zoku勇者 マザー2編・2
オネット編・1
漸く完全に日も昇り、人も動き出した頃、ジャミルはまずオネットの
町を散策する事にした。オネットは比較的広い町なので一通りの施設は
揃っている。ホテルに市役所、ハンバーガー屋、ホスピタル、デパート、
図書館、……エトセトラ……。
「そういや、あのニンニク野郎に後で一人で小屋に来いって
言われてたんだっけ、……うーん、後でいいや」
まずは目につくのはハンバーガー屋。
「……どっかのピエロが出てきそうだなあ~……」
……ジャミルは何故かゴミ箱を漁る行動を取った……。
『じゃん!オレンジジュースを手に入れた!』
「……いやらしいわね……、乞食かしら……」
「ヒソ、ヒソ、ヒソ…」
町の人が口々にジャミルを見て何か言っている……。
「俺だってやりたくてやってんじゃねえや!バーカバーカ!
システム上仕方ねーんだよ!……次行くか、次!……畜生……」
と、考えて見たものの、どうしたらいいか分からないので取りあえず
立ち尽くしていると……、変な暴走戦車の様な……変な物が道路を
走ってくるのが見えた。戦車は物凄い立ち煙を上げている……。
「どけどけどけーいっ!シャーク団のど偉いボスのフランク様のお通り
だあーーっ!!ひゃ~はははは!!!」
「……何だいありゃ、迷惑だなあ~……」
「そうよ、あいつは此処の町を取り仕切ってるシャーク団の
ボスのフランクよ、はあ、だれかシャーク団を取り締まって
くれないもんかしら……、無理よね、オネット警察でも手を
焼いているんですもの、やだやだ……」
ジャミルの隣でブツブツ呟いていたおばさんは溜息をついて何処かに
歩いて行った。
「しょうがねえ、もう少し町を歩いてみて情報収集だ……」
次にジャミルが来たのは図書館の前。……勉強&本が嫌いな
ジャミルは建物を見ているだけで吐き気を催し……、その場に
しゃがみ込んでしまった……。
「お、おえええ~……」
「大丈夫?君、調子が悪いのかい?だったらすぐにホスピタルに
行った方が良いよ!」
丁度通り掛かった親切な兄ちゃんがジャミルに声を掛けて助け起こす。
「いや、大丈夫……、悪いね……、……おげえ~……」
まさか図書館の建物を見て気分が悪くなったとは言えず……、
ジャミルは只管親切な兄ちゃんにお礼を言った。
「君、その恰好だとお出掛けなのかい?地図はちゃんと持ってるの?」
「んにゃ……」
「だったらすぐ図書館に行きなよ、此処のロビーで地図を貸出し
してくれる筈だよ、ささ、今すぐ行ってきな!」
「はあ、ども……」
親切な兄ちゃんは去ってゆく。どっちみちこの先、地図がないと
どうしようもないので……仕方なしに吐き気を堪え、ジャミルは
図書館内へと足を踏み入れた。中は本の匂いがプンプンし……、
それでもジャミルはフラフラとロビーまで何とか歩いてゆく。
このゲームはキノコが頭から生えると歩行が自由に出来なく
なるのだが、キノコが頭の鉄片に生えているわけでもなし、
しかしジャミルは右へ左へと酔っ払いの様にヨタヨタ……。
「……よ、漸くロビーだ……」
「はーい!子供に貸出できるのは地図位のモンだけど、いいかしら?」
本の匂いで酔っているジャミルとは対象にやたらと元気がいい
司書のお姉さん。
「……俺、本当は子供じゃねえんだけど……、お願いします……」
「うふっ、坊やの言ってる事、意味不明だけど、貸して
あげちゃう!この地図って便利なのよ!!オネット以外の
全部の場所も載ってるからね、あ、返してくれるのは
2001年ぐらいでいいわよ!!」
「ども…、うう~、又玄関まで戻らなきゃ…」
……やっとこさ外に出て、新鮮な空気を吸うジャミル。
「あんた……」
「へ、へ?」
一休みしているジャミルの処に手提げバッグを持った小太りの
おばさんが近づいて来た。
「あんた、こんな処で何してんの……、学校は……」
ジャミルはおそるおそる……、自分に近づいてきたおばさんの
顔を見上げた。おばさんはどう見ても顔色が悪く、一般の町民と
明らかに様子が違っていた。
「あ、いや……、俺元々学校行ってねえし……、その……」
「そんな不良みたいな子はお仕置きだよ!!ツラかしな……」
「貸せって言われても……、う、うわ!?」
「どおおりゃあああああ!!」
おばさんは問答無用で持っているカバンをブンブン振り回し
ジャミルに襲い掛かって来た!
「あぶねえな!この糞ババア!!何しやがる……!!」
間一髪でジャミルはおばさんの攻撃を避ける、明らかに様子の
おかしい顔色の悪いおばさんの顔を見て咄嗟にブンブーンの
言葉を思い出した……。
あんたが戦うのはギーグの送り込んだ手下ばかりではない、同じ地球の
悪しき心の人間達もあんたの冒険の旅を妨害するじゃろう、動物たちが
攻撃的になっておるのもギーグの力が彼らの心を刺激しているからに
違いないのじゃ……!!
「そっか、この糞ババアも……、けど、一般市民に暴力振るったら……、
しかも俺今子供だし……、犯罪で少年院行きになっちまうよーーっ!!」
大丈夫じゃ、……ギーグに操られている人々をアンタは元に戻す
手伝いをするだけじゃ、死にはせんよ、安心して思い切り
戦いなさい……
「この声……、ブンブーンなのか……?分ったよ、アンタを信じるよ……」
何処からか聞こえてきた声に耳を傾けて呼吸を整えると……、ジャミルは
ボロのバットを構えて目の前のおばさんを睨んだ。
「何ブツブツイッとるか糞ガキーーっ!!くたばれええーーっ!!」
「黙れ糞ババアーーっ!!」
ジャミルはおばさんの脳天目掛け、思い切りボロのバットを叩き込む、
……クラッシュヒットでおばさんは即答で倒れた。
「きゅううう~……、げう……」
「あ、わわわ……、マジで俺……、大丈夫なんかな……」
ジャミルはおばさんの状態を確認する、……すると、倒れていた
おばさんがむっくり起き上がった。
「あらら、あたしは……、こんな処で何してんのかね?やだね、
デパートへ行こうとして……、その後の記憶が全くないんだけど……」
おばさんが平気で起き上がったので、取りあえずジャミルは一安心する、
やはりさっきの声はブンブーンだったらしい。遠い処から……、彼、
ジャミルをこれからもきっと見守っていてくれているのであろう。
「……おかあちゃーーん!」
「……かあさーーん!」
「あんた達……、どうしたんだい?」
おじさんと子供が急いでおばさんのところに走ってくる、どうやら
おばさんの家族の様であった。
「はあ、どうしたんだいじゃないだろ、3日間も姿をくらまして……、
こっちはどれだけ心配したか……」
「デパートに行くっていってから、ずっと帰ってこないから……、
心配したんだよ!!」
「そうなんだよ、……デパートから先の記憶が飛んじまってね、
……やだね、ボケたのかね……、あ、そうだ……」
おばさんはジャミルの処に近寄って行くと、何故か100ドルを渡し
手に握らせた。
「い、いや……、何これ……」
「ははは、何だかわかんないけど、アンタを見てたら妙に清々しい
気分になっちまってさ、まるで脳天から何か悪いモンがしゅーっと
飛んでったみたいな……、いいよいいよ、小遣いにとっときな、
じゃあね!!」
おばさんと家族は去ってゆく。ジャミルは訳も分からず、おばさんから
渡された金を暫く眺めていたが、やがて開き直り、これはお礼に
貰ったんだと思う事にし、遠慮なしに使う事にした。
「あんた、いい人だったんだな、おばさん……」
おばさんの気が変わって戻って来ない内にと、……ジャミルはすぐに
その場を立ち去り、本日はオネット市内のホテルに貰った金で泊まる事に
したのだった。
……そして、その夜……、ホテルのスイートルームのベッドで
ぐっすり就寝するジャミルの耳に……
……きこ……える?……おねがい……、はやく……、はやく……、
助けて……ジャミ……
……ジャミルのバカーーっ!!
「!?オウっ、な、何だっ、何だい……!?」
……何処かで聞き覚えが有る様な……、ない様な……、突如耳元に
聞こえてきた妙に甲高いキャンキャンした謎の声に……、たたき
起こされたのであった。そして、又夜が明けて新しい朝が来る……。
ジャミルはベーカリーでサンドイッチとミルクを買い、公園のベンチで
一休み。これからの事についてどうするか考える。
「とりあえず……、夢で聞いた声……、早くどうにかしないと……、
このままじゃ毎晩耳元でギャーギャー罵声を浴びせられそうだ……
けど、まずはこの町でバン張って威張り腐ってるらしいシャーク団とか
いうのを、どうせ俺がどうにかしなきゃなんねんだろうな……、
ブツブツ……」
と、呟いている処に変な集団がジャミルの側までやってくる。
「何か用?」
「坊や、こんな処で何してるでちゅかー?俺達は泣く子も黙るシャーク団
でちゅよー!怖いでちょ?怖いよねえー!ひゃははは!おちっこ籠れた?」
「怖かったらどうすんの?」
「そのサンドイッチ置いてったら許してあげまちゅよー!ひゃははは!」
「……テメエで買って食えっつーの!この野郎!!お前らは精神年齢が
子供かっ!!」
「ひゃは!?う、うおおおお!?」
ジャミル、問答無用でボロのバットでシャーク団のメンバーを遠慮なしに
殴り全員一掃する……。こんな子供にと油断していたのか、シャーク団の
メンバーは突如殴り掛かってきたジャミルに面食らいあっさりその場に
倒れた……。
「あー気分わりい!最悪っ!別の処で食べよっ!!……それにしても、
このバット……、そろそろボロボロだなあ、元々ボロなんだけど……」
気分を変えようとジャミルは倒れているシャーク団をほっぽっておいて
別の場所へと移動する。ジャミルがいなくなった後、シャーク団たちは……。
「……た、大変……だ、末恐ろしい糞ガキ登場だ……、すぐにフランク様に
……報告しねえと……」
ジャミルは何処か他にと軽食を落ち着いて食べられる静かな場所を
捜し歩くが……。
「奥様、知ってます?あの、山に住んでいる自称変なトレジャーハンター!」
「ええ、ライヤー何とかという方ざんしょ?碌に定職も付かないで
変な物ばっかり探してあててると言う噂ね、おまけに悪臭が凄いん
ですってね!いやだわ!早く何処か他の場所に立ち退いてほしい
モンだわね!」
こんな風にして、騒がしいおばさん達の立ち話などが聴こえてくる。
……中々落ち着いて食べられる場所はない……。
「あの親父……、後で又小屋に来いと言ってたけど……、本当に何を
見せたいんだろう、何か気になって来たな……、よし、行ってみるか、と、
その前に準備……」
ジャミルはサンドイッチを一旦リュックにしまうと、市街地を離れて
山頂まで又行ってみる事にした。ドラッグストアで風邪用のマスクを
買って……。
「やあ……」
「ジャミルちゃん、ちゃんと来てくれたんだね、ん?どうしたの、
マスクなんかして、風邪でもひいたのかい?」
「そんな処さ……」
ライヤーのニンニク悪臭避け……とは言えず、ジャミルは苦笑いする。
……が、マスクをしていても強烈な悪臭は防ぎきれず……。
「ガスマスクの方が……、良かったかも……、ぐえ……」
「ニンニクはいいよね、おれなんか忙しい時でもこれだけは口に入れて
いるんだ、ニンニクキャンディ、子供の君でも食べやすいよ、健康にも
いいんだよ、一粒どう?」
「うわ!要らねーから!……それよりも早く!見せたい物ってのを
見せてくれよ!俺だって暇じゃねえんだからさ!」
ジャミルは横を向き、ライヤーから顔を背ける……。ライヤーは不満そうな
ツラをするが仕方なしにニンニクキャンディを引っ込めた。
「ふん、この良さが分からないなんてまだまだお子ちゃまだね、いいよ、
どうせおれなんか誰も近づかない孤独な奴さ、こっちにおいで、地下室だよ……」
「……助かった、んなモン、一生分からないままでいいよ……」
ライヤーに案内され、ジャミルは地下室への縄を蔦って降りる。
地下室には……何やら金色に輝く変な像が設置されてあった。
像は怪しい輝きを放ち、ジャミルはそれを眺めているだけで
何ともおかしな……変で複雑な気分になってくるのだった……。
「見せたいモンてこれかい?これをアンタが?……地下で
発掘したのか……?」
「そうだよ、けど、どうせアンタは本当は信じてないんだろ?
おれが掘ったってさ、顔を見りゃ分るよ、ふん、もういいだろ、
帰ってくれ、仕事の邪魔になる、後は此処の宝を張り出すだけさ、
こんなモンが出てしまった以上な……、アンタだって良からぬ事を
考えていないとも言えないからな、さーてニンニクを食って頑張るか!!」
「何だよ、自分で来いとか言ったくせにさ、何怒ってんだか……、
はあ、じゃあ俺はもう行くよ……」
ジャミルは小屋を後にする、二度と来るもんかと思ったが……、
ライヤーの態度が急にそっけなくなり、態度が微妙におかしく
なったのは像の放つ輝きが原因である事に、今はまだジャミルが
気づく筈もなかった。……そして、山を下り、実家付近まで
戻って来ると……。
「ファラ……?」
「あ、あっ!ジャミルっ!!戻って来てくれたんだね!!
丁度良かったー!!今アンタを町まで探しに行こうかと
思ってたんだよっ!!」
ファラはジャミルの姿を見つけると大慌てでこちらに走って来た。
どうやら何かあった様だ……。
「どうかしたのか……?」
「と、とにかく家まで来てっ!!」
……ファラのこの状態から察するにやはりただ事ではないと思い、
ジャミルは一旦家に戻る事にした。……そして案の定……、
家に入ると大慌てでトレーシーもジャミルに飛びついてくる……。
「おにいちゃん、おかえりーっ!た、大変なのっ!!」
「何かあったのかい……?」
「落ち着いて聞いて!あのね、ダウ犬が……連れてかれ
ちゃったのっ!!」
「は、はあ……?誰に?まさか、保健所か……?」
「覆面マスク付けた怖い人達が……、急に大勢でどかどかお家に
入って来てっ!!ひゃっはーーっ!!とか言ってて、ダウ犬を
えっほえっほ抱えて何処かに連れてっちゃった!!」
「ひゃっはーだと?……まさか……」
「ジャミル、アンタ早速盛大にやらかしたみたいだね、ま、
仕方ないけどさ……」
「これ、おにいちゃんへって、お手紙も置いて行ったわ……」
ジャミルはトレーシーから手紙を受け取り手紙に目を通した。
文面にはこんな内容の文字が……盛大に下手糞な字で書かれて
あった。
※おう、糞ガキらしい、赤い野球帽と黄色いリュックの
無謀な糞ガキ、ジャミル君へ……
俺は『ど偉いシャーク団のボス、フランク』だ。このオネットじゃ
知らねえモンがいねえ筈の『超ど偉い有名人』だ!多分絶対に
偶然だと思うが……、お前、俺んとこの奴らを盛大にやって
くれたそうだな?非常に信じられないので試してやる、復讐も
兼ねてな……お前の飼ってる糞犬を人質に取った、助けてほしきゃ
町のゲームセンターまで一人で来い、でないと、お前の糞犬に
安い着色料たっぷりの餌を食わせてやるぞ!!ひゃははは!!
……ちなみにお前の情報の事は親切なお友達が皆暴露して
くれたよ、良いお友達を持って幸せじゃねえか!!大事に
してやれよ!!……ひゃ~はははは!!
「……あのなあ……、たく……、結局こうなるか、馬鹿犬め……、
けど、友達って誰だ?まあいいか……、ファラもトレーシーも……、
心配すんなよ、ダウ犬は大丈夫だから……」
「気を付けて、ジャミル……」
「おにいちゃん……」
「ああ、任せとけ……」
とは言うが用心に越したことはないので、町に戻ると銀行の
キャッシュスペンサーでドルをおろし、再びドラッグストアにて
ふつうのバットを購入し、ジャミルは独り単身でゲームセンターへと
殴り込みを掛けに行くのであった……。
シャーク団に連れて行かれたバカダウ犬は、ゲームセンターの
裏庭でフランクと共にジャミルが来るのを待っていた……。
「あの、オイラ何時までこうしてればいいんですか?もう夕ご飯の
時間なんです、お腹がすきました……、今日は目玉焼き乗せた特製の
ハンバーグなんですよお~……」
「うるせえ犬だなあ、第一、んなモン食う犬が何処にいる……、
おめえは大人しくご主人様が来るのを此処で待ってりゃいいんだよ
それで目の前でアホな主人がボコボコにされるのを見てろ!
ひゃ~はははは!!」
「あのね、オイラが言うのもなんですけど、ジャミルを
なめるとですね……」
……ぎゃああああああーーーーーーっ!!
「な、なんでいい!?」
「……あ……」
ダウ犬が喋り終えない内にゲームセンター内から悲鳴が聞こえた……。
「ひゃははは!そうか、おめえのご主人様がやられたらしいな、
ひゃ~はははは!!そうかそうか、可哀想だな、おめえ!!
此処には来れなかったみてえだな、ひゃははは!!」
「違うと思うよお~……」
「何だ?ちゃんと来てやったけど?」
「!!!な、ななななっ!!」
「ジャミルっ!」
ふつうのバットを肩に担いだジャミルが裏庭に姿を現す。
バットは血で赤く染まっていた……。
「うわわわわっ!!ジャミルう~っ!!」
「て、てめええ~!!マ、マジで子分共を……、や、
殺りやがったのかっ!?うわあーーーっ!!」
フランクとダウ犬、返り血で赤く染まったバットを見て
脅えて抱き合う……。
「ああ?これか?違うよ、血じゃねえよ、確かにあんた達の
子分共をちょっくらボコってシメたけどさ、怪我しない程度に
加減して殴ってやっただけだよ、そしたらさ、いやあー、
アンタマジでつええーじゃんて、尊敬されちまった!!」
「じゃ、じゃあ、その赤いのは……?」
「ああ、これか?」
脅えながら訪ねるダウ犬にジャミルはリュックからケチャップを
取り出して見せた。
「あんた(フランク)の子分達に貰ったんだよ、腹減ったから
ハンバーガー食おうと思って、追加調味料で貰ったのをバットに
うっかり溢しちまっただけ、あーはははは!!」
「あーははは!!……じゃ、ないよお~、紛らわしい事
しないでよお、ンモー、んじゃオイラ家に帰る!!
ハンバーグ食べるんだから!!」
「おう、ファラとトレーシーに宜しく!心配してたぞ!」
ダウ犬はさっさと家に帰る。……やり取りを見ていたフランクは
怒りで肩を震わせた……。
「糞ガキ……、舐め腐ってからに……、このオネットを支配するのは……、
このど偉いフランク様なんでぃ……、叩きのめしてやる、糞ガキ……」
「お?」
ど偉いフランク様は怒りの形相で持っていたナイフを取り出し、
ジャミルに切り掛って来た。しかし、素早いジャミルはあっさりと
避けると、ふつうのバットでナイフをあっさり叩き落とし、更に
ど偉いフランク様の脳天にスマッシュを叩き込んだ。
「……野郎……、何処までっ!……こんな糞ガキに……、畜生……」
「諦めな、おっさん!」
「無敵のフランク様がこんな処で負けるわけにゃいかねえんだよ……!!」
「あっ!おいっ、何処行くんだよっ!逃げんのか!?」
「ヘッ、誰がっ!!」
生身では勝てないと悟ったど偉いフランク様は裏庭にあった車庫内の
シャッターを開ける、そして中にあったらしき変な乗り物に飛び乗り、
中に入り自ら操縦すると再びジャミルの前に姿を現した。それは、
ハンバーガー屋の前の道路で見掛けたあの、暴走戦車ロボであった……。
「……おおおおお!?」
「……どうだ!無敵のフランキースタイン2号だ!ひゃ~はははあ!!
どうだ、怖いだろう、糞ガキ!おしっこ漏れたかよ!?」
「2号……、って、事は1号機もあったんだよな?壊れたのか?」
「うるせーうるせー!!何処までも癪に障るガキだっ!!このまま
跳ね飛ばしてやらあ!!」
2号が蒸気を吐き出しながらジャミルに突進してこようとする。
ジャミルもバットを構え、目を見据え2号と対峙する。2号を
睨んだまま動かないジャミルを見、フランクは何故か少々慌て始めた。
……どうやら、ジャミルを本当に跳ね飛ばしかねないのを脅えて
躊躇っている様子であった。
「おい、どけよ糞ガキ……!このままじゃ本当にマジで
おっ飛ばしちまうぞ!い、い加減にもう降参して帰れって
んだよ!!……も、もう許してやるからさ、なあっ!!」
「やだよ!誰がこのまま帰るかっての!売られたケンカは買う
主義なんだよ、俺はっ!!」
「ち、くそ……、折角忠告してやったてのに……、マジで俺は
知らねえぞおーーーっ!!いてえ目に遭うのも全部てめえで
わりいんだあーーーっ!!うおおおおーー!!」
2号は中のフランクの忠告通り物凄い勢いで蒸気を吐き、
ジャミル目掛けて猪突猛進してくる、……しかしジャミルは
躊躇せず、ひょいっと軽々ジャンプすると2号に飛び乗り、
バットで頭部を数回殴ってぶち壊す……。頭部を破壊された
2号は更に暴走するとそのまま直進でゲームセンターの建物に
突っ込み、爆発し、そして壊れた。無論、ジャミルは2号が
壊れる寸前で、さっと車体から飛び降りていた。やがて壊れて
ボロボロの2号の中から、やはり中の人もボロボロ状態で、
フランクがヨロヨロ出て来た……。
「……ま、負けた……、無敵のフランク様が……、ただのフランク様に
なっちまった、ふ、ふふふ……、おめえは強いんだな、……負けを認める、
好きにしな……」
「んじゃあ、この町でバン張って糞威張りすんのはもう止めろ、分ったか?」
「……分った……、俺も男だ、おめえさんの言う通りにしてやるよ……」
ジャミルはバットの先をフランクの頭部に押し当てる。若干フランクは
まだ悔しそうな表情を見せていた物の、ジャミルへの負けを素直に認めた
様であった。
「それと、お前の知りたがっているジャイアントステップの秘密を
教えてやろう」
「俺、あんたに何か話したっけ?……確かに、ジャイアント
ステップとやらを探してんだけど……、良く分かったな……」
「何となくだ、……いいか、あそこはある種のパワースポットらしい、
特定の人間に何かエナジーをもたらす様なモンがあるらしい、ただ、
あそこにはエナジーを吸い取ったバケモンも今住みついちまってる、
中心まで辿り着くのは困難だぞ、それでも行くのか……?」
「……まあね、この話での、それが俺の使命の一つらしいしさ……」
「そうか、行くのか、俺が話してやれるのは此処までだ、後は自分で調べな、
ジャイアントステップへの抜け道は旅芸人の小屋の中だ、小屋の鍵は市長の
ゲーハー・ピカールが隠し持ってる筈だ、……俺より強いジャミ公、検討を
祈るぜ!!」
「まーた、此処でもその呼ばれ方かよ……、ん~、まあいいけど、
じゃあな!!」
こうして、戦友となったフランクと別れを告げ、ジャミルは
ゲームセンターを後にする。
「いやあー、アンタ本当に凄いんだな、あのフランクさんを
負かしちまうとは……」
「やっぱりアンタ、唯の糞ガキじゃなかったんだなあ!!」
「へへへ、へへ……」
帰りのゲームセンター内を通過時でも、ジャミルはフランクの
子分共にやたらと尊敬されまくり、照れ笑い。そして、RPGの
お約束か、物の数分も立たない内に、ジャミルがシャーク団を
改心させたと言う噂は瞬く間にオネット中広まった。
「見て、あの子よ!凄いわね、あんなに小さいのに……」
「本当だ、何だかあまり頭は良さそうに見えないのだが……」
「……うるさいっての……」
一応、町の人々はジャミルに感謝しているつもりなのだが、若干
癪に障る言葉もちらほら耳に聞こえてくる……。
「はあ、んじゃ、次は市役所かあ、ん?」
突然、数台のパトカーがジャミルの前に到着し、中から
警官が出て来た。警官達は何故かジャミルを睨んで取り囲む……。
「……君が、ジャミル君だね?シャーク団を改心させたと言う、噂の……」
「そうだけど……」
あの日の夜、道路を封鎖していた時に見た警官達とは又違う顔ぶれだった。
「ちょっと暑まで御同行願おうか、来たまえ……」
「いっ!?……おいおい、ちょっと待ってくれよ、……俺、
この世界じゃ盗みも何もしてね……、うわーーっ!!
いやだいやだいやだーーっ!!」
「いいから早く、こっちに来なさいっ!!」
警官の1人が逃げようとしたジャミルの腕を掴み、無理矢理パトカーに
押し込んで乗せるとジャミルはあっと言う間に暑まで連れて行かれて
しまうのであった……。
zoku勇者 マザー2編・2