ときめく恋はカフェオレの香り チャプター5
鈴原結奈(すずはらゆいな)は、29歳の恋愛初心者の女性であった。
初めての彼氏・・。
コンビニ店員の笹原蒼空(ささはらそら)くんとも、いろいろ事件があったが、また付き合うことになった。
〜 会社のカフェで(ある春の昼下がり) 〜
鈴原結奈(ゆいな)は、勤務する証券会社のカフェで書類を見つめていた。
何でも、上司から渡されたもので「良く目を通しておくように」と念を押されていたのである。
だが・・結奈の脳内は、、蒼空(そら)くんのことでいっぱいで、書類の内容なんて、まるで「解けない数学の問題」みたいで、頭に入ってこない。
「結奈ちゃあ〜〜ん」
漆原美香(うるしばらみか)さんは13歳も年上(42歳)だが、先輩風を吹かせない人なのでとっても付き合いやす女性である。
美香さんは、トレイに黒豆茶とシュークリームを乗せて、結奈の脇の椅子に腰をかけてきた。
「わあーー。美香さん、3個もシュークリーム・・??
甘党なんですね!」
美香さんのトレイを見て、思わずびっくりする結奈。
「ふふふ、40代にもなると糖分を3倍くらい
取らないと、元気が出ないのよね。」
美香さんは年齢の割には可愛い笑顔で、黒豆茶を飲み始めた。
一方、結奈の今日のドリンクは紅茶で、付けたデザートはベルギー産のチョコレートケーキで、甘すぎるくらいである。
ここのカフェは外国産のスイーツも置いてくれるので、本当にありがたいものである。
美香さんとの友情(?)も続いているし、結奈のママも最近は新しいカルチャークラブに入会した、とか言って機嫌が良い。
春になって・・・すべてが上手く回っているようで、最近の結奈は、神様(そういう存在がホントにいるのなら・・)に感謝しているのだ。
恋愛も、(恋愛)初心者の結奈にとっては、好調、好調、、、。
野球に例えてみると・・・3塁打ヒットくらいである。
結奈は、憧れで付き合ったイケメンの蒼空くんとまた、デートしたり、楽しく付き合っていた。
蒼空くんとのデートは一緒にポップコーンを食べたり、小鳥のさえずりを聞いたり・・。
「これって、青春ね!」」って思わせてくれることが多くて、女子高育ちの結奈には嬉しかったのだ。
バスケ部だった蒼空くんは、たまにボールで遊んでみたり、無邪気な面も結奈には魅力だったのである。
『このまま、蒼空くんと婚約しちゃったりして‥?!』
恋愛にウトい結奈は、付き合ったら婚約っていうルートで考えていた。
ただ、蒼空くんはデートの時は楽しそうだったが、たまにタバコを吸うときなど、ふっと見せる暗い表情が気になっていた。
ある春の日・・。
「今日は、泊まっていかない?」と蒼空くんに言われる。
いつもハンバーグとかチキンライスとか一緒に食べて、ちょっと蒼空くんお気に入りのテレビ番組を見ると、帰っていた結奈。
「え?? なんで?泊まるの?」
結奈はキスはしたけど、まだ心の中ではちょっと先には進んじゃいけない気持ちだったのだ。
いくら、週刊誌で『彼氏とお泊りデート』とか載っていても、蒼空くんとは、きっちり婚約しないとダメだった。
今まで仕事ばかりしてきた結奈は、、いくら29歳でも、婚約とかするまでは体の関係は、ちょっと・・と思っていた。
「ふーん、ダメなんだ、、つまんないの。」
蒼空くんは、白けた口調でぼそっとつぶやく。
蒼空くんの期待に応えられなかったことで、結奈は憂鬱になる。
とりあえず、その日は帰るが、それから2人の関係は一気に気まずくなった。
メールをしても、スルーする蒼空くん。
もちろん電話は取ってくれず、優菜はやきもきするばかりなのだ。
1週間ぶりにデートして、また蒼空くんに誘われてしまう。
「今日は夜食も用意したから、泊まっていけば、、、?」
明るい口調で、蒼空くんは結奈を引き留めようとするのだ。
「え、ええ、でも。 あ、妹と夜に出かける予定なんだ。」
とっさに下手な言い訳をして、苦笑いをしてごまかす。
ーー バーーン。ーーー
蒼空くんが、スリッパを、ドアに向けて投げつけてしまったようだ。
「お、俺・・面倒くさい女性は、苦手なんだよね。」
蒼空くんはきびすを返して、結奈のことを押し出して部屋の中に入ろうとするのだ。
「そ、蒼空くん。。」
結奈は、もう泣きそうで、、でも、何も言えなかった。
「もう、ここに来るなよな、」
蒼空(そら)くんは、ぼそっと言ってアパートのドアの鍵を閉めてしまったのだ。
ガジャンーーー。
アパートのドアの鍵を閉める音が、、まるで、ふたりの恋の、『ジ・エンド』を表す音のようで、、、
そこに、うずくまってしまう結奈だったのだ。
ーーー それから、2ヵ月後ーーーー
鈴原結奈は、今、ダーツにはまっている。
実は、2ヵ月前から音信不通の恋人だった蒼空くんが忘れられなくって、同じ趣味を始めたのだ。
友人の、緑川 琴葉(みどりかわ ことは)に「また、アパートに行ってみたら?」と言われたけど、蒼空くんとの最後の夜を思い出しただけで、、頭痛がしてしまい、訪ねていくなんてとうてい出来ない。
家では、3歳年下の妹・鈴原 円香(すずはら まどか)が、こう言う。
「はは〜ん、それでダーツなのね!」
「そんなに、忘れられないなら、ダーツ同好会に入れば・・?」
と、円香(まどか)に言われるが、そんな気はもうとう無い。
ただ蒼空くんと、趣味のダーツで繋がっているだけで、何か嬉しい気持ちになってくるのである。
そんな姉・結奈のことを心配している妹は、あるアイディアを思いついたのだ。
ーーー 映画館で、時間は午後の4時 ーー
結奈は、妹の円香と映画に来ていた。
久しぶりに、大スクリーンで見た「ファンタジーのアニメ映画」のヒロインは可愛くって、効果音も最高で、、、にっこりしたい気分だった。
『良かった、姉がいつまでも暗い気分でいたら、可哀そうだわ、、今日の計画は成功ね!」
妹の円香は楽しい映画を見ることによって、姉を失恋気分から立ち直らせたかったのだ・・。
映画グッズのショップでパンフレットを探していると、結奈は後ろから、とんとんと肩をたたかれた。
「あれ・・?もしかして、結奈さん・・? 僕のこと、覚えているかな?」
にこにこして近づいてきたのは、以前、琴葉と一緒に行った合コンで知り合い、結奈のことを気に入った男性だったのである。
あの頃は、蒼空くんのことで頭がいっぱいで、上の空で接していたけど・・。
また、青いベストを着ていて、、相変わらず細身である。
何か、勘違いしたのか、妹の円香は気をきかせて
「わあ、姉の知り合いですか・・?
良かったら、ふたりでお茶でも飲んできたら?」
そう言い残して、、映画館を出て行ってしまった。全く、こういうところは早とちりの妹である。
名前は、南川達郎(みなみかわたつろう)さん、1歳年下みたい。
職業は、老人介護で、勤務歴は5年以上とか・・。
趣味は、園芸と俳句・・。
これらが、南川達郎くんについて結奈が得た情報である。
達郎くんは映画館を出ると、お気に入りのパスタ屋さんに連れていってくれて、エスコートしてくれる。
「ここのパスタやは、ペスカトーレが美味しいよ。」
「今回は、クリームソーダも頼んでおくからね!」
どんどんオーダーして、結奈の前にパスタの皿とクリームソーダが並んでいくのだ。
「達郎さんって、介護の仕事ですか?大変でしょ?」
「う、うん、両親に進められて、なったんだよ。最初は嫌だったけど老人も優しいからね。。」
介護職の男性って優しい、、と結奈は、友人から聞いてたことがあった。
達郎くんも、ほんとに相手を抱擁するオーラを持っているみたい。
話しているうちに、次第に達郎くんのペースになってきて、結菜は、ほんわかした気分になってきた。
その日の夜・・。
結奈は、蒼空くんのこともだいぶ未練があったけど、自分から逃げてる蒼空くんを追いかけよう、、とは思わなかった。
『あの人、、私のこと、好きみたいだものね。』
親友の琴葉に電話をする結奈だった。
「え?いいんじゃないの・・?ほんとに、その男性は結奈のことを気に入ったみたいだよね!」
明るい友人の声は、ふたりの恋を応援する気分でいっぱいみたいだ。
「そうか、、じゃあ、今度は私から映画のレイトショーでも誘ってみようかな?」
乗り気じゃなかった結奈だったが、友人の琴葉のエールで恋のゴーサインが出たみたい・・。
ときめく恋はカフェオレの香り チャプター5