新たなる衝撃
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第一章 衝撃の始まり
「さぁセレクトセールですね。織田社長」
「君の相馬眼には期待しているのだよ。竹中君」
「まぁ2年後を楽しみにしていてください。」ニヤリと笑いながら言った。
この会話の約1月程前の6月12日に戻そう。
織田政宗 43歳 世界的大企業株式会社天下一の社長である。
「どうししてもですか」秘書の柴田の悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「2時間後に会見を開くとか急に言われても」柴田の顔は今にも泣き出しそうになっている。
「丹羽君 柴田君は今日でこの会社をや」
「至急確保してまいります」と言って足早に社長室から出て行った。
「柴田さんやめるんですか?」と遠くから聞こえてきた。たんこぶができているであろう丹羽の頭を想像し誰もいないドアに向かって笑い、タバコを吸い始め、物思いに更け始めた。
さぁ20年来の夢を実現する時が来た。敦盛を口ずさみたい気分だった。
思へばこの世は常の住み家にあらず
草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし
金谷に花を詠じ、榮花は先立つて無常の風に誘はるる
南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲にかくれり
人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか
これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ
「460年前の今日織田信長はこの幸若舞を舞って桶狭間の戦いを行いました。それを踏襲し現代における桶狭間を行いたいと思い覚悟を決めました。社大とダーリーを倒します。」
薄暗い部屋でテレビの光だけが希望の光の一筋のように見えている中で竹中孝高は神というものの存在を初めて認めた。
話を現在に戻す前に2020年の競馬界の状況を説明しておこう。
簡単に言うと社大とダーリーの独占である。
ノーザンテーストやサンデーサイレンスの大成功により圧倒的な強さを持っていた社大だが、オイルマネーの力により少しずつダーリーに追いつかれてきたようであるが、ダーリーも中当たりの種牡馬ばかりで社台を抜くに至っていないのが実情である。
さぁ現在に戻ってセレクトセール会場
G1馬の3割がこのセールからでると言われている。
もうカタログにより購入する馬は大体決まっているが実際に見ないとわからないというのでここにきた次第である。
なんだかんだして結局前から決まっていた馬を買っただけであったが、政宗のこのセレクトセールの最大案件は牧場である。社大とダーリーを倒すためにはやはり生産からする必要がある。
社内に競走馬事業用の部署を作り予算は1000億もある。
この金を使いカントリー牧場の跡地を基幹とし、面積を増やす予定であり、その工事は始まっており、ヨーロッパとアメリカの繁殖牝馬セールでG1馬を含め30頭を20億で社大からもなんだかんだ言って去年のオークス2着馬の馬など17頭。他の中小牧場からも6頭購入している。
しかし問題点としてまだ牧場長が決まっていないのである。
いや正確に言うと候補はいる。徳川優馬 64歳 元メイジ牧場の牧場長である。
まず先週に秘書の柴田を行かせたが鼻先でドアを閉められてしまった。
そこで政宗は秘書の中で1番頭が切れる羽柴光秀の案を取り入れ実行することになった。
と、その前にこの説明をしておこう。
東大卒の学歴を引っさげ羽柴の説株式会社天下一に入社してきたこの男はすぐに社長である政宗に見出され社長秘書として働くことになり7年。ここ最近の会社の業績もこの男無くしては達成できなかったとまで言われている。
そんな男の唯一の趣味は競馬であり、今回の件で、競走馬事業用の部署の部長に就任した。
「私を劉備としたら君は関羽。竹中君は張飛であろう。しかしまだ孔明がいない。そう徳川がな。」
「それならば私に名案がございます。今は社大の牧場にいる、メイジ最後の大物である。メイジレーヴを購入するということです。ついでに他のメイジ冠のつく馬もできるだけ購入しておくべきだと思います。」
「ほーなるほど。これで徳川さんの心を掴むのか。さすがじゃ光秀。君は関羽ではなく孔明だったな。」
「いえ蜀は孔明が1人だったから滅びたのであります。しかし3人いたら天下は取れます。私と徳川さんと竹中さんというね」
「私が劉禅でなければな」
「これぞ三顧の礼という感じだな。」
「いや一顧で終わりますよ。あ、柴田君のは当然勘定に入れていませんよ。」
いや「北海道観光に行ったようなものですから。」と丹羽がここぞとばかりに批判する。
「たんこぶを作りに会社に来ている奴には言われたくない。」柴田が顔を赤らめ罵倒する。
「さぁ着きましたよ。」との運転手の声でひまわり組さんの戦いは終わった。
ここが家かメイジのイメージカラーである緑で彩られた家である。
「甲子園みたいですね」いまにもサウスポーを歌いだしそうな丹羽がいった。
「これはグリーランドのホワイトハウスみたいですよ」ドヤ顔で柴田
「グリーランドは国でありません。デンマーク領です。だから大統領官邸はないですよ」2人のまとめ役である斉藤蝶子が冷静にそれいでいて汚らわしものを見るような顔で言った。
「すいません徳川さんですか天下一牧場の社長であります織田です」
インターホン越しでも隣の家に聞こえるような声で「君の下で働く気持ちはない」と言った。
「メイジレーヴの子を育てましょう。そしてラヴアンドラヴの子を倒しましょう」
「家に入れ」か細い声で言った。
「少し君の話を聞こう」
「徳川さんは社大に負けたままでいいのですか」
「結果が全てだ。つまり俺たちの負けである。それが社会の掟だ」
「確かにそれは正論です。しかし社会は正論では生きていけません。それは人間の本能です」
「諦めも場合によっては前進だよ。君は若いから分からないかもしれないが」
「その前進は足を引きずりながらの前進でしかありません。例え後戻りしたって、走りながら進む方が楽しいと思いますよ」
「後戻りしてる年じゃない」
「このままいけば体は前進していても心は前進していません。夢を叶えるのは体ではありません。あなたのハートなんです」
「しかし…」
「今すぐ越えられない壁はあります。しかし努力していたらいつか越えられると信じています。私は。そうでも思わなきゃ努力なんて馬鹿らしくなりますよ」と言って現在のレーヴの写真を見せた。
その後1時間この老人が話すことはなかった。が、写真に落ちる涙が今の気持ちを如実に物語っていた。
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