zokuダチ エスカレート編・39
はーちゃんの思い人・4
「……魔法使いさん、どういう事なの?お願い、最初からちゃんと
説明してっ!!」
魔法使いの発した言葉に、流石の脳天気ミラクル(みらい)も
焦り始める。
「さっきも言った通りよ、あたしが王子に掛けた呪いの力は以前よりも
遙かに強い呪いの力よ……、彼は記憶を無くしている上、誰も愛せない
氷の心になっているの、そう、もうこの呪いを解く事は誰にも不可能よ、
かつての王子の呪いを解いたあの子でさえね……」
「……そんな……、そんな事って……」
「モフー……」
「ミラクル、落ち着きなさい、……落ち着くのよ、……どうしたら
いいのよっ!!」
「ジャミル……」
アイシャも……、どうミラクル達に声を掛けたらいいのか分からず、ジャミルの
方を見て助けを求める……。
「とにかくだ、俺らも今は一刻も早くことはの所へ急ごう……、
おい、オメー、ちゃんと案内してくれんだろうな……?」
「分かってるわよ、まあ今更あなた達が騒いだ処でどうにもならないとは
思うけどね、それから……、……もうこんな物返しておくわ!」
魔法使いは、はーちゃんから奪ったスマホンを乱暴にミラクル達の前に
ばさっとほおり投げた。
「……これ、はーちゃんのっ!……よかったあ~!!」
ミラクルが慌ててスマホンを拾うとぎゅっと胸に抱きしめる。
「……わりィけど、お前の方は事が済むまでこれは預からせて貰うぜ、
魔法で変な事されたら厄介だかんな!」
「……好きにしたらいいわ……」
「よし、アイシャ、こいつの魔法の杖はお前が預かっててくれ……」
「分かったわ、でも、何だか責任重大ね……」
ミラクルとマジカルは一旦プリキュア変身モードを解き、みらいとリコの
姿に戻る。そして一行は魔法使いに先頭案内をさせ、城内の広い廊下を
歩き出す……。
花海ことはサイド
はーちゃんは薄暗い部屋の中を1人、コツコツと歩いていた。……再び愛しい
王子に出会う為、……そして……。
「……ジェイド……、な、何これっ!?」
彼方此方に台座があり、その上には石像になっている人魚族の男性達の姿が……。
「……みんなっ!どうしたんですかっ!?何が起きているの!?……ねえ……」
はーちゃんは石像になっている人魚達に呼び掛けるが、返事が返ってくる
筈もなく……。
「……私が此処に連れて来られる前に見掛けたカップルさん達……、
あんなにみんな幸せそうだったのに……、何かが起きてる……、
どうしよう……、怖いよ、ジェイド……、私、どうしたらいいの……?」
はーちゃんの身体が震えだし、ガクガクして止らなくなる。……もしも
ジェイドも石像にされているとしたら……。
「……大丈夫、私が助ける!!」
はーちゃんは再び心を強く持つと、更に部屋の奥へと歩いて行った……。
「はー?……この扉……」
部屋の奥にひっそりと佇む不思議な扉……。はーちゃんは何故か胸が
とても高鳴る。……ドキドキしている……。意を決し、そっと扉に
触れると扉が少しだけ開き、其処からほんの少しだけ光が漏れた……。
「……其処に誰かいるのか……?」
「この声……、ジェイドっ!……ジェイドっ!!」
はーちゃんは無我夢中で扉を開けようとするが、……しかし、それ以上
扉は開かず……。
「お願い、どうか……、もう一度ジェイドに会わせて!!」
はーちゃんが更に祈りを込め、強く願う……。すると、あれだけ頑なだった
扉が開いた……。
「……ジェイド!ジェイドーーっ!!」
はーちゃんが走る。……部屋の中へと……。愛しい王子がこの部屋にいる。
本当に2人の再会の時はもう少しであった。そして、……遂に……。
「……はー、ジェイド……、やっと、やっと会えたね……、私、
花海ことはだよ、あなたに会いたくて、……ずっと……」
はーちゃんの声に、後ろを向いていた王子……、ジェイドがゆっくりと
はーちゃんの方を振り返った……。
「はー……」
「……お前は……誰だ……?」
………
「おい、この城ん中に本当にことはがいるんだろうな?」
「嘘言ってどうするのよ、あんた達は黙ってあたしの後についてくれば
いいの!」
「でも油断できないわよ!はーちゃんの所まで案内すると見せ掛けて、
実は罠かも知れないもの!」
「……リコってば、大丈夫だよう、魔法の杖はアイシャさんがちゃんと
預かってくれてるんだから……」
「さあ?どうかしらね?油断しちゃ駄目よ!何か他の手があるかも
知れないし!」
「……こんなの持ってて、何だか私、凄いプレッシャーなんだけど……」
神経質で心配性なリコにみらいは苦笑。やがて魔法使いはとある部屋の
前の入り口で足を止めた。
「此処よ、この部屋の中に小娘を閉じ込めたの、王子も中にいる筈よ……」
「よし、んじゃあ、おめえも引き続き来て貰うぜ、鍵でも掛けられてうっかり
閉じ込められても困るからな!」
「……はあ、いいわよ、行ってあげるわよ!それにしても口数の減らない
うるさい男だこと!」
「うるさくて結構だよっ!」
魔法使いは自ら率先して部屋の中に入っていく。その後をジャミル達も追って
中に入るのだった……。
………
「ねえ、ジェイド……、どうしたの?……私、花海ことは……、
はーちゃんだよ……」
「知らないな……」
「!う、嘘っ!?嘘でしょっ!?……ねえったら!!」
はーちゃんがジェイドに、詰め寄るが、ジェイドは纏わり付いてくる彼女から
再び顔を背けた……。
「……ジェイド……、暫く会えない内に……、もしかして私のこと……、
嫌いになっちゃったのかなあ……」
はーちゃんの声が震えだし、徐々に涙声へと変わって行く。それを聞いていた
ジェイドは激怒する……。
「……嫌いも何もっ!オレはお前なんか知らないと言っているだろう!
……会った事も話した事もないっ!!……う、うううっ!」
「ジェイド……?あなた身体が!……消え掛かってるよ!?どうして
こんな事に!!」
「……オレに……触るなっ!!」
「きゃ!?……はーっ!!」
心配してジェイドに近寄ろうとしたはーちゃんを、ジェイドは冷たく
突き飛ばす。……それでもはーちゃんは、彼を諦めたくなかった……。
「……ハア、ハア……、オ、オレの身体はおかしい……、誰にもどうにも
出来ない……、は、早く何処かへ行け……、消えてしまえ!……人魚族の
王子として、こんな情けない……、醜い姿を誰にも見られたくはない……」
「……醜くなんかないよっ!」
「お前……」
はーちゃんがジェイドに抱きつく。……どんなに拒絶されても彼の側に
いたい……。そんな彼女の気持ちが通じたのか、ジェイドは、はーちゃんを
突き放す事を諦める……。
(おかしい……、こんな気持ち……、前にも何処かで……)
「ジェイド……」
………
「何なんだよこれ……、みんな石像にされちまってるじゃねえか……、
お前がやったのかよ……」
「酷いわ……、……せ、石像にヒビが入ってる!」
嫌でも目に付いてしまう人魚達の無残な姿にアイシャ達女の子も思わず
目を反らす……。
「そうよ、私が王子に掛けた呪いの影響よ、こうなってしまった……と、
言う事はもう崩壊が始まっていると言う事よ、王子が消える時、全ての
人魚族は消滅する、それが呪い……、いずれはこの人魚達も形を残さず、
泡になって消滅するわ……」
「……大丈夫だよっ!はーちゃんと王子、……ジェイドが2人の愛を
取り戻せれば、きっと……」
「……だから無理だって言ってるの、諦めなさいな……」
「諦めないよっ!はーちゃんも私達もっ!絶対にっ!!」
「……そうよっ!」
「諦めないモフー!」
「……一つだけ……、王子の呪いが解ける確かな方法があるわ……」
「!?」
再び魔法使いがぽつりと言葉を漏らした。
「……何だっ!?オメー、他に方法があるならさっさと教えろよっ!!」
「本当にうるさい男だこと……!ええ、方法はあるわよ、……それは……」
魔法使いの言葉に、皆はごくりと唾を飲み込む……。
「ねえ、あなた達は……、お話の人魚姫の結末をご存じかしら……?」
「ええ、知ってるわよ……、人魚姫は王子様の幸せの為……、自ら泡に
なって消えてしまうの……」
そう言葉を漏らしたアイシャだが、何故かとても不安な気持ちが胸に
込み上げて来た……。
「そうよ、自己犠牲よ……、あの子が王子の身代わりに泡になって消えるの、
そうすれば王子も皆も助かるわ……」
「……な、な、な……、何言ってるのっ!私達は、はーちゃんの
ハッピーエンドを見届ける為、此処まで来たんだよっ!!」
「そうよっ、ふざけるのもいい加減にしなさいっ!!」
「させないモフーー!!」
みらい、リコ、モフルンは口を揃えて魔法使いに抗議するが……。
「でも、他に呪いを解く方法はないのよ?だったらどうするの?
……諦める?」
「やだ……、こんなの……、嫌だよ……」
「モフ~……、みらい~……」
「俺も納得いかないね!他に方法がない?……だったらとことん他の方法を
探すしかねえだろうがよ!バーカ!」
「……バ、バカですって……!?人が親切に忠告してやれば!何て憎らしい!
いいわよ、精々好きにすればいいじゃない!そしてもがくがいいわ!」
「……操られてたとは言え、元々はあなたが掛けた呪いじゃない……、少しは
反省しなさいよっ!」
「ふん!!」
アイシャの言葉に彼女が反発するが、彼女に反省して貰った処で、
呪いが解ける訳ではない……。掛けた張本人にも解く事の出来ない呪い……。
ああ言ってみたものの、ジャミルにもどうしていいか分からなかった。
……人魚族消滅の時間は刻一刻と迫っている……。
……一方の、ジェイドに抱きついたまま……、側を離れようとしない、
はーちゃん……。
「お前……、確か花海ことはとか言ったな……?オレの中にはお前の
記憶など一切存在しない……、それでもお前はオレの事がそんなに
好きなのか?……愛してくれるのか?」
「ジェイド……、あなたの側にいられるだけで私……、幸せなんだよ……」
そう言ってはーちゃんは再びジェイドを強く抱きしめようとするが……。
「一つだけ……、オレが助かる方法がある……」
「は、はー……!?」
ジェイドは、はーちゃんの瞳をじっと見つめる。しかし、その眼は……。
「……お前の命を……オレに預ける事だ……」
「ジェイド……?」
ジェイドはそう言いながら冷たい笑みをはーちゃんに向けると自身の手を
彼女の手へと掛けた……。
「おーい、一体何処まで行かせんだよ!」
「もうすぐよ、この部屋の更に奥に……、もう一つの部屋へと通じる扉が
ある筈よ……」
「あっ、あそこ何モフー!?」
モフルンが叫ぶ方向を見ると、正面に扉があり、其処からうっすらと光が
漏れていた。
「あれだな?間違いねえだろうな……?」
「ええ、あの部屋の中に2人がいる筈よ……」
「やっと見つけたよっ!はーちゃーんっ!!」
「今行くわよっ!!」
「モフーっ!!」
みらいとリコ、モフルンは率先して扉目指し、ダッシュで駆け出す。
「す、凄いスピードね、私達も急がないとよ!」
「ああ!!」
はーちゃんの無事を祈りながら、ジャミルとアイシャも急いでみらい達の
後を追った。
「……ジェイド……、一体どうし……、うう……」
「死んでくれ……、オレの為に……、そんなにオレが好きならば……、
お前がオレに従おうとするその気持ちが真実の愛だ……、それだけが
オレを救うんだ、さあ頼む、オレの為に……」
「……苦しいよ……、ジェイ……ド……」
「お前、オレの為に死ねるんだぞ?……こんなに幸せな事はないだろう……」
「わ……た……し……」
ジェイドがはーちゃんの首に力を込める手が一層強くなり、はーちゃんが
意識を失い掛けた、その時……。
「……やめなさあーーいっ!!」
「今すぐはーちゃんから離れなさいっ!!」
「モフーーっ!!」
(……この声……、みらい、リコ、モフルン……?)
「く、くそ……、追っ手か!?」
……何をしているの、手を緩めないで今すぐ始末してしまいなさいな!
突如心に響いて来た声に、ジェイドの手が汗ばみ、震え出す……。
「……こ、この小娘を……、早く殺してしまえば……」
「……あああ、ううう……」
「やめろーーっ!!」
突如ジェイドの頬にパンチが入り、ジェイドは横殴りに吹っ飛ばされた……。
「け、けほ……」
「……はーちゃん、……分かる?私、みらいだよ、リコもモフルンも、
ジャミルさんもアイシャさんもちゃんといるよ!」
「……はーちゃんっ!……間に合って良かった!!」
「モフーーっ!!……はーちゃあーーんっ!!」
みらい達は急いではーちゃんに駆け寄り、無事を確認すると大号泣
するのだった。
「みらい、リコ、モフルン、……ジャミルもアイシャも有り難う、
……来てくれたんだね……」
「はーちゃんっ!……無事で良かったわ!」
アイシャもはーちゃんに駆け寄ると、はーちゃんは笑顔を見せた。
「……クソッ、お前か……?オレ様の邪魔をしたのは……」
殴られた頬を拳でさすりながらジェイドがむっくりと起き上がり、
ジャミルの方を睨んだ。
「そうだよ、わりィか……?」
「……生意気な……、雑魚の人間の癖に……」
「ジェイドっ!……やめてっ!!」
「はーちゃんっ、駄目だよっ!今の彼はジェイドであってジェイドじゃ
ないんだよ!落ちついてっ!!」
「はーちゃんを殺そうとしたのよ!?近寄っては駄目よ!!」
みらいとリコは、はーちゃんを必死で抑えようとするが……。
「ねえ、ジェイド……、嘘……だよね?……これって全部嘘でしょ?
……嘘……、なんだよね……?」
「冗談でお前を殺そうとしたりするもんかよ!……おい、テメエ!マジで
何考えてんだよ!!」
「……ククク、そうだ……、冗談なもんか……、こいつをコロ、セバ……、
オレ、サマハ……、タス……カ……ル……」
「ジェイド……?」
「この王子も誰かに意識を洗脳されているのかしらね、……私みたいに……」
後ろで静かに様子を覗っていた魔法使いがぽつりと言葉を漏らす。
「はーっ!?」
「……何だと!?」
「私がまた人魚の里と王子、あなた達に復讐しようと思った気持ちが
強くなったのも、心に聞こえて来た声の所為よ、まるで自分が自分で
なくなる様な……」
「ジャミル、やっぱり……、最初に魔法使いさんの意識を洗脳したのは……、
……それが今は……、王子様の処に行っちゃったって事なのかしら……」
「だろうな、それしか考えらんねえ……、それにしても、野郎……、マジで
んなとこまで手を伸ばして来やがったのか……」
ジャミルとアイシャの表情が険しくなる。かつて一度、ルーゼに洗脳を
された事のある、はーちゃんとリコも顔に生気が無くなり掛けていた……。
「ソウ……ヨ、お久しぶりね……、お馬鹿さん達、私、ルーゼよ、
……それから、私は野郎ではないわ、相変わらず無礼な男ね……」
「……てめえっ!……ルーゼなのかっ!やっぱりっ!!」
ジェイドの口調が突然変り、心と体に取り付いていたルーゼらしき本人が
遂に本性を表したのだった。
「眠りから目覚めて魔力も蓄えられたし、そろそろ頃合いかしらと
思ってね、動き出したのよ、ふふ、あんた達に復讐する為なら何処へ
だって追い掛けるわ!」
「……ふん、誰だか知らないけど、あたしの心に取り付いたのはアンタ
だった訳!?冗談じゃないわよっ!あたしはもうこいつらとは一切
関わらないと決めたのよ!それなのにとんでもない事態を押しつけ
られてこっちはいい迷惑なのよ!アンタちゃんと責任取りなさいよっ!!」
「あら?私はあなたの奥底に眠る願望を引き出してあげただけ、
欲求不満だったのではないのかしら?どうしてもっと素直に
ならないのかしら……?」
(……な、何かこいつら……、性格悪いモン同士、似てるのかもな……)
聞こえない様、心で呟いて何となく冷や汗が出て来たジャミ公……。やはり、
王子に再び呪いを掛けたのは、魔法使い自身の意思では無かったらしく、
ルーゼが彼女の奥底に踏み込み、気持ちを操った所為であった。確かに
魔法使いはまだ、自分をふった王子に未練があり、憎む気持ちはあった
ものの……、その気持ちを洗脳し、大きく再び行動に起こさせ、利用
したのだった。
……さあ、王子様……、お姫様を殺しなさい、そうしなければあなたに
掛けられた呪いはあなた自身が滅びるまで永遠に解けないのだから……
ルーゼが再びジェイドの心に呼び掛けるとジェイドの姿が光り出す……。
サメの怪物へと姿を変えようとしている様だった……。
「……ジェイドーーっ!!」
「はーちゃんっ!行っちゃ駄目モフーーっ!危ないモフーー!!」
「堪えてっ!……はーちゃんっ!今は本当に危ないんだよー!!」
「はーちゃんお願い!……言う事を聞いてっ!!」
「……いやーっ!行かせてお願い!ジェイドの所にっ!!」
みらい達は、はーちゃんを必死に押さえ付けて止めようとするが、
はーちゃんは泣き喚き、みらい達を突き飛ばしてジェイドの元に
飛び出して行こうとする。
「……グガアアアアーーーーーッ!!」
「……あ、あいつ、暴走しだしたし!おい、お前らマジでヤベエぞこれ、
早く此処から逃げねえとこの城あいつに壊されちまうぞ……!!」
「……ジャミルさん、そ、そうは言いますけどっ!」
「モフーっ!!」
此方も……。暴れ出したはーちゃんを押さえ付けるのに必死なみらいは、
何とかジャミルに返事を返すが……。
「あんた、あたしの魔法の杖預かってるでしょ?すぐ返しなさい!
魔法を掛けて今すぐに此処から脱出するから!」
「……え、えええ!?だ、だけど……」
魔法使いがアイシャに詰め寄り、アイシャは混乱し、ジャミルの方を
見ながらどうしたらいいのか目線で訴えた……。
「早くしなさいっ!どうするの!?……このままだと全員此処で全滅よ!!」
みらいとリコも魔法の杖を持ってはいるが、今の状況ではとても魔法など
使える余裕ではなく……。
「分かった……、アイシャ、頼む!杖を返してやってくれ!」
「了解よ!……はいっ!」
戸惑いつつもアイシャが魔法使いに杖を返すと魔法使いは無理矢理に
アイシャから杖を引ったくった。
「全く!最初からこうすればいい物を!」
「魔法使いさん、お願い……、石になっている人魚の皆さんも……」
「分かってるわよっ!仕方ないわねえっ!」
「ありがとうーっ!」
みらいに目線で訴えられると、魔法使いは仕方が無いと言いつつも、
その場から全員に魔法を掛け、緊急脱出させた。
「……グルル……、ニガサン……、コロシテ……ヤル……」
あらあら、折角のあなたのお披露目姿を見てあげないなんて……、全く
酷い奴らだわ……、いいわ、私達もすぐに後を追い掛けましょう……
「……コロス、コトハ……、オマエヲコロス……、ソウスレバ、オレハ
タスカル……」
「ジェイド……」
逃がさないわよ、あなた達……、さあ王子、早く小娘と邪魔な雑魚共を
片付けておしまい!
魔法使いの魔法で何とか城から脱出した一行に、サメの怪物と化し、
完全に理性を失い豹変したジェイドが立ち塞がる。ルーゼは直に姿を
見せないものの、ジェイドに取り付いたまま、心に邪念を送っている
様だった。
「ああ……、あの時と……同じ……」
「はーちゃん……、こんなの酷いよ……、今のジェイドは……、
はーちゃんを殺す事しか考えてないんだ……」
「……本当に許せない!いつもいつも人の心を利用してっ!」
「モフ~……」
以前にジェイドがサメの怪物になった時には、フェリーチェの命懸けの愛が
彼の心を救い、元の姿のジェイドに戻したのだが……。
「ジャミル……、どうにか出来ないのかな……、このままじゃ……」
「俺らにはどうする事も出来ねえよ……、黒幕張本人のルーゼ自体姿を
見せやがらねえし!」
「……悪いけど、もうあたし、これ以上一切変な事には関わりたくないわ!
じゃあね!」
「あ……、おいっ!……逃げやがったな、たく、しょうがねえなあ~……」
魔法使いはもう厄介事はこりごりと見て、自分だけ何処かにさっさと避難した。
「……」
「はーちゃんっ!?」
「モフっ!?」
みらい達とモフルンが声を合わせた。……はーちゃんはしっかりと眼を
見据えてジェイドの所まで近寄っていこうとする……。
「ジェイド……、私、あなたが助かるならそれでいいよ……、私の命を
あなたにあげる……、そうすれば、人魚の里のみんなも助かるんだもん……」
「ウウウ……」
はーちゃんはジェイドの前で大きく両手を広げる。それを見た仲間達は再び
大声を張り上げ、必死にはーちゃんへと呼び掛ける。
「……はーちゃん、お願いっ!バカな事言わないでっ!私だって怒るよっ!!」
「そうよっ!早く戻ってきなさあーーいっ!はーちゃーーんっ!!」
「はーちゃあーーんっ!戻ってくるモフーー!!」
みらいもリコもモフルンも……、はーちゃんへと呼び掛ける声を更に
大きくする……。……その声は涙声になり、震えていた……。
「駄目……、こんなの駄目……、絶対駄目だよ!……ジャミルっ!!」
アイシャもどうしていいか分からず、顔を伏せてジャミルにそっと
寄り添った……。
「……っ!ルーゼっ!何処までテメエは性根が腐った野郎なんだよっ!!
……ことはもっ、目を覚ませええーーっ!!……お前が此処に来た
目的を思い出せーーっ!!大切な奴に想いを伝える為、チョコを渡しに
来たんだろうがよっ!!」
「はー……、ジャミル……、私……」
「はーちゃんっ!……危ないっ!!」
「……はーっ!?」
ジェイドがはーちゃんに襲い掛かりそうになったのを、間一髪でみらいが
咄嗟に飛び出して庇って避けさせ、はーちゃんは事なきを得る……。
「……いたたたあ~、……はーちゃん、大丈夫だったあ~……?」
「みらい……」
「はーちゃんっ!もうっ!バカっ!!……みらいも無茶するんだからっ!!
……本当にもう……、バカよ……」
「モフ~……、……はーちゃああ~ん……」
リコとモフルンも再びはーちゃんに飛びつき涙を零す。はーちゃんも堪らず
目から一滴涙を零す。
「ごめんなさい、……みらい、リコ、モフルン……、ジャミルも
アイシャも……、私、ジェイドを助けたくて……、でも、どうしたら
いいか分からなくて……、結局は自分の事しか考えてなかったんだね……、
ごめんなさい……、みんながこんなに心配してくれてるのに……、私……、
まだまだ本当に子供なんだね……」
泣き崩れたはーちゃんを慰める様に、みらいがある物を彼女に手渡す。
「……これ、はい、はーちゃんのだよ、頑固魔法使いさんが返して
くれたんだよ、それと……、これもちゃんと持ってなくちゃ駄目だよ……」
「はーっ!私のスマホンとチョコレート……、私の……」
みらいから再びスマホンとチョコレートを受け取り、2つをぎゅっと
抱き締めるはーちゃん……。
「はーちゃん、戦いましょう!まずは彼を元に戻すのよ!」
「リコ……、うん、そうだね!」
「おう、頑張ってくれよ!俺ら此処で応援するしか出来ねえけどよ、
思い切り戦ってこいよ!」
「はーちゃん……、良かった……、みんなも……、どうか無茶しないでね……」
「有り難う、ジャミルさん、アイシャさん!行こう、リコ、はーちゃん、
モフルンっ!!」
「ええ、……ルーゼ、絶対アンタをジェイドの中から追い出して
みせるわっ!!」
「助けるの……、ジェイドも、人魚の里のみんなもっ!!絶対に!!」
「行くモフーっ!」
「キュアップ・ラパパ!ダイヤ!」
「キュアップ・ラパパ!エメラルド!」
「モッフーンっ!!」
「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」
「フェリーチェ・ファンファン・フラワーレ!」
「「魔法つかいプリキュア!」」
変身完了。フェリーチェも復活し、久々に3人揃ってのプリキュア
スタイルとなる。
「はあ~、いいなあ~、プリキュアフォーム……、私もなってみたいなあ~……」
「ま、無理だな、諦めろ……、いてっ!」
「……何で即答するのよっ!ジャミルのバカっ!!」
……実は俺は一度、無理矢理代理プリキュアにさせられたんだよっ!
……とは、恐ろしくてアイシャには言えず、黙っていた……。
「……ちょっとっ!頑固魔法使いって誰の事なのよっ!!……あ……」
「お前、わざわざ戻って来たん……?」
「あはは、し、心配になって来てくれたのかな……」
「……別にっ!奴らのやられっぷりを観に来てやっただけよ!暇なのよっ!
あーっ!何でもいいからとっととやっちゃいなさーいっ!こっちは忙しいん
だからねーーっ!!」
「……暇なのか忙しいのか、どっちなんだ……、ま、やれやれだな……」
「ね……」
頑固魔法使いのツンデレっぷりに、ジャミルとアイシャは一緒に苦笑する。
「……コロス……、オマエタチ、ミンナ……、マトメテコロシテヤル……」
「ジェイド……、私、あなたと戦う事からもう逃げません!……絶対に
あなたを取り返してみせます!……救ってみせます、……必ず……、
消させはしないっ!!」
「モッフーンっ!レインボーキャリッジ!モフーっ!!」
ミラクル、マジカル、フェリーチェの姿がアレキサンドライトスタイル
モードへとチェンジ!
「やっぱり、代理じゃモノホンにはかなわねえなあ~……」
「ちょっとジャミル!……何でニヤニヤしてるのようー!」
久しぶりにこのフォームを見たジャミルはかつて、ダウドとコンビで
無理矢理、自分達が代理キュアにさせられた事を思い出し、頭をぽりぽり
掻いた……。
「巡り会う奇跡よっ!」
「繋がる魔法よっ!」
「育まれし、幸せよっ!」
「今、私達の手に!!」
「フル・フル・フルフルリンクル!プリキュア・エクストリームレインボー!
キュアップ・ラパパ!虹の彼方にっ!!」
……これ程までとは……、やはりこいつらも只者ではないわね……、
今回も撤退ね……
かつての代理プリキュアのジャミダウコンビが放った時よりも、倍以上の
虹色魔法の力がジェイドの中にいたルーゼを追い詰め、遂に追い出したの
だった……。
「……ウ、ウウウウ……、コト……ハ……」
「ジェイドがっ!……思い出し掛けてる!?」
「はーちゃんとの記憶を……、思い出を……!もう少しよっ!!」
「……ジェイドっ!……どうか私達に……、奇跡をっ!!」
プリキュア達が更に強く祈りと思いを込めると、ジェイドの身体が虹色に
包まれる……。
「……あああーーっ!……ことは……オレの……」
「……ジェイドーーっ!!」
浄化され、元に戻ったジェイドの身体がゆっくりと地へと落ちて行く。
フェリーチェはそんな彼の身体をしっかりと受け止め、もう一度強く
抱き締めたのだった。
「……フェリーチェ……、ことはなのか……?」
「はい、私、キュアフェリーチェ、……花海ことはです……、あなたに
逢いたくて……、もう一度此処まで来ました……」
「ことは……」
「これを……どうか受け取って下さい……、あなたに食べて欲しいの……」
フェリーチェは姿を再び花海ことは、はーちゃんへと戻す。そして、持っていた
チョコの一欠片をジェイドの口へと入れた。
「……甘い……、これは……?か、身体が……、元に……?」
消え掛けていたジェイドの身体が元に戻る……。はーちゃんの愛の
チョコレートの力が遂に呪いに打ち勝ち、ジェイドを再び救ったの
だった……。
「……お前との記憶も思い出も……、何もかも全て思い出した……、
ことは……、有り難う……」
「……ジェイド……、やっと又……逢えたね……」
漸く本当に再会を果たした2人は心から頑なに抱き合う……。こうして、
人魚の里の冒険も無事に幕を下ろしたのだった……。
zokuダチ エスカレート編・39