらためて祈らせていただいた
その事によって、寂寥感の暗さから少しだけれども、抜け出る事ができたように思う
別れ