One story

One story

朝、起きた。まぶしい。カーテンの端が少し開いているからだ。そうしないと起きることができない。西向きの窓。気合を入れて体を起こす。これがなかなかできない。だが、そうしないといつまでも俺は夢の中だ。そうしないと俺はいつまでも外には行けない。

「お、いい天気」

　呟く。カーテンを全開にした。まぶしい。青い空が見える。

青い空を見るとき俺は今日をがんばろうと思った。

　もし今季節が夏なら、このまま窓も全開にしたんだろうが、あいにく少し肌寒い春先。ここに来てから二年目の春。さて、今日も出かけよう。

　ただいま。なんていつから言わなくなったんだろう。というか、一人暮らしでそれを言うのはちょっと痛い奴だ。俺は電気をつけた部屋で、荷物をおろし、また出かける。夕暮れ時の散歩。なんて、ただふらついているだけだ。ジャンパーを脱がずに、そのままチャリンコに乗る。帰り道も見てきたけど。赤い空が見える。

赤い空を見るとき俺は今日をがんばったと思った。

　と、なぜ電気をつけたままにしたかというと、このアパートは夜、とんでもない雰囲気を醸し出すからだ。猫が茂みの陰から飛び出したときは、内臓から口が出そうなくらいだった。だがもう春も近づき日も長くなりつつある。冬の使い過ぎを挽回するため、もうつけっぱなしで出かけるなんて贅沢、していられないだろう。さーて、飯だ飯。

　いただきま・・・と言いかけたところでカーテンが開いていることに気づく。閉めようと立ち上がる。黒い空が見える。

黒い空を見るとき俺は明日もがんばろうと思った。

　飯は何かって？野菜炒めだ。もやしとキャベツと人参とピーマン、そして肉。ちゃんとご飯も味噌汁もついてるぞ。今日買ってきた１００円くらいのカット野菜だ。どうだ、すごいだろう。なんてな。

　風呂はいい。風呂は日本人が作り出した・・・おっとっと、風呂場で滑って転んで一生を終えるところだった・・・そんなの嫌だな、気を付けよう・・・さっぱりしたところで音楽でも聞いて、コーヒーでも飲んで、やんなきゃないことでもやって、好きなことやって・・・なんて、結局パソコンさんの魔力にやられて遊んでることが多いくせに。

　そろそろ寝るか・・・あ、カーテン少し開けないと・・・月が見える。

白い月を見るとき俺は今日も誰かに助けられてがんばってんな、なんて思う。

　明日の天気予報は曇り。朝ただでさえおひさまの光が少ないというのに・・・ちゃんと起きれるかな・・・騒がしく鳴り響くアラームの音を思い出しながら、今日もおやすみ。

空の色は変わっていく
俺の色は変わっていく？

変わっていっても
変わらなくても
俺は俺

空の色は変わっていく

きれいだ

俺は別にきれいにはなりたくはないな

と思った。